小田急20000形電車
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20000形電車(20000がたでんしゃ)は、小田急電鉄の特急形車両(ロマンスカー)。愛称は、「RSE(Resort Super Express)」。1991年(平成3年)3月16日に営業運転を開始した。1992年度鉄道友の会第35回ブルーリボン賞受賞。
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[編集] 概要
新宿駅~御殿場駅間の連絡急行「あさぎり」として使用されていた3000形「SSE」の置換え用として、1990年(平成2年)12月に第1編成が、1991年(平成3年)1月に第2編成が竣工し、7両編成2本、計14両が日本車輌製造・川崎重工業で製造された。
相互乗入となる東海旅客鉄道(JR東海)の371系電車と仕様を揃えるために、展望席・連接車体・走る喫茶室など従来のロマンスカーのアイデンティティーともいえる基本構造を捨て去り、20mボギー車の7両編成となった。
また、中間の3号車と4号車がダブルデッカー構造なのが特徴となっている。その他の5両については10000形「HiSE」に引続き、ハイデッカー構造が採用された。
制御器は371系の界磁添加励磁制御とは違って10000形の抵抗制御を踏襲しており、電動車(M車)と付随車(T車)の比率(MT比)は4:3、すなわち4M3Tである。ただし、抵抗器は御殿場線の連続下り勾配で抑速ブレーキを多用する事から、10000形の自然冷却方式から強制冷却式となった。
[編集] 外観
車体塗装は10000形同様ホワイトを基調にしているが、淡い色調のブルーとピンクのラインをあしらい、「リゾートスーパーエクスプレス」としての華やかさを演出している。
愛称表示器は従来の幕式からLED式に変更され、フロントノーズに設置した。また、従来のロマンスカーと異なり、側扉上部にもLED式の表示器を設置しており、「あさぎり」では列車名と行先、その他列車は列車名を表示する。
[編集] 車内
「あさぎり」は新宿駅-沼津駅約2時間の乗車となることから、従来のロマンスカーより快適性の向上に力が注がれている。
[編集] ハイデッカー車
普通車の座席は前後間隔(シートピッチ)を1,000mmに拡大し、フリーストップリクライニングシートを採用した。それまでのロマンスカーになかった中肘掛や足掛も設置した。
また通路だけでなく座席の足元にまでカーペットが敷き詰められているが、編成の前後でデザインが若干異なっている。沼津・箱根湯本方2両(1・2号車)は「海」をテーマに青い波の模様が施されている。新宿方3両(5・6・7号車)は「都会」をテーマに幾何学模様が並んだものとなっている。
2・6号車に便所(2号車 洋式・6号車 和式)・男子小便所・洗面所が設けられている。定員は5号車は68名でその他は60名。
[編集] ダブルデッカー車
ダブルデッカー車(3・4号車)は「森林」をテーマにしたインテリアとなっている。
2階部分はJRのグリーン車に相当するアコモデーションとなっており、森の木々を思わせる小さな三角形の模様を配したモケットの座席が横2列+1列(海側が1列席)・1,100mmピッチで配置されている。ホームレベルで設置されている階下席用の非常口が2階部分に張出しているために1列席は3号車7A・4号車5Aが欠番となっている。新造当初は液晶テレビやオーディオサービスを装備していたが、のちに撤去されている。小田急線内を運行するときには、「スーパーシート」と称している。定員は各32名。
3号車1階部分については普通車となっており、ハイデッカー車と同じ座席が横2列+1列(海側が1列席)・1,100mmピッチで配置されている。定員は18名。
また、4号車1階部分についてはセミコンパートメント席となっている。座席トやカーペットは落着いたグリーンを基調に木の葉のイラストをちりばめたデザインでまとめられている。利用状況に変化があった場合には3号車と同じ座席配置に容易に変更できるようにしているが、現在までの所、そのような事態にはなっていない。定員は4名×3室=12名。
[編集] 車内案内
- 座席定員は402名(うち、スーパーシート≪グリーン席≫64名)である。
- 号車番号/設備他
- 1/運転席・禁煙席(60席)
- 2/禁煙席(60席)・洋式便所・男子小便専用便所・洗面所
- 3(1階)/禁煙席(18席)・車内販売カウンター・公衆電話
- 3(2階)/スーパーシート(グリーン車)禁煙席(32席)
- 4(1階)/セミコンパートメント禁煙席(12席)・車内販売カウンター・公衆電話
- 4(2階)/スーパーシート(グリーン車)禁煙席(32席)
- 5/禁煙席(68席)
- 6/禁煙席(60席)・和式便所・男子小便専用便所・洗面所
- 7/運転席・禁煙席(60席)
なお、2007年3月17日までは、4~6号車まで喫煙席だった。
登場から15年が経過し、その間に「EXE」30000形や「VSE」50000形が新製されたが、20000形の座席がフリーストップリクライニングシートであることやハイデッカー車であることから、乗心地や座り心地が一番快適だという声も多い。
[編集] 使用列車
- 2007年3月現在、以下の列車に使用される。
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- 「あさぎり」 基本的には上段の列車に限定されている。但し、371系が検査等で使用できない場合には下段の列車にも使用される。
- あさぎり1号→あさぎり4号→あさぎり5号→あさぎり8号→ホームウェイ71号
- あさぎり2号→あさぎり3号→あさぎり6号→あさぎり7号
- 小田急線内特急運用。ただし、「あさぎり」下段列車の運用にまわると小田急線内特急としては使用されない。
- 平日:ホームウェイ73号
- 休日:はこね1号→はこね2号→はこね15号→はこね16号→はこね29号→はこね30号→はこね43号→はこね44号
- 「あさぎり」 基本的には上段の列車に限定されている。但し、371系が検査等で使用できない場合には下段の列車にも使用される。
- 「スーパーはこね」・「はこね」でもかつてはほぼ毎日使用されていたが、50000形「VSE」・10000形「HiSE」・7000形「LSE」等展望席連結車両への運用等の兼合いから、平日は運行されないようになった。
- 営業運転では東海道本線は走行しないが、営業開始前の訓練運転の際には、三島駅~静岡駅間を走行している。また、1992年10月25日には、団体列車「カントリーインアサギリ号」として、新宿駅から身延線の富士宮駅まで運行している。
[編集] 歴史
- 1990年12月19日 第1編成(20001F)小田急線入線。
- 1990年12月24日 第1編成(20001F)竣工。
- 1991年1月19日 第2編成(20002F)小田急線入線。
- 1991年1月26日 第2編成(20002F)竣工。
- 1991年3月5日 新宿駅で、「新型特急車20000形」竣工式を挙行。
- 1991年3月10日 経堂検車区唐木田出張所(当時)で、撮影会を実施。
- 1991年3月16日 第1・2編成(20001F・20002F)就役。
- 1992年8月29日 1992年鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。新宿駅→唐木田駅間、受賞記念列車運行。
- 1992年10月25日 団体列車「カントリーインアサギリ号」が、新宿駅~(御殿場線経由)~身延線富士宮駅間で運行される。
- 2007年3月18日 この日よりすべての車両(スーパーシート・セミコンパートメント含む)が禁煙となる。
[編集] 関連商品
MODEMOがNゲージ鉄道模型で20000形を商品化している。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
小田急ロマンスカー |
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現行列車 |
「スーパーはこね」・「はこね」・「さがみ」・ 「えのしま」・ 「あさぎり」・ 「ホームウェイ」・ 「ニューイヤーエクスプレス」 |
現用車両 |
7000形「LSE」・ 10000形「HiSE」・ 20000形「RSE」・ 30000形「EXE」・ 50000形「VSE」 |
導入予定車両 |
過去の車両 |
1600形・ 1700形・ 1910形・ 2300形・2320形・ 3000形「SE」・「SSE」・ 3100形「NSE」・ キハ5000形・キハ5100形(御殿場線直通用) |