日本の警察
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日本における警察とは、警察法2条1項の定めるところにより、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持を責務とする行政の作用をいう。日常の用語としては、この作用を行う組織、または公務員を指す。勤務する公務員のうち、然るべき研修を修了し実際の警察活動を執行する警察職員を、特に警察官と呼ぶ。警察機関に勤務する職員であっても、各種警察事務のみを担当し現場の警察活動には携わらない職員もおり、こちらは事務吏員(事務官)と称される。他にも通信活動や科学捜査に携わる技術吏員(技官)もいる。
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[編集] 警察活動
犯罪の予防や治安の維持などの活動を行政警察活動、既に起こった犯罪についての捜査や犯人逮捕などの活動を司法警察活動と呼び、日本の警察活動ではこの両者が区別されている。騒乱・内乱を事前に防ぐことを目的とする公安警察活動、また鎮圧することを目的とする治安警察活動は、広義には行政警察活動に含まれるが、市民の人権に対して行使される公権力が強大であることから、特に別格に扱うこともある。
[編集] 歴史
日本の警察制度は明治新政府が創設されると、1871年(明治4)に邏卒が設置された事によりはじめる。明治初期に警察権は兵部省、刑部省などが持っていたが、警察の創設にあたり設置され、1871年(明治4)には警察権は司法省に一括され、東京府邏卒は司法省へ移管される。新政府では川路利良がフランスに習った制度改革を推進し、統括機関として警保寮を内務省に移し、1874年に首都警察としての東京警視庁を設立する。
以後の警察は国家主導体制の下、管轄する中央省庁の権限委任も多く行われたが、最終的に内務省に警察権が委任され、内務省方の国家警察、国家直属の首都警察・警視庁、各道府県知事が直接管理下に置ける地方警察の体制に落ち着いた。
1933年に大阪市の天六交叉点で起きたゴーストップ事件(天六事件)にて、大日本帝国陸軍と日本警察の大規模な抗争が起こり、この後、現役軍人に対する行政措置は警察ではなく憲兵が行うこととされるようになり、軍部が法を超えて次第に国家の主導権を持つきっかけのひとつとなった。
戦後はGHQによりそれまでの警察は廃止され、1948年に警察法が定められる。国家地方警察と自治体警察の地方分権が行われるが、1954年には警察法が改正され、警察庁―警視庁・道府県警察に統一されて今日に至っている。
[編集] 警察組織
日本の警察組織は、国の機関としては内閣府の外局である国家公安委員会の管理の下に警察庁とその地方機関である東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の7管区警察局が設置されている。
警察庁と管区警察局は主に政策・管理的な業務を担当し、捜査・取締りなど警察の本来業務を担当する「現場」(実働部隊)の役割は後述のように警視庁と道府県警察本部に委ねられているが、例外的に皇室の警備を担当する皇宮警察本部は、(「現場」的な組織ではあるが)国の管理下とするために、警視庁でなく警察庁の附属機関として設置されている。
なお、国際的な犯罪や各国警察組織の連絡調整は、182カ国警察が加盟する国際刑事警察機構(ICPO)が管轄しており、日本は1952年から加盟しており、その日本の窓口は警察庁が担当している
地方自治体の機関としては各都道府県公安委員会の管理の下に各都道府県警察本部が設置されるのが日本の警察組織の基本構造となっている。ただし、以下のような例外がある。
- 東京都だけは「東京都警察本部」でなく「警視庁」という名称であり、その長の呼称も「本部長」でなく「警視総監」とされている。また、警視総監の任命には内閣の同意が必要であり、この点も他の道府県本部長と異なる。
- 東京都及び北海道にだけは、国の機関である管区警察局が設置されていない。
- これは、東京都及び北海道が管区(ブロック)と同等の領域・規模であることから、警視庁又は北海道警察本部が(地方自治体の機関ながら)管区警察局の機能を併せ持ち、また、警察庁が直接的に指揮・調整を行うことが効率的であると考えられるためである。
- 北海道公安委員会は、その管轄を5つの方面に分けている。そのうち札幌方面のみは直轄とし、函館・旭川・北見・釧路の4方面に方面公安委員会を設置している。それに伴い、北海道警察も方面公安委員会が置かれた方面を所管する組織として方面本部を設置しているが、札幌方面は北海道警察本部が直轄しており、札幌方面本部は置かれていない。なお、1953年4月1日の改正までは札幌方面にも方面公安委員会及び方面本部が置かれていた。
[編集] 警察庁と都道府県警察の関係
日本の警察組織は都道府県が設置する「自治体警察」であり(警察法第36条)、都道府県が国の法定受託事務(かつての機関委任事務)として行う事務ではない。その点が類似の法体系をもつ韓国の警察制度と大きく異なる。しかしながら、公安委員会とは別に警察組織そのものは「国家警察」の形態をとっており、警察庁および道府県警の警察本部の幹部(いわゆるキャリア組)は国家公務員である。(ノンキャリア組も警視正以上に昇進したら国家公務員になる。)
なお、消防の場合、消防官は幹部であっても、基本的に全員地方公務員なので処分や勧告などの罰則は全て地方公共団体の権限で行えるが、警察の場合は地方公務員の警察官に対してしか行えず、また、指導に関しては都道府県レベルで直接執行することは出来ず、まず国家公安委員会へ上告し、その後で審議の末、警察庁へ連絡という形で取り次いでもらい、警察庁から各管区警察局へ監察発令を行った上で警察本部に対して指導・処分・調査などの罰則を行う手順となる。
アメリカ警察の場合も同様の公安委員会組織が市レベルから置かれるが、日本のそれよりも権限が強い。特にニューヨーク市警など大都市圏警察は、ニューヨーク市長の直接管理下に置かれ、処分や勧告・罰則などもニューヨーク市長→市警本部長→市警察官といった手順で行える。
これは市警本部長が市長の管理下(部下・隷下の立場)にある為であるが、日本の場合は警視庁を例にとっても都知事→警視総監という序列にはなっておらず、法令上、警視総監は都知事の隷下でもなく部下でもない。
[編集] 自衛隊の警務隊
なお、自衛隊は基地等の施設内にあるという特殊性から、隊内での犯罪行為の取締りについて自衛隊法などで特例が定められており、原則として都道府県警察でなく、自衛官の中から任命される警務官・警務官補(警務隊を組織)が捜査等を行うこととなっている。ただし、その際も警察・海上保安庁など他の機関との連繋を保つことが担保されており(例:1970年に起きた三島由紀夫と「盾の会」による陸自東部方面総監部乱入・占拠事件の処理、2005年に相次いで発覚した自衛官の薬物汚染)、また、隊外における犯罪行為については当然に都道府県警察の管轄権が及ぶことになる。
[編集] 階級
警察法第62条により9階級に区分される。
長官は階級を持たないため階級章がないが、警視総監の階級章より日章が1個多い計5個の日章を配したものを「警察庁長官章」として規定し、肩章として着用している。
巡査部長への昇進が困難な巡査(昇進を望まずあえて試験を受けない者も含む。)のうち一定の条件を満たすものを「巡査長」に任命する制度がある。職責や待遇は巡査より上がり巡査長としての階級章も付与されるが、国家公安委員会規則で設けられた制度のため正式な階級ではなく、法律上は巡査である(正確を期す際は「巡査長たる巡査」などという。)。
- 警察庁長官(警察法上は階級の枠外。警察官の最高位)
- 警視総監(警視庁の長で、階級最高位)
- 警視監(警察庁次長、警察庁各局長、警視庁副総監、管区警察局長、道・府・大規模県警察本部長、警察大学校の校長など)
- 警視長(警察庁課長、中小規模県警察本部の本部長、大規模警察本部の部長級など)
- 警視正(警察庁理事官、警視庁課長、県警察本部の部長級、大規模警察署の署長級)
- 警視(所属長級:警察本部の参事官、中小規模警察署の署長、県警察本部の課長など その他:副署長・次席、警察本部の管理官、調査官、警察署の刑事官、地域官など)
- 警部(警察署の各課長、県警察本部の課長補佐級など)
- 警部補(警察署の係長級)
- 巡査部長(警察署の主任級)
- 巡査長(巡査長に関する規則(昭和42年国家公安委員会規則第3号)で定められた呼称・職位。警察法上は巡査)
- 巡査
警視監、警視長、警視正の階級にある者のうち警察庁(管区警察局を含む)に勤務している者は当然に国家公務員であるが、都道府県警察に勤務する者(警視総監も含む)も国家公務員であり、この場合特に地方警務官と呼ぶ。警視、警部、警部補、巡査部長、巡査(巡査長を含む)の階級にある者のうち警察庁(管区警察局を含む)に勤務している者は国家公務員だが、それ以外の都道府県警察に勤務する者は地方警察職員と称される地方公務員である。
そのため、警視以下の階級にある場合、国家公務員なら警察庁警視、警察庁警部など、地方公務員なら○●県警視、●○県警部など(東京都の場合は警視庁警視、警視庁警部など)と称するのが正式な官名である。
このほかにも、階級とは別に署長や課長等の役職名もある。 また、役職には関係なく、その階級に対する愛称のようなものもあるが、これは各県において違いがある(例えば班長は警視庁では巡査長だが、千葉では警部補のことを指す)。
[編集] 装備
戦前は十四年式拳銃やFN ブローニングM1910が多数使用されていた。
1947年からGHQの指示により警察官が拳銃を携行する様になったがそのときはコルト・ガバメントやコルトM1917が米軍から大量に払い下げられた。そのほか、コルト・ディティクティブスペシャルや、ポリスポジティブ、コマンド、S&W M36、S&W M10等を輸入して使用していた。これらは1960年にニューナンブが採用された後も使用され続けた。
1987年に国鉄が民営化されたことによりコルト・オフィシャルポリスを鉄道公安官から引き継いで使用した。
近年では自動拳銃としてシグ社のP230JPやS&W M3913を採用し回転式拳銃はニューナンブの生産を終了しS&W M37をミネベア社がライセンス生産している。M10は今でも現役で使用されている。更に機動隊の銃器対策部隊がMP5を採用している。
[編集] 電話番号
日本では、警察への事件の緊急通報用電話番号として「110」番が割り当てられている。「110番」に電話をかけると、各都道府県警察本部の通信司令室・110番受理台につながり、場所・事件内容を確認後、管轄の警察署から警察官が出動する形を取っている(ただし東京都小笠原村は、所轄につながる)。場所が警察署の管轄地域の境界に近い場合、管轄の署を巡って出動に手間取ることが多い。また、ダイヤルの0と9の位置が隣り合っているため、緊急事態であることも加わって、消防・救急(119番)と間違える場合も多いといわれている。(110番と119番受付台で、相互に連絡を取り合っているとされている[要出典])
警察への直通電話番号として「110」番があまりにも有名であるため、警察への問い合わせにも「110」番が使われることが多くなったため、全国共通のプッシュ回線や携帯電話専用の直通総合相談番号「#9110」も設定されている。[1] 併せて、警察署の代表番号下4桁を「110」番から連想しやすい「0110」「9110」とする地区も多い。
1954年に「110」番に統一されるまでは、各地区によって「110」「118」「1110」など異なっていた。
[編集] 各国の警察
[編集] 関連項目
- 警察庁長官
- 交番(派出所)
- 駐在所
- 治安
- 法律
- 刑事
- 検察
- 指名手配
- 警察不祥事
- パトロールカー
- 白バイ
- 警察犬
- 機動隊
- 警視庁航空隊
- 都道府県警察航空隊
- エアポリス
- 水上警察
- 海上保安庁
- 郵政監察制度
- 鉄道警察隊
- 警察24時(民放テレビで不定期に製作・放送されるドキュメンタリー番組)
- 刑事ドラマ
- 日本の消防
- 警察音楽隊
- カラーガード隊
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