プライベート・ライアン
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プライベート・ライアン Saving Private Ryan |
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監督 | スティーヴン・スピルバーグ |
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製作 | イアン・ブライス マーク・ゴードン ゲイリー・レヴィンソン スティーヴン・スピルバーグ |
脚本 | ロバート・ロダット フランク・ダラボン |
出演者 | トム・ハンクス エドワード・バーンズ マット・デイモン |
音楽 | ジョン・ウィリアムズ |
撮影 | ヤヌス・カミンスキ |
編集 | マイケル・カーン |
公開 | 1998年7月24日 ![]() 1998年9月26日 ![]() |
上映時間 | 170分 |
製作国 | アメリカ |
言語 | 英語 |
制作費 | $70,000,000 |
allcinema | |
IMDb | |
『プライベート・ライアン』(原題"Saving Private Ryan")は1998年に公開された戦争映画。
原題は「ライアン二等兵の救出」の意。史上最大の作戦といわれたノルマンディー上陸作戦のあるエピソードを題材にしている。
降伏したドイツ兵を米兵が射殺する場面の冷たいリアリズムなどが、ドイツ軍を単なる悪役にはしていない。しかし登場するドイツ国防軍及び武装親衛隊兵士が全て丸坊主である点は、ネオナチを意識しているかのようで考察に欠けているとして、一部の論客からは評判が悪い。
また、機関銃の銃声を実際に録音して使ったり、機関砲の破壊力を直接描写したり、ティーガー戦車やケッテンクラートなど、ドイツ軍の装備に関するスピルバーグならではのこだわりの時代考証が軍事マニアを狂喜させた。ロケはイギリスで行われ、これらの装備は現地リエナクター(歴史再現家)達によるところが大きい。
スピルバーグはその後、トム・ハンクスと共にテレビ向けのミニ・シリーズ「バンド・オブ・ブラザース」を共同制作し、ノルマンディー上陸作戦についての興味を追求している。
目次 |
[編集] コピー
「選ばれた精鋭は8人―― 彼らに与えられた使命は 若きライアン2等兵を救出する事だった……」
「ノルマンディ大激戦の陰に 選ばれた8人の兵士達による たった一人の新兵を救出する作戦があった……」
[編集] ストーリー
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
「史上最大の作戦」ノルマンディー上陸作戦。銃弾が雨あられと降ってくるオマハ・ビーチからの上陸作戦を生き残ったミラー大尉は、ジェームス・ライアン二等兵をノルマンディー戦線から探し出し、無事帰国させるため、敵陣深く進入する危険極まりない任務へと赴く。ライアン二等兵の3人の兄は既に皆戦死し、軍は母親のために息子たち全員の戦死を防がねばならない、という理由で彼の救出を命じたのだった。ミラー大尉は、たった1人のために8人の部下の命を危険にさらすこの任務に疑問を抱きながらも、なんとかライアン二等兵を探し出すことに成功するが……。
[編集] キャスト
- ジョン・ミラー大尉:トム・ハンクス
- マイケル・ホーヴァス軍曹:トム・サイズモア
- リチャード・ライベン二等兵:エドワード・バーンズ
- ダニエル・ジャクソン二等兵:バリー・ペッパー
- スタンリー・メリッシュ二等兵:アダム・ゴールドバーグ
- エイドリアン・カパーゾ二等兵:ヴィン・ディーゼル
- アーウィン・ウエイド衛生兵:ジョバンニ・リビシ
- ティモシー・E・アパム伍長:ジェレミー・デイビス
- ジェームズ・フランシス・ライアン二等兵:マット・デイモン
- ウィリアム・ヒル軍曹:ポール・ジアマッティ
- フレッド・ハミル大尉:テッド・ダンソン
- アンダーソン中佐:デニス・ファリナ
[編集] エピソード
- スティーヴン・スピルバーグ監督による『太陽の帝国』、『1941』、『シンドラーのリスト』以来4作目となる第二次世界大戦をテーマにした映画。
- 冒頭から始まり20分間に及ぶオマハ・ビーチにおける上陸作戦を描く戦場のリアルなシーンが話題を呼んだ。映画史に残る20分間として有名。
- この映画を観た戦争経験者は、戦争シーンのリアルさに「臭いがあればこれは本物の戦争だ」ともらしたという。
- 第二次世界大戦を舞台とするFPS、メダル・オブ・オナー アライドアサルトのオマハ・ビーチ上陸マップは明らかにこの映画の上陸シーンを意識して作られている。
- 冒頭の“D-DAY”におけるオマハ・ビーチ上陸作戦の再現は困難を極めた。実際のオマハ・ビーチは歴史的に保護されているだけでなく、開発もされてしまっていたためである。そこでプロダクション・デザイナーのトム・サンダースは何週間もの調査を行ってロケ地を探し、よく似た浜を発見。実際のロケはアイルランドで行われた。
- アイルランド陸軍はエキストラとして250名の兵士を貸し出した。現役の兵士であることから統制がとれており、大人数にもかかわらず撮影はスムーズに進行した。この兵士達の大半はメル・ギブソンの『ブレイブハート』にも出演している。
- ミラー大尉の所属部隊は、米第5軍・第2レンジャー大隊C中隊である。
- ライアン二等兵の所属部隊は、米第7軍・第101空挺師団である。
- 冒頭の上陸作戦において、四肢が吹き飛ぶ、内臓がはじけとぶ、といった描写があるため、テレビ放送時には該当部分はカットされると予想されていたが、テレビ朝日で地上波放送された際には、冒頭に刺激的な表現があることと児童の視聴への注意を呼びかけるテロップを表示し、カットされることなく放送された。
- トム・ハンクスをはじめとした出演者たちは、リアルな演技をさせるために元海兵隊大尉のデイル・ダイの協力の下、新兵訓練と同等の訓練を10日間受けさせられた。その間は教官がいきなり俳優達に向かって発砲(当然空砲)したり、当時の兵士達が持ち歩いていた道具と装備を全部背負わせて延々と行軍させたりと内容的にかなりキツいものだったらしい。
- マット・デイモンはこの新兵訓練に参加していない、と言うより意図的に参加メンバーから外された。10日間の過酷な訓練を通じて救出隊のメンバーにマット・デイモン=ライアン二等兵に対する反感を植えつけるためわざとそうしたのだという。
- 映像にリアリティを出すために三脚を使わず、大半をハンディカメラで撮影した。
- 『シンドラーのリスト』が実在の人物をモデルにしているため、それと混同して本作も実話だと思っている人も少なからずいるようだが、本作はフィクションである。
- フィクションではあるが元になったエピソードは存在する。詳細は後述のナイランド兄弟を参照。
- 撮影に使用した兵器・車両は徹底的に本物にこだわっているが、後半に登場するティーガー戦車はソ連製戦車T-34の上部構造を改造して作られた。この改造車両は「バンド・オブ・ブラザーズ」でも使用されている。
- この映画に登場するドイツ兵のほとんどが頭を丸坊主にしているため顔の見分けがつきにくい。よくある誤解としては「アメリカ大好き」と命乞いをする兵士(のちにアパムにより射殺)とメリッシュを刺殺した兵士は別人である。軍服をよく見れば、一方は国防軍兵士で、もう一方は武装親衛隊員であることが分かる。
- 本作は星条旗~ミラー大尉の墓~戦闘中パニックに陥るミラー大尉~メリッシュ二等兵のガムを出す仕草が順番に写されるが、映画の終盤ではこれらの状況が対称的に逆の順番で登場する。この始まった順番と逆に終わる円環的な展開は、スピルバーグが敬愛する『アラビアのロレンス』ですでに行われていた。スピルバーグはデヴィッド・リーン監督を尊敬し、『アラビアの~』を「新作撮入前に鑑賞する一本」と語っており、リーン監督へのオマージュと思われる。
[編集] 受賞
アカデミー賞11部門にノミネートされ、監督賞、編集賞(本作は2006年現在、デジタル編集に拠らない作品としては最後のオスカー受賞作である)、撮影賞、音響賞、音響編集賞の5部門で栄冠に輝いた。
[編集] ナイランド兄弟
ナイランド兄弟(en)とは一応この映画の元となった兄弟の事である。
- フレデリック・ナイランド三等軍曹 第101空挺師団第501パラシュート連隊所属
- ロバート・ナイランド特技下士官(三等軍曹待遇) 第82空挺師団第505パラシュート連隊D中隊所属、1944年6月6日ノルマンディーにて戦死
- プレストン・ナイランド少尉 第4歩兵師団第22連隊所属、1944年6月7日ノルマンディーにて戦死
- エドワード・ナイランド特技下士官(三等軍曹待遇) アメリカ陸軍航空隊所属
見てのとおり、ライアン二等兵の元になったフレデリック・ナイランドは確かに第101空挺師団の兵士だったのである。フレデリックはDデイ初日に輸送機パイロットのミスで予定の降下地点からかなり離れた内陸地点に降下してしまい、なんとか原隊に復帰したら部隊の従軍牧師に彼の兄弟が3人とも戦死した事を知らされたのだ。実際は太平洋方面で戦死したと思われていた彼の兄弟(英語の文面からは兄か弟か不明)は日本軍の捕虜になっただけだったのだがその時点ではそれは分からず、国防省のソール・サバイバー・ポリシー(巡洋艦ジュノーに乗り込んでいたサリバン4兄弟がその巡洋艦が撃沈されたときに全員死亡したことを受けて制定されたルール)に基づいてフレデリックは前線から引き抜かれ、本国に送還された。
フレデリック本人はそれほど帰国したかったわけではなかったらしくその後もしばらく部隊と行動を共にしていたのだが従軍牧師がすでに書類を提出してしまったため、書類が上層部に認可された後は帰国するしかなかった。帰国後彼は終戦までニューヨーク州で憲兵として勤務していた。
映画と違い、ナイランド夫人は未亡人ではなかったが息子3人の死亡通知を同時に受け取ったと言うのは史実らしい。また、自力で原隊に復帰した事から分かるように別に救出隊が組織されたと言う事実もない。ちなみにビルマの日本軍捕虜収容所に収監されていたエドワードは英軍に救出され、その後無事帰国している。
[編集] 日本語版
- ビデオ/DVD版
翻訳:岸田恵子 演出:伊達康将 (監修:田岡俊次)
江原正士(ミラー大尉)/塩屋浩三(ホーバス軍曹)/後藤敦(ライベン二等兵)/
堀内賢雄(ジャクソン二等兵)/樫井笙人(メリッシュ二等兵)/山野井仁(カパーゾ二等兵)/
家中宏(ウェイド衛生兵)/二又一成(アパム伍長)/平田広明(ライアン二等兵)/
谷口節/有本欽隆/川久保潔/中博史/松本大/仲野裕/永井誠/古田信幸/
成田剣/大川透/桜井敏治/浜田賢二/定岡小百合/中多和宏/宝亀克寿
- テレビ版 (初出:2002年2月10日「日曜洋画劇場」)
翻訳:平田勝茂 演出:福永莞爾
山寺宏一(ミラー大尉)/石田圭祐(ホーバス軍曹)/山路和弘(ライベン二等兵)/
井上倫宏(ジャクソン二等兵)/大滝寛(メリッシュ二等兵)/安井邦彦(カパーゾ二等兵)/
内田夕夜(ウェイド衛生兵)/小森創介(アパム伍長)/草尾毅(ライアン二等兵)/
横島亘/稲垣隆史/加藤精三/田原アルノ/金尾哲夫/宮田光/福田信昭/
田中正彦/石井隆夫/境賢一/清水敏孝/佐々木誠二/猪野学/加藤亮夫/
根本泰彦/星野充昭/渋谷茂/田中完/藤本隆行/田畑ユリ/石本竜介/古屋道秋