アラビアのロレンス (映画)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アラビアのロレンス | |
監督 | デヴィッド・リーン |
---|---|
製作 | サム・スピーゲル |
脚本 | ロバート・ボルト |
出演者 | ピーター・オトゥール アレック・ギネス アンソニー・クイン |
音楽 | モーリス・ジャール |
撮影 | フレデリック・A・ヤング ニコラス・ローグ |
配給 | コロムビア映画 |
公開 | 1963年 |
上映時間 | 207分 |
製作国 | イギリス |
言語 | 英語 アラビア語 |
allcinema | |
キネマ旬報DB | |
All Movie Guide | |
IMDb | |
『アラビアのロレンス』(Lawrence of Arabia)は、1962年のイギリス映画。歴史映画。デーヴィッド・リーン監督、ピーター・オトゥール主演。
実在の英国陸軍将校のトマス・エドワード・ロレンスが率いた、オスマントルコからのアラブ独立闘争を描いた歴史映画であり、戦争映画である。映画史に燦然と輝く、不滅の大金字塔である。日本での公開は1963年12月。
上映時間は227分。主人公の交通事故死で幕が開く衝撃的な冒頭から、彼が失意の内にアラビアを離れる余りに悲痛な終局までを、実に雄大に描く。その中でも、ロレンスがマッチの火を吹き消した後に砂漠に大きな太陽が昇る場面や、地平線の彼方の蜃気楼が次第に黒い人影となるまでの3分間、敵の要塞を陥落したロレンスが、ラクダに乗って夕日が照らす海岸を悠々と歩く場面、そして延々と続く広大な白い砂漠と地平線を背景にロレンスが跨ったラクダが駆ける場面等は、特筆に価する見事な名場面と言える。
タイトルクレジットの前と、物語の途中の幕間の部分では、数分に渡って延々と黒い画像が映される。
オリジナル版制作から実に四半世紀以上が経過した1988年に、再編集を行なって完全版が制作された。オリジナル版の上映時間は、207分だった。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] ストーリー
1935年5月13日、トマス・エドワード・ロレンスは念入りに整備をしたバイクに跨り、ドライブに出かけた。ところが、向こうから走ってきた自転車を避けようとして、道路の脇道に転落した。ロレンスは5月19日に死去した。教会で行なわれた葬式には沢山の人が参列し、銅像も建てられた。ロレンスを取材した新聞記者は「銅像を建てるに値する程偉大な人物なのか?」と訝しがるが、彼の部隊の同僚の将校は「ロレンス程偉大な人物は居ない」と抗議する。果たしてロレンスとは何者なのか。舞台は1916年10月に遡る……。
英軍少尉のロレンスは、オスマントルコからの独立闘争を指揮する王子のフェイサルに会うため、アラビアへ渡った。初めは不慣れだったラクダも、見事に乗りこなせるようになった。案内役のアラブ人が井戸から水を汲んでロレンスに飲ませた。そこにアリと言う井戸の持ち主が現れ、案内人をいきなり拳銃で殺害する。アリは案内人を買って出るが、ロレンスは断って一人で出発した。
ロレンスがアラブ人の基地に到着すると、基地はトルコ軍の空襲を受けた。アラブ人は全く反撃できなかった。フェイサルと面会したロレンスは、独立闘争への協力を約束する。ロレンスはアラブ人の勇者50人を率いて、トルコ軍が占拠する港湾都市アカバへ向かった。延々と続く砂漠を行軍中、ガシムと言う男が列に居ない事にロレンスは気付いた。「戻って助けに行く」と主張するロレンスに、「無茶だ」「死にに行くのか」とアリは抗議する。無謀にもロレンスは、ガシムを救う為に一人で今来た道を戻るのだった。
ロレンスはラクダにガシムを乗せて戻ってきた。アリをはじめアラブ人達はロレンスを賞賛し、白く美しい衣装を身に着けさせた。ここでアウダ・アブタイが率いる部族と遭遇した。アウダはアラブ独立の為に、ロレンスと共にトルコ軍と戦う事にする。しかし悲劇が起こる。ロレンス側の兵士がアウダ側の兵士を殺してしまった。殺したのはガシムだった。軍の統制と団結を保つため、ロレンスは苦渋の思いでガシムを拳銃で処刑した。
1917年7月6日にアラブ軍はアカバを奇襲し、トルコ軍の大砲が全て海側に向いていたアカバはあっけなく陥落した。ロレンスはカイロの英軍司令部に急行した。アカバ陥落を報告する為である。ロレンスは部下のアラブ人少年と共に司令部に入った。汚れた衣装を身に付けたロレンスを見て、周囲の軍人は驚きを隠せなかった。そしてロレンスがアカバ陥落を告げると、その場の誰もが驚愕した。満身創痍のロレンスは、司令部内のカフェでレモネードを2つ注文した。「アラブ人は外に出せ」と言う文句を無視して、少年にもレモネードを御馳走したのだ。
ロレンスは少佐に昇進した。英軍からの兵器の補充を受けたアラブ軍は、トルコ軍への更なる攻撃を開始する。トルコの鉄道の線路に爆弾を仕掛けて機関車を爆破して猛襲するという戦法を展開した。この戦法は大成功を収め、ロレンスの活躍は新聞にも乗って広く報道されるのだった。しかし三回目の鉄道襲撃で、爆弾を設置する時にアラブ人少年の部下が懐に入れておいた信管を爆発させてしまった。止むを得ずロレンスは、アラブ人少年を苦しませないためにその場で拳銃で殺害し、鉄道爆破計画を中止した。
次にロレンスは現地の人の服を身に着けて現地人に化け、デラアに偵察に行った。心配するアリに対し、「私は透明人間だ」と意気揚々だったが、トルコ軍に見つかり連行された。ロレンスは服を脱がされ、デラアを支配するトルコ人将軍の好色の餌食となってしまう。
ロレンスは辞表を出すが、英軍はそれを受理せず、彼をアラビアに送り戻して作戦を続行させる。ロレンスの部隊は英軍正規部隊より一足早くダマスカスに到着して、トルコ軍から解放する。しかし、アラブ人の戦士も文明の運営となると不慣れで、街に電力が不足し、火事は治まらず、病院はおざなりになってしまう。トルコ軍から解放されたアラビアは、もはやロレンスの戦士ではなく、老練の族長ファイサルが治める地となっていた。
ロレンスは英雄として大佐に昇進させられ、大きな失意を胸に抱いてアラビアを後にするのだった。誰よりもアラビアを愛した男の任務は、余りに悲痛すぎる結末で幕を閉じた。
[編集] キャスト
- トーマス・エドワード・ロレンス - ピーター・オトゥール
- フェイサル - アレック・ギネス
- アウダ・アブタイ - アンソニー・クイン
- アリ - オマー・シャリフ
- ジェネラル・アレンビー - ジャック・ホーキンス
- ジャクソン・ベントリー - アーサー・ケネディ
- コロネル・ブライトン - アンソニー・クェイル
- ベイ - ホセ・フェラー
- ドライデン - クロード・レインズ
[編集] スタッフ
- 監督 - デーヴィッド・リーン
- 原作 - トマス・エドワード・ロレンス(『智恵の七柱』平凡社[東洋文庫])
- 脚色 - ロバート・ボルト
- 音楽
- 撮影 - フレデリック・A・ヤング、スキーツ・ケリー、ニコラス・ローグ、ピーター・ニューブルック
- 美術 - ジョン・ボックス
- 衣装 - フィリス・ダルトン
- 製作 - サム・スピーゲル
- 配給 - コロムビア映画
[編集] 受賞
- アカデミー賞
- アカデミー作品賞
- アカデミー監督賞
- アカデミー撮影賞カラー部門
- 美術監督・装置賞カラー部門
- 作曲賞
- 編集賞
- 録音賞
- また、アカデミー主演男優賞、アカデミー助演男優賞、アカデミー脚色賞候補
- ゴールデングローブ賞
- 作品賞ドラマ部門
- 監督賞
- 助演男優賞
- 撮影賞カラー部門
- 英国アカデミー賞
- 作品賞総合部門
- 作品賞国内部門
- 男優賞国内部門
- 脚本賞
- また、男優賞国外部門候補
[編集] 日本語吹き替えの声優
テレビ朝日版
- ピーター・オトゥール :井上孝雄
- アレック・ギネス:大塚周夫
- アンソニー・クイン:小松方正
- オマー・シャリフ:内海賢二
- ジャック・ホーキンス:鈴木瑞穂
- アーサー・ケネディ:穂積隆信
- アンソニー・クエール:石田太郎
- ホセ・フェラー:中村正
- ドナルド・ウォルフィット:小林清志
- クロード・レインズ:早野寿郎
テレビ東京版(DVD収録)
- ピーター・オトゥール:山寺宏一
- オマー・シャリフ:磯部勉
- アレック・ギネス:小林尚臣
- アンソニー・クイン:坂口芳貞
- ジャック・ホーキンス:瑳川哲朗
- ホセ・フェラー:中村正
- クロード・レインズ:永井一郎
- アンソニー・クエール:小川真司
- アーサー・ケネディ:池田勝
1961: ウエスト・サイド物語 | 1962: アラビアのロレンス | 1963: トム・ジョーンズの華麗な冒険 | 1964: マイ・フェア・レディ | 1965: サウンド・オブ・ミュージック | |
カテゴリ: アカデミー賞作品賞受賞作 | 戦争映画 | イギリスの映画作品 | 1962年の映画