ボトルネック
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ボトルネック (bottleneck) とは、広義ではシステム設計上の制約の概念。英語の「瓶の首」の意。一部(主に化学分野)においては律速(「りっそく」と発音、「速さ」を「律する"制御する"」要素を示すために使われる)、または隘路(あいろ)という同意語も存在する。
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[編集] 概要
80-20の法則などが示すように、物事がスムーズに進行しない場合、遅延の原因は全体から見れば小さな部分が要因となり、他所をいくら向上させても状況改善が認められない場合が多い。このような部分をボトルネックという。瓶のサイズがどれほど大きくても中身の流出量・速度(スループット)は狭まった首のみに制約を受けることからの連想である。
[編集] さまざまなボトルネック
以下に、いろいろなシステムにおけるボトルネックの例を挙げる。
[編集] 情報技術
- ノイマンズ・ボトルネック(フォンノイマン・ボトルネック)。ノイマン型も参照。
- プログラミングでは特にボトルネックが劇的な性能差を引き起す場合(百倍から百万倍などのケース)があるため、処理時間の分布を分析することは重要である(プロファイリング)。逆にボトルネックではない部分をいくら改善しても、かかるコストに対して得られる向上は少なく全体の損失となる(この点は他の項目においても同様である)。ボトルネックを関知する能力は設計者として重要な資質である。
- ネットワークでは通信帯域幅が狭い地点を指す。ネットワーク上における一地点の通信が混雑もしくは低速の場合、その前後のネットワークの速度が高速またはデータが疎に係わらず通信速度の最大値が混雑している一地点の速度に抑えられてしまう。
- インターネットについて、前記と同様のものを指す。以下は、インターネット利用において特に見られる現象。
- かつてテレホーダイが全盛の時代は、大規模なプロバイダほど、テレホーダイタイム時に多く発生した(余談:現在はボトルネックという言葉でほぼ統一されているが、ボトルネックが問題になりかけた頃の書籍の中にはボルトネックと表記し、ネジのボルトを図に使用している物もあった)。
- ブロードバンド回線が普及した今日では、同様のネット上のゴールデンタイム(20~24時)には、ネットワーク全体の混雑だけでなく、Webサーバ等の負荷増大が、スループット上の主要なボトルネックになっている。
- 普及拡大中の光ファイバーインターネット接続においては、WANとLANとで速度に大差がなくなり、PCのネットワーク転送性能が、スピードテスト上のボトルネックになる現象も見られる。
[編集] 経済・経営
- 経済政策では、一般的に、「需要と供給の不一致」または「負の外部性」によって、経済成長が阻害されていることを指す。
- ネットワーク経済において、必要不可欠な設備を独占することを、「ボトルネック独占」と呼ぶ。
- 制約条件の理論 : 工場経営において、生産ラインにボトルネックがある場合、他の生産プロセスを改善しても全体のアウトプットは増加しない(ザ・ゴールより)。
[編集] 交通や河川
- 河川、道路等では流量の妨げとなっている箇所のことをいう。具体的には、赤信号時間が相対的に長い交差点や幅員減少・車線減少により渋滞を起こす箇所、河川断面が狭隘となり十分な水量を流下させることができない箇所のことをいう。また、国土交通省では都市部の踏切について列車本数が多いため道路交通に支障をきたす箇所、一般的には「開かずの踏切」と呼ばれる踏切を「ボトルネック踏切」と呼んでいる。