オーパーツ
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オーパーツ (OOPARTS) とは、「場違いな工芸品」という意味。それらが発見された場所や時代とはまったくそぐわないと考えられる物品を指し、英語の Out Of Place Artifacts の頭文字をとったものである。日本語では「時代錯誤遺物」と意訳されることもある。
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[編集] 概要
オーパーツ(Out Of Place ARTifactS、場違いな加工品)とは、考古学上その成立や製造法などが不明とされたり、当時の文明の加工技術や知見では製造が困難であるか、あるいは不可能と考えられる、主に出土品を指す用語である。ただし、正式な考古学用語ではなく、そういった出土品の存在を強調して考古学上の通説に疑義を唱える意図で良く使われる。
なぜそのようなものが存在するのか、またどのようにして作ったのか、といったことが未だに解明されていない、と主張されるのが常であり、未知の(現代科学の水準を越えるような)超古代文明の存在や古代宇宙飛行士説の証拠とされることがしばしばある。実際には全てが説明不可能なものではなく、その時代の技術で作成可能なものも多くある。また、近代の発明でその頃には存在しなかったとされている技術が、一度見い出されて後に失われていた技術(ロストテクノロジー)であるということもあり得る。所謂超古代文明や宇宙文明に依らずとも、情報の散逸によって文明が著しく後退した時代もあるため、一度失われた後に再発見された技術や知識も少なくない事に留意すべきだと考えられる。(一例として「アレクサンドリア図書館」の項目を参照してほしい)
出土した時代での製造が困難か(あるいは製造不能か)の判断は発見当時の考古学的・工学的知見をもとに行われるため、例えば現在の感覚では想像がつかないほどのコスト(時間、人的資源など)を費やして製造した、出土当時の考古学的知識よりもその文明の実際の行動範囲が広かった等といった事情で、のちに製造可能と判断されたものも今なおオーパーツとして語られることが多い点に注意が必要である。
また、贋作や捏造に悩まされている事もオーパーツの特徴であり、捏造と確定したものから疑惑レベルのものまで含めると、オーパーツとされる遺物のうち、真に学術的にその価値を認められるものはごく僅かという状況である。
[編集] 経緯
オーパーツという呼称は、米国の動物学者で超常現象研究家のアイヴァン・T・サンダースンの造語で、同国の作家、レニ・ノーバーゲンの著書を通じて一般に広まった。
サンダースンは発掘品の類のみを指す言葉だとして、伝世品の類はオープス (OOPTH, Out Of Place Thing) と呼ぶことを提唱していたが、現在ではノーバーゲンのように併せてこう呼ぶことが多い。
[編集] 有名なオーパーツとされるもの
- ルバアントゥン(ベリーズ)やアステカの遺跡で発見されたとされる水晶髑髏
- 水晶髑髏そのものは複数存在するがその中で最も精巧に作られたもので、宗教的用途のために制作されたと言われる。十数個体のうちのひとつは、1944年にオークションで買われたものであることが判明しており、19世紀後半にドイツで作られたとされる。美術品としては立派な作品である(おそらくは最も有名と思われる物が「ミッチェル・ヘッジスの水晶髑髏」である。)。
- コロンビアの黄金スペースシャトル
- 飛行機(デルタ翼機)そっくりの黄金で作られた工芸品。ただし、プレコという鯰の一種をかたどったシヌー文化の遺物であると指摘されている。プレコの外見はデルタ翼機に良く似ている。
- コロンビアの発生学円盤
- 南米で出土した約6000年前の遺物。人間の生命の誕生の経過が描かれているという説がある。
- ペルーの世界各地の人々の胸像
- アジア系や黒人、白人といった人種の特徴が表れている。
- コスタリカの石球
- 専門の職人が数十年かければ製作可能とされる。ただし、現代の腕の立つ職人でも20センチの石球が限界ともいわれる。
- ピリ・レイスの地図
- 当時未発見の南極大陸の海岸線が書き込まれているとされる。なお、南米大陸の歪みに関しては、衛星写真と同様の大陸の歪みに酷似しているとの指摘があるほか、海岸線の不一致部分に関して海底地形(大陸棚)に酷似しているとの指摘もなされている。ただし、カリブ海の地形は無茶苦茶である。
- アショーカ王の柱(アショカ・ピラー)
- 数百年間雨晒しにもかかわらずほとんど錆びていない、通称「錆びない鉄柱」。表面に形成されたリンの酸化物の皮膜による偶然の産物である。だから、空気に触れにくい地下部分は腐蝕している。
- アンティキティラ島の機械
- ギリシャのアンティキティラ島近海で発見された青銅製の歯車の組み合わせによる差動歯車機構。歯車は青銅の円盤を手作業でヤスリがけして制作したと推定されている。復元したところ、太陽、月などの運行を示すものであった。(星の未来位置を計算して占星術に使ったと考えられることから、「エーゲ海のパソコン」と呼ぶ研究者もいる)
- 宇宙飛行士の彫刻
- マヤのパレンケ遺跡、「碑銘の神殿」のパカル王の石棺に蓋に刻まれたレリーフ。ロケットとその操縦士を描いたものとして有名であった。しかし、リンダ・シーリーの図像分析によって生命樹であることが明らかにされている。
- 恐竜土偶
- 恐竜そっくりの形の土偶。半獣半人や羽の生えた竜のような土偶もあり、それら全てが実在の生物とするのには無理があるため、恐竜に似た像を中心に議論を組み立てるのは適切でないとする反論もある。また、土偶の表面に土中塩類の付着が無く、発掘の際に埋め戻した痕跡が発見されたことなどから、捏造説もある。
- 古代エジプトのグライダー
- 実は小鳥の玩具。「オーパーツ」扱いしている本は常に上面や後ろからの写真しか載せないが、前からみれば、立派な目とくちばしが書いてある。しかも実物はかなり小さくタバコの箱ぐらいの大きさである。
- アビドス神殿の壁画
- ヘリコプター・潜水艦・戦闘機などに見える絵が描かれている。実は、ヒエログリフの書き足しでそのように見えるだけで、ヒエログリフの専門家によると「ヘリコプターに見える方が不思議」。また、エジプトの遺跡からは、ヘリや戦闘機は勿論、あるはずの付属施設や部品等は全く出土していない。
- ハトホル神殿の壁画
- フィラメントの入った電球らしき絵が描かれているが、実は蛇の様式化である。
- サッカラのフライホイール
- エジプト第1王朝のアジブ王の皇太子サブーの墓から見つかった。紀元前32世紀頃のものである。用途は不明だが、確かにそういう形をしている。しかしかなり歪であり、しかも脆い石材で出来ているので、フライホイールそのものでは絶対に無い。
- プレインカの貝殻製ビーズと超極細糸
- 貝殻を素材にしたビーズに直径0.3mmという穴を開け、そこに糸を通して工芸品が作られている。現代の技術でも製作は不可能と称される。
- インドのヴィマナ
- インドの聖典『ヤジェル・ヴェーダ』や叙情詩『ラーマーヤナ』、『マハーバーラタ』に登場する飛行船。また、紀元前10世紀以前に書かれた『ヴァイマーニカ・シャストラ』にはその操縦法が書かれている。この『ヴァイマーニカ・シャストラ』は、ヴァラドヴァージャが書いた全8章からなる幻の大原典『ヤントラ・サルヴァスパ』を元に書かれたものである。
- バグダッド電池
- めっきに利用されたと考えられているが、これを実証したとする実験では、蓋が無かった。実物はアスファルトでふたがしてあったようである。実際のところ、蓋がしてあると電流は短時間しか発生しないのでめっきには使えなさそうである。
- 古代中国のアルミニウム製ベルトバックル
- 6世紀ごろの武将の墓からアルミニウム製のベルトバックル(帯止め)が出土したとして話題になったことがある(アルミニウムが単体として分離されたのは19世紀になってからというのが化学史の定説である)。しかし、実際は帯止めそのものを分析したわけではなく一緒に出土した小さな欠片を分析した事が後の調査で判明した。帯止めそのものは分析の結果アルミニウム製ではなく銀製であった。しかも分析した被検体の欠片は後世に墓が盗掘を受けた際に混入したものであった。第一報のみが広く伝わり、後に出された訂正の報告を知らないまま(あるいは無視して?)「古代中国にアルミニウムの精製技術が存在した」と書いている本などがある。
- アッシリアの水晶レンズ
- 紀元前7世紀の古代アッシリアの墓から発見された水晶製のレンズ。実際には象嵌に使用されたものでレンズとしての効果は偶然の産物であるとの見解が有力である。
- カブレラストーン
- 恐竜や心臓手術など、時代的にあり得ない絵が刻み込まれている。ただし、BBCの取材で捏造した人物や作り方も発覚している。
- コソの点火プラグ
- 50万年前のものとされる石の中に埋まっていたとされる、点火プラグのような金属部品。複数の点火プラグの専門家は、1920年代にアメリカで製造されたチャンピオン社製の点火プラグそのものと鑑定している。また、「石」ではなく、固まった泥の中から出てきている。50万年前とする年代測定が実際に行われたかどうかも不明。現物は現在行方不明となっている。
- エクアドルのピラミッド
- エクアドルで発見された用途不明のピラミッド型工芸品。
- 形状記憶合金の剣
- 秦の始皇帝の墓から出土した青銅製の剣。完全な形を保っており、酸化クロムのメッキ処理が施されていて、錆びていない。1937年にドイツで開発された電解法のメッキとは違うことが分っている。発掘の際に、出土した一本の剣が馬の埴輪の下敷きになり、折れ曲がったが、取り出すと、すぐに元の形に戻った。150年後の漢の時代の剣は錆びている。[要出典]
以下は、遺跡やそれに類するものであり、「工芸品」の定義にはそぐわないが、説明困難な未解明の要素を含むものとして紹介されることがある。これらについても、オーパーツ同様、説明可能なものや主張に疑念が提示されているものが含まれている点には注意を要する。
- ペルーの古代アンデスの頭蓋骨手術
- 2000年以上も前に行われた頭蓋骨の外科手術の跡。ただし、頭蓋骨の一部を取り除くことは他の文明圏でも見られる。(→「頭部穿孔」の項目を参照のこと)
- ナスカの地上絵
- 小さな下絵を描き、それを拡大するという手法で作成は可能。衛星写真で見なければ全体像が判らないようなものをなぜ作ったのかは不明だが、神に捧げたという説もある。
- マチュ・ピチュ
- 地球の重力を無視したような構造物が多々ある。逆さになった階段など。
- ビミニロード
- 海底に石畳の道のような構造物がある。アトランティス文明の遺跡であると主張する者もいるが、自然に浸食された地形であるとする反論もある。
- 沖縄県与那国島の海底遺跡
- 海底に「神殿」や「階段」と呼ばれる遺跡のような石造物が存在しているが、ビミニロードと同様に自然に形成された地形であるとする反論もある。また、遺跡とするには「階段」の段差が人間が昇降するには大きすぎるなど不自然な点も多いという意見がある。また、遺跡としても一万年ほど水中にあったにしては構造が鋭角的過ぎるため、氷河期以前の文明の遺物では無いと言う説もある。
- ストーンヘンジ
- 古代の天文観測所といわれている。再現実験で確認済み。
- カルナックの列石
- 太平洋と中南米の石像群
- カッパドキア
- 奇岩大地の地下にキリスト教信者が作ったとされる超巨大地下都市。通気孔や井戸といった設備を備えている。
- ファロスストーン
- ロケット状のものが彫られている。
- パラクシー河の足跡化石
- 恐竜と人間の足跡が同時に化石化していると信奉者は主張している。実際は創造科学論者が小型恐竜の足跡化石に加工をして人間の足跡に見えるようにしたものであることが判明している。
- ナン・マトールの遺跡
- 六角柱の石材で建築物が建てられている。高度な石材加工技術が必要であり、ムー大陸の遺跡であると主張する論者がいるが、ムー大陸は科学的側面から存在が否定されている。また、遺跡自体がそれほど古いものでもない。実際には玄武岩の柱状節理をそのまま利用しているだけであるという見解がある。
[編集] 参考文献
- レニ・ノーバーゲン 『オーパーツの謎―消えた先史文明』 パシフィカ、1978年。
- と学会 (山本弘 、志水一夫 、皆神龍太郎) 『トンデモ超常現象99の真相』 (懐疑的な観点から、肯定派の主張の誤りや疑問点を示している) ISBN 4896912519 ISBN 4796618007
- 皆神龍太郎 志水一夫 加門正一 『新・トンデモ超常現象56の真相』 (上記の本の続編) ISBN 4872335988
- クラウス・ドナ+ラインハルト・ハベック=共著 プシナ岩島史枝=訳『オーパーツ大全・失われた文明の遺産』学研
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