ITunes Store
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iTunes Store(アイチューンズ・ストア 略称:iTS)は アップルコンピュータが運営している有料オンライン音楽配信(および動画配信)サービスである。同社のソフトウェアであるiTunesを用いて楽曲の購入・ダウンロードを行う。デジタル著作権管理機能を使用し、2003年4月28日に発表されたこのストアは、同社製のデジタルオーディオプレーヤーであるiPodの一部サービスとして注目を集めた。
日本では、著作権保護やレコード会社の契約などの問題によりサービス開始が危ぶまれていたが、2005年8月4日より正式名称「iTunes Music Store(アイチューンズミュージックストア)」としてサービスが開始され、サービス開始4日間で100万ダウンロード突破とアナウンスされるなど歓迎ムードで迎えられた。
2006年9月12日より映画やiPod用ゲームの販売を始めたことにともない、名称を「iTunes Store」に変更した。
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[編集] 特徴及び制限
- ブラウズ:統合音楽管理ソフトiTunesに内蔵された専用ブラウザから利用する。
- シェア:2006年9月時点、米国における合法音楽ダウンロード販売サービス市場で70%を超える圧倒的シェアを誇る。
- 曲数:2006年9月現在、US版では350万以上、日本版では200万以上の曲が発売されている。
- 価格:音楽について1曲あたりUS版は$0.99、日本版は150円/200円。価格は国によって異なる。
- 購入方法:クレジットカード決済、もしくはAppleが販売しているプリペイドカード(iTunes cardといい、金額は2,500円分・5,000円分・10,000円分、1,500円分・3,000円分もある)を購入しそこから支払うかである。プリペイドカードには番号が記載されており、その番号を入力することにより自分のアカウントに入金される。ちなみにこのプリペイドカードについて購入時にレジで専用のバーコードを読み取る必要があり、万引きなどで不正に入手したプリペイドカードは使えない。
- 対応OS:Mac OS X v10.3.9以降 、Windows 2000 SP4以降、またはいくつかの携帯電話。
- 音楽の試聴:全ての楽曲で30秒間(曲全体が30秒以下の場合は全て)の試聴が可能。回数は無制限だが、保存不可。他国のストアの音楽も試聴可能。
- 音楽フォーマット:保護されたAAC形式 、ビットレートは128kbit/s。拡張子は.m4p、iTunes Storeで購入したファイル専用のものである。
- 動画フォーマット:動画部分はH.264形式、音声部分はAAC形式。保護されてコンテナされている。動画の解像度は640×480画素。音声のサンプリングレートは44.1kHz、ビットレートは128kbit/s。拡張子は.m4v。
- オーディオブックのフォーマット:保護されたAAC 形式、ビットレートは32kbit/s。拡張子は.m4p。Audible。
- 著作権管理(DRM)機能:購入したファイルは全て「FairPlay」で保護される。iPodへの無制限の転送、CDへの無制限の書き込み(同一プレイリストを使用しての書き込みは7回まで)、LANを介して最大5台のコンピュータで音楽を共有(ファイルを保存してあるサーバ役のコンピュータからストリーミングで再生するため、保存はできない)、最大5台のコンピュータへファイルをコピーし再生することが可能(ファイルを購入したアカウントでの認証が必要)。
- カタログ:オーディオブックを含む1,500,000 ファイル以上;(開始当初は約200,000 ファイル).
- 便利な機能:ギフト証書及びギフトカードのプレゼント、Allowance(未成年のための制限された購入用アカウント)、iMix (ユーザーが作成するプレイリスト)、ポッドキャスティング、ビルボード・チャート、ラジオ・チャート、パワーサーチ(詳細検索)、ミュージックビデオ及び映画予告編。
[編集] 利用可能な国
- アメリカ合衆国 - 2003年4月スタート
- フランス - 2004年6月スタート
- ドイツ - 2004年6月にスタート
- イギリス - 2004年6月スタート
- オーストリア - 2004年10月スタート
- ベルギー - 2004年10月スタート
- フィンランド - 2004年10月スタート
- ギリシャ - 2004年10月スタート
- イタリア - 2004年10月スタート
- ルクセンブルク - 2004年10月スタート
- オランダ - 2004年10月スタート
- ポルトガル - 2004年10月スタート
- スペイン - 2004年10月スタート
- カナダ - 2004年12月スタート
- アイルランド - 2005年1月スタート
- ノルウェー - 2005年5月スタート
- スウェーデン - 2005年5月スタート
- デンマーク - 2005年5月スタート
- スイス - 2005年5月スタート
- 日本 - 2005年8月スタート
- オーストラリア - 2005年10月スタート
- ※利用するには、上記の国々に住所がなければならない。
- ※原則として自分の国以外のストアは利用できないが、プリペイドカードなどを用いれば可能。
[編集] カタログ・コンテンツ
iTSは4つの主要なレコード会社、EMI、ソニーBMG、ユニバーサル及びワーナー・ミュージック・グループとの取引の成果である。また、600以上の独立系会社も含まれる。iTSでは ボブ・ディラン、U2、Eminem、Sheryl Crow 及びスティングなど20以上のアーティストからの独自曲を含む、1,500,000曲以上を提供する。 1曲あたり99セントでダウンロードでき、購入前に30秒の無料試聴が可能である。多くのアルバムは9.99ドルの値段であるが、最近のいくつかのアルバムの値段は11.99ドルになっている。 配信されている楽曲は128kbit/sのAAC形式となっており、FairPlay技術により著作権保護されている。 なお、ダウンロード後はiPodへ自由に曲を転送できる(転送できるiPodの数は無制限)ほか、CDを無制限に作成できる(ただし、同じ内容のプレイリストでの作成は、7回までに制限されている)うえ、最大5台のパソコンにコピーすることができ、認証を行えば、それぞれのパソコンで再生・CDの作成・iPodへの転送を行うことができる。この非常に柔軟な制限はiTunes Store登場以前の同様の音楽配信サービスでは考えられなかったことで、その低価格さと相まって開始当初は非常に注目された。
iTunes Storeは32 kbit/sでエンコードされた9,000 以上のオーディオブックも販売している。それぞれ90秒の試聴ができるようになっている。
日本での展開においては、世界的に展開する外国資本の音楽会社と日本国内資本のエイベックスなどの大手レコード会社および複数のインディーズ・レーベルにより独自曲も含む200万曲以上が提供、また国内外の小説及び落語やNHKラジオ深夜便等のオーディオブックが提供されている。多くの曲が1曲150円でダウンロードできるが、一部の楽曲は1曲あたり200円に価格設定がされている(エイベックスの提供しているものなどがまさにそうである)。アルバムをまとめて購入する場合の価格は、多くのアルバムで1500円に設定されており、また曲数の少ないアルバムでは一曲単位で購入するよりも安く設定されている(3曲で400円など)が、これも一部では2000円以上になっているものがある。他言語版と同じように音楽は30秒間、オーディオブックは90秒間の視聴が可能である。 なお、自社で音楽配信サービス「mora」を運営しているソニー・ミュージックエンタテインメント (SME) は、iTunes Store への楽曲提供を見送っている。同社の持つ楽曲が2005年内にiTunes Storeに配信される予定と報道されたが、2007年2月現在まだ実現していない。 また、同様の音楽配信サービス「Napster」に出資しているワーナー・ミュージック・ジャパン(ワーナーミュージック日本法人)も2007年2月現在参入していない。
[編集] 動画配信事業
iTMSは2005年10月13日に2000以上のミュージックビデオ、6つの ピクサー・アニメーション・スタジオのショートアニメーション、そして5つのTV番組(米国のみ)を各エピソード300円(1.99米ドル)で販売を開始した。なお販売されている動画も(音楽同様に)FairPlayにより保護されている。(なお、CDおよびDVDへの書き込みは不可) 開始当初はQVGA解像度(320x240画素)であったが、2006年9月12日より映画配信の開始と共に従来のコンテンツも含め、QVGAの4倍のVGA解像度(640x480画素)に変更した。
[編集] 国際化
元々は、アメリカ合衆国に支払い住所があるクレジットカードを保有する Mac OS X ユーザだけがこのサービスを利用できたが、アップル社CEO スティーブ・ジョブズは Windows 及びアメリカ合衆国外のユーザの両方をサポートする計画を発表した。iTunes の Windows バージョン及び iTunes Music Store からのWindows プラットフォーム 向けサポートはすぐに可能になると、2003年10月16日に発表された。
- 2004年6月15日、iTunes Music Store がフランス、ドイツ、及びイギリスで開始された。曲はフランス及びドイツ向けに99 ユーローセント ( €0.99) 、及びイギリス向けに79 ペンス (£0.79) の値段が付けられた。Apple Press Release によると、ヨーロッパの iTunes Music Store では450,000曲がイギリス[1]で販売されると共に、1 週間に合わせて総計800,000 曲を販売した。
- 2004年10月26日に大規模なEU ストア拡張が行われ、オーストリア、ベルギー、フィンランド、ギリシャ、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガル及びスペインの9カ国でもiTunes Music Storeが開始された。2005年1月6日にはこれにアイルランドが追加されている。これら10カ国では、1 曲 €0.99 で販売され、全ての国のストアで同じカタログを共有し、曲は全て英語のものとなっている。フランス、ドイツ、アメリカ、及びイギリスのストアではそれぞれの国向けにローカライズされ、各国ごとに異なるカタログを持っている。
- 2005年6月7日、日本経済新聞は日本版 iTunes Music Store が8月に開始されると報じた。それに対してアップルは "この話は完全に間違いである" [3]とコメントを出した。アップル社は2005年末に iTunes Music Store を開始するために準備している状態だと主張した。
- 今まで日本での販売開始が遅れた主な理由としては、iTunes Music Store のデジタル権利管理システム「FairPlay」が、楽曲のCD-Rへの書き込みを禁止していないのが、国内のレコード会社によるコピーコントロールCDの展開と矛盾する点、また現在の日本国内での音楽のデジタル販売の平均的な価格に対し、iTunes Music Storeの標準価格が安い点を、一部のレコード会社が問題としている事等が挙げられていたからである。
- 2005年10月25日、オーストラリアでも iTunes Music Store が開始された。1曲の価格は$1.69(AUD)である。配信価格の値上げを求めているソニー系のレコード会社は日本と同様に参加を保留していたが、2006年1月17日に参加した。
[編集] 市場シェア及び画期的事件
ストアはこの最初の18時間に約275,000曲、またこの最初の週に1,000,000曲以上を販売した。Windows版のリリース時には、最初の3日間で1,000,000回以上のダウンロードがあり、1,000,000曲以上がその周期で販売された。12月15日に、アップル社は4月に立ち上がって以来2500万曲を販売したと発表した。
2004年3月15日、アップル社はiTunes Music Store の顧客が iTunes Music Store から5000万曲の購入及びダウンロードされたと発表した。5000万曲目はSarah McLachlanによる "The Path of Thorns" であった[4]。
2004年4月28日に、iTunes Music Store は1周年を迎えた。この時点での販売は7,000万曲[5]。
2005年1月24日に iTunes Music Store は世界的に2.5億曲を販売した。
2005年3月2日に、iTunes Music Store は3億曲が販売された[6]。
2005年5月10日にアップル社は4億曲以上を売り上げたと発表した。
2005年5月10日にアップル社は5億曲のためのカウントダウンが始まったと発表した。
2005年7月17日にアップル社は5億曲目を販売したと発表した。
2005年8月4日のiTunes Music Storeの日本での開店の発表で、アップル社の最高経営責任者(CEO)であるスティーブ・ジョブズは「いままでに5億曲、一日150万曲を販売し、米国でのシェアは82%を超えている最大の音楽配信サービス。」と語った。またこれに触発されて、他日本音楽配信サービス会社の1曲の単価を150円~200円程度へと価格改定を発表した。→ウィキニュース
2005年8月9日に、開店後4日間の間に日本のiTunes Music Storeで売れた曲数は100万曲であると発表した。→ウィキニュース
2005年10月13日に、アニメーションやPVなどの動画の販売を開始。
2006年2月24日にアップル社は10億曲目を販売したと発表した。
2006年12月頃より、iTunes Storeへのアクセス負荷が増大する。理由として、12月にクリスマスプレゼントなどでiPodおよびiTunesギフトカードを入手したユーザーによりアクセス負荷が増大していたことが発表された。同月中にサーバー強化を行い、多少の負荷が軽減された。
2007年1月9日にアップル社は累計で、音楽20億曲以上、テレビ番組5,000万本以上、長編映画130万本以上を販売したと発表した。
2007年4月2日にアップル社とEMIは共同で、DRM無しの256kbpsのAACファイルを1曲$1.29(アルバムは従来と同価格)で、DRM無しのミュージックビデオを2007年5月より販売する予定であると発表した[7]。また、EMIは今後iTunes Store以外でもDRM無しで音楽配信サービスへ供給すると発表した。
[編集] デジタル著作権管理
iTunesでは、iTunes Storeで購入した楽曲を管理するために、アップル社のFairPlay (デジタル著作権管理, DRM)を使用している。現在のコピー制限等については上記を参照していただきたい。 iTunes 4.5 の導入と共に、アップル社は購入した楽曲を再生できるコンピュータの数を3から5へ増加させた。同時に、同一プレイリストをCDに書込める回数は10から7に減少することとなった。この調節はアップル社と主要なレーベルとの協定の結果であった。iTunes 4.7.1で、ユーザーはさらに制限を被る事となった。ユーザは、以前は同時に5台のコンピュータで音楽を共有・再生することができたが、iTunes 4.7.1では、24時間以内で合計5台のコンピュータでしか音楽を共有・再生することができなくなった。
[編集] 販売促進
スーパーボウル当日の2004年2月1日、アップル社はペプシ社と共同で、清涼飲料のボトルキャップ内に当選コードが印刷されていた場合に無料で楽曲をダウンロード(総計1億曲)できるキャンペーンを立ち上げると発表した。アップル社がキャンペーンの1ヶ月間延長を行ったにも関わらず、ペプシ社はキャンペーン終了の1週間前までに主要な大都市圏へキャンペーン対象商品を出荷できなかった。スティーブ・ジョブズによると、引き替えられた楽曲はわずか500万曲に留まったという。しかしペプシ社は2005年1月31日に再度同様のキャンペーンを開始し、2億曲の楽曲に加えて1時間ごとに1台ずつiPod miniのプレゼントを行った。
2004年7月1日に、アップル社は9500万曲目の販売以降10万曲目ごとに購入者へiPod をプレゼント(総計50台)し、1億曲目の購入者には PowerBook、iPod、及び1万ドル相当のiTunes Music Storeクーポン券が贈られると発表した。
10日後の7月11日、アップル社は1億曲がiTunes Music Store を通して販売されたと発表した。1億曲目はカンザス州ヘイズに住む Kevin Britten によって購入されたZero 7の "Somersault (Dangermouse Remix)" だった。彼はスティーブ・ジョブズからの祝福の電話をうけ、また商品の第3世代40GBiPod には感謝のメッセージがレーザー刻印されていた。
ペプシ社による iTunes プロモーションの成功を受けて、コカ・コーラ 社も米国7-Eleven社と提携、フローズン飲料Slurpeeの32 ozカップに印刷されたコードをiTunes Music Store の専用ページで入力する事により無料で楽曲をダウンロードできるプロモーションを2005年7月31日まで(コードは2005年8月31日まで有効)行った。コカ・コーラ 社は同時期ヨーロッパにおいてiTunes Music Storeと競合する音楽配信サイトMyCokeMusic.comを運営していたが、2006年7月31日にサービスを終了している。
2005年7月5日にアップル社は5億曲目へのカウントダウンを行うと発表した。5億曲目に至るまで、10万曲目ごとの顧客には iPod mini及び50曲分のギフトカードを、5億曲目の曲をダウンロードした人へは10台の iPod、1万曲分のギフトカード、10枚の50曲分のギフトカード及びコールドプレイのツアーのチケット4枚が進呈される。12日後の7月17日にアップル社は5億曲が販売されたと発表した。5億曲目はインディアナ州ラファイエット市のAmy Greerさんが購入したフェイス・ヒルの "Mississippi Girl" だった。
2005年7月28日にアップル社はGAP社と共同で、GAP店舗でジーンズを試着すると無料でiTunes Music Storeから楽曲をダウンロードできるプロモーションを8月8日から8月31日まで行うと発表した。
2006年2月24日にダウンロード数10億曲が達成された。10億曲目はミシガン州ウェストブルームフィールドに住むAlex Ostrovsky氏がダウンロードしたコールドプレイの「Speed of Sound」(アルバム 「X&Y」に収録)だった。Ostrovsky氏には20インチ液晶を搭載したiMacと第5世代60GB iPod、1万ドル分のiTunes Music Storeギフトカードが贈られ、また、ジュリアード音楽院にOstrovsky氏の名前を冠した奨学金制度が創設された。
[編集] デザイン・クレジット
- デザイン・ディレクター:ロバート・Kondrk
- Lead Content/Visual デザイナー: Lan-Chi Lam
- Lead User Interface/Visual デザイナー: Michael Darius
- Lead Visual Interaction デザイナー: ティム・ワスコ
- プロダクション・デザイナー:アレキサンドリア・アンダーソン
- Label Relations: Carolyne Lasala
- プロダクション・マネージャー:エリザベル・D'Errico
- Lead UI Engineering: オリバー・Krevet
- シニア・プロジューサー:ジェニファー・Deming
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
カテゴリ: アップルコンピュータ | 音楽配信