新・西遊記
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新・西遊記(しん・さいゆうき)は、1994年4月8日-9月23日に日本テレビ系(金曜20:00-20:54)に放送されていたドラマである。また、1978年-1980年に放送されていた西遊記(堺正章主演)の平成版。
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[編集] 概要
- 本作は1993年に制作された宮沢りえ・本木雅弘主演版が好評だったため、制作されたものだが、設定・キャストを一新したものであるため、続編ではない。
- 堺正章版との差別化を図るため、原作を大きく脚色している。その一番の特徴は本作の妖怪たちが妖怪の王・提婆達多配下の妖怪・羅刹女率いる妖怪軍団として組織化されている事にあるだろう。堺正章主演版では妖怪たちは組織化されていない独立した存在であった。これは本木雅弘・宮沢りえ主演版の妖怪たちが金角大王配下の設定だったため、それを引き継いだものであると思われるが、全体的に提婆達多との戦いに重点を置いて当時人気を呼んでいたロール・プレイング・ゲームらしさを作品に持たせる意味もあった。
- 原作と堺正章版の玉龍に相当する白竜の人間体は堺正章版と異なり、最初から登場。
- 沙悟浄、猪八戒、白竜は提婆達多配下の妖怪だったが、改心して三蔵法師のお供になったという設定。
- 沙悟浄と猪八戒は普段は人間の姿をしているが、緊急時には沙悟浄は河童、猪八戒は豚の妖怪の姿(着ぐるみ)に変身して戦う。第14話では、孫悟空の顔にメイクをした「斉天大聖」という形態が登場した。
- 堺正章版、本木雅弘版では描かれなった天竺到着が本作でようやく描かれた。
- ビデオはバップから第1話を収録した第1巻のみが1994年に発売されていたが、現在は絶版されているため入手困難な状態にある。DVD化も現在されていない。
- 当初は全22話の予定であったが、裏番組がテレビ朝日の人気音楽番組「ミュージックステーション」だったので、視聴率的に苦戦を強いられた事とナイター中継により放送休止になる事が多かったため、結果的に全17話で放送終了した。
- 平均視聴率は8.9%だった。
- 「新・西遊記」というタイトルは堺正章版と区別するために後から付けられたタイトルであり、放送当時の表記は「西遊記」である。
- 一見中国ロケのような村の風景は、北海道登別市にある「中国庭園・天華園」という、中国風テーマパークで撮影された。(現在は閉鎖されている)
[編集] 評価
堺正章版との差別化を図るため、ストーリーと登場人物の設定に大胆なアレンジを加え、更に当時としては画期的なCGを多用することでSFドラマらしさで売り出した本作ではあるが、前項でも述べた通り、裏番組がテレビ朝日の人気音楽番組「ミュージックステーション」だった事とナイター中継により放送中止になる事が多かったため、放送休止になる事が重なり、結果的には視聴率に恵まれずに世間にあまり注目されずに終わってしまった。
しかしながら、放送当時に本作を観た視聴者の間における本作の評価は2006年に制作された香取慎吾版よりも高い。特に孫悟空役の唐沢寿明は東映アクションクラブ出身でスタントマン経験があったこともあり、殆どの殺陣を吹き替えなしで自分で担当したということもあって、唐沢のバック転を多用したアクションに対する評価は高い。また、柄本明演じる沙悟浄と小倉久寛演じる猪八戒は堺版よりも不誠実で裏切り癖の強い部分が強調され、二人の漫才のようなやりとりも好評だった(その反面、あまりアクションで活躍する機会が殆どなかったことについて批判の声もある)。
ストーリー面でも三蔵の弟子たちである悟空、悟浄、八戒、白竜が妖怪であることを理由に、旅先で人間たちから迫害されたり利用される話も多く、妖怪たちの悲哀も時折描いている。
前項でも述べた通り、本作で初めて、天竺到着が描かれた。その内容は腐敗した天竺に絶望した三蔵が弟子たちと別れ、麻薬中毒に陥りながらも最後は立ち直り、弟子たちも元に戻り、希望を新たにしていくというもの。原作と異なるものでありながら、本当の意味での救いのある物語になっており、本作の意義をしっかりと示した形となっているという意見が当時の視聴者の間で多い。
第1話のみしかビデオ化されていないため、今でも当時の視聴者によるDVD化を望む声が多い。
[編集] 登場人物・キャスト
- 石から生まれた石猿で、釈迦と観音から戦う力を与えられた。自分が「釈迦と対等だ。」と言ってしまったために釈迦に岩山に閉じ込められてしまった。三蔵法師に岩山から解放され、緊箍児を頭にはめられてしまったため、三蔵のお供になった。他の三蔵の弟子たちの兄貴分として、その手腕を発揮する。勇気と思いやりを兼ね備えた性格だが、短気で落ち込みやすい所もある。戦闘能力が高く、如意棒を駆使して、敵と戦う。当初は人間の愛や心を理解できないでいたが、最終回で、三蔵との旅で人間の心を持ち、人を信じる事が出来たと自暴自棄になった三蔵に言っている。白竜曰く「失敬な奴」で、三蔵曰く「少々短気な者」。
- 玄奘三蔵法師・・・牧瀬里穂
- 太宗皇帝から三蔵法師の法名を与えられた僧。天竺まで有り難い経典を取りに旅に出る。旅の途中で白竜、悟空、悟浄、八戒を弟子にする。非常に慈悲深い性格で、白竜は長安で彼に助けられたため、それを恩義に感じて弟子になる。意地っ張りで頑固で弟子に向かって「破門する」「修行が足りませんよ」と言うのが口癖。その反面、精神的に脆いところもあり、最終回で腐敗した天竺に絶望して麻薬中毒に陥った。だが、本当に大切なものが経典ではなく、仲間と人の心であるという事を悟って立ち直る。全くの堅物というわけではなく、時折、弟子の食糧を盗み食いするといった行動に出ることもある。また、気分次第ですぐに考え方が変わる。
- 沙悟浄・・・柄本明
- 羅刹女の部下だった河童の妖怪。寺の和尚(八戒の変装)の執事に化けて三蔵を地獄に連れて行こうとするが、悟空に戦いを挑んで一度は命を落とす。しかし、三蔵に命を助けられ、その恩返しとして天竺行きのお供をする事になる。しかし、天竺行きの一番の目的は金儲けのためであり、金にがめつい。また、三蔵法師に命を助けられた際には「このご恩は一生忘れません。」と忠誠を誓っておきながら、きっかけ一つですぐに裏切る。「ゲゲゲの鬼太郎のねずみ男」みたいなタイプの性格。しかしながら、回を追うごとに三蔵の優しい気持ちに影響されていく。金にがめつくなってしまった理由には彼が子供の頃に父親から何も買ってもらえなかった事がその背景にあるようである。しかし、頭は良く、科学、地理、経済、歴史、天文学の知識に秀でている。戦闘時には人間の姿から河童の姿になり、口から吐く息で敵を凍らせる。時折、三蔵の事を「シロ坊主」と呼んでいる。三蔵曰く「お金に卑しい者」。
- 猪八戒・・・小倉久寛
- 羅刹女の部下だった豚の妖怪。悟浄と組んで、寺の和尚に化けて三蔵を地獄に連れて行こうとするが、悟空に戦いを挑んで一度は命を落とす。しかし、三蔵法師に命を助けられ、その恩返しとして天竺行きのお供をする事になる。しかし、天竺行きの一番の目的は女であり、女性への執着心が病気のように強い。食欲旺盛なために旅に必要な食糧を一人でつまみ食いする事もよくあり、仲間たちの頭をいつも悩ませている。そのせいか、仲間内ではいつも損な役回りが多い(毒見や三蔵の身代わり等)。悟浄同様、三蔵法師に忠誠を誓っておきながら、きっかけ一つですぐに裏切る。しかしながら、悟浄同様、回を追うごとに三蔵の優しい気持ちに影響されていく。戦闘時には人間の姿から豚の姿に変わり、口から炎を吐く。悟浄の事を親友だと思っている。三蔵曰く「女にだらしない者」。
- 白竜・・・柳沢慎吾
- 羅刹女の部下・兇竜の息子。太宗皇帝の馬に化けて、皇帝を殺そうとしたが失敗。皇帝の命令によって、処刑されそうになるが三蔵に助けられる。三蔵に深く恩義を感じて弟子になるが、その事により、提婆達多に父親を処刑されてしまう。以後、三蔵の馬として天竺行きのお供をすることになる。男らしく義理堅い性格で、三蔵に対する忠誠心が一番高いといえる。羅刹女の部下だった頃は自ら兵を率いて戦っていたが、三蔵の弟子になってからは滅多に戦闘に参加することはなかった。他の弟子たちの戦い振りを横で見ているか、突込みを入れるかの役割をしている。第16話で絶命するも、竜に生まれ変わって昇天する。
- 羅刹女・・・余貴美子
- 提婆達多配下の妖怪の女性。人間の女に成りすまして、太宗皇帝の妻となり子供を身篭り、皇帝を殺して大唐帝国の実権を握ろうとするが三蔵法師の邪魔により失敗。以後、妖怪軍団を率いて三蔵法師の命を狙うようになる。冷酷非情な性格で、誰が死んでも動じずにいつも不気味な笑いをしている。人間を憎む理由は人間が妖怪を虐げてきたからだという。その反面、人間の仕掛けた罠に落ちて泣き出してしまうといった間抜けな一面もあり、その時には三蔵の弟子たちから馬鹿呼ばわりされた。第16話で絶命。
- 英竜:高知東生
- 兇竜の息子で羅刹女の部下。
- 艶竜:寺田千穂
- 兇竜の娘で羅刹女の部下。
- 英竜と艶竜は白竜の兄弟であるが、白竜が裏切ったために父親の兇竜が責任を取って処刑されたため、自分たちの命を守るためにやむを得ず羅刹女に従い、前線で悟空たちと戦いを度々繰り広げる。第16話で絶命。
- 提婆達多:美輪明宏(声の出演)
- 妖怪の王で巨大な一つ目から発する炎が最大の武器。五百年前に悟空に敗れ、一度は絶命するが、その死は多くの妖怪を作り上げた。三蔵が取経の旅に出る時には復活していて、三蔵の取経を阻止し、妖怪たちの世界を築き上げようと目論む。第16話で絶命。
[編集] 主題歌
- 傷だらけの天使になんてなりたいとは思わない(番組前半ではオープニングテーマ、第1話と番組後半ではエンディングテーマ)
- 100万光年の彼方(通常は挿入歌だが、最終話のみエンディングテーマとして使用された)
(どちらもinfix)
[編集] 放送リスト
- 1 オープニングスペシャル 豪華絢爛摩訶不思議、CG特撮笑いと涙、何でもありの超大作 1994/04/08 脚本・・・柴英三郎、監督・・・一倉治雄
- 2 何でもかなう願いの木 1994/04/29 脚本・・・田上雄、監督・・・門奈克雄
- ゲスト・・・記平佳枝
- 3 善人村に落とし穴 1994/05/13 脚本・・・田上雄、監督・・・一倉治雄
- ゲスト・・・石倭裕子、篠井英介
- 4 三蔵の心臓が食べられちゃう! 1994/06/10 脚本・・・ 深沢正樹、監督・・・一倉治雄
- 5 怒りの三蔵vs.霊感大王 1994/06/17 脚本・・・峯尾基三、監督・・・杉村六郎
- 6 霊界からよみがえった妖怪 1994/06/24 脚本・・・和久田正明、監督・・・村田忍
- ゲスト・・・園田裕久、南雲勇助
- 7 如意棒が盗まれた! 1994/07/01 脚本・・・峯尾基三、監督・・・門奈克雄
- ゲスト・・・山崎裕太、池田史比古
- 8 悟空vs.大たぬき妖怪!! 1994/07/08 脚本・・・尾西兼一、監督・・・門奈克雄
- ゲスト・・・草薙幸二郎、鈴木聖子、大久保了
- 9 悟空vs.時をこえる妖怪 1994/07/15 脚本・・・丸山比朗、監督・・・村田忍
- 10 悟空破門!キント雲で金もうけ 1994/07/22 脚本・・・尾崎将也、監督・・・門奈克雄
- 11 未来を見通す家なき子 1994/07/29 脚本・・・布勢博一+久松真一、監督・・・村田忍
- 12 みんなまとめて破門します!? 1994/08/05 脚本・・・丸山比朗、監督・・・吉田啓一郎
- 13 悟空vs.男をのろい殺す女妖怪!! 1994/08/19 脚本・・・布勢博一、監督・・・村田忍
- 14 悟空狂乱!村人全員誘拐! 1994/08/26 脚本・・・田上雄、監督・・・杉村六郎
- ゲスト・・・米山善吉、加賀千景、Ronny santana
- 15 恐怖の妖怪収容所 1994/09/02 脚本・・・吉村ゆう、監督・・・吉田啓一郎
- 16 さよなら白竜・悟空vs.提婆最終決戦 1994/09/16 脚本・・・尾崎将也、監督・・・北浦嗣巳
- ゲスト・・・大河内浩、大谷朗
- 17 これが天竺大雷音寺だ! 1994/09/23 脚本・・・田上雄、監督・・・門奈克雄
[編集] スタッフ
- 製作著作:日本テレビ
- プロデュース:小松伸生、西牟田知夫、鍋島壽夫、吉田多喜男
- 特撮監督:北浦嗣巳
- 音楽:前野知常
- 選曲:合田豊
- 音楽プロデュース:月光恵亮
- 技斗:二家本辰巳
- スタント&アクション:アーバンアクターズ
- ロケ協力:登別中国庭園・天華園
- 技術協力;ビデオフォーカス
- スタジオ:東宝ビルト
- 操演:亀甲船
- 光学アニメーション:日本エフェクトセンター
- 小道具:高津映画装飾
- 衣装:東宝コスチューム
- 装飾:ポパイアート
- 美粧:山田かつら
- CG:テクノネット
- 制作協力:ライトヴィジョン、バンダイビジュアル
[編集] 関連項目
[編集] 前後番組の変遷
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