出雲全日本大学選抜駅伝競走
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
出雲全日本大学選抜駅伝競走(いずもぜんにほんだいがくせんばつえきでんきょうそう)は、1989年に始まった全日本学連主催の駅伝競走大会。男子の大学駅伝としては全日本大学駅伝と箱根駅伝とともの3大大学駅伝の一つとされており、その中では最も歴史が新しい大会。
本大会の正式な略称は「大学選抜駅伝」(大会要項より)。ただし、一般的には「出雲駅伝」と呼称されることが多い。
目次 |
[編集] 沿革と特徴の概略
- 毎年体育の日に行われ、大学駅伝シーズンの幕開けを飾る大会とされる。三大駅伝の中では他と比べて全体の区間が短いため、順位変動がめまぐるしいスピード駅伝となる事が多い。
- 1年目は「出雲くにびき大学招待クロスカントリーレース」の名称で開催され、次走者にタッチするルールで行われていたが、2年目から通常の駅伝と同じように襷が用意されている。名称も2年目からは「ロードリレー」と変わり、1994年より現在の名称となった。
- 本大会は開催当初より他学生駅伝大会のステップレースという立場を踏まえており、若干のコース修正はあるものの「短距離のスピードレース」「10月開催」という立場を堅持している。また、三大駅伝の中で最も沿道の観衆は少ないが、地元全体で盛り上げていく機運が高いのも特徴のひとつである。
- この大会の結果により、国際千葉駅伝の選抜メンバーが選ばれている。
[編集] 出場資格
各地区学連が割り当て地区定数に応じたチーム数を主催団体に推薦する形で行なう。その推薦校の決定に際しては、その選考方法は各学連に一任されており、学連によってその方法は様々(選抜チームにしたり、別な駅伝大会の結果を参考にしたり、全日本大学駅伝と同一にするなど※1)であり、年次によっても変遷を重ねてきている。尚、各学連がその年に出場推薦するチームの他に、前回大会の3位までがシード校(第1回大会から導入)として出場出来るが、その出場は義務つけられている訳ではなく任意となる(前年大会で3位内の成績を収て次年大会に出場しなかった例は2006年大会までに7件存在するが、内4件は当該校が辞退した形で未出場となっている)。
- ※1:関東学連においては、同年1月に行なわれた箱根駅伝の上位10校を基本にして出場推薦を行なっている。
[編集] 代表枠数の変遷
- 1989年 10月に第1回大会を実施。代表枠は、北海道1(学連選抜)、東北1(学連選抜)、関東10、北信越1(学連選抜)、東海1、関西2、中四国2(1チームは学連選抜)、九州2の20代表で実施
- 1991年 関東からのシード枠出場1(早稲田大)と上海体育大学とサンフランシスコ大学を招待(同年のみ)を加えて23代表で実施
- 1992年 関東から出場辞退1(東海大)により19代表で実施
- 1993年 関東からのシード枠出場1(大東文化大)を加え21代表で実施
- 1995年 関東の順天堂大がシード枠出場を辞退。20代表で実施
- 1996年 関東の山梨学院大がシード枠出場を辞退。20代表で実施
- 1997年 関東の専修大がシード枠出場を辞退。20代表で実施
- 1998年 アイビーリーグ選抜チームの招待を開始。21代表で実施
- 2002年 韓国学生選抜を招待(同年のみ)。22代表で実施
- 2003年 関東の神奈川大がシード枠出場を辞退。21代表で実施
- 2004年 関東からのシード枠出場1(大東文化大)を加え22代表で実施
[編集] 歴代成績
年 | 回 | 優勝校 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 | 11位 | 12位 | 13位 | 14位 | 15位 | 16位 | 17位 | 18位 | 19位 | 20位 | 21位 | 22位 | 23位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1989年 | 1 | 日本大学 | 大東 | 山学 | 順大 | 中央 | 京産 | 東海 | 東農 | 日体 | 中京 | 駒澤 | 徳山 | 早大 | 福岡 | 北信越* | 東北* | 大体 | 中四国* | 北海道* | 久留米 | |||
1990年 | 2 | 大東文化大学 | 早大 | 山学 | 日大 | 中央 | 東海 | 国士 | 京産 | 順大 | 日体 | 法政 | 大経 | 福岡 | 徳山 | 中京 | 北信越* | 中四国* | 北海道* | 九国 | 東北* | |||
1991年 | 3 | 山梨学院大学 | 大東 | 日大 | 順大 | 東農 | 日体 | 早大 | 東海 | 京産 | 中央 | 鹿屋体 | 駒澤 | 徳山 | 福岡 | 中京 | 中四国* | 大経 | 東北* | 法政 | 上海体 | 北海道* | 北信越* | サンフラン |
1992年 | 4 | 山梨学院大学 | 中央 | 大東 | 順大 | 専修 | 東農 | 早大 | 日大 | 駒澤 | 鹿屋体 | 中四国* | 京産 | 福岡 | 広経 | 名商 | 北信越* | 北海道* | 関学 | 東北* | ||||
1993年 | 5 | 山梨学院大学 | 早大 | 中央 | 順大 | 日大 | 広経 | 京産 | 神奈川 | 日体 | 大体 | 専修 | 駒澤 | 法政 | 中四国* | 大東 | 北海道* | 鹿屋体 | 福岡 | 北信越* | 名商 | 東北* | ||
1994年 | 6 | 山梨学院大学 | 早大 | 順大 | 日大 | 神奈川 | 京産 | 中央 | 広経 | 日体 | 中四国* | 東海 | 専修 | 法政 | 中京 | 関大 | 福岡 | 鹿屋体 | 北海道* | 北信越* | 東北* | |||
1995年 | 7 | 山梨学院大学 | 早大 | 中央 | 神奈川 | 関大 | 日大 | 東海 | 広経 | 専修 | 京産 | 東農 | 東洋 | 日体 | 鹿屋体 | 北海道* | 中四国* | 第一工 | 東北* | 愛工 | 北信越* | |||
1996年 | 8 | 早稲田大学 | 中央 | 専修 | 京産 | 順大 | 東海 | 亜大 | 大東 | 日体 | 法政 | 中四国* | 東農 | 徳山 | 名商 | 福岡 | 東北* | 第一工 | 関大 | 北海道* | 北信越* | |||
1997年 | 9 | 駒澤大学 | 神奈川 | 中央 | 山学 | 順大 | 早大 | 京産 | 大東 | 東海 | 広経 | 東洋 | 日体 | 鹿屋体 | 立命 | 名商 | 北信越* | 福岡 | 中四国* | 北海道* | 東北* | |||
1998年 | 10 | 駒澤大学 | 山学 | 神奈川 | 京産 | 順大 | 拓殖 | 中央 | 第一工 | 大東 | 日大 | 早大 | 東洋 | 広経 | 鹿屋体 | IVY* | 中四国* | 東北* | 北信越* | 北海道* | 立命 | 愛工 | ||
1999年 | 11 | 順天堂大学 | 山学 | 駒澤 | 中央 | 神奈川 | 京産 | 大東 | 日大 | 第一工 | 東洋 | 東海 | 広経 | 名商 | 中四国* | 鹿屋体 | 早大 | IVY* | 立命 | 北海道* | 北信越* | 東北* | ||
2000年 | 12 | 順天堂大学 | 山学 | 駒澤 | 中央 | 神奈川 | 日大 | 帝京 | 早大 | 京産 | 第一工 | 東海 | 鹿屋体 | 広経 | IVY* | 中四国* | 法政 | 東北* | 関大 | 北海道* | 名商 | 北信越* | ||
2001年 | 13 | 順天堂大学 | 駒澤 | 神奈川 | 山学 | 日大 | 中央 | 法政 | 大東 | 京産 | 帝京 | 広経 | IVY* | 北海道* | 第一工 | 早大 | 中四国* | 関大 | 名商 | 東北* | 鹿屋体 | 北信越* | ||
2002年 | 14 | 山梨学院大学 | 神奈川 | 駒澤 | 第一工 | 大東 | 京産 | 早大 | 亜大 | 徳山 | 順大 | 中央 | 帝京 | 中四国* | 北海道* | 韓国* | 日大 | 鹿屋体 | 東北* | IVY* | 関大 | 北信越* | 愛工 | |
2003年 | 15 | 日本大学 | 大東 | 駒澤 | 東海 | 山学 | 順大 | 中央 | 東洋 | 日体 | 第一工 | 立命 | 中央学 | 徳山 | 京産 | 中四国* | 愛工 | 鹿屋体 | 東北* | 北海道* | IVY* | 北信越* | ||
2004年 | 16 | 日本大学 | 駒澤 | 中央 | 東海 | 日体 | 順大 | 法政 | 大東 | 京産 | 神奈川 | 立命 | 東洋 | 徳山 | 東北* | 中四国* | IVY* | 亜大 | 北信越* | 第一工 | 福岡 | 愛工 | 北海道* | |
2005年 | 17 | 東海大学 | 中央 | 日体 | 駒澤 | 日大 | 第一工 | 京産 | 亜大 | 法政 | 順大 | 中央学 | 神奈川 | 立命 | IVY* | 徳山 | 東北* | 北海道* | 中四国* | 北信越* | 中京 | 鹿屋体 | ||
2006年 | 18 | 東海大学 | 日大 | 東洋 | 日体 | 駒澤 | 第一工 | 法政 | 亜大 | 順大 | 立命 | 山学 | 中央 | IVY* | 京産 | 日文 | 徳山 | 東北* | 名大 | 北海道* | 中四国* | 北信越* | ||
年 | 回 | 優勝校 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 | 11位 | 12位 | 13位 | 14位 | 15位 | 16位 | 17位 | 18位 | 19位 | 20位 | 21位 | 22位 | 23位 |
※略称解説
- 日大→日本大、大東→大東文化大、山学→山梨学院大、早大→早稲田大、駒澤→駒澤大、順大→順天堂大、東海→東海大、京産→京都産業大、東農→東京農業大、日体→日本体育大、大体→大阪体育大、国士→国士舘大、大経→大阪経済大、九国→九州国際大、鹿屋体→鹿屋体育大、上海体→上海体育運動技術学院、サンフラン→サンフランシスコ州立大、広経→広島経済大、名商→名古屋商科大、関学→関西学院大、立命→立命館大、愛工→愛知工業大、亜大→亜細亜大、第一工→第一工業大、関大→関西大、日文→日本文理大、名大→名古屋大、北信越*→北信越地区学連選抜、東北*→東北地区学連選抜、中四国*→中四国地区学連選抜、北海道*→北海道地区学連選抜、IVY*→アイビーリーグ選抜
[編集] コースの特徴
[編集] 見どころ
出雲大社前(島根県出雲市)→市立平田図書館前→島根ワイナリー前→出雲ドーム
何しろ1区間が最大10.2kmと、三大大学駅伝の中で一番距離が短いコース。
コースも全体的に大きなアップダウンがあまりないため、接戦、もしくはスピードのあるレース展開が期待できる。
[編集] 1区(8.0km)
(スタート)出雲大社→(大鳥居)→(浜山公園)→出雲市役所前中継所
- ポイントは出雲大社の大鳥居までの下り坂から浜山公園まで。下りで差を離す者も入れば、浜山公園の細かいアップダウンで引き離す者もいる。区間の最初に仕掛けどころが集中しているが、年によっては選手同士が牽制し合い、中継所まで団子状態になることも。
- なお、1区のコースは出雲ドーム入り口まで最終6区と重複している。
[編集] 2区(5.8km)
出雲市役所前→(神立橋)→斐川直江中継所(島根県斐川町)
- コース途中の神立橋で、スサノオノミコトのヤマタノオロチ退治伝説で有名な斐伊川をわたる。大きなアップダウンはこの橋の前後ぐらい、というフラットな区間。国道9号上を走る。
- スタートダッシュから続くスピードが見もの。短い区間ながらエース級選手の投入も見られる。
[編集] 3区(8.5km)
斐川直江→(西代沢)→(国富交差点)→(旧平田市内)→市立平田図書館前中継所(島根県出雲市)
- 今大会で2番目に長い区間。この3区と最終6区とでどちらにエースを投入するかも戦略の一つになりそうだ。
- 大会全体を通して田園地帯を走るために風をもろに受けやすい。風が強い年は横風、向かい風に注意したい。
[編集] 4区(6.5km)
市立平田図書館前→(一畑電車線路沿い)→鳶ケ巣城前中継所
- 選手から見て右に北山山系の山々、左に斐川平野を臨む平坦な道。最後の1kmのアップダウンが勝負のしどころ。
- 風が強い年は4・5区は追い風になりやすい。
[編集] 5区(5.0km)
鳶ケ巣城前→島根ワイナリー前中継所
- 全区間の中でもっとも短い区間だが、アンカー対決を有利にするための重要なつなぎ区間。ここでできるだけトップと差を詰めて、アンカーにたすきを渡したいところ。
- コースは全体を通してうねるような細かいアップダウンが続く。距離が短くはあってもペース配分に注意したい。
[編集] 6区(10.2km)
島根ワイナリー前→(出雲大社大鳥居)→(浜山公園)→出雲ドーム(ゴール)
- アンカー対決の舞台は大会中最も長い10.2km。距離が短い大会だけに、この区間で何度も首位交代が起こっている。その確率は実に44.4%(2006年現在、18回中8回)。
- コースは最初上って出雲大社前を左折すると下りに転じる。浜山公園のアップダウンを過ぎて2度左に折れれば、ゴールの出雲ドームが見えてくる。
[編集] メディア報道について
[編集] テレビ中継体制
[編集] 解説
- 2006年
- 澤木啓祐(順天堂大学教授、日本陸連強化委員長・放送センター解説)
- 金哲彦(ニッポンランナーズ理事長、日本陸連女子マラソン・長距離強化部長・第1中継車解説)
[編集] 実況
[編集] 中継所実況
[編集] インタビュー
- 2006年
- 平井理央(フジテレビ)
[編集] 大会協賛
[編集] 賛助
- トヨタ自動車(オフィシャルカーとして毎年協力している。大会協賛・富士通の子会社「富士通テン」製カーディオを担当をしている)
- キリンビバレッジ(2000年~)
- タマホーム(2006年)
- サッポロビール(1989年~1999年)
- 三和酒類(iichiko)(1990年~2001年)
- スズキ(1992年~1996年)
- ベルーナ(2003年)
- 日産自動車(1997年)
- クリスタル(2004年)
- 大和證券グループ(1999年)
- ジャパンエナジー(1999年)
- 日本コカ・コーラ(1994年)
- ゼネラル石油(1990年~1992年)
[編集] その他の話題
- 有力校の多い関東地区の大学に関しては、関東学生駅伝においては箱根駅伝がシーズンの最終目標であり、調整や新人起用など、言わば「試し」という感覚で臨んでくる大学もある。また、シード権を獲得しても年明け実施の箱根駅伝の成績次第では翌年の参加を辞退すチームがたまに出るのも同様の理由による。特に箱根駅伝のシード校が10校になる2003年までは、関東地区枠10校のうち、箱根駅伝で10位だった(=シード権を失った)大学がチームの二軍クラスの選手を送り込んで、予想通りの大敗を喫した事が多かった。これは出雲駅伝の約2週間後に箱根駅伝の予選会が控えている為で、チームの目標をそこにしているチームが多いことにある。但し、この件は大会そのものに問題があるわけではなく、参加チーム個々の事情(特に関東学連所属校)による取り組み方に関することなので、むしろ大会の特徴を出している一要素になっているともいえる。