小田急30000形電車
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30000形電車(30000がたでんしゃ)は、小田急電鉄の特急形車両(ロマンスカー)。愛称は「EXE(Excellent Express)」である。1996年(平成8年)3月に営業運転を開始した。同年度グッドデザイン商品選定。
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[編集] 誕生の背景
展望席を設け、人気を博した3100形NSE車も登場から30年を経過し、経年劣化が目立つようになってきたため、その置き換えとして製造された。
後述するが、多様な運用に対応するために連接車の採用は見送られ、20mボギー車10両編成とし、小田原方6両と新宿方4両に分割できるような構成とされた。
ちょうど7000形LSE車の更新時期と重なったこともあり、1996年・1997年(平成9年)・1999年(平成11年)と3回に分けて10両編成(6両編成 + 4両編成)7本(計70両)を投入し、3100形NSE車と置き換えていった。
[編集] 従前のロマンスカーとの相違
本形式は、観光輸送のほかに通勤輸送・中間駅までの輸送にも配慮したことから従来のロマンスカーのシンボルともいうべき展望席や20000形「RSE」に設定されたスーパーシートは採用しなかった。ただし、展望席こそ採用しなかったものの運転室背後の仕切り窓を大型化しているために運転室越しの前面展望は一応可能であるが、非貫通構造車の前面展望は運転席が高い位置にあるため、ほとんどできない。
そのため、登場時は「ロマンスカーらしさ(華やかさ)がない」といった多数の否定的意見があった。そして、歴代ロマンスカーが5代続けて受賞していた鉄道友の会ブルーリボン賞を受賞できなかった。得票数は最多だったが「該当なし」票がそれを上回ったため、選考対象となった1997年の同賞は該当車なしとされた。もっとも本来の目的である通勤輸送などでは、20m車10両編成になったことによる着席サービスの向上が図られているが、それでも「(小田急)ロマンスカーといえば展望席のある特急」というイメージが多くの人にあったため、箱根観光へのテコ入れもあり、次世代車両である50000形「VSE」では展望席を復活させることとなった。
一方で、1996年度通商産業省(当時)グッドデザイン商品(現在は財団法人日本産業デザイン振興会所管・グッドデザイン賞)に選定されており、その従来とは異なるデザインを評価する鉄道ファンも少なくない。
この他、歴代ロマンスカーにはすべてミュージックホーンが設置されていたが、本形式には設置されなかった(50000形VSEで復活)。
変わったところでは、3000形SE車以降の歴代ロマンスカーの中では唯一Nゲージ鉄道模型で日本の一般的な模型店で平均的な価格で購入できる通常完成品として商品化されていない形式である(2007年3月現在)。
[編集] 運用など
車両運用上分割・併合ができ、連結時は前後の編成を行き来することができる。分割・併合のメリットである多客時や閑散時の波動輸送にも対応できるものである。
登場時は、分割・併合機能を十分に発揮して、当初は町田、後に相模大野で「えのしま」を分割して小田原線と江ノ島線の双方へ効率良く運用していたが、近年は日中の運用も減り、JRとの競争で時間短縮のために10両編成のまま運転される列車がほとんどとなっている。町田駅で分割・併合を行っていた時期は、町田~相模大野間で2本(箱根方面の6両と江ノ島方面の4両)が続行する形となる上に町田駅での分割・併合作業で停車時間を通常よりも長くしなければならず、このことが後発列車の遅れにつながるといった問題もあった。
2007年(平成19年)現在、分割・併合作業は「さがみ」「はこね」と「えのしま」が併結の列車の場合(「ホームウェイ」を含む)、相模大野で行われる他、「はこね」などの単独列車についても箱根登山線内に20m級車両の10両編成が入線できない(20m級車両換算で7両分しかない)ことから、小田原で新宿方4両が切り離される。それ以外の「さがみ」や土曜・休日の単独の「えのしま」などは10両編成で全区間運転される。また、「ホームウェイ」は大半の列車が本形式で運転される。2004年(平成16年)12月11日のダイヤ改正までは定期列車で新宿~箱根湯本間を6両編成で運行する単独運用が存在したが、現在は消滅している。
2007年3月18日には臨時ロマンスカー「湘南国際マラソン」号に30054編成+30254編成が充当された。
[編集] 内・外装
- 内・外装は、小田急百貨店インテリアセクションが担当した。
- 内装は誤乗防止を兼ねて、
- 車体外装のブロンズカラー(小田急では「ハーモニック・パールブロンズ」と称する)は、光の加減によって様々な色をイメージさせるものである。
- 3次車(第5~7編成)では、座席表地の色分けを廃止し、ダークブラウンとオレンジのモダンなデザインが採用された。後に1・2次車も3次車に準じた座席表地に交換されている。この3次車では中肘掛けが廃止されたり、肘掛けの布張りを中止するなどのコストダウンを図っている。
[編集] 車内設備
[編集] 車内案内
- 座席定員は584名である。
- 号車番号/設備他
- 1/運転室・禁煙席(56席)
- 2/禁煙席(60席)・男女共用和式トイレ・女性専用洋式トイレ・男性小用トイレ・洗面所
- 3/禁煙席(56席)・公衆電話・車内販売カウンター・清涼飲料水自動販売機
- 4/禁煙席(68席)・公衆電話
- 5/禁煙席(54席)・車椅子対応禁煙席(2席)・車椅子対応洋式トイレ・男女共用トイレ・洗面所
- 6/運転室・禁煙席(60席)
- 7/運転室・禁煙席(60席)
- 8/禁煙席(54席)・車椅子対応禁煙席(2席)・男女共用和式トイレ(※)・女性専用洋式トイレ・男性小用トイレ・洗面所
- 9/禁煙席(56席)・公衆電話・車内販売カウンター・飲物自動販売機
- 10/運転室・禁煙席(56席)
- ※:8号車の男女共用和式便所は車椅子非対応
[編集] 歴史
- 1995年12月11日 第1編成新宿方4両(30051×4)小田急線入線。
- 1995年12月19日 第1編成小田原方6両(30251×6)小田急線入線。
- 1996年1月23日 第1編成(30001F)竣工。
- 1996年1月30日 第2編成新宿方4両(30052×4)小田急線入線。
- 1996年2月5日 第2編成小田原方6両(30252×6)小田急線入線。
- 1996年2月20日 第2編成(30002F)竣工。
- 1996年3月23日 第1・2編成(30001F・30002F)就役。
- 1997年4月15日 第3編成新宿方4両(30053×4)小田急線入線。
- 1997年4月19日 第3編成小田原方6両(30253×6)小田急線入線。
- 1997年4月25日 第3編成(30003F)竣工。
- 1997年5月15日 第4編成新宿方4両(30054×4)小田急線入線。
- 1997年5月19日 第3編成(30003F)就役。
- 1997年5月20日 第4編成小田原方6両(30254×6)小田急線入線。
- 1997年5月27日 第4編成(30004F)竣工。
- 1997年6月23日 第4編成(30004F)就役。
- 1999年3月26日 第5編成(30005F)小田急線入線。小田急線内自力回送。
- 1999年4月8日 第5編成(30005F)竣工。
- 1999年4月21日 第5編成(30005F)就役。
- 1999年5月15日 第6編成(30006F)小田急線入線。小田急線内自力回送。
- 1999年5月31日 第6編成(30006F)竣工。
- 1999年6月10日 第7編成(30007F)小田急線入線。小田急線内自力回送。
- 1999年6月12日 第6編成(30006F)就役。
- 1999年6月23日 第7編成(30007F)竣工。
- 1999年7月6日 第7編成(30007F)就役。
- 2002年2月1日~3月31日 各編成の1号車にて「@TRAIN」と題して小田急ロマンスカー車内でIPv6を用いた無線LANインターネット接続実験が行われる。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
小田急ロマンスカー |
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現行列車 |
「スーパーはこね」・「はこね」・「さがみ」・ 「えのしま」・ 「あさぎり」・ 「ホームウェイ」・ 「ニューイヤーエクスプレス」 |
現用車両 |
7000形「LSE」・ 10000形「HiSE」・ 20000形「RSE」・ 30000形「EXE」・ 50000形「VSE」 |
導入予定車両 |
過去の車両 |
1600形・ 1700形・ 1910形・ 2300形・2320形・ 3000形「SE」・「SSE」・ 3100形「NSE」・ キハ5000形・キハ5100形(御殿場線直通用) |
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