小銃
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小銃(しょうじゅう)は、個人用の火器で、長めの銃身(弾丸の通る管)を備えた銃。大砲と対になる言葉である。
拳銃に比べ、はるかに威力と精度に優れる。これは長い銃身と専用の弾丸によるもので、用途や射程によりアサルトライフル、狙撃銃(スナイパーライフル)などの種類にわかれる。
小銃はライフル銃と呼ばれることも多いが、これは本来、小銃の銃身内に施された螺旋状の浅い溝(旋条)がライフリングと呼ばれることに由来する。銃から撃ち出される弾丸は、この溝に浅く食い込みながら回転運動を得て、弾が直進しやすくなるため、現在の小銃には全てライフリングが施されている。
目次 |
[編集] 法律上の規定
日本では銃刀法により、小銃とは自衛隊、警察、海上保安庁などに配備される小型武器としてのライフル銃と規定され、狩猟や競技目的のライフル銃である猟銃と区別されている。
日本国内での小銃の所持は自衛官、警察官(機動隊員)、海上保安官などに限られ、一般人の所持は猟銃(狩猟用・競技用ライフル、散弾銃)と空気銃に限られている。狩猟用ライフルを所持する場合は散弾銃を10年以上継続して所持しているという実績が必要である。この場合のライフル銃は弾倉の装填弾数は5発以内、また狩猟法の規定により口径が5.9ミリ以上でなければならない。競技用ライフルの場合は日本体育協会の推薦が必要となり、射撃大会などの成績により認定される段位に応じて、エアライフル、小口径ライフル(口径6ミリ未満)、大口径ライフル(口径6~8ミリ)が所持できる。この場合必ずエアライフルからはじめなければならず、小口径を経て大口径ライフルへと段位を積み重ねる必要がある。また推薦要件は手動単発式ライフルのみであるため、小口径・大口径はボルトアクションライフルに限られ、狩猟用のような半自動式ライフルは競技用として所持できない(ライフル協会などの推薦が出ないため)。
[編集] 小銃の種類
[編集] レバーアクションライフル
レバーアクションとはライフル銃の機関部下側に突き出した用心鉄 (引鉄のガード) を下に引き、それをまた戻すことでレバーに接続された遊底が前後に動き、薬室から薬莢を排除すると同時に次弾を装填するという仕組みである。この機能はアメリカ西部開拓時代の洋服屋だったオリバー・ウィンチェスターにより考案されその時の雇われ銃技師であったジョン・ブローニングにより実用化された。それまで南北戦争などで使用されていた単発ライフル銃を自ら改良し、それまで一発ずつ弾込めしていたライフル弾を13発まで連射可能にした。しかし遊底の移動量をあまり大きく取ることができず威力の大きな弾丸が使用しづらいこと、チューブ型の固定弾倉に1発1発弾丸を装填する必要があったため、レバーアクションライフルは軍用銃の主流とはならなかった。
- ウィンチェスターM1873(アメリカ)
- ウィンチェスターM1894(アメリカ)
[編集] ボルトアクションライフル
ボルトアクションライフルは、手動で遊底(ボルト:薬室に弾を送り込み薬室後部を閉鎖する部品)を前後させ、弾倉から弾薬を送り込み薬室に装填する銃器のことである。ボルトアクション機構はモーゼルの発明であり、全てのボルトアクションライフルはモーゼルの子孫である。近代軍隊において第一次世界大戦~第二次世界大戦中に多く使用された形式の小銃である。それまでの単発銃に比べて速射性が高く火力が飛躍的に向上した。そのため爆発的に普及し、歩兵の最良の友の地位を獲得する。 ただ、あくまで手動装填であるため、後に登場する機関銃や短機関銃より発射速度が劣る。 それでも部品点数の少なさから抜群のコストパフォーマンスや信頼を有していた。さらに弾薬一発あたりの精度が高いため弾薬消費を抑えられた。 このため、自動小銃や突撃銃が登場するまで代表的歩兵銃の地位を守った。現在では狙撃銃等発射速度より精度を重視する兵科に使用が限られている。軍事用途以外では、狩猟用など、現在でも幅広く使用されている形態の銃である。
[編集] 代表的なボルトアクションライフル
- レミントンM700(米国)
- マウザーKar98k(ドイツ)
- 三八式歩兵銃(日本)
- 九九式短小銃(日本)
- M1903スプリングフィールド(米国)
- エンフィールドMk-I(英国)
- モシン・ナガンM1891/30(旧ソ連)
- カルカノM1938(イタリア)
[編集] 自動小銃・半自動小銃
自動小銃・半自動小銃は、ボルトアクションライフルの性能を継承し、ボルトの駆動を従来の手動から発射ガス圧や反動を利用した自動進退方式にした小銃や、軽機関銃の構造を歩兵用小銃に転換させたような構造の銃をさす。自動連射可能な物は「自動小銃」・単発自動発射のみのものは「半自動小銃」と呼ばれる。第二次世界大戦から1960年代頃までに多く使用された。広義としてはこの後に登場するアサルトライフル(突撃銃)の前身ともいうべき銃の種類(歩兵火器の自動化)であるが、狭義としては別物(自動小銃がセミオートのみに対し、突撃銃はフルオート射撃が可能である為)と言える。また、アサルトライフルが民間向けに発売される際、銃規制によっては全自動発射機能をオミットし、半自動小銃になるように改修されるケースがある。但し、アサルトライフルも厳密に言えば自動小銃なので、昨今では厳密な定義はまだないがこの種の銃の、特にフルレングス・フルサイズ弾を使用する形態の物は「~バトルライフル」と呼称される傾向にある。尚、自動小銃をよく「オートマチックライフル」と英語で呼称するが、特定の英語圏の国では、この呼称を使うと軽機関銃のような分隊支援火器を意味する場合があるので注意が必要である。
[編集] 代表的な自動小銃・半自動小銃
- M1ガーランド(アメリカ)
- ピダーセン自動小銃 (アメリカ)
- M1A(スプリングフィールドM14からフルオート機構を除いた民間型)(アメリカ)
- トカレフM1940半自動小銃(旧ソ連)
- シモノフM1936(旧ソ連)
- ワルサーGew43半自動小銃(ドイツ)
- FG-42TYPE-I・II(ドイツ)
- モンドラゴンM1908(スイス)
- ZH-29半自動小銃(チェコスロバキア)
- 四式自動小銃(日本)
[編集] アサルトライフル
アサルトライフルは、現代の歩兵が戦闘に用いるための小銃で、日本では突撃銃(とつげきじゅう)と和訳されている。他の小銃との違いは、従前の小銃は長距離一斉射撃、または狙撃のために長大な有効射程を持つフルレングス・フルサイズ弾を使用していたが、想定交戦距離が短く300-400m程度で(ただし、以前の小銃の通常の想定交戦距離もこの程度である)、これに合わせて薬量が少なく弾丸重量も軽い小型弾薬を使うこと、連続して弾丸を発射できるフルオートまたはバースト機構が搭載されていること、そのために銃床と銃身との角度が小さい(直銃床である)ことなどである。すなわち、それまでの小銃の、中・短距離における命中精度や可搬性を維持しつつ、短機関銃などで発揮される全自動発射での近接戦闘能力を両立させた小銃で、上記の自動・半自動小銃の機能を発展させた銃種である。本銃の登場により、歩兵の戦闘力や戦術が格段に向上・変革した。
近代のアサルトライフルは、軽量化、および生産性と信頼性を高めるため部品点数を必要最小限に留めるような設計思想が見られる。また整備面においては、通常分解(フィールドストリップ)は特に工具を用いる必要がなかったり、アーミーナイフや実包などを使用し分解・整備・結合が行えるよう配慮されている。これにより、日常的整備や破損部品の交換等が迅速に行う事が出来る。
アサルトライフルの原型は、帝政ロシア時代に開発された世界初の連射可能なライフル銃であるフェデロフM1916である。しかしながら、日本軍の有坂6.5mm×50SR弾を使用することなどから国内での評価は低く、世界初のアブトマット(アサルトライフル)の生産は少量に留まった。
帝政ロシアでは評価の低かったアサルトライフルだが、第二次世界大戦中その有効性に気付いたナチスドイツが開発したのがMP43/MP44である。アドルフ・ヒトラーは、これに兵士の士気を鼓舞するために「シュトゥルム・ゲヴェアー:Sturmgewehr(突撃銃)」と命名し、これが英語の「アサルトライフル:Assault Rifle」の由来になったとされる。命中精度に比較的優れ、現代の歩兵の一般的な武器端緒となった。なお、MP43/MP44は、1944年にStG44と改称されて、正式に突撃銃としてナチス・ドイツ軍に採用されている。
アサルトライフルは本来はフルオートの射撃が可能なもののはずだが、実際には初期のアサルトライフルは政治的問題によって7.62mmクラスの通常のライフルとほとんど変わりない威力の弾薬を採用したために反動が大きくなり過ぎ、実用的なフルオート射撃が不可能なものが多かった。例えば英軍ではFALをL1A1として制式採用したもののフルオート機能を外したセミオートオンリーの事実上の自動小銃として配備した。西側世界で本来のフルオート機能を実用的に発揮させるようになったのは、5.56mmクラスの小口径弾が採用となってからである。一方で、小口径弾の威力と射程に不安を持ち、フルオート機能は実際には不要とする意見も多く、今までは中途半端と評価されてきた7.62mmクラスのアサルトライフルがバトルライフルという新しい呼び名で一部で再評価されつつある。
銃身を切り詰めて扱いやすくしたものはアサルトカービンまたは、カービンと呼ばれる。また、アサルトライフルを小型化して拳銃弾を撃てるようにしたものは、短機関銃(サブマシンガン)に分類される。また、イギリス軍のL86のように母体がアサルトライフル(L85)のまま、銃身を延長、脚をもうけただけの仕様で軽機関銃に分類されるものもある。こういったものは分隊支援火器に分類されることも多い。
[編集] AK-47およびAKM/AK-74
詳細についてはAK-47を参照せよ。
AK-47(Avtomat Kalashnikov-47)は、ソビエト技術者で、元戦車兵のミハイル・カラシニコフが開発したアサルトライフルである。そのため、AK-47系列の小銃はカラシニコフ銃とも呼ばれる。
第二次世界大戦後半、ドイツの開発したシュツルム・ゲヴェアーの威力を知ったカラシニコフは、自国でも同様の火器の必要性を感じ、新型小銃の開発プロジェクトに選ばれたことをきっかけに、開発に乗り出した。
カラシニコフの設計は、ドイツ軍のシュツルム・ゲヴェアーに影響を受けているが、別物に近いほど多くの改良が加えられており、結果、優れた銃が完成した。この銃は1947年にソ連軍にAK-47として採用された。
AK-47は採用後もプレス加工部品を増やして生産性が高められ、その後、改良型のAKMとなり、ドラグノフ狙撃銃など、アサルトライフルの範囲に留まらず多くの派生を生み出した。1974年には弾丸の口径を変更(7.62mmから5.45mm)し、AK-74に発展している。
AK系統の銃は内部に意図的に隙間を取ってあるため、北極圏の低温や砂漠の高温で起きる金属の伸縮にも耐え、製造時に部品の寸法に多少の誤差があっても許容できるため、製造技術の低い国でも量産が可能で信頼性も非常に高い。そのため東欧諸国や共産圏を中心に世界中で生産されるようになり、密造銃を含め全世界で約5億丁程度が流通していると見られる。
ただ、安価で性能の良い銃であることが裏目に出て、発展途上国の地域紛争に用いられるようになり、近年ではその被害が国際問題化している。中央アジアでは、ソビエト連邦のアフガニスタン侵攻の際、ムジャーヒディーンに大量供与され、その一人で、後にアメリカ同時多発テロ事件の首謀者として知られることになったオサマ・ビンラディンも愛用していることで知られる。AK-47がテロや紛争、犯罪行為などに使われる事について設計者のミハイル・カラシニコフ氏は遺憾の意を表明している。
[編集] M16/M16A1/M16A2
詳細についてはM16を参照せよ。
M16は、ベトナム戦争中に採用されたアサルトライフルである。原型は著名な銃器設計技師であるユージン・ストーナーが開発したAR-10およびAR-15で、M16はこれを発展改良したものである。しかし、これらの銃が登場した1950年代、アメリカ軍はM14を配備したばかりで、軍部はM14が将来のアメリカ軍に広く用いられることを確信していたため、AR-10やAR-15は全く支持を得られず、空軍に少数配備されるに留まった。
しかし、1960年代にベトナム戦争が始まると、M14は威力に優れるものの、射撃時の反動や重量などの点で問題視されるようになり、非公式に様々な武器がテストされるようになった。この中にAR-15も含まれており、意外にも兵士に好評を得ていることが判明したため、当時の国防長官ロバート・マクナマラらが、AR-15を使うよう軍部に指示し、AR-15は改良の上でM16として制式採用された。これによりM14は退役することになる。ただし海兵隊では、威力の点からM14を使い続けるケースも見られた。
アルミレシーバーを採用することからくる銃身基部の弱さ、リュングマン方式のダイレクトガスオペレーションによる機関部の汚れやすさに伴うメンテナンスサイクルの短さという欠点があるものの、命中精度に優れ、部品の多くにアルミニウム合金や樹脂を用いて徹底した軽量化を行っており、弾薬30発を装填しても重量は4kgを切る(M16A2)という、現代アサルトライフルのトレンドを作ったモデルである。
先述のとおり、ベトナム戦争中に実戦投入されて以来、この銃は改良が繰り返され、M16A1、M16A2と発展し、カービン銃のM4、M4A1と共にアメリカ軍やアメリカ友好国に多数調達されている。日本では人気漫画のゴルゴ13で、主人公が愛用していることから比較的知られている。
[編集] 他の代表的なアサルトライフル
- 64式7.62mm小銃、89式5.56mm小銃(日本)
- G3、G36(ドイツ)
- FAL(ベルギー)
- FA-MAS(フランス)
- AUG(オーストリア)
- Rk62(フィンランド)
[編集] カービン銃
カービン銃は騎兵銃(きへいじゅう)とも呼ばれるもので、本来は騎兵が用いるための小銃である。通常の歩兵銃に比べ、馬上で取扱いやすいように銃身が短くなっている。この特徴から、砲兵や戦車兵の個人自衛用の銃として、あるいは空挺部隊等で使われるようになり、また第二次世界大戦では騎兵の存在価値がなくなったことから単に銃身の短いライフル銃がカービン銃と呼ばれるようになった。一般に、ライフルとカービンは全長80cmを境に区分されるといわれる。 小銃の歴史は短縮化の歴史であり、現代の視点では長大に見えるKar98kですら もともと「騎兵銃の中でも短縮されたモデル」として設計された
[編集] 代表的なカービン銃
- U.S.M1カービン(米国)
- XM177・M4A1(米国)
- デ・リーズル カービン(イギリス)
- 四四式騎銃(日本)
- 三八式騎銃(日本)
- SKSカービン(旧ソ連)
- G36K(ドイツ)
[編集] 狙撃銃
詳細については狙撃銃を参照せよ。
狙撃銃は、スナイパーライフルとも呼ばれる狙撃用の小銃である。銃身を長くとり、部品の精度を上げることで長距離での精密な射撃に対応している。
[編集] 代表的な狙撃銃
- アキュラシー・インターナショナル・AWS
- M21(米国)
- PSG-1(ドイツ)
- WA2000(ドイツ)
- M21(米国)
- M24(米国)
- 九九式狙撃銃(日本)
- 九七式狙撃銃(日本)
- ドラグノフ(旧ソ連→ロシア)
[編集] 対戦車ライフル
詳細については対戦車ライフルを参照
対戦車ライフルは、第二次世界大戦初期に戦車の装甲を貫き乗員を殺傷する目的で作られた銃。ただ、その後戦車の装甲が分厚くなっていったので対戦車ライフルでは太刀打が出来なくなり姿を消していった。
[編集] 代表的な対戦車ライフル
- 九七式自動砲(日本)
- PTRS1941(ソ連)
- Lahti L-39(フィンランド)
[編集] 競技用ライフル
競技用ライフルは、標的射撃専用の小銃で、殺傷能力は低い。命中精度を最大限に重視しているため、構造は狙撃銃に近い。また、パームレストやスリングなど、特別な装置をつけることが可能なものが普通である。ボルトアクション方式で装弾数は一発であり、連射はできない。メーカーはアンシュッツが有名である。
日本国内で標的射撃目的でライフル銃を所持する場合、規定の要件さえ満たせば必ずしも標的射撃専用のものである必要はなく、狩猟用のボルトアクション式ライフルや狙撃銃であるM24なども一般人が競技用ライフルとの名目で所持している。
オリンピックの射撃競技では射程の長さよりも集弾に重きが置かれている。規定の射程は10~50mほどと短めながら40~120発ほどの射撃のほぼ100%が中心に当たる。百発百中は当然で、的の中心を何回外したかと言う高度なレベルでの争いになっている。ちなみにライフル射撃では種目によって伏射、膝射、立射、三種の複合がある。
[編集] 狩猟用ライフル
狩猟用ライフルは、主に狩猟射撃に用いる小銃で、狩猟対象に応じて様々な種類の銃や口径、実包(弾薬)がある。実包はウサギなどの小型動物を必要以上に傷つけない小口径で殺傷力が低いものから(.22LRなど)、シカやクマなどの大型獣を仕留める大口径で殺傷力が高いもの(.30Car、.308Winなど)、ゾウなど超大型獣用の極めて大きな破壊力と遠射性を備えた特殊なもの(.300Win.Mag)まで多彩である。
銃はボルトアクション式や半自動式のものが数多く商品化されている。また鳥や小動物猟用に圧縮空気やガスにより弾丸を発射する空気銃(エアライフル、ガスライフル)という銃もある。これらの狩猟用ライフルは一般人の所持を前提としているため、治安上の問題から多くの国では全自動式の所持は規制されており、装填弾数も制限されている場合がほとんどである。
狩猟用といっても一般人がスポーツとして楽しむ場合がほとんどであるため、標的射撃と兼用で使えるものや趣味性の高い銃も少なくなく、アサルトライフルから全自動機能を取り除いた「スポーター」と呼ばれる民間版(M16→AR15、G3→HK91、AUG→SPPなど)の小銃もある。
日本の銃刀法では狩猟射撃用、標的射撃用ライフルを双方とも猟銃と定めている。ただし前述したようにそれぞれ所持に必要な要件は異なる。