ファミリーレストラン
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ファミリーレストランとは、主にファミリー客層を想定したレストランの一種。外食産業の一つ。
- 世界各国のレストラン、日本のレストラン全般はレストランを参照。
目次 |
[編集] 日本のファミリーレストラン
[編集] 歩み
1970年以降に多くのチェーンレストラン形式のファミリーレストランが創業された。外食産業の先進国であったアメリカのチェーンレストランを運営するアメリカ企業との提携を行い、その経営・運営システムを導入したケースが多い。また別途、アメリカ方式のチェーンレストラン研究を実施して独自に創業した企業などもある。
主なアメリカチェーンレストランの特徴
- ロードサイド型店舗で、広い駐車場を完備(約40台前後)し、土地スペースが100坪前後の立地。
- フロアー従業員によるオーダー受け、料理提供、コーヒーお替りなどの接客・フルサービスを実施する。
- フルラインアップ型メニュー「ハンバーグ・ステーキ・パスタメニュー中心で構成、ドリンク、デザート」を一通り揃えている。
- ワンフロアの開放的な店内、客席が100席前後の大型店。全店共通のポールサインと商標ロゴ。均一な料金のメニューで提供。
アメリカでレストランコンセプトを指す名称として一般的な「コーヒーショップ」という言葉は、料理やドリンク類などを提供するレストランを意味するものとして、日本にもそのまま取り入れられたが、当時の日本には喫茶店システムが浸透しており、「コーヒーショップ」という語でレストランを意味させる用法は馴染まなかった。そこで、客層をファミリー客へアピールし端的にレストランの特徴を表現する言葉としてファミリーレストラン(Family Restaurant),(略語:FR,ファミレス)が使われることになる。
ただし、Family Restaurant という言葉自体は、日本から逆輸入されたことにより、英語圏でも一般的に使われるものになっている。
このファミリーレストランの用語を積極的に多用し、ファミリー客層向けの戦略を前面に出して展開したのがすかいらーくである。すかいらーくが創業した1970年のコンセプト標語「ドライブ・イン・レストラン・スカイラーク」は、当時の家族連れマイカー利用客の客層を想定していた。1973年には「ファミリー型コーヒーショップ」ファミリーレストランとして、ファミリー客層に利用しやすいコンセプトを明確に打ち出したネーミングを採用して1970年代中頃にはファミリーレストランの用語は一般に浸透、他の競合店・一般の利用者にも使用されていく。
幅広い「フルラインアップメニュー」は、多彩な選択肢のある選ぶ楽しさ、食事の豊かさを比較的手頃な価格で提供したもの。人気No.1のハンバーグや、ステーキ、ピザ、グラタン、ドリア、オムレツ料理や日本の食文化として発展してきた揚げ物類(とんかつ、フライ物)などの洋食メニュー、玩具が付いたお子様ランチなどの子供向けメニュー、多彩なデザートメニューやソフトドリンク類などを提供し、ファミリーレストランは、日本の高度経済成長期、一般のファミリー客が休日にちょっと小奇麗な服装で食事を楽しむ一家団欒の場として人気を博した。
[編集] フルサービス・ホスピタリティー
ファミリーレストラン創業期の1970年代から、1990年代前期までの約20年の間は各レストランの個性・趣向に沿ったフルサービス・ホスピタリティーを実施して、より「もてなし」のサービス品質を高め合っていた時期でもある。チェーンレストランにはサービスマニュアルが用意され、利用客の立場に立った考え方や利用客の要望する「半歩先に考え行動すること」をアルバイト従業員に積極的に教育を実施して、ファミリーレストランの料理と共に「サービス内容の質」もレストランの特徴の一つとなる。
当時のフルサービス・ホスピタリティーの実施例
- 利用客がフロアー従業員を探す仕草や、タバコに火を付けメニューを閉じたタイミングでのオーダー取り。
- 提供した料理の進行状況を把握して次のサービス対応(コース料理の前菜進行に合わせて厨房に伝達指示出し)。
- アフターのデザート提供や、食べ終わった中間下げ物をタイミングよく実施。
- タイミングの良くコーヒー・お冷などのお替りサービス、溜まった灰皿などのこまめな交換など。
- 目配り・気配りのタイミングの良さを重視。タイミングを外したサービスは逆効果である。
他にも、様々な細かいサービスの積み重ね・店舗環境「店内空調は寒すぎ暑すぎないか」も含めてトータルで、快適にレストランで食事を消費者に利用して貰える工夫を続けていた。マニュアルが元にはなっていたが、この細やかなサービスの実施は、日本の気配り気質の風土にも合い、アメリカのフレンドリーサービスをより進化させた気配り・ホスピタリティー となって各ファミリーレストランのスタンダードとなって定着した。
バブル崩壊後のファミリーレストラン改革
1990年以降の日本経済のバブル崩壊後の景気後退は、消費者の財布の紐をまず締める対象として、外食の食費を削ることに向けられた。大手ファミリーレストランチェーン各社は、急激な客数減・売り上げの前年比割れを続けるなど、厳しい状況が続く。
1992年に低料金でリーズナブルな食事が楽しめる「ガスト」がオープンしてドリンクバーと、フロアー従業員のフルサービスを止め、必要最低限の人員で省力化店舗を運営する新たなスタイルの「ダイニングレストラン」(自宅のキッチンのように気軽に利用してもらう)登場は、当時の消費者ニーズに合致して成功を収め、翌年にはすかいらーくの店舗の大半がガストに転換。
- ガストの登場は、他のファミリーレストランチェーンが類似低価格チェーンに大規模転換されたり、フルサービス・ホスピタリティーを重視する接客スタイルからドリンクバー導入「ガスト型」へシフトされるなど、今までのファミレスの価値観を根底から見直すことになった。
現在のファミリーレストランは、フルサービスを堅持するファミリーレストランと、一部見直し・改善を進めてシンプルサービスを続けるファミリーレストランがある。近年の若年層の利用者ニーズはフルサービスより、低価格レストラン・手頃な中食やコンビニ系を求める比率の高さで今後もリーズナブルな低価格レストランのニーズは絶えることはなく続き、安さよりサービスの品質を求める利用者や、中高年以上の利用者向けにはより落ち着いた雰囲気、ある程度のホスピタリティーサービスが行き届いたファミリーレストランを利用と、二極分化している。
[編集] 設備・サービス面の特徴
チェーンストア方式を採用した日本のファミリーレストランは、同一ブランド名での多店舗化による利用客への認知度アップ、店舗商標ロゴ・ポールサインを全店統一としてデザインされ、多店舗化によるスケールメリットを生かした経営、セントラルキッチンを採用した食材品質の均一化で、日本国内で同質の味・サービス(量・料金)で食事ができる。
近年は同業種間での競争が激しく、他店との差別化として大型テレビによる有料衛星放送見放題や店内インターネットへの無料無線LANによる接続サービス、料理の付属サービスで飲み放題のドリンクバーや24時間営業といった業務内容でアピールしている。
店内は明るく寛げるよう配慮されており、広い敷地に広い駐車場、接客サービスはおおむね控えめで(低価格レストランの台頭)、長時間席を占有していてもあまり客に干渉しない事もあり、老少男女を問わず、会合の場や出張先の休息所・ドライブイン代わりに…と、広い客層に受け容れられている。又、モータリゼーションが進展した今日では、ロードサイドショップの一種とも目されている。料理の多くは西洋風のレストランではあるが、本格派の特定の外国料理に特化するより、家庭的な洋食メニューを充実するようにしている。
[編集] ファミリーレストラン店舗の特徴
ロードサイド型 | 特徴 |
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主に郊外の幹線道路・街道沿いにある独立型店舗で、広い土地スペースを利用して駐車場を併設している。多くの企業が採用している出店方法で、土地取得費(又は賃借料)・建築コストを抑えたタイプ。多くのファミリーレストランチェーンが創業期の1970年代にこの出店方式で規模を拡大した。現在も多くの企業がロードサイド型店舗を主力に展開している。 |
ピロティ型 | 特徴 |
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主に都心部の街道沿いにある。ロードサイド型店舗に類似するが、土地スペースを有効活用するため、2階建てで建築。1階には駐車場のスペースを作り駐車台数を確保する。店舗建築費用が耐震構造を強化するため、通常型店舗と比べて約3~4割増しとなる。 |
ビルイン型 | 特徴 |
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主にビルにテナントで入居している店舗。客単価の高いレストランが都心部に出店する場合にこのタイプが多い。賃料が高く出店コストが掛かる大都市圏の中心部に、低価格のレストランを出店することには各企業とも消極的だったが、バブル経済崩壊後のビル賃貸料の低下を受けて、近年は客席100席以下の中規模店舗、30席以下の小型店舗などで出店が増加している。 |
[編集] 時間帯別メニュー
多くのレストランチェーンでは時間帯別にメニューを構成・導入している。時間帯の区別は各チェーンでまちまちだが、軽食中心のモーニングタイム、日替わりランチや近隣の会社員・主婦向けに手頃な価格帯のランチタイム、ハンバーグ・ステーキ類など多彩なフルラインアップメニューを用意して、レストランの収益を最も上げる時間帯のディナータイム、24時間営業店のメニューアイテムを絞り、少人数人員オペレーション対応に特化したナイトメニューなどがある。各時間帯別に販売予測に準じた食材(洗米・野菜の下ごしらえ)を準備し、規定量の食材ポーション分け、冷凍食材解凍などの準備が徹底されていて初めてレストランとして品質の良い料理が提供できる。ナイトメニューやモーニングに、メニューアイテムが少ないのは、フルラインアップメニューのディナータイムのような入客は見込めず、販売数の予測が付きにくく、スタンバイ食材の廃棄ロスを抑えるための要因が大きい。
[編集] 他業種チェーンの躍進
近年では回転寿司チェーン店・低価格の焼肉およびしゃぶしゃぶ料理チェーン店のいわゆる専門店の「ファミレス化」や、一部の居酒屋チェーンでの家族向けメニューの充実により、既存の洋食中心の和洋中揃えたファミリーレストランは苦戦を強いられている。各チェーンの「定番メニュー」のコンセプトを、より明確に打ち出した低価格イタリアン中心のファミレスや、独創性のあるハンバーグを提供するファミレスチェーンの堅調な成長など、「定番メニュー」を多く持つチェーン店の優位が続いている。
季節毎に実施するグランドメニューの大幅な改定を「食のニーズの多様化」に対応するために大手ファミリーレストランチェーンは定期的に続けている。一部では、メニューを気に入ったファンが多いメニューアイテムが消え、固定客を安定して掴みきれないファミレスチェーンなど、自らの原因で客数減に陥るところもある。安易な改定ではなく、POS販売データで把握している売り上げ上位メニューなどはさらに品質を上げ、経費節減などの企業努力で値ごろ感があるメニューへと磨きあげているファミリーレストランが、近年安定したリピーター客「○○を食べるならこの店」の来店動機に繋がっている。
既存の、幅広いフルラインアップ型メニューは依然として人気はあるが、食材の品質を改善した各レストランの個性・主張を込めた「定番メニューの開発」を積極的に対応するファミリーレストランが、今後の外食マーケット市場で利用者に支持されて、成長を続けることになる。
[編集] 現状のファミリーレストランに概しての意見
肯定的なイメージ特徴
- 比較的綺麗で清潔な店舗、開放感のある広い店内にマイカーで行ける駐車場がある。
- 薄利多売で、料理の値段が全般的に値ごろ感があり安い。お替り自由のドリンクバー。
- メニューが幅広く、多種多様な料理が楽しめる他、キッズメニューも多い。
- 同じテーブルで家族が揃って食事できるよう配慮され、子供向け椅子・食器が用意されている。
- 注文にオーダーコールシステムを用いる店鋪が多いので、従業員を呼ぶのに便利。
- テーブルマナーを気にせず、ナイフ・フォーク・または割り箸を要求すれば付けてもらえ、それで食べる事も可能。
否定的・マイナスイメージでの特徴
- 子供が騒いでも周りが気にしない雰囲気である。
- ドリンクバー設置店での若年層の溜まり場、客席放置。
- 中食やコンビニ低価格弁当の品質アップで「テーブルサービスレストラン」に魅力がなくなった。
- 低価格レストランの「ホスピタリティー=もてなしサービスがない」レストランに魅力がない。
[編集] 主なファミリーレストラン
店名 | 創業 | 本社 | 店舗数 | 特徴 | ドリンクバー導入 | 店舗外観 |
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ガスト ※すかいらーく系 |
1992年 | 東京 | 1041 (2006/12) | ロープライス・レストランの代名詞 ドリンクバーがプレミアムカフェへ品質アップ |
全店導入 | ![]() |
サイゼリヤ | 1973年 | 埼玉 | 755 (2006/11) | ロープライス・イタリアンレストラン ミラノ風ドリアなど低価格メニューの品揃え豊富 |
全店導入 | ![]() |
バーミヤン ※すかいらーく系 |
1986年 | 東京 | 726 (2006/12) | 中華レストラン | 全店導入 | ![]() |
ジョイフル | 1979年 | 大分 | 704 (2006/4) | 西日本が中心 ロープライス路線で拡大 |
全店導入 | |
デニーズ | 1973年 | 東京 | 583 (2006/1) | フレンドリーサービス | ※一部店舗導入 (福島・茨城・埼玉) |
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ジョナサン ※すかいらーく系 |
1979年 | 東京 | 372 (2006/12) | 新鮮食材 | 全店導入 | ![]() |
ココス | 1980年 | 東京 | 354 (2006/10) | 人気の包み焼きハンバーグ | 全店導入 | ![]() |
ロイヤルホスト | 1971年 | 東京 | 318 (2006/11) | シックな店舗内装、品質重視 | ほぼ全店導入 ※一部未導入あり |
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夢庵 ※すかいらーく系 |
1993年 | 東京 | 316 (2006/12) | ロープライス和食レストラン | 全店導入 | |
びっくりドンキー | 1968年 | 北海道 | 275 (2006/6) | ハンバーグ中心 | ※一部店舗のみ導入 | ![]() |
華屋与兵衛 | 1986年 | 東京 | 162 (2006/11) | 和食レストランチェーン | 未導入 | ![]() |
すかいらーく | 1970年 | 東京 | 158 (2006/12) | 和洋中メニューが多彩 | 全店導入 | ![]() |
とんでん | 1969年 | 東京 | 122 (2006) | 和食レストランチェーン | 未導入 | ![]() |
グラッチェガーデンズ ※すかいらーく系 |
2001年 | 東京 | 118 (2006/12) | イタリアン中心 | 全店導入 | |
どん | 1990年 | 東京 | 110 (2006/12) | どんステーキが人気 | 未導入 | ![]() |
[編集] 複合・多業態ファミリーレストラン
公式ページに単独ブランド店舗数が非公開のチェーン店、単独では100店舗以下でも多業態トータルで100店以上を下記にカテゴライズ。
店名 | 創業 | 本社 | 店舗数 | 特徴 | ドリンクバー導入 | 店舗外観 |
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サンデーサングループ | 1971年 | 山口 | 342 (2006/4) | 多業態レストラン運営 | サンデーサンは全店導入 | |
サトレストランシステムズグループ | 1968年 | 大阪 | 211 (2006) | 多業態レストラン運営 | 未導入 | |
ビッグボーイグループ | 1978年 | 東京 | 191 (2006) | 多業態レストラン運営 | 全店導入 | ![]() |
フレンドリーグループ | 1977年 | 大阪 | 138 (2006/3) | 多業態レストラン運営 | フレンドリーは全店導入 | |
馬車道グループ | 1975年 | 埼玉 | 136 (2006/3) | 多業態レストラン運営 | 公式ページで確認 | ![]() |
トマトアンドアソシエイツグループ ※すかいらーく系 |
1973年 | 京都 | 108 (2006/12) | 多業態レストラン運営 | 未導入 |
[編集] その他ファミリーレストラン
公式ページのデータを元に作成。単独ブランド店舗数が少ないレストランでも知名度があるチェーンを店舗数が多い順に下記へカテゴライズ。
店名 | 創業 | 本社 | 店舗数 | 特徴 | ドリンクバー導入 | 店舗外観 |
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藍屋 ※すかいらーく系 |
1983年 | 東京 | 65 (2006/12) | 和食レストランチェーン | 未導入 | ![]() |
フォルクス ※どん系 |
1970年 | 東京 | 50 (2006/12) | サラダバーとステーキが人気 | 未導入 | ![]() |
CASA | 1976年 | 東京 | 17 (2006/10) | デミ煮込みハンバーグが人気 | ほぼ全店導入 ※一部未導入あり |
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アンナミラーズ | 1973年 | 東京 | 3 (2006/10) | パイとスイーツが人気 | 未導入 | ![]() |
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献・関連書籍・データ数値出典
- 『外食産業を創った人びと―時代に先駆けた19人』 日本フードサービス協会 ISBN 4785502738