サソリ
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?サソリ目 | ||||||||||
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アフガンデスストーカー、 Androctonus crassicauda |
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分類 | ||||||||||
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上科 | ||||||||||
Pseudochactoidea |
サソリ(蠍)は、節足動物門鋏角亜門クモ綱サソリ目に属する動物の総称である。前に鋏、尾に毒針をもち、人間に対して非常に致命的な毒を持つものも存在するが、その数は約1000種類中に僅か25種と少ない。
目次 |
[編集] 体の特徴
頭胸部と腹部はくびれずにつながっている。腹部からは長い尾部が伸びる。尾部は節に分かれ、曲げられる。最後の節は少し膨らんで、曲がった毒針様の器官がついている。鋏角は短い鋏状、触肢は長く発達した鋏になっている。歩脚は四対。どれもほとんど同じくらい。第四脚の付け根には、櫛状板といって、整髪用の櫛の形の器官が左右一対ついている。腹部の腹面には各節に一対ずつ、四対の書肺がある。
サソリの体の構造は、様々な点で古生代前期に繁栄したウミサソリ類に似ており、特に体節の数や、全体のシルエットが似ていることから、直接の類縁関係があると言われる。しかし、これには疑問を唱える向きもある。
現在知られている最大のサソリは、アフリカのダイオウサソリ(エンペラースコーピオン)で最大30cmにも達する。
[編集] 生態
歩く時は尾部を曲げて体の上の前方にのばす。餌を取った時には、鋏で固定した餌に尾部の針を刺し、毒液を注入し、鋏角で小さくちぎって食べる。肉食で、昆虫などを餌にするが、時にはトカゲなどの小動物をおそう。それほど大食いではなく、絶食に耐えるものが多く中には一年以上の絶食に耐える者もある。主に夜行性で昼間は岩の下や土の中、何かの隙間にあることが多い。本々、余り活動は活発ではなくじっとして獲物が通るのを待っていたりする。
[編集] 生殖
サソリ類の配偶行動は、婚姻ダンスとして有名である。雌雄が互いの触肢、あるいは鋏角をつかみ合って、前後左右に動き、種によってはそれが数時間以上も続けられる。最終的に、雄は精包を地上に置き、そこへ雌を誘導し、雌はその精包を生殖口から取り入れることで、配偶行動は完了する。
サソリ類は、卵胎生と胎生の種に分けられ、雌親はサソリの形の幼生を産む。生まれた幼生は、雌親の体の上に登り、その背中でしばらくの時間を過ごす。
ヤエヤマサソリは雌性産生単為生殖することが分かっている。雄も個体数は少ないが存在する。
[編集] 分布
サソリ類は世界に広く分布する。種数は1000を越える。基本的には暖かいところに多く、熱帯地方が中心ではあるが、かなり寒い地方にまで分布している種がある。日本では、南西諸島に二種いるだけだが、アジア大陸では、北朝鮮、内モンゴルにまで分布がある。湿潤な気候に生息する種もあるが、砂漠に生息する種もあり、適応範囲は広い。ヨーロッパでは地中海周辺地域に生息する。人間の生活範囲に住むものもあり、それらの生息圏内の住人は、靴を履く時は、必ず中にサソリが入っていないかを確かめると言われる。また、そのような種は、時に荷物に紛れて輸送されることがあり、日本でも港で発見され、大騒ぎになることがある。
[編集] 毒
サソリの尾の先には毒針があり、これを使って毒を注入することはよく知られており、猛毒で、刺されたら死ぬ場合もあるとして恐れられている。神話伝説にも猛毒を持つサソリの話はたびたび出てくる。ギリシャ神話では、英雄オリオンを殺してさそり座になったサソリの話が有名である。
サソリは昆虫など小動物を食べ、その際に毒を使うのであり、大型動物にそれを使うのは、目的外使用か、防御のためと考えてよい。したがって、それほどの猛毒を持ついわれは必ずしもないわけで、実際、多くのものは強くてもハチ程度の毒しか持たない。しかし、サソリと言えば猛毒との認識が広まっているため、輸入貨物について、サソリが港で発見された場合など、必要以上の大騒ぎとなることがある。
日本産の種については、その毒性はたいしたものではない。海外でも、命に関わるような毒性のものはそれほど多くはなく、むやみに恐れるべきではない。しかし、真に危険なものも実際に存在し、サソリによる死者は世界で年間4桁とも言われる。また、それほど危険でなくても、人家周辺に生息するものがあることで、被害を受けやすい地域もある。探してみる気があれば、下調べは十分行うべきであろう。基本的に大きくハサミがゴツイ種類は毒が弱く小型でハサミが小さい種類は毒が強いといわれる。人命に関わる猛毒をもつ種類はイエローファットテールスコーピオン、ストライプバークスコーピオンなど。この中でも最強の毒をもつのは中東に生息するデスストーカーといわれている。
他方、そのように有名であり、形も面白いことで、商品として販売されている例も多い。危険なペットとして、薬として、アクセサリーとして様々な形で使われている。 (現在、人体に危険があるほどの毒を持つ種類は外来生物法により輸入が禁じられているため、日本でペットとして飼われている種はたいした毒はない。)
中国では、養殖したサソリを山東料理店などで素揚げにし、塩をまぶして、「炸蝎子 ジャーシエズ zháxiēzi」などの名で供しており、婦人病の予防になる食品として、珍重されている。食感や味は、身の少ない川海老の唐揚げに似ている。
また一部の種のサソリは、漢方薬の材料としても使われている。
[編集] 日本のサソリ
- ヤエヤマサソリ
- 3cm強の小型のサソリ。沖縄県八重山諸島の枯れ木の皮の下などに住み、シロアリなどを食べる。毒性は弱い。
- マダラサソリ
- 6cm位の中型のサソリ。人家の壁等に住み、毒は弱い。広く熱帯に分布し、人為的に分布を広げたと思われる。日本では、沖縄の八重山諸島、宮古諸島、および小笠原諸島に分布する。
[編集] 世界のサソリ
- ダイオウサソリ
- エンペラースコーピオンとも呼ばれる最大のサソリ。大きな個体は30cmにもなる。黒色で強靭なハサミをもつ。毒性は低く最も一般的なペットサソリ。サイテスIIに記載され保護されている。
- チャグロサソリ
- アジア産の大型種。ダイオウサソリに類似するがハサミの形で区別できる。ダイオウサソリと並んで飼い易いサソリ。毒性は低い
- フラットロックスコーピオン
- 平たい体が特徴的な大型種。毒性は低い。
- デザートヘアリースコーピオン
- アリゾナ砂漠に生息するやや大型の種。サソリのなかでは長寿。やや素早く攻撃的だが飼い易い。
- イエローファットテールスコーピオン
- 尾の太いサソリ。強い毒を持ち、死亡例もある。
- ストライプバークスコーピオン
- セントルロイデススコーピオンとも呼ばれる4cmほどの小型種。弱々しくみえるが強力な毒をもつ。
- サウスアフリカンジャイアントファットテールスコーピオン
- ジャイアントデスストーカーとも呼ばれる大型のサソリ。大型なので注入できる毒の量が多い。毒液を周囲に噴射する。
- デスストーカー
- サソリのなかで最強の毒をもつといわれる。非常に攻撃的で素早い危険なサソリ。
[編集] サソリをモチーフにしたキャラクター
- 『仮面ライダーシリーズ』
- 全てのサソリ系怪人
- 「仮面ライダーカブト」の仮面ライダーサソード/スコルピオワーム
- 「仮面ライダー555」 スコーピオンオルフェノク
- 『トランスフォーマー』シリーズのスコーポノック(メガザラック、スコルポス)
- 『忍風戦隊ハリケンジャー』の暗黒七本槍三の槍マンマルバ
- 『ポケットモンスター』のグライガー、グライオン、スコルピ、ドラピオン
- 『ゾイド』のガイサック、デススティンガー
- 『ロックマンX7』のメガ・スコルピオ
- 『獣拳戦隊ゲキレンジャー』の獣人ソリサ
『(旧)ルパン三世』の敵組織・犯罪組織スコーピオン
[編集] 関連項目