小田急8000形電車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
8000形電車(8000がたでんしゃ)は、小田急電鉄の通勤形電車。
目次 |
[編集] 概要
1982年(昭和57年)から1987年(昭和62年)にかけて製造された地上専用車であり、快速急行から各停まで使用できる汎用車である。4両編成と6両編成が各16本(4両編成64両・6両編成96両)、合計で160両が製造された。
車体は普通鋼に加えて高耐候性鋼を使用し、台枠と外板を突き合わせ・連続溶接とするなど旧・日本国有鉄道(国鉄)201系量産車で採用された耐食性の構造としたことに加え、屋根および床板にステンレスを使用し、側窓の完全ユニット化をするなど、防蝕対策を施している。
主回路には9000形以来の三菱電機製界磁チョッパ制御装置を採用したが、東京急行電鉄8000系列や京王帝都電鉄(現・京王電鉄)6000系などで採用された日立製作所製界磁チョッパ装置と異なり、弱め界磁起動や電流0A制御を行わないという差異がある。主制御器はFCM-148-15MDRHで制御段数は直列13段、並列11段、制動13段である。主電動機はMB-3282-ACで、出力は端子電圧375V時140kWである。基本的な走行性能は5000形・5200形と同等とされ、歯車比は85:16(5.31)である。
抵抗器は抵抗制御の領域が加速時の起動から35km/h程度までと狭いことと、停止時は発電ブレーキではなく回生ブレーキを常用するために、送風ブロアーによる強制冷却方式だった5000形や9000形と違い自然冷却方式となり、ブロアーがない分静粛化が図られている。
[編集] 改造
落成当初は短かった客用扉横の握り棒を長いものに交換する工事が、2000年(平成12年)頃に全車に対して施工された。
翌2001年(平成13年)頃からは、後述のリニューアル車以外の原型の車両でも座席のバケットタイプへの改造を施工した。1986年(昭和61年)まで製造の編成の一部は従来通りのブルー系であり、1987年最終製造車の8064~8066Fと8266Fは赤色シートからピンク系のバケットシートへ変更、その他の原型編成は従来のブルー・赤色系のシートのままである。
2002年(平成14年)末から2003年(平成15年)初頭にかけては前面および側面の行先表示器と種別表示器の英字表記の追加を、さらに2004年(平成16年)からは快速急行と区間準急の設定に伴う種別表示器の2度目の字幕交換などが未更新編成を対象に行われている。
[編集] イベント編成
- 8000形は数々のイベント編成が登場した。
- 中でも目立ったのは、1984年(昭和59年)春に落成した8052Fと8257Fの2本が「走るギャラリー号」として白・赤・黄・茶の4色塗装となって運行された。茶色は小田急創業時の車体色から、黄色は戦後の特急色から、赤は現在の特急ロマンスカーのイメージカラーに由来するものであった。その後、先頭車の前面にカンガルーのイラストを配したヘッドマークを装着した「走るギャラリー・ポケット号」に改名し、1987年に白と青帯の標準塗装に変更した。
- 1987年3月には、8054F・8055F・8253F・8262Fの4編成が向ヶ丘遊園で開催された『蘭・世界大博覧会』に合わせて標準塗装に車体側面中央・側窓付近に赤や紫色など5色のストライプを加えたデザインとなり、車体には『蘭・世界大博覧会』と表記された上で「オーキッド号」として運行された。博覧会終了後はストライプを残したままで6月まで「フラワートレイン」として運行された。この4本の編成については、その後も小田急グループで広告を統一した「イベントカー」として運行されている。
- 2002年10月~11月には、小田急百貨店開業40周年記念として8253Fほか一部編成の側面に赤と青のリボン柄の装飾が施された。
- 標準塗装編成においても、8251Fが「懐かしの写真展号」、8255Fが小田急百貨店でのイベントに合わせて「鉄道展号」として運転されていた。
[編集] その他
- 当形式が運行開始した際、ほぼ同時に復元された小田原急行鉄道モハ1形電車とセットで記念乗車券が発売された。
- 1987年2月頃に特急車が事故の影響で車両数が不足したため、特急のダイヤで代走を行ったことがあるが、この時には8000形が充当された。種別表示器には「臨時」と表記されていた。
- 2000形や3000形8両固定編成の落成と4000形・9000形4両固定編成の廃車で、2004年12月11日の区間準急の運用をもって8000形4両編成を2本連結した8両運用は終了した。
[編集] リニューアル編成
登場時より主だった大きな変化もなく使用されてきたが、2002年度より6両編成車のリニューアル工事を開始している。以下、リニューアル工事出場順、前者との変更順に表記する。
- 2002年(平成14年)度:8251F・8255F(末尾のFは「編成」を意味する英単語Formationの頭文字)
- 前面と側面の行先表示器のLED化、側面行先表示器の形状変更、つり革の交換(丸形→三角形)、座席のバケットシート化、車内乗降扉上へのLED案内表示器、車いすスペース、自動放送装置の設置、通過表示灯の撤去のほか、小田原寄りの先頭車クハ8550形の電気連結器の撤去などが行われた。その後自動放送に英語放送を追加した。主回路は界磁チョッパ制御を存置した。また、同時にパンタグラフを菱形(PT42形)からシングルアーム形に交換した。
- 2003年(平成15年)度:8254F
- VVVFインバータ制御(三菱電機製2レベルIPM)、電気指令式ブレーキに装置を変更。運転台のマスコンを左手操作式ワンハンドル形に、3号車のデハ8400形(M、電動車)を付随車(T、サハ)とし、MT比は4M2Tから3M3Tへ、また同号車のパンタグラフを撤去し、編成で2基となったほか、付随車化された車両は元の車両番号の下2桁に50をプラスされた。運転席の日除けは遮光パネルからカーテンに交換した。また、この8254Fは8000形最後の菱形パンタグラフ装備車両だった。
- 2004年(平成16年)度 8256F・8258F・8257F
- 前年度の8254Fとほぼ同仕様であるが、8257Fからは電気連結器を2段式とした。
- 2005年(平成17年)度 8259F・8253F・8252F
- 8259Fは戸閉解除スイッチを設置。
- 8253Fは左手操作式ワンハンドルマスコンの形状変更と優先席へのスタンションポールの設置。
- 8252Fは前面と側面の行先表示器がフルカラー式LEDとなった。
- 2006年(平成18年)度 8261F・8262F・8266F
- 2007年(平成19年)度 8260F(入場中)
- 2007年度も更新は継続される。
[編集] 今後の予定
小田急鋼製通勤車の中では最も新しく、前記したが2006年度も6両編成3本に対してリニューアル工事が行われており、これまでに12編成が施工されている。未施工の6両編成4本と4両編成についても、今後の更新時に前面と側面の行先表示器をフルカラーLED式に取り替える予定である。
[編集] 鉄道模型
Nゲージで、グリーンマックスより小田急9000(8000)形未塗装キットとして販売されている。
[編集] 歴史
[編集] 関連項目
- 小田急電鉄の車両 (■カテゴリ) ■Template ■ノート
- 特急用車両
- ロマンスカー専用車両
- 一般用車両(吊り掛け駆動車)
- 一般用車両(高性能車)
- モノレール
- 非旅客用車(事業用車)
カテゴリ: 鉄道車両 | 小田急電鉄 | 鉄道関連のスタブ項目