ハニートラップ
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ハニートラップとは、女性スパイが対象男性を誘惑し、性的関係を利用して懐柔するか、これを相手の弱みとして脅迫し機密情報を要求する諜報活動で、人的諜報(ヒューミント)の一種。またスキを見せた標的をその場で殺害する事もある。ただし必ずしも女性スパイが仕掛けるものとは限らず、東ドイツの『ロミオ諜報員』のように男性スパイによって対象女性を罠にかけることもある。つまりいわば「色仕掛け」による諜報活動と言えるだろう。セクシャルエントラップメントと称されることもある。
冷戦時代、ソビエト連邦で頻繁に行われた(殊に、KGBの十八番であったとされる)。また、かつてのアメリカのケネディ大統領との関係があったといわれる、かの大女優マリリン・モンローがスパイだったのではないかという説も根強く存在し、この説によれば、彼女はFBIもしくはCIAにマークされていたとされる。
映画・アニメ・ゲーム・小説等のいわゆるサブカルチャー作品においては、『ルパン3世』の峰不二子が、その“達人”の代表として描かれてきた。最近では『メタルギアソリッド3 スネークイーター』のEVAや、『GUNSLINGER GIRL』のアレッサンドロとロッサーナが挙げられる。
また、このハニートラップは諸外国ではすでに廃れつつあるとされるが、意外にも対日本の諜報活動においてはいまだに通用している模様である。これは、戦後日本における防諜能力や防諜意識の低さに由来する可能性が高いと指摘されている。
最近の事案としては、2004年に在上海日本総領事館の電信官(外交官の項参照)が遺書を遺して自殺した事件や、2006年の海上自衛隊の一等海曹が内部情報を持ち出したうえ中国に無断渡航していた事件が代表として挙げられる(その自衛官も後に自殺する)。
彼らは共通して、同一の上海の日本人向けカラオケ店に勤める中国人女性と親密な関係にあったとされるが、実は「その中国人女性店員こそが中共が送り込んだ女スパイで、日本総領事館員も海上自衛官もハニートラップに嵌められたのではないか?」という説が、一部週刊誌等で主張されている(また、2006年9月13日放送の『報道ステーション』でもこの旨の内容が報道されている)。
また、そういった説と並んで、該女性は必ずしも「中共当局が送り込んだ」わけではなく、中国の警察による一斉摘発で捕えられた女性店員等が「どんな客が来て、どんな話をしたのか」という情報を中国警察や中国の諜報機関に提供することで投獄を免れることがままあるという情報もある(通常、摘発された者達は投獄されるにもかかわらず、該事件の中国側関係者の投獄例が極めて少なかったことが本説の傍証とされている)。