おむつ
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おむつ(お襁褓)は、おしめとも呼ばれ、古来よりの言葉「むつき(襁褓)」が口語として変化したもの。排泄された尿や便を捕捉するため下腹部に着用する衣服である。
主として排尿と排便を日常で制御能力をなさない場合に使う。赤ちゃんや自由な行動ができない高齢者・障害者に使用されるが、特殊例としては、長時間不自由な状況下に置かれる宇宙飛行士や戦闘機パイロット、ダイバーなどにも着用されている。健常者であっても怪我や入院等で使用する場合もある。またこの他にも、犬や猫などのペット用に、尻尾を通す穴のあるものもある。
尿や便の水分を保持する目的から吸水性を求められ、水分の漏れを防ぐために防水性のある素材で外側を覆い、なんらかの手段で体につける必要がある。また、肌に直接ふれ、かつ特に肌の弱い乳幼児に使用される性質から、肌触りも重要視される。使用形態や元々の素材から大きく布おむつと使い捨ておむつ(紙おむつ)に分類される。
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[編集] 布おむつ
使い捨ておむつ(紙おむつ)の普及にともない、それ以外の布製のおむつを区別する時に使われる呼び方。吸水性のある布や綿でできた吸水部分を股間にあて、全体を覆うようなカバーを使って体に密着するように固定させる。大きな布で適度な大きさに折り畳んで使用するもの(さらしおむつ)、あらかじめ折った状態で縫い付けてあるもの、また近年は履かせ易さ、履き心地が考慮され、おむつカバー内にそのまま納まる形に成形され、水分吸収力を強化したもの(成形おむつ)などがある。また、成形おむつは吸収部と肌に触れる部分が別体になったものもある。おむつもカバーも、洗濯をすることで繰り返し使用される。
おむつの内側に敷いておむつ自体の汚れを軽減させる使いきりのライナーを利用したり、紙おむつ同様に、カバーと一体化したもの、防水加工されたものなど、紙おむつに近い使い勝手のものもあり、ウォッシャブルであるかどうかが、紙おむつとの大きな違いと言える。
[編集] 主な成形布おむつ/おむつカバーのブランド
[編集] 赤ちゃん用
- ベビーネンネ (キングベビー)
- ナカタ (ナカタ)
- アイイク (三矢)
- ボンニッキー (ニシキ)
- 天使PAD (育児文化研究所)
- 赤ちゃん工房のおむつ (赤ちゃん工房)
- 布オムツ (アカチャンホンポ)
- ウォッシャブルダイアパー (クーシーズ)
[編集] 大人用
[編集] 使い捨ておむつ(紙おむつ)
便などが付着したおむつをそのまま廃棄するおむつ。廃棄するため、洗濯する必要がない。多くの場合、股全体を前後から挟むように覆い、両端をテープなどで留めて体に密着させる。また、一般のパンツと変わらない形状をしたものもある。かつては実際に紙製で、吸水性において大きく見劣りするものであったが、1980年代以降、高吸水性ポリマーを使用し、かつ肌に当たる部分を透水性の生地で構成するなどの方法により、布おむつをはるかに凌ぐ性能を有するようになっている。ただし、素材として必ずしも紙のみが使われているわけではないこともあり、使い捨ておむつの方が適した呼び方であるといえるので(実際英語圏ではdisposable diaper/nappyと呼ぶことが多い)、ここでは「使い捨ておむつ(紙おむつ)」と呼ぶことにした。紙おむつという呼称は歴史的な経緯によるものと考えるべきだろう。また「紙」という響きは手軽に焼却処分できるイメージがあるため、業界も積極的にこの呼称(通称)を改めようとはしていないように見受けられる(宣伝等では使用していない)。
[編集] 主な使い捨ておむつ(紙おむつ)のブランド
[編集] 赤ちゃん用
パンツタイプ
- ムーニーマン
[編集] 大人用
- ライフリー (ユニ・チャーム)
- アテント (P&G)
- リリーフ (花王)
- アクティ (日本製紙クレシア)
- テークケア (大王製紙)
- ネピアテンダー (王子ネピア)
- サルバ (白十字)
- ロインナース (ピップフジモト)
- ハビナース (ピジョン)
- リフレ (リブドゥコーポレーション)
- 中山式ダイアパー (中山式産業)
[編集] 各国の状況
世界各国で乳幼児用のオムツが使用されている。基本的な用法と効果は日本の物と大きく変わらないが、装着時期については大きく異なる地域も多い。
- 欧米
- 欧米ではオムツが普及しており、紙オムツも多い。
- アジア
- アジア各国では、新生児期、或いは乳児期にはオムツを装着するが、自力歩行が可能となった段階で夜間を除いてオムツを装着しない地域も多い。このような地域では、幼児は排泄を催すと屋外や任意の場所で随時排泄する。このため、中国などでは幼児用の着衣(特にズボンなど)には股間が開放されており、垂れ流しに適した形状となっている。
- アフリカ
- 南米
[編集] 廃棄物の問題
おむつを乳幼児に使用する場合、1日5回から10回程度と、頻繁に交換使用される。布おむつの場合、汚れた部分を洗い流すことができるが、紙おむつでは、吸水部分のみならず、体に固定するカバーに相当する部分も含めて使い捨ててしまうため、大量の廃棄物を出す原因として、環境問題に熱心な視線を持つ人からは敬遠されることがある。
おむつは、さまざまな素材が組み合わせて使われていることや、排泄物で汚れていることなどから、日本では焼却処理される事が多く、リサイクルが進んでいない。また、おむつを洗濯・廃棄する前に、排泄物の汚れをトイレ等で処理することが多くの紙おむつの説明書に記載されているが、必ずしも実行されているとはいえず、それらが焼却の際に焼却炉に負担をかけるといわれている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 社団法人日本衛生材料工業連合会
- 排泄の基礎知識
- 布おむつなんで今どき布おむつ?