インターネットサービスプロバイダ
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インターネットサービスプロバイダ(Internet Service Provider)とは、電気通信事業者の内、インターネット接続サービスを提供するものである。プロバイダやISPなどと略して呼ばれることが多い。
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[編集] 歴史
- 1987年 UUNETが世界初の商用ISPとしてサービスを開始する。
- 1992年 IIJ(インターネットイニシアティブ)が日本初の商用ISPとしてサービスを開始する。同年のニフティサーブ(現@nifty)をはじめとして、パソコン通信サービス事業者は相次いでインターネットとの相互接続サービスを開始。
- 1993年 TWICSが日本初の個人向けISPとなる。
- 1995年 インターキューがダイヤルQ2を利用した非会員制の個人向けISP事業を開始
- 1996年 NTT直営(当時)によるプロバイダ事業「OCN」が開始され、アクセスポイントの拡充が図られる。
- 2000年前後 ADSLやCATV、FTTHを用いたいわゆるブロードバンド回線が、Yahoo! BBのADSLプロバイダ事業参入以降、急激にその価格を下げ、一般的となった。
- 2002年 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)施行
[編集] 主なサービス内容
インターネット接続サービスの提供として、インターネットへのコネクティビティ(接続性)を提供する事を主要なサービス内容とする。その他付帯的なサービスとしては、電子メールアカウントの提供 、ウェブページ公開用スペースの提供、また、ISP独自によるポータルサイトを運営しており、併せてコンテンツサービスを提供する業態が一般化している。
サーバーに対する負担やセキュリティーの問題から、CGIやSSIなどの利用に制限を設けている場合がほとんどである。
近年は、IP電話やVODなどのブロードバンド回線を活用した付加サービスも一般化している。その他、企業向け等に専用線接続サービスやVPN、ホスティングサーバ(俗に言うレンタルサーバ)、ドメイン名取得手続きの取次ぎ、ASPなどの提供なども行う。また、一般的ユーザ向けにサービス利用のためのユーザサポート(電話やメール、さらには出張サービス)も行う。
通常、日本国内におけるISPは、届出電気通信事業者の中で、「電気通信回線設備を設置しない事業者」という区分(旧一般第2種電気通信事業者)にあたる。事業の開始に当たっては総務省(総合通信局)への届け出が必要。ISP事業は、届出電気通信事業者(電気通信回線設備を設置する事業者)や、登録電気通信事業者、認定電気通信事業者の事業範囲に含まれる為、これらの事業者がISPを兼ねる場合もある。
回線事業者の回線はアクセス回線、アクセスネットワークなどとも呼ばれ、POI(Point Of Interface:ISPとの接続点)からラストワンマイルを経てユーザー宅までの接続回線を提供する。
一方、事業者が従来から保有してきた回線を活用したり、またはISP自体が積極的に回線を構築(投資)するなどにより、ISPが回線事業者を兼ねて、一体化したサービスを提供することを強みとする事業者もある。ADSLやCATV、FTTHなどのブロードバンド回線サービスのほか、無線アクセス(FWA:Fixed Wireless Access)などの無線ネットワークサービスにおいても見られる。携帯電話やPHSにおいても、各移動体通信事業者(キャリア)がISPサービスも提供している形態もある。
また、ISPが、回線事業者からの接続回線の卸提供を受けて、ISPサービスと接続回線サービスを一体化(ホールセール、whole sale)して提供する形態もあり、CATV、FTTH、ADSLなどブロードバンド回線に多く見られる。
2006年時点での主な提供サービスをまとめると
- インターネットへの接続性の提供
- メールアカウントの提供(社によっては家族用などの目的で、一つの契約で複数のアカウントを取れる場合もある)
- ホスティングサーバ(ウェブページ公開スペース)の提供
- アプリケーションサーバの提供
- ニュースサーバ(ネットニュース)の運営(BIGLOBE、@nifty、DTI、ODN、IIJ、Yahoo! BBのように中止したか当初より持たないところも多い)
- 独自ドメイン名(.jpドメイン、.comなどのgTLD、.tv(ツバル)など一部他国ドメインなど)取得手続きの代行
- いわゆる迷惑メールや、コンピューターウイルス入りメールのチェックサービス(一部)
- ダイナミックドメインネームシステム(一部)
- ポータルサイト運営
- 音楽や映像などのコンテンツサービスの提供(ビデオ・オン・デマンドなど、大手一部)
[編集] 無料プロバイダ
プロバイダの中には、接続料が不要なものもある。最も一般的なものはダイヤルアップ回線を利用した無料プロバイダで、電話料金のみ負担すれば使用できる。初期はライブドアなどが有名であったが、ブロードバンドの普及に伴って事業者が減少している。なお、専用ソフトをインストールし、広告を表示することによって収入を得るというビジネスモデルの事業者もある。
無料プロバイダには、有料プロバイダでサイトにアクセスして会員登録をした後、IDとパスワードを使ってログインするものと、全員共通のIDとパスワードが公開されているものがある。後者の場合は出先でいきなりネットに接続する際に利用価値が高い。
2006年現在は、平成電電の事業休止に伴い、多くの無料プロバイダでアクセス回線に利用していた回線が利用できなくなったため、複数の無料プロバイダが事業縮小してしまった。その代用としてソフトバンクやKDDIの回線をアクセスポイントとして提供した事業者もあるが、この回線は携帯電話から掛けられないため、モバイラーにとっては無料プロバイダの選択肢がほとんどない状況となっている。
[編集] 事業者としての課題
継続的に、技術の進歩および厳しい価格・サービス競争にさらされており、ISPの吸収合併などの再編も一部では見られている。
ダイヤルアップの時代には、パソコン通信と同様にオンラインサインアップにより接続設定し、すぐにサービスを利用開始できるようにし、新規ユーザの獲得に貢献した。また、CD-ROMによるオンラインサインアップ用のソフトウェアの配布(店頭、雑誌添付など)、新規購入PCへのバンドル(初期インストール済)などもある。
ブロードバンド回線の普及以降、ユーザへのISPサービス普及率の大幅な増加、それによる新規加入者数増の鈍化などが表面化し、サービスの差別化のほかに、ユーザを他のISPから乗り換えさせる方針に重点が置かれている(乗り換えたユーザへの料金割引など)。一方で、各地に多数存在したダイヤルアップ接続用アクセスポイント回線の縮小が、ナビダイヤルなどの特殊番号サービスを利用した「全国共通番号」などの形で進行している。
ブロードバンド回線の普及に伴い急増しているコンピューターウイルスやスパム(いわゆる迷惑メール)へのセキュリティ対策も、ユーザへのサービス提供も含めて重要となっている。ISPによっては他社とのサービスの差別化の一つとして、スパム対策サービスや、電子メールのウイルスチェックサービス、パケットフィルタリングサービスを有償または無償で提供している。
また、セキュリティだけでなく、ユーザ数の増加・一般化に伴い、ユーザ自身による不正、不法または違法な行為への対処も(一部限定的ながらも)求められている。
上記のような状況や、ブロードバンド化による通信量の増加などに対応する設備投資が負担となり、通信キャリア系列や一部大手電気機器メーカー系列などの大手事業者以外の中小事業者(いわゆる地場プロバイダ)は経営が苦しくなり、淘汰が進んでいる。
[編集] 日本の最大手プロバイダー4社
日本最高レベルの超高速バックボーン+トップレベルのコンテンツ量で1320万人のユーザーを抱えるフレッツ最大手。パソコン通信でニフティサーブと並ぶ大手であったNECのパソコン通信事業PC-VANとNECのISP事業旧Meshが前身。
「光はイチバンOCN」のCMで有名。NTTグループ企業のサービスだけにバックボーンは大容量。
パソコン通信時代からの老舗。ケーブルテレビ系プロバイダとも提携。
ADSL、光ファイバー回線などのブロードバンド回線事業とプロバイダ事業が一体となったサービス形態のみ。パソコン通信やインターネットのダイアルアップ接続の時代から遅れてのサービス開始だが、ADSL分野にて業界格安をPRし、大きくシェアを伸ばしてきた。
[編集] その他の大手プロバイダ
- ASAHIネット(朝日ネット) - パソコン通信から続く老舗。
- FUSION GOL(フュージョン・ネットワークサービス)
- DION(KDDI)
- DREAMNET
- DTI(ドリーム・トレイン・インターネット) - 元は三菱電機系であったが、パワードコムを経て東京電力へ親会社が変更された。
- hi-ho(パナソニックネットワークサービシズ) - 松下電器産業系
- InfoSphere(NTT PC コミュニケーションズ) - NTT系
- IIJ(インターネットイニシアティブ) - 日本の商用ISPの草分け。大企業・官公庁を主要顧客とする。
- ODN(ソフトバンクテレコム)- ソフトバンク系
- SANNET(NTTデータ 三洋 システム) - NTT、三洋電機系
- So-net(ソニーコミュニケーションネットワーク)- ソニー系
- TikiTikiインターネット(エヌディエス)
- ベッコアメ(GMOインターネットグループ) - 個人向け低価格ISPの草分け。
- ZERO(GMOインターネットグループ)
- ライブドア
- リムネット
- WAKWAK(NTT-ME)- NTT系
- ぷらら(ぷららネットワークス) - NTT系
- BB excite(エキサイト)
- interQ MEMBERS(GMOインターネットグループ)
- インターリンク
- 「eo」各種接続サービス(ケイ・オプティコム)
- とんとんみー - 沖縄県下のみで運営しているプロバイダー。
- CATV系プロバイダ
- J:COM
- 私鉄系CATV
- デオデオエンジョイネット(デオデオ)
他多数
[編集] 関連項目
- アプリケーションサービスプロバイダ (ASP)
- インターネットエクスチェンジ (IX)
- Server Side Includes (SSI)