ホヴァーンシチナ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
![]() |
クラシック音楽 |
---|
作曲家 |
ア-カ-サ-タ-ナ |
ハ-マ-ヤ-ラ-ワ |
音楽史 |
古代 - 中世 |
ルネサンス - バロック |
古典派 - ロマン派 |
近代 - 現代 |
楽器 |
鍵盤楽器 - 弦楽器 |
木管楽器 - 金管楽器 |
打楽器 - 声楽 |
一覧 |
作曲家 - 曲名 |
指揮者 - 演奏家 |
オーケストラ - 室内楽団 |
音楽理論/用語 |
音楽理論 - 演奏記号 |
演奏形態 |
器楽 - 声楽 |
宗教音楽 |
メタ |
ポータル - プロジェクト |
カテゴリ |
ホヴァンシチナ(ロシア語:Хованщина、またはホヴァンシチーナとも)はムソルグスキーの遺作オペラの一つ。キリル文字の表記に従うとホヴァーンシナとなる
(щ は音韻的・通時的にはポーランド語の /szcz/、チェコ語 /šť/ に相当し、ペテルブルク方言では /šč/ と発音するが、モスクワ方言を初めとする現代ロシア語では鋭い摩擦音 /šš'/ として発生するのが標準のため)。
題名は「ホヴァーンスキー事件(ホヴァーンスキー騒動)」の意味で、史実を基に、ムソルグスキーの友人で評論家のウラディーミル・スターソフの助言をもとにムソルグスキー自身が台本を製作。作曲者が1881年に他界した時は未完成だったため、作曲者の旧友リムスキー=コルサコフによる実用版が作成されて、ようやく1886年2月21日にサンクトペテルブルクで初演された。
しかしリムスキー=コルサコフ版は多くの削除や改作、ワーグナー風の重厚壮麗なオーケストレーションなどによって、オリジナルをほとんど書き換えている。このため後に、ムソルグスキーを敬愛したショスタコーヴィチにより、オリジナルのピアノ譜と、作曲者自身の管弦楽法の手法をもとに、改めて原曲に忠実な実用譜が作り直された。こんにちでは《ホヴァーンシチナ》の上演に用いられる実用譜はたいていショスタコーヴィチ版であり、リムスキー=コルサコフ版は、有名な前奏曲「モスクワ河の夜明け」が演奏・録音される程度である。
前作《ボリス・ゴドゥノフ》と同様にロシア史の一こまを扱っているが、この事件に最初にムソルグスキーに注目させたのは、スターソフだった。西欧的な近代化をはかったピョートル大帝に対する、イヴァン・アンドレーヴィチ・ホヴァーンスキー公とその従者たちにの謀反が扱われている。結局ピョートルが帝位に就いて謀反は挫折し、ホヴァーンスキー公側の分離派教徒の集団自決で幕切れとなる。
ムソルグスキーは終結部が未完のまま死んだので多くの問題を引き起こし、録音で聴けるものでは現在次の4つの終結が存在している。
①リムスキー=コルサコフ版 遺稿をすべて引き取ったリムスキー=コルサコフによって1882年加筆され完成された。古いものは新しいものにとって変わるというスターソフも納得するテーマのもとにピョートル軍を肯定し、分離派教徒が自ら火をつける集団自殺の後にピョートル軍が登場し、プレオブラジェンスキイ行進曲で肯定的に終わる。(ハイキン盤など)
②ストラヴィンスキー版 スターソフへの手紙をもとに、音楽が次第に消えていくのに合わせて分離派教徒たちが退場して幕になる終結部をムソルグスキーは考えていた、とパーヴェル・ラムは推論した。1913年ストラヴィンスキーは、厳かで悲壮な分離派教徒の合唱が次第に弱まって幕になる(ラムの見解と一致する)終結部を完成させた。(アバド盤)
③ショスタコーヴィチ版 1959年、映画製作のため完成させた。リムスキー=コルサコフ版の流れを踏襲しているが、プレオブラジェンスキイ行進曲のあと、そのあまりの悲惨さに唖然とするかのように音楽が弱まる。その後に悲しいロシアの運命を嘆く第1幕の「民衆の合唱(リムスキー版では省略されたもの)」をもう一度繰り返し、さらに序曲「モスクワ川の夜明け」を繰り返して静かに終わる。ロシアの本当の夜明けは革命を待たなければならなかったというプロパガンダが背景にあるようだ。(チャカロフ盤)
④ゲルギエフ版 ショスタコーヴィチ版を使うが、プレオブラジェンスキイ行進曲以下はカット。その代わり分離派教徒の合唱の音楽がブラスによって重々しく奏されて、悲劇的に終わる。2008年来日公演が予定されている。(ゲルギエフ盤)
《ボリス・ゴドゥノフ》ほど有名ではないが、本作はある意味おいて、《ボリス・ゴドゥノフ》より親しみ易い。舞台進行は緩やかで、声楽の旋律線は、《ボリス・ゴドゥノフ》のレチタティーヴォ的な構成手法に比べて、より伝統的である。「ペルシャ人奴隷の踊り」などの情熱的な労作もある。旧ソ連以外ではなかなか上演されないが、録音は何度か行われており、日本語訳つきのDVDも出回っている。2007年にはウェールズ・ナショナル歌劇場によって、ウェールズとイングランドで上演される運びである。
[編集] 外部リンク
カテゴリ: ムソルグスキーの楽曲 | オペラ作品 | クラシック音楽関連のスタブ