スポーツワゴン
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スポーツワゴンは、乗用車のステーションワゴンの中で、スポーツ性や運転する楽しさを優先させた車のことである。
ボディ形状はステーションワゴンと同じ。多くは2列シートの5人乗りであり、開口部の大きいハッチバック式の後部扉を持つスタイルで、いわゆる4ナンバー登録の貨物車であるライトバンに類似する。しかし、最近はスポーツワゴンとしての運動性能を重視する傾向から、これらとは別設計のものが主流となってきた。動力性能・運動性能を高め、タイヤやサスペンション、ブレーキについてもいわゆるスポーツグレードのものを装備し重心も低めにすることで、「運転する事の楽しみ」をも両立することを意図している。それと同時に、ライトバンに匹敵する運搬能力を両立するものも数多い。このことから運動性能の向上に特化したスポーツカーに比べればおのずと限界があり、良く言えば実用と娯楽の両立であるが、悪く言えば妥協の産物とも言える。ベースとなったセダンモデルを有するモデルも数多い(スポーツセダンを参照)。
高回転で高出力を発揮するDOHCエンジンとタコメーターを搭載した製品が多数派である。一部の車種ではマニュアルトランスミッションを選択可能なグレードも設定されており、スバル車のようにマニュアルトランスミッション搭載車が販売台数の中で有意な比率を占める車種もある。最近では、よりスポーツ性の高い6速マニュアルを搭載したモデルも登場している。なお、現在登録されているターボ車の最大派閥は実はこのジャンルである。
[編集] 成り立ち
元来、インプレッサはWRC(世界ラリー選手権)を勝つために開発されたスポーツカーであったが、走行性能を優先したキャラクターであるが故に、販売台数はどうしても頭打ちになってしまうことが予想された。 そこでスポーティなセダンモデルとは別に、ユーティリティ性を兼ね備えた5ドアハッチバックのモデルが同時に開発された。これはレオーネユーザーの保持と、新車種開発のためのコストを圧縮したいという、経営面からの要請も大きかった。 インプレッサワゴンは、当時の自動車市場には珍しい画期的な車種であったが、専門家や自動車愛好家などからは「ステーションワゴンより小さく、セダンほど走れない、中途半端な代物である」として、概ね不評を買っていた。これはスバル社内においても同様で、開発チームは経営や販売から相当のプレッシャーを受けたと言われるが、結果的に、初期のコンセプトを曲げなかったことは正解であったと言える。
販売開始の前後こそ不安視する声が大きかったインプレッサワゴンであったが、これが(それまで存在感の薄かった)女性ユーザーにことのほか多く支持され、予想に反する好結果をもたらした。 これは「ワゴンほど大きくはないが、セダンよりも圧倒的に広い荷室を持つ」という、セダンや2ドアハッチバックが中心であった従来の1.5Lクラス市場には無かった、傑出したユーティリティ性が評価された格好で、前評判を覆すものであると同時に、開発者にとっても嬉しい誤算であった。 また男性ユーザーには、比較的低く抑えた価格も相まって、インプレッサのスポーティなイメージと実用性を両立するものとして人気を博した。もともとラリーカーとして生まれただけあって、走行性能もワンランク上のクオリティを備えており、それも評価点のひとつであった(予想外の人気を博したワゴンモデルは、その後スポーツグレードのWRXやSTiバージョンなどが追加され、セダンモデルを超えるバリエーションの広がりを見せた)。
それまで軽視されてきた女性ユーザーやコンパクトカーの実用性などを掘り起こしたインプレッサワゴンだが、これは欧州においてもまた同じであった。 日本以上に辛辣であった前評判の反動か、日本国内よりも市場の評価は高く、アルファロメオやシトロエンなどの名立たる欧州メーカーはその後、続々とスポーティな5ドアハッチバックを開発。現在においては多くのメーカーで主力車種として位置付けられている(「スポーツワゴン」という呼称は、この際アルファロメオ156が使用したことで、車種のジャンル名として爆発的に広まった)。
当初は開発予算の圧縮を主目的に発案されたスポーツワゴンであったが、期せずして女性ユーザーという眠っていた市場を掘り起こし、またコンパクトカー市場の可能性を開拓したことで、その後の自動車市場に計り知れない影響を与えるものとなった。 現在、日本や欧州で盛んに開発されている5ドアコンパクトカーも、その源流を辿れば走行性能と実用性の両立という点で、スポーツワゴンがその礎として寄与した功績は大きい。 また余波として、様々なクラスのワゴンにスポーツ志向のモデルやグレードが多く設定されるきっかけともなった。
「RVとしてのワゴン」という発想の先駆けとなった先代のレオーネ、そしてバンとの差別化を図りツーリングワゴンの地位を確立したレガシィと共に、現在の自動車(ワゴン)市場・自動車業界に与えた影響の大きさという面でも、インプレッサワゴンの果たした役割は非常に大きなものであったと言えるだろう。
[編集] 主な車種(6M/Tの設定がある例)
- トヨタ自動車
- カルディナ GT-Four(4A/T設定あり)
- カローラフィールダー Zエアロツアラー(4A/T設定あり)
- アルテッツァジータ AS200(4A/T設定あり:ともに販売終了)
- 日産自動車
- 日産・プリメーラ W20V(販売終了)
- 三菱自動車
- ランサーエボリューションワゴン GT(5A/T設定<=GTA>あり)
- マツダ
- 富士重工業
- レガシィツーリングワゴン 3.0R specB(5A/T設定あり)
- インプレッサワゴン WRX STi(販売終了)
- フォレスター STi Version
- オペル
- アストラワゴン 2.0ターボスポーツ (輸入終了)