オペラ座の怪人 (1986 ミュージカル)
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オペラ座の怪人(おぺらざのかいじん、The Phamtom of the Opera)はミュージカルのひとつで、フランスの作家ガストン・ルルーの原作小説「オペラ座の怪人」をアンドリュー・ロイド=ウェバーが脚色しハロルド・プリンスが演出を手がけたミュージカルで、1986年ロンドンで初演され、瞬く間に世界的な大ヒットとなった。1988年1月にはニューヨークで上演が開始され、東京では同年の4月に劇団四季が上演を開始した。ロンドンとニューヨークでは現在も上演中である。日本でも上演劇場を変えながら長期公演中。豪華な衣装や舞台装置に大金をつぎ込む、メガミュージカルの先駆けとなった。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] 概要
19世紀末のパリ、オペラ座(オペラ・ガルニエ)が舞台。パリのオペラ座の地下に住み、劇場関係者から恐れられている怪人と、怪人に歌手としての素質を見いだされレッスンを受けるコーラスガールのクリスティン・ダーエと、その幼なじみで新たにオペラ座の後援者となったラウル子爵の3人を巡る三角関係のストーリーが描かれる。
ルルーの原作の雑多なストーリーを刈り込み、登場人物を絞り込んで、怪奇ものでありながら怪人を中心としたラブ・ロマンスに焦点を当てている。ロイド=ウェバーによる流麗な音楽、豪華な舞台衣装や美術、鮮やかな舞台転換などが多くのファンを引きつけている。
ロイド=ウェバーが、当時ミュージカル俳優としては無名だった妻サラ・ブライトマン(現在は離婚)を、ニューヨークブロードウェイの俳優協会の反発を押し切って主役に抜擢。彼女を世界のトップスターに押し上げた作品でもあり、ラスト近く、クリスティンが指輪をファントムに返しに戻るシーンなど、全編ブライトマンへのオマージュにあふれている。
[編集] 各地の公演
ロイド=ウェバーの「オペラ座の怪人」は幾つかの言語に翻訳され、六大陸の20以上の国で上演されている。一つの例外を除き、これらの公演は全てクローン版である。すなわち、各公演版はオリジナル公演の舞台装置・演出・大道具・衣装デザインで同じものを利用している。 唯一の例外として、幕間無し・上演時間95分のバージョンとして、「ファントム:ラスベガス・スペクタクル」(Phantom: The Las Vegas Spectacular)が2006年6月24日からラスベガスのベネチアン・ホテル&カジノで初日を迎えている。この上演版は、オリジナルの演出家であるハロルド・プリンスが演出しており、最新の技術と演出効果が特徴。さらに、凝った装飾で建てられた劇場は、パリのオペラ座を模して作られたもの。
「オペラ座の怪人」の移動公演を行なっている劇団が二つある。一つはアメリカとカナダを回っている劇団であり、もう一つは東南アジアを回っている劇団である。
[編集] 各国での公演
- オーストリア:ドイツ語版。ウィーンのTheater an der Wienで、1988年12月20日初日。
- カナダ:トロントでの公演を10年以上続けた。
- デンマーク:コペンハーゲンのDet Ny Teaterにて。
- ハンガリー:ブダペストのMadách Theatreにて2003年より。オリジナルの衣装とセットを利用しているが、唯一、演出(staging)の変更が許された公演版。
- 日本:劇団四季により1988年から断続的に上演。最初の英語以外での公演版となる。詳細は下記。
- オランダ:スヘフェニンゲンのCircus Theatreにて
- 南アフリカ:2004年にケープタウンで上演.
- スウェーデン:ストックホルムの劇場、Oscarsteatern[1]にて。
- ブラジル:2005年にサンパウロのAbril劇場にて。
[編集] 日本での公演
※全て、劇団四季による公演である。
[編集] 公演日程
- 1988年4月29日~1988年9月20日 - 日生劇場(東京)
- 1988年12月24日~1989年3月31日 - 近鉄劇場(大阪)
- 1989年4月20日~1989年7月21日 - 日生劇場(東京)
- 1990年8月18日~1990年10月23日 - 新橋演舞場(東京)
- 1990年12月20日~1991年4月7日 - 中日劇場(名古屋)
- 1991年9月15日~1991年12月22日 - 近鉄劇場(大阪) (9月15日~9月18日はプレビュー公演)
- 1992年1月17日~1992年4月13日 - 日生劇場(東京)
- 1993年9月1日~1994年7月24日 - JRシアター(札幌)
- 1995年6月17日~1995年10月29日 - MBS劇場(大阪)
- 1995年12月29日~1996年4月15日 - 日生劇場(東京)
- 1996年5月19日~1997年1月21日 - 福岡シティ劇場(福岡)
- 1997年3月2日~1998年3月14日 - 名古屋ミュージカル劇場(名古屋)
- 1998年5月20日~1999年7月31日 - 赤坂ミュージカル劇場(東京)
- 2001年4月30日~2001年7月21日 - 宮城県民会館(仙台)
- 2001年8月11日~2001年10月8日 - 広島郵便貯金ホール(広島)
- 2001年10月31日~2001年12月9日 - 静岡市民文化会館(静岡)
- 2002年1月1日~2003年3月2日 - 京都劇場(京都)
- 2003年8月10日~2004年3月28日 - 福岡シティ劇場(福岡)
- 2005年1月12日~2007年3月21日 - 電通四季劇場[海](東京)
- 2007年5月3日~ - 大阪四季劇場(大阪)
[編集] 四季版オリジナルキャスト
原作のヒロインの名前は「クリスティン」だが、四季版ではこれをフランス人の名前らしくするためにあえて「クリスティーヌ」に変えている。
- オペラ座の怪人:市村正親
- クリスティーヌ・ダーエ:野村玲子
- ラウル・シャニー子爵:山口祐一郎
- カルロッタ・ジュディチェルリ:斎藤昌子
- メグ・ジリー:青山弥生
- マダム・ジリー:柴垣裕子
- ムッシュー・アンドレ:沢木順
- ムッシュー・ファルマン:山本隆則
- ウバルド・ピアンジ:北川潤
- ジョセフ・ブケー:水島弘
[編集] 歴代主要キャスト(劇団四季)
- オペラ座の怪人:市村正親・沢木順・山口祐一郎・芥川英司・青山明・村俊英・今井清隆・高井治・佐野正幸
- クリスティーヌ:野村玲子・保坂知寿・鈴木京子・吉岡小鼓音・花岡久子・中澤孝子・斉藤昌子・井料瑠美・井上智恵・村田恵理子・森岡純子・沼尾みゆき・五東由衣・大前さおり・佐渡寧子・坂本泰子・高木美果・苫田亜沙子・西珠美
- ラウル:山口祐一郎・芥川英司・佐野正幸・石丸幹二・長祐二・岡幸二郎・柳瀬大輔・小林克人・鈴木涼太・内海雅智・北澤裕輔
[編集] 受賞歴
[編集] 特記事項
[編集] 録音版
オリジナルのロンドンキャストをはじめ、カナダ版、韓国版、オランダ版、スウェーデン版、ハンガリー版、日本版等、各上演版毎のCDが発売されている。日本版では三種発売され、うち一種が絶版。
[編集] 主要キャスト
※以下、海外版について。
- 怪人 (The Phantom) (テノール/バリトン)
- オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)その人。ガストン・ルルーの小説では、オペラ座の亡霊("The Ghost of the Opera")、オペラの幽霊("Opera Ghost")、あるいはエリックと呼ばれている。オペラ座の地下に住む天才作曲家&演奏家。出生時より異形の顔をもち、白い仮面の背後に隠れつつ、「オペラの幽霊」としてマネージャーや役者に知られている。
- 怪人役は一般にマイケル・クロフォードやスティーブ・ハーリー等テノールの役者が演じているが、バリトンが演じたことも多数ある。映画版のジェラルド・バトラー(Gerard Butler)や、1200以上に及ぶ役を演じ、ブロードウェイでの最多役記録をもつハワード・マクギラン(Howard McGillin)らもバリトンである。ロックバンド・KISSのポール・スタンレーは数ヶ月の間だけだがカナダ(トロント)の公演で怪人を演じたことがある。(以下を参照。[2])
- クリスティン・ダーエ (Christine) (ソプラノ)
- ラウル・シャニュイ子爵 (Vicomte Raoul de Chagny) (バリトン)
- オペラ座のパトロン。クリスティンの幼馴染で、オペラ座で歌っているクリスティンを見て彼女に気がついた。
- カルロッタ・ジュディチェルリ (Carlotta Giudicelli) (ソプラノ)
- オペラ座の筆頭プリマドンナ(leading diva)。クリスティンの公演が大成功してから、彼女に嫉妬している。
- マダム・ジリー (Madame Giry) (メゾ・ソプラノ)
- オペラ座のバレエ教師(ballet mistress)。そして怪人のスポークスマン的な役割を担い、怪人のメモ等をオペラ座の支配人らに運ぶ。
- メグ・ジリー (Meg Giry) (メゾ・ソプラノ)
- マダム・ジリーの娘。バレエ・コーラスの一員で、クリスティンの友人。
- ムッシュ・リシャール・フィルマン (Monsieur Richard Firmin) (バリトン)
- オペラ座の支配人。不平屋。
- ムッシュ・ジル・アンドレ (Monsieur Gilles André) (バリトン)
- オペラ座の支配人。軽薄。
- ウバルド・ピアンジ (Ubaldo Piangi) (テノール)
- オペラ座の筆頭テノール歌手。
- ジョゼフ・ブケー (Joseph Buquet) (バリトン)
- オペラ座の主席舞台係(chief stagehand)。ファントムの存在について何か知っている。
- マエストロ・レイエ (Maestro Reyer) (歌唱なし)
- オペラ座の主席劇場指導員、ないし舞台監督。(あるいは指揮者)
- ムッシュ・ルフェーブル (Monsieur Lefèvre) (歌唱なし)
- オペラ座で前オーナー。フィルマンとアンドレに劇場を売却。
[編集] ダブルキャスト
クリスティン役は通常、二人の役者によって共有される役である。正規の女優は週に6公演を担当し、もう一人は残りの2公演を担当する。この慣例はロンドン公演とブロードウェイ公演のオリジナル・キャスト、サラ・ブライトマンから始まった。これは、サラはアンドリュー・ロイド=ウェバーによりエビータのオリジナル公演に出演予定になっていたが、表向きは役柄の声量的限界のためである。 週に2公演を担当するダブルキャスト無しでクリスティンを演じることが許された唯一の女優は、ロサンジェルス公演におけるオリジナル・キャスト、デール・クリスティン(Dale Kristien)だけであった。(日本では、一週続けて同じ女優が演じるのが普通である。) コペンハーゲンやブダペストの公演のように、一部の公演版ではファントム役でも同じように週間ダブルキャスト制を用いている。
[編集] 代役
怪人とクリスティンの両役ともに、劇中において代役を利用する場面がある。最初の場面は、クリスティンが怪人と共に鏡の中に入っていくシーンである。ステージ上を下手から上手に向けて走っていく場面が代役である。次の場面は、階段を下っていくシーンであり、本物の役者たちはナンバーの最後、ボートに乗って表れる(この場面までずっと代役が舞台に出ている)。また、この場面における怪人とクリスティンの歌は、各公演版の必要に応じ、事前に録音されたものとなる。
[編集] 歌曲
- 序曲
- <<劇中劇:ハンニバル(アイーダ)>>
- Think of Me (クリスティン)
- Angel of Music (クリスティン、メグ)
- Little Lotte (クリスティン、ラウル)
- The Mirror (Angel of Music) (ファントム、クリスティン)
- The Phantom of the Opera (ファントム、クリスティン)
- Music of the Night (ファントム)
- I Remember.../Stranger Than You Dreamt It (クリスティン、ファントム)
- Magical Lasso (ブケー、マダム・ジリー)
- Notes.../Prima Donna (カルロッタ、ファルマン、アンドレ)
- <<劇中劇:イルムート(フィガロの結婚):Poor Fool, He Makes Me Laugh >>
- Why Have You Brought Me Here?/Raoul, I've Been There
- All I Ask of You (クリスティン、ラウル)
- All I Ask of You (Reprise) (ファントム)
- <<<インターミッション>>>
- アントラクト
- Masquerade/Why So Silent...? (全出演者)
- Notes.../Twisted Every Way
- Wishing You Were Somehow Here Again (クリスティン)
- Wandering Child (クリスティン、ファントム)
- <<劇中劇:ドン・ファンの勝利(ドン・ジョヴァンニ)>>
- The Point of No Return (ファントム、クリスティン)
- Down Once More.../Track Down This Murderer
- ※劇中劇の()内はモデルとされたと考えられるオペラ作品
[編集] トリビア
劇中のラウルのセリフ、「ブラーヴァー」の用法はブラヴォーを参照。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- オペラ座の怪人(劇団四季公式サイト内)
- アンドリュー・ロイド=ウェバーの「オペラ座の怪人」公式サイト
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