川上弘美
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川上 弘美(かわかみ ひろみ、1958年4月1日 - )は、日本の小説家。東京都出身。お茶の水女子大学理学部生物学科卒業。幻想的な世界と日常が織り交ざった描写を得意とする。作品のおりなす世界観は「空気感」と呼ばれ、内田百間の影響を受けた独特のものである。代表作は、『神様』『センセイの鞄』など。
目次 |
[編集] 略歴
- 1958年4月1日(昭和33年) - 東京都で生誕。
- 1994年(平成6年) - 「神様」で第1回パスカル短篇文学新人賞を受賞し、デビュー。
- 1995年(平成7年) - 「婆」が第113回芥川賞候補作品となる。
- 1996年(平成8年) - 「蛇を踏む」で第115回芥川賞を受賞。
- 1999年(平成11年) - 『神様』で第9回Bunkamuraドゥマゴ文学賞、第9回紫式部文学賞を受賞。
- 2000年(平成12年) - 『溺レる』で第11回伊藤整文学賞、第39回女流文学賞を受賞。
- 2001年(平成13年) - 『センセイの鞄』で第37回谷崎潤一郎賞を受賞。同書はベストセラーとなり、小泉今日子・柄本明の共演でテレビドラマ化される。
- 2003年(平成15年) - 『センセイの鞄』の仏語翻訳書 ‹ Les Années douces › が Editions Philippe Picquier から出版される。
- 2005年(平成17年) - 『光ってみえるもの、あれは』の仏語翻訳書 ‹ Cette lumière qui vient de la mer › が同社から出版される。
[編集] 経歴
1958年4月1日(昭和33年)、東京都で誕生する。幼児期である5歳から7歳までをアメリカで過ごす。
お茶の水女子大学理学部生物学科に入学し、お茶大SF研究会に所属、このころから文章を書く。
1980年に大学を卒業し、私立田園調布雙葉中学校・高等学校で生物科の高等学校教員となる。その後、結婚・出産ののち主婦を経て、1994年(平成6年)に「神様」で第1回パスカル短篇文学新人賞を受賞し、小説家としてデビューする。
1995年(平成7年)に「婆」が第113回芥川賞候補作品となり、翌1996年(平成8年)に「蛇を踏む」で第115回芥川賞を受賞する。
幻想的な世界と日常が織り交ざったさまを描き、また、女性を中心に据えた作品が多い。その作品のおりなす世界観は「空気感」と呼ばれ、内田百間の影響を受けた独特のものである。
雑誌「ku:nel(クウネル)」(マガジンハウス)で創刊から連載をもつなど、読者には女性が多い。
俳句を詠む。
代表作に『神様』や『センセイの鞄』などがある。とりわけ後者は15万部を超えるベストセラーとなり、WOWOWのオリジナルドラマ制作プロジェクト「ドラマW」により、久世光彦監督の演出、小泉今日子・柄本明の共演でテレビドラマ化された[1]。
また同書はエリザベート・スエツグによってフランス語に翻訳され、 ‹ Les Années douces › (‘The sweet years’) として2003年(平成15年)に Editions Philippe Picquier から出版された[2][3]。
2005年(平成17年)には『光ってみえるもの、あれは』が ‹ Cette lumière qui vient de la mer › (‘This light which comes from the sea’) [4]として、2007年(平成19年)には『古道具 中野商店』が ‹ La Brocante Nakano › (‘The Nakano Secondhand trade’) [5]として出版されている。
[編集] 作品
[編集] 小説・物語
- 物語が、始まる
- 中央公論社 1996年8月 ISBN 4120026043、中公文庫(穂村弘解説) 1999年9月 ISBN 4122034957
- 物語が、始まる(1994年冬季号、中央公論文芸特集、中央公論社)
- トカゲ(1995年春季号、中央公論文芸特集)
- 婆(1995年夏季号、中央公論文芸特集) - 第113回芥川賞候補作品
- 墓を探す(1995年秋季号、中央公論文芸特集)
- 蛇を踏む
- 文藝春秋 1996年9月 ISBN 4163165509、文春文庫(松浦寿輝解説) 1999年8月 ISBN 4167631016
- いとしい
- 幻冬舎 1997年10月 ISBN 4877281843、幻冬舎文庫(宮田毬栄解説) 2000年8月 ISBN 4344400062
- いとしい(単行本書き下ろし)
- 神様
- 中央公論社 1998年9月 ISBN 4120028364、中公文庫(佐野洋子解説) 2001年10月 ISBN 4122039053
- 神様(1994年7月号、GQ、中央公論社) - 第1回パスカル短篇文学新人賞受賞作品
- 夏休み(1997年11月号、マリ・クレール、アシェット婦人画報社)
- 花野(1997年12月号)
- 河童玉(1998年1月号)
- クリスマス(1998年2月号)
- 星の光は昔の光(1998年3月号)
- 春立つ(1998年4月号)
- 離さない(1998年5月号)
- 草上の昼食(1998年6月号)
- 溺レる
- 文藝春秋 1999年8月 ISBN 4163185801、文春文庫(種村季弘解説) 2002年9月 ISBN 4167631024
- さやさや(1997年8月号、文學界、文藝春秋)
- 溺レる(1998年1月号)
- 亀が鳴く(1998年4月号)
- 可哀相(1998年7月号)
- 七面鳥が(1998年9月号)
- 百年(1998年11月号)
- 神虫(1999年1月号)
- 無明(1999年3月号)
- おめでとう
- 新潮社 2000年11月 ISBN 4104412015、新潮文庫(池田澄子解説) 2003年7月 ISBN 4101292329
- いまだ目覚めず(1997年夏号、i feel、紀伊國屋書店)
- どうにもこうにも(1998年7月5日号、クロワッサン、マガジンハウス)
- 春の虫(1998年3月号、一冊の本、朝日新聞社)
- 夜の子供(2000年10月号、波、新潮社)
- 天上大風(1999年8月61号、サントリークォータリー、サントリー)
- 冬一日(1998年12月59号)
- ぽたん(1997年9月5日、朝日新聞夕刊、朝日新聞社)
- 川(1997年9月26日)
- 冷たいのがすき(単行本書き下ろし)
- ばか(1997年9月12日、朝日新聞夕刊、朝日新聞社)
- 運命の恋人(1997年9月19日)
- おめでとう(2000年1月3日)
- センセイの鞄
- 平凡社 2001年6月 ISBN 4582829619、文春文庫(木田元解説) 2004年9月 ISBN 4167631032
- 月と電池(以下 別冊太陽、平凡社)
- ひよこ
- 二十二個の星
- キノコ狩 その1
- キノコ狩 その2
- お正月
- 多生
- 花見 その1
- 花見 その2
- ラッキーチャンス
- 梅雨の雷
- 島へ その1
- 島へ その2
- 干潟――夢
- こおろぎ
- 公園で
- センセイの鞄
- パレード
- 吉富貴子絵、平凡社 2002年5月 ISBN 4582829961
- パレード - 『センセイの鞄』の番外編
- 龍宮
- 文藝春秋 2002年6月 ISBN 416321030X、文春文庫(川村二郎解説) 2005年9月 ISBN 4167631040
- 北斎(2000年9月号、文學界、文藝春秋)
- 龍宮(2000年1月号)
- 狐塚(2001年5月号)
- 荒神(2000年12月号)
- 鼹鼠(2001年2月号)
- 轟(2000年5月号)
- 島崎(2002年4月号)
- 海馬(2001年1月号)
- 光ってみえるもの、あれは
- 中央公論新社 2003年9月 ISBN 4120034429、中公文庫 2006年10月 ISBN 4122047595
- すべて世はこともなし(以下 2001年5月7日 - 2002年3月4日掲載、読売新聞夕刊、読売新聞社) - ロバート・ブラウニング
- 夜になると鮭は… - レイモンド・カーヴァー
- 木のぼりして - 西脇順三郎
- 結構な家系 - ジャック・プレヴェール
- 魚の族 - 与謝野晶子
- 一個半個 - 永田耕衣
- 家は薔薇の花で - フランシス・ジャム
- 不思議なる顔 - 室生犀星
- 北の海 - 中原中也
- 山中問答 - 李白
- 偶作 - ジャン・コクトオ
- 埴生の宿 - 里見義
- ニシノユキヒコの恋と冒険
- 新潮社 2003年11月 ISBN 4104412031、新潮文庫 2006年8月 ISBN 4101292345
- パフェー(1998年8月号、小説新潮、新潮社)
- 草の中で(1999年10月号)
- おやすみ(2001年4月号)
- ドキドキしちゃう(谷村志穂ほか共著『ホワイト・ラブ』、幻冬舎 2000年2月 ISBN 4877283927、幻冬舎文庫 2001年2月 ISBN 4344400755) - スガシカオ
- 夏の終りの王国(2002年9月号、小説新潮、新潮社)
- 通天閣(2002年3月号)
- しんしん(2001年1月号)
- まりも(2000年4月号)
- ぶどう(2002年5月号)
- 水銀体温計(2003年6月号)
- 古道具 中野商店
- 新潮社 2005年4月 ISBN 410441204X
- 角形2号(2000年3月号、新潮、新潮社)
- 文鎮(2000年8月号)
- バス(2002年8月号)
- ペーパーナイフ(2003年1月号)
- 大きい犬(2003年11月号)
- セルロイド(2004年2月号)
- ミシン(2004年4月号)
- ワンピース(2004年6月号)
- 丼(2004年8月号)
- 林檎(2004年10月号)
- ジン(2004年11月号)
- パンチングボール(2005年1月号)
- 夜の公園
- 中央公論新社 2006年4月 ISBN 4120037207
- リリ、夜の公園(2002年9月号、中央公論、中央公論新社)
- 幸夫、小高い丘の頂上(2003年9月号)
- 春名、吹かれる川辺の葦(2003年12月号)
- 暁、白く曇った窓(2004年3月号)
- リリ、水を湛えた器(2004年6月号)
- 幸夫、頬を伝う雨粒(2004年9月号)
- 春名、嵐の海(2004年12月号)
- 暁、重なる息(2005年3月号)
- リリ、羽搏く鳥の影(2005年6月号)
- ざらざら
- マガジンハウス 2006年7月 ISBN 483871694X
- ラジオの夏(2002年11月2号、クウネル、マガジンハウス)
- びんちょうまぐろ(2003年5月3号)
- ハッカ(2003年11月4号)
- 菊ちゃんのおむすび(2002年4月1号)
- コーヒーメーカー(2004年1月5号)
- ざらざら(2004年3月6号)
- 月世界(2004年5月7号)
- トリスを飲んで(2004年7月8号)
- ときどき、きらいで(2004年9月9号)
- 山羊のいる草原(2005年1月11号)
- オルゴール(2004年11月10号)
- 同行二人(2005年3月12号)
- パステル(2004年、小冊子「プロジェクトF」、福助)
- 春の絵(2005年5月13号、クウネル、マガジンハウス)
- 淋しいな(2001年春夏号、小冊子「Lois CRAYON」、クレヨン)
- 椰子の実(2005年7月14号、クウネル、マガジンハウス)
- えいっ(2003年12号、野性時代、角川書店)
- 笹の葉さらさら(2005年9月15号、クウネル、マガジンハウス)
- 桃サンド(2005年11月16号)
- 草色の便箋、草色の封筒(2006年1月17号)
- クレヨンの花束(2006年5月19号)
- 月火水木金土日(2006年3月18号)
- 卒業(2006年7月20号)
- ハヅキさんのこと
- 講談社 2006年9月 ISBN 4062136287
- 琺瑯
- ストライク
- 浮く
- ネオンサイン
- むかしむかし
- 何でもなく
- ぱちん
- 誤解 敦子/初枝
- 誤解 初枝/夏也
- 誤解 夏也/敦子
- グッピー
- かすみ草
- 森
- 階段
- 床の間
- 扉
- 白熱灯
- テレビ
- 姫鏡台
- ハヅキさんのこと
- 動物園の裏で
- 吸う
- 島
- だめなものは
- 水かまきり
- 真鶴
- 文藝春秋 2006年10月 ISBN 4163248609
- 真鶴(2005年2月号 - 2006年5月号、文學界、文藝春秋)
[編集] 嘘日記
- 椰子・椰子
- 山口マオ絵、小学館 1998年5月 ISBN 4093861110、新潮文庫(南伸坊解説) 2001年5月 ISBN 4101292310
- 椰子・椰子 春
- 春の山本
- 椰子・椰子 夏
- 中くらいの災難
- 椰子・椰子 秋
- オランダ水牛
- 椰子・椰子 冬
- 夜遊び
- ぺたぺたさん(文庫判書き下ろし)
[編集] 全集・選集
- LOVERS 恋愛アンソロジー
- 安達千夏ほか共著、祥伝社 2001年6月 ISBN 439663191X、祥伝社文庫 2003年9月 ISBN 4396331223
- 横倒し厳禁
- Teen Age
- 角田光代ほか共著、双葉社 2004年11月 ISBN 4575235091
- 一実ちゃんのこと(2001年6月号、小説推理、双葉社)
- 人魚の鱗 Short Fantasy Stories ファンタジーの宝箱 vol.1
- 加門七海ほか共著、産経新聞文化部編、全日出版 2004年9月 ISBN 4861360366
- ミナミさん
- 恋愛小説
- 新潮社 2005年1月 ISBN 4104412511、新潮文庫 2007年2月 ISBN 4101208069
- 天頂より少し下って(2004年11月、新潮社ハーフブック、新潮社)
- あなたと、どこかへ。 eight short stories
- 吉田修一ほか共著、文藝春秋 2005年5月 ISBN 4163239502
- 夜のドライブ(日産TEANAスペシャル・サイト)
- 空を飛ぶ恋 ケータイがつなぐ28の物語
- 新潮社編、新潮文庫 2006年6月 ISBN 4101208050
- 不本意だけど
[編集] 評論・エッセイ
- あるようなないような 中央公論新社 1999年 ISBN 4120029484、中公文庫 2002年 ISBN 4122041058
- なんとなくな日々 岩波書店 2001年 ISBN 4000015532
- ゆっくりさよならをとなえる 新潮社 2001年 ISBN 4104412023、新潮文庫 2004年 ISBN 4101292337
- 此処 彼処(ここ かしこ) 日本経済新聞社 2005年 ISBN 4532165377
[編集] 選集
- 花祭りとバーミヤンの大仏 ベスト・エッセイ2003 光村図書出版 (日本文藝家協会編) 2003年 ISBN 4895282279
- へへん。
- 母のキャラメル 文春文庫 (日本エッセイスト・クラブ編) 2004年 ISBN 4167434199
- うしろ頭
- 犬のため息 ベスト・エッセイ2004 光村図書出版 (日本文藝家協会編) 2004年 ISBN 489528249X
- 町内十番以内
- 成り行きにまかせて ベスト・エッセイ2005 光村図書出版 (日本文藝家協会編) 2005年 ISBN 4895283321
- 茗荷谷の鳥おじさん
[編集] 対談
- 筒井康隆かく語りき 文芸社 (筒井康隆著) 1997年 ISBN 4887370199
- 面白さをきわめたい - 筒井康隆との対談
- 経験を盗め 中央公論新社 (糸井重里著) 2002年 ISBN 4120033015
- 昆虫のお話 - 矢島稔、糸井重里との対談
- 武田百合子 KAWADE夢ムック 2004年 ISBN 4309976727
- 村松友視との対談
- 山折哲雄こころ塾 東方出版 (山折哲雄述、読売新聞大阪本社編) 2004年 ISBN 4885918820
- 心の行方――科学的見方と宗教の人間観 - 山折哲雄との対談
- 畏敬の食 講談社 (小泉武夫著) 2006年 ISBN 4062132737
- 憧れの寿司屋の暖簾をくぐる幸福 - 小泉武夫との対談
- 田辺聖子全集 別巻 1 (田辺聖子他著) 2006年 ISBN 4081550255
- 恋愛小説家の仕事
[編集] 解説
- すいかの匂い 新潮文庫 (江國香織著) 2000年7月 ISBN 4101339163
- 江國さんのひみつ
- パレード 幻冬舎文庫 (吉田修一著) 2004年4月 ISBN 4344405153
[編集] 日記
- 東京日記 卵一個ぶんのお祝い。 平凡社 (門馬則雄絵) 2005年 ISBN 4582832822
[編集] 作品提供
[編集] テレビドラマ
- センセイの鞄 (WOWOW放送・製作・発売、ビクターエンタテインメント販売、久世光彦監督) 2003年
[編集] 洋図書
Editions Philippe Picquier、Elisabeth Suetsugu(エリザベート・スエツグ)訳
- Les Années douces 2003年 ISBN 2877306461
- Les Années douces 2005年 ISBN 2877307654
- 『センセイの鞄』のフランス語版
- Cette lumière qui vient de la mer 2005年 ISBN 2877307689
- 『光ってみえるもの、あれは』のフランス語版
- La Brocante Nakano 2007年 ISBN 2877309271
- 『古道具 中野商店』のフランス語版
[編集] 関連資料
- 彼女たちは小説を書く メタローグ (後藤繁雄著) 2001年 ISBN 4839820252
- 文学理論のプラクティス 新曜社 (土田知則・青柳悦子共著) 2001年 ISBN 4788507617
- ユリイカ 2003年9月臨時増刊号 総特集 川上弘美読本 青土社 2003年 ISBN 4791701100
- 小説の未来 朝日新聞社 (加藤典洋著) 2004年 ISBN 4022578947
- IN・POCKET 2004年9月号 特集 綾辻行人、川上弘美、村上春樹 講談社 2004年 ISBN 4060604941
- 女性作家《現在》 至文堂 (菅聡子編) 2004年
- 川上弘美 鼎書房 (原善編) 2005年 ISBN 4907846320
[編集] 外部リンク
[編集] 関連公式サイト
[編集] 連載雑誌
[編集] その他
- 第三回パスカル文学フェスティバル(第1回パスカル短篇文学新人賞受賞者として講演会に出席)
- センセイの鞄(WOWOW公式サイト上)
- 作家の声 - か行(新潮社公式サイト上)
- NORIO MONMA Website(門馬則雄公式サイト)
[編集] 「ほぼ日」上のページ
- 婦人公論 井戸端会議 2001年
- 男女が同居するということ。 2003年
- 川上弘美さんと相づちを打ち合う。 2003年
- 本を書くということは。 2005年