太陽系外惑星
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太陽系外惑星(たいようけいがいわくせい)とは、太陽以外の恒星を公転する惑星である。「系外惑星」とも略して呼ばれる。また、パルサーを主星とする惑星系も見つかっており、これらに属するものも系外惑星と呼ばれる。
SF作品、なかでもスペースオペラで頻繁に題材として取り上げられてきたものの、観測能力の限界から実際に発見されずにきたが、1990年代以降、多くの系外惑星が実際に発見されている。
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[編集] 探査の歴史
太陽系以外にも系外惑星が存在するのではないかという考えは探査の始まる以前よりあり、16世紀にはジョルダーノ・ブルーノが、太陽も恒星のひとつであり、他の恒星も太陽系のような世界があるという説を唱えたが、これは科学的というよりは彼の信仰、宗教的世界観によるところが大きい。20世紀には太陽以外の恒星も惑星を持っているだろうということは常識として考えられるようになったが、長らく実証されず、専らフィクションの世界でのことだった。
探査の試みがなされるようになるのは、1940年代からである。1960年代にはバーナード星に惑星があるとされ、きわめて有力視されたが、この報告は現在では否定されている。
現在認められている初の発見例とされているのは、1993年に発見されたPSR 1257+12をめぐる3つの惑星である。ポーランドの天文家、アレクサンデル・ヴォルシュチャンによって発見された。
1995年10月6日、ジュネーブ天文台のミシェル・マイヨールとディディエル・クエロッツにより、ペガスス座51番星 (51 Pegasi) という恒星に木星クラスの質量を持った惑星の存在が確認された。主系列星ではこれが初めての系外惑星とされている。最初に発見された系外惑星は、中心の恒星から0.05天文単位で水星軌道よりも遙かに内側に入り込んだ木星型惑星という異様な惑星であり、太陽系と類似した配置であろうというそれまでの常識を打ち砕いた。この種の惑星は、太陽に極めて近いことから「ホット・ジュピター」(熱い木星)と呼ばれ、これを機に続々と同種の系外惑星が発見されている。これは後述のように、主に惑星の重力によって恒星がふらつくことを利用して観測しているため、恒星に及ぼす重力が強い惑星、つまり木星級の大きさで恒星のすぐ近くを回る惑星でなければ、地球から観測することは非常に困難ということによる。
2007年2月28日までに182の惑星系(パルサー含む)に212の惑星が発見されている。
[編集] 太陽系外惑星の観測方法
[編集] 直接観測
直接観測は、文字通り望遠鏡で系外惑星を直接観測することである。実際には中心となる恒星と惑星の距離が非常に近く、また恒星に比べ惑星が非常に暗いため、惑星からの光を恒星の光と分離することは非常に困難とされている。しかし直接観測のための研究は世界中で行われている。
恒星ではないが、褐色矮星である2M1207という天体には、55AU(あるいはそれ以上)の距離に惑星サイズの天体が発見されており、2M1207の伴星ではないかと言われている。この天体は赤外線で直接観測されている。
2005年3月22日、ハーバード・スミソニアン天体物理センターと、NASAのゴダード宇宙飛行センターの研究者らが、こと座にあるTrES-1と、ペガスス座にあるHD 209458bの2つの系外惑星の直接観測に成功した、と報道された。これは、惑星が恒星の裏側にあるときとそれ以外の差を取り、惑星の赤外線輻射を恒星光から分離するという方法であり、厳密な意味での直接観測ではない。
2005年4月、ヨーロッパ南天天文台で、おおかみ座にあるおおかみ座GQ星(GQ Lupi)という恒星にある惑星候補天体の撮影に成功した(画像)。この惑星候補天体の質量は木星の1倍から42倍と見積もられており、褐色矮星の可能性もある。したがってこの観測も、現時点では惑星の直接観測とは いえない。
[編集] 位置天文学法
位置天文学法(Astrometry)は、木星のような巨大な惑星によって恒星がふらつく様子を位置天文学的手法により精密観測し、それによって惑星の存在を確かめる方法である。連星の不可視伴星の発見に用いられるのと同じ手法である。1943年以降の初期の系外惑星探査に用いられたが、大きな成果をあげることはなかったが、従来にない高精度の位置天文学観測が可能になった現在、この方法によっても系外惑星が発見できるのではないかと期待されている。
[編集] 視線速度法
視線速度法は、ドップラー偏移法とも呼ばれ、惑星によって恒星が視線方向にふらついた時に起こるドップラー効果によるスペクトル変化を調べることで系外惑星を探す方法である。基本的には分光連星を発見する手法と同じものである。ベレロフォン(51 Pegasi b)をはじめ、多くの惑星がこの方法によって発見された。
[編集] 食検出法
食検出法は トランジット法とも呼ばれ、惑星が恒星の前を横切る時の明るさの変化によって惑星を探す方法である。星食や食変光星の観測と同じ原理である。地球から見て惑星が恒星面を通過する確率は非常に小さいと考えられるため、実在する惑星に対しこの方法によって発見できる惑星の割合は小さいものの、比較的安価な機材でも観測可能であり、アマチュアにも手が届くという利点がある。
ドップラー偏移法など、他の手段で発見された惑星をトランジット法で確認するということも行われている。恒星のふらつきを捕らえる方法では、惑星の公転面と視線方向のなす角度が分からないため、質量は考えうる最小の値しか求めることができない。しかし恒星面通過が観測された惑星は視線方向とのなす角が分かるため、惑星の質量を厳密に求めることができる。また異なる手段で惑星を検出することにより、その惑星の存在がより確かなことになるという意味でも、意義深い。
惑星が恒星面を通過する際に恒星の光の一部が惑星の大気を通過するため、惑星大気の成分を探る方法としても期待されている。実際この方法によりオシリス(HD 209458b)という惑星の大気に酸素と炭素が存在していることが確認された。
[編集] 重力レンズ効果を用いる方法
重力レンズ効果とは、遠くの天体から発せられた光が手前にある天体の重力により集められ、実際より明るく見えることである。手前にある天体が惑星を持つ場合と持たない場合では、遠くの天体の光度変化が異なることが理論的に予測されている。この現象を利用して系外惑星を発見することが可能である。
[編集] パルサー・タイミング法
パルサーとは、周期的にパルス状の電磁波を出す天体である。パルスの原因はパルサーの自転によるものと考えられている。パルサーに惑星が存在する場合、パルスに周期的なズレが観測される。このズレから惑星を間接的に観測する方法がパルサー・タイミング法である。公式な記録上、最初に発見された系外惑星であるPSR 1257+12の惑星系などは、この方法で発見された。
[編集] 外部リンク
- The Extrasolar Planets Encyclopaedia
- Table of known planetary systems
- University of California Planet Search Project
- The Geneva Extrasolar Planet Search Programmes
- 天文解説 太陽以外の星の惑星の検出
- 系外惑星 | sorae.jp
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