小田急クヤ31形検測電車
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クヤ31形検測電車(クヤ31がたけんそくでんしゃ)とは、2004年(平成16年)3月に登場した小田急電鉄の総合検測車。愛称名はTECHNO-INSPECTOR(テクノインスペクター)。
鉄道史上初の架線と軌道の検測を1両に集約した車両。車体はステンレス鋼を採用している。製造費用は車両、検測機器類をあわせて約8億円。
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[編集] 概要
工務部で使用していた軌道検測車は1973年に導入したマチサ社製PV-6で、夜間走行用の重機械式軌道検測車で、導入後既に30年が経過し車体、検測装置の老朽化が進み、検測システムも陳腐化し、検測速度が25km/hと低速で1回当たりの全線の軌道狂い検査は夜間7日間を要していた。
トロリ線を主体とした検査は、夜間に人力で実施し、検測の項目も限られていた。
架線と軌道の検測を短期間で終わらせることが目的で、2003年9月18日に東急車輛製造にて完成、搬入された。このクヤ31の導入により、従来は夜に別々に行っていた検測を、日中に通常の列車と同じ速度で行えるようになった。
[編集] 車体
車体は3000形をベースにしているが、検測車両で旅客の乗降がないことから、また室内妻側にトロリ摩耗測定室、架線との離線状態測定の高圧室を設けたため、ドアは1箇所のみ、側窓も片側2箇所となっている。台枠は3000形Tc2車と同等であるが、軌道測定装置のために3000形と同じ車体高さでは構成できないため車体高さを1150mmとした。 当初は無塗装であったが、公募の愛称名「TECHNO-INSPECTOR」に合わせた塗装を2004年3月に施して今に至っている。
床面は従来の床面とさらに250mm上にも歩行用の床面を設け、その二重床構造間に軌道高低差を測定する基準となるレーザー光を車体全長に通している。
台車は2台車方式とし、3000形の台車をベースとしボルスタレスとした。軸箱の円弧運動を抑えるべく軸ハリ支持方式から円筒積層ゴム支持方式とした。
ユニットブレーキは車両重量の関係からM車用のものを搭載した。
総合検測車にモニタ装置を搭載していないから運転台正面のモニタ表示画面の位置にBP、SAPの圧力計を配した。
ドアは個別扱いで、併結している1000形車とのドア一斉開閉機能を無くしたため、車掌スイッチは無い。
運転室正面上部の行先表示器は「検測」文字の固定表示とした。
尚、愛称の「TECHNO(テクノ)」は技術、「INSPECTOR(インスペクター)」は検査するものと言う意味。
現在1両在籍。
[編集] 運用
なお、クヤ31は動力を持っていない為、クヤ31単独では動けず、電源供給改造された1000形が新宿方で牽引または推進する形態をとる。牽引対応車は4両編成1本(1051F)と6両編成2本(1751F、1752F)。専ら1051Fが用いられ、同編成が検査等で入場した際に6両編成を用いるのが基本となっている。牽引する1000形との併結運転における基本性能として一定加速度領域までの加速度2.8km/h、制動減速度は初速60km/hにおいて、常用4.0km/h、非常4.5km/h、最高運転速度110km/hとした。
[編集] 鉄道模型
鉄道模型会社クロスポイントから、2006年11月にNゲージで発売された。
[編集] 関連項目
- 小田急電鉄の車両 (■カテゴリ) ■Template ■ノート
- 特急用車両
- ロマンスカー専用車両
- 一般用車両(吊り掛け駆動車)
- 一般用車両(高性能車)
- モノレール
- 非旅客用車(事業用車)