慰安婦
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慰安婦(いあんふ)とは旧日本軍が利用した慰安所において、専ら軍人に対する売春に従事した婦女の総称である。過去には1973年の千田夏光の著書『従軍慰安婦』(双葉社刊)の影響で従軍慰安婦と呼ばれていたが、1990年代に「当時、従軍慰安婦という呼び名は存在しなかった」という主張の元で慰安婦という呼び名が定着し、現在に至っている。他に軍事性奴隷という呼び名も提案されたが、一部を除いてほとんど定着していない。現在の韓国では「挺身隊(정신대)」という呼び名で呼ばれているが、第二次大戦中に日本に存在した女子挺身隊とは別のものである。当時の文献によると、慰安婦のほかに「酌婦」「(慰安所)従業婦」「(慰安所)稼業婦」「醜業婦」などという呼び名も存在し、また現地の軍人は慰安婦のことを「ピー」という蔑称で呼んでいたと言われている。また、海軍では特要員の名目で戦地に送られたとも言われている。
ちなみに軍人に対する売春に従事した婦女は日本に限らず、世界各国で当然のように存在したのである。自国にも存在したにもかかわらず日本のケースのみを韓国や中国が殊更取り上げることについては、政治的なカードとして利用するプロパガンダであると指摘されている。
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強制連行問題
1970年代に、1973年の『従軍慰安婦』の他、1976年の『天皇の軍隊と朝鮮人慰安婦』(金一勉著:三一書房刊)や1977年の『朝鮮人慰安婦と日本人』(吉田清治著:新人物往来社刊)が出版された。その中で彼らは、当時自分を含む日本軍人が朝鮮の女性を強制連行し慰安婦にしたと証言。それに伴い、韓国では尹貞玉らが挺身隊(吉田清治が著作の中で用いた言葉)の調査を開始することになる。
1982年には吉田清治が第一次樺太朝鮮人裁判で朝鮮人の奴隷狩りを証言。1991年には韓国で初めて元慰安婦であることを証言した金学順が日本政府に謝罪を求め東京地裁に提訴するなど、慰安婦についての「強制連行」は日韓問題となっていった。
そんな中、強制連行についての捏造発覚、秦郁彦が吉田証言を虚偽と指摘するなど(吉田自身が矛盾を認めた)、「強制連行はなかった」とする主張が目立ち始めた。1990年代、慰安婦の強制連行について議論が盛り上がることとなる。最終的に、「狭義の強制連行はなかった」「従軍慰安婦という呼び名は使われていなかった」との確認で、日本国内では一旦議論は幕を閉じたが、強制連行肯定派(主に自虐史観派の左翼の主張)は「強制性はあった」「広義の強制連行はあったと言える」と一部論旨を拡張した議論もあり、細かな点に関しては未だに結論に達していない。また、日韓基本条約で解決を見ているが、韓国や北朝鮮では未だに挺身隊問題として燻っている。
総数
- 日本大学教授秦郁彦の研究調査では、総数は2万人程度。内訳は日本国内の遊郭などから応募した者が40%程度。現地で応募した者が30%。朝鮮人が20%、中国人が10%程度とされている。
- 中央大学教授吉見義明は総数を5万人 - 20万人とする説を出している。
- 北朝鮮の朝鮮中央通信は、朝鮮半島から強制連行された慰安婦は20万人だと主張しているが根拠は不明。(これとは別に600万人の朝鮮人が強制連行されたと主張しているがこれも根拠不明である。なお、当時の朝鮮半島の総人口は約2500万人)。
- 朝鮮半島人口の推移
- 1753年:730万人
- 1850年:750万人
- 1906年:980万人(第二次日韓条約により、1905年より朝鮮は日本の保護国へ)
- 1910年:1312万人(日韓併合条約により、1910年より朝鮮は日本の一部となる)
- 1920年:1691万人
- 1930年:1968万人
- 1940年:2295万人
- 1944年:2512万人(1945年、日本の敗戦により総督府の統治権は米軍へ移譲)
- 上海師範大学教授蘇智良の研究によると、強制連行されて従軍慰安婦にされた中国人も20万人に及ぶとしているが根拠は不明である。
訴訟
韓国人などを中心に、元慰安婦であると名乗り出た人々が現在も日本政府に性行為に強制性が存在していたとして謝罪と賠償を求めているが、その全てが時効などを理由に敗訴している。
釜山「従軍慰安婦」女子挺身隊公式謝罪・補償請求訴訟(関釜裁判)では、1998年4月27の地裁判決(山口地裁下関支部)で、原告らが売春を強制されたことを事実認定し、国の立法義務、立法の不作為を認め、「慰安婦」一人あたり30万円の支払いを命じた。一部ながら国の責任を認めた判決として注目を集めたが、2001年3月29日、広島高裁判決で原告に対して、立法行為への規制が司法判断になじまない事、該当事項に関する立法責任が明文化されていない事などを理由に「全面棄却」の判決。2003年3月25日、最高裁で上告棄却とされ敗訴が確定した。
在日韓国人女性が1993年4月に東京地裁に提訴した謝罪・補償請求訴訟で、2000年11月に東京高裁は原告の請求を棄却する判決を出した。この際、判決効力に関連のない傍論において、裁判長は国際法違反であるとの意見を述べた。原告は「国際法違反であるとの判断を示したこと」については僅かながら評価したが判決を不服として上告したものの棄却された。なお、この傍論をもってVAWW-NETジャパンなどの一部勢力は「国際法違反であると認定された」と解釈しているが、日本同様に各国の慰安婦についての国際的な評価は確定していない。
慰安婦の給料
元慰安婦の1人は2年半の就業中に貯めた郵便貯金2万6145円の返還請求訴訟も行ったが、日韓基本条約に付随する日韓請求権並びに経済協力協定で解決済みとされ敗訴した。なお、当時の陸軍大将の俸給は年に約6600円、二等兵の給料は年間72円であったことから、2万6145円という金額の膨大さが知れる。
論争
実際に強制性が存在したかについては、いわゆる強制連行の有無や、売春が強制下で行われたのではないかなどを含めて様々な議論がある。強制的に連れ去られた事実が存在したのか、また存在したとしてそれを行い売春を強要させた主体が日本政府(軍)だったのか、被害者の両親と金銭取引を行い、本人の意思を無視して連れ去った民間業者だったのかで意見が分かれる。
証言・証拠
- 韓国で初めて慰安婦であったことを証言した金学順は、その後の証言の中に矛盾が存在するとして論議を呼んだ。
- 1934年3月、陸軍省兵務局兵務課から『軍慰安所従業婦等募集に関する件』とする通牒が北支方面軍及中支派遣軍参謀長宛てに出されていることをもって、旧日本軍が主体であったとする意見が吉見義明教授から提示されたことがある。これは慰安所従業婦(=慰安婦)を内地で募集する際に業者による誘拐まがい等の問題が起きているため、社会問題上遺漏の無いように配慮してほしいという内容であった。
- 朝鮮半島・台湾などでは国家総動員法に次ぐ国民徴用令に基づいた挺身隊(女子の動員は1943年9月から)から、植民地女性を中心に慰安婦にさせられた場合があったとされているが、当人の証言以外には証拠は見つかっておらず、命令書等の公文書も存在しない。
- なお、「済州島で慰安婦狩りをした」とするいわゆる吉田証言は、慰安婦問題浮上のきっかけとなったが、本人も事実ではないことを認めている(秦郁彦のフィールドワークによる)。この吉田証言を採用している国連人権委の「クマラスワミ報告書」には慰安婦関連の記述でtake note(留意)の評価が下されている。ちなみにtake noteよりも下の評価は存在しない。
歴史認識
2001年、小泉純一郎首相は「女性のためのアジア平和国民基金」を通じ、いわゆる従軍慰安婦に対し謝罪・反省の気持ちを表した。[1]
2004年2月、韓国国内で挺身隊(韓国では慰安婦の意)をテーマにした映像・写真集が民間業者によって企画・撮影されたが、被写体の女性が上半身裸であったことから「商業的ヌードに挺身隊のイメージを利用するのは冒涜だ」と市民から猛抗議が起きた。結果、企画は中断されることとなったが、未だに韓国で従軍慰安婦問題が大きな問題として存在していることを象徴する事件であった。
関連項目
- プロパガンダ
- 強制連行
- 特殊慰安施設協会
- 女性国際戦犯法廷(日本軍性奴隷制を裁く2000年女性国際戦犯法廷)
- 歴史修正主義 - 否認主義
- 自虐史観
- 歴史教科書問題
- 日本の戦争謝罪発言一覧
- 小林よしのり
- 妓生
参考文献
- 秦郁彦『慰安婦と戦場の性』新潮選書 ISBN 4106005654
- 吉田清治『私の戦争犯罪 朝鮮人強制連行』三一書房 ISBN 4380832317
- 吉見義明 川田文子『「従軍慰安婦」をめぐる30のウソと真実』ISBN 4272520504
- 吉見義明『従軍慰安婦』岩波新書 ISBN 4004303842
- 吉見義明『従軍慰安婦資料集』ISBN 4272520253
外部リンク
- 韓国挺身隊研究所(日本語・文字化け有り/他に英語、ハングル)
- ナヌムの家
- 従軍慰安婦問題 関連リンク集
- 「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)
- 各国の慰安婦制度
- オープンディレクトリー: Society: Issues: Warfare and Conflict: War Crimes: Japan: Comfort Women (英語)
- あなたの知らない慰安婦問題
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