本郷猛
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本郷 猛(ほんごう たけし)は、石ノ森章太郎の漫画『仮面ライダー』およびそれを原作とする特撮作品「仮面ライダーシリーズ」、そのコミカライズ作品、小説版に登場する架空の人物。
仮面ライダーシリーズは複数の世界観で構築されており、それによって本郷の人物像にも細部の変更が見られるが、いずれの場合も「バッタの能力を持つ戦士・仮面ライダー1号に変身する改造人間」という点は共通している。以下、各世界観ごとにその人物像を記載する。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] テレビシリーズ
公式設定によると、1948年8月15日生まれ。両親とは既に死別している。
[編集] 『仮面ライダー』
[編集] 第1話 - 第13話
城南大学(第1話のみ「城北大学」と呼称)生物学研究室の学生。知能指数600にしてスポーツ万能という、頭脳・肉体共に類稀なる能力を持つ優秀な人間だが、そのために悪の秘密結社「ショッカー」に拉致され、バッタの能力を持つ改造人間にされてしまう。しかし脳改造の前に脱出。人間ではなくなったことに苦悩するも、人類の自由を守るために「仮面ライダー」となってショッカーと戦うことを誓う。立花藤兵衛との特訓によって、自らの能力をさらに強化していった。FBI捜査官の滝和也とは旧知の仲。
この時期はジャケットを着用。白衣を着て実験を行うシーンや科学者の友人の登場など、科学者のイメージが強かった。この時期の専用マシンは「サイクロン」(その後搭乗したマシンと区別するため「旧サイクロン」と呼ばれることもある)。
変身ポーズは無く、ベルト「タイフーン」の風車に風を受けることで変身する。そのため、サイクロンで疾走しながら変身するという描写が多かった。また、密室では風を受けることができないため変身不能になるという弱点もあった。
第11話以降は素顔での登場シーンが激減するが、これは本郷を演じていた藤岡弘の負傷によるもの。
[編集] 第14話 - 第52話
仮面ライダーへの対抗策とするため拉致され、ショッカーに改造されてしまったカメラマンの一文字隼人を救出。彼を仮面ライダー2号として日本の守りをまかせ、ショッカーの別計画を追ってヨーロッパに渡った(先の藤岡の負傷による策であるため、劇中では台詞で説明されたのみ)。その後、死神博士がショッカー日本支部に派遣されていた時期(第40話以降)に何度か帰国して、一文字と共に戦う姿が見られる。この時期から、専用マシンが「改造サイクロン」へと移行する(劇中の設定では、旧サイクロンとの明確な区別はされていない)。
第53話以前と位置づけられている劇場版第1作『仮面ライダー対ショッカー』で初めて変身ポーズによる変身を行った。
[編集] 第53話 - 最終話
更迭された死神博士を追って南米に向かった一文字に代わり、再び日本の守りにつく。この時期から革ジャンなどのアクティブな衣裳になり、力強さが強調されていった。第68話で立花と共に新たなマシン「新サイクロン」を制作、以後これを専用マシンとする。
第79話でショッカーが壊滅した後、新たな組織「ゲルショッカー」が登場してからは危機に陥ることが多く、たびたび重傷を負ったり消息不明になったりした(これは藤岡弘のスケジュールの都合によるもの)が、最終話で一文字と共にゲルショッカーを滅ぼすことに成功した。
[編集] 『仮面ライダーV3』 - 『全員集合!7人の仮面ライダー!!』
『仮面ライダーV3』では、大学の後輩である風見志郎が命を狙われたことから、新たな組織「デストロン」の存在を察知、一文字と共にデストロンのアジトに潜入。罠に落ちて命を落としそうになったが、自分達を助けるために重傷を負ってしまった風見の命を救うため、彼を仮面ライダーV3へ改造した。その後東京をデストロンの原爆から守るために太平洋の彼方に消えたが、後に生存が確認され、劇場版や第33・34話で帰国してV3と共に戦った。これ以降「普段は世界各地で悪の組織と戦っている」という設定になる。
『仮面ライダーX』では、劇場版にて帰国、仮面ライダーX = 神敬介と共にGOD機関と戦った。
『仮面ライダーストロンガー』では、終盤で帰国、仮面ライダーストロンガー = 城茂の応援に駆けつける。7人ライダーの力を集結して岩石大首領を倒した。この作品では、本郷と一文字は『伝説』とされており、デルザー軍団にはその存在を疑問視されていた。
『全員集合!7人の仮面ライダー!!』では、一文字、風見、結城とともに遊園地にいた立花藤兵衛のもとを訪れる(他の3人ライダーは後から到着)。そして、そこに潜入していた暗黒大将軍の軍団と7人ライダーが戦う。出演者のスケジュールの都合からか、敬介・アマゾン到着以降は(引き続き藤兵衛のもとにいることになっているが)ライダーへの変身までその姿が画面に映らなくなっていた。本作以降、映像作品では原則として素顔で登場することは無くなる。
[編集] 『仮面ライダー (スカイライダー)』 - 『仮面ライダーZX』
『仮面ライダー (スカイライダー)』では、スカイライダー = 筑波洋の応援に駆けつけ、7人ライダーによる特訓でスカイライダーをパワーアップさせた。最終話で8人ライダーの力を集結してネオショッカー首領を倒す。本作以降、専用マシンを改造サイクロンに戻しているが、ベースになった車種が異なるため、スケールダウンしてしまった感は否めない。
『仮面ライダースーパー1』では、前作の最終話で消息不明になっていたが、本作の劇場版で生還。仮面ライダースーパー1 = 沖一也と共にドグマ帝国と戦った。
[編集] 『仮面ライダーZX』 / 『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』 / 『仮面ライダーSPIRITS』
仮面ライダーZX = 村雨良と共にバダンと戦った。
『ZX』及び『10号誕生』を大幅にスケールアップした漫画『仮面ライダーSPIRITS』では、第1部第1話でニューヨークに現れ、ショッカーの残党と思われるコウモリの怪人を倒した。第2部第1話で、当時バダンの尖兵だったZXと対決、この時は改造人間としては遥かに性能が上回るはずの(そもそも『SPIRITS』では大首領のボディでもある)ZXを多彩な技で翻弄し、ライダーキックでZXの右足を、ライダーパンチでZXの左手を破壊し、最後はライダーきりもみシュートで上空にZXを飛ばし、2号とのライダーダブルキックで破壊出来るところまで追い詰めた(タイガーロイドがZXを庇ったため、未遂)。このように『技の1号』の名に相応しい圧倒的な強さを見せ付けた事で読者を驚かせた(特にマガジンZ掲載時は作者村枝賢一の体調不良のため、この後のZXの逆転劇が次号に持ち越されていたため、尚更読者に強い印象を与えた)。その後は世界各地でバダンと戦っていた。バダンが日本に狙いを定めると、それを追って帰国。復活したショッカーライダーを、既にバダンを抜けていたZXとの即興のコンビ(2号の脳波通信によるサポートあり)で倒す。その後、茂や立花、村雨と共にZXのボディの秘密を知るが、そのために生きる目的を見失った村雨に「仮面ライダー」という生き方を示す。 そして、第3部序盤にて東京でゾル大佐・死神博士・地獄大使が率いる再生ショッカー軍団と戦闘を開始した。その後、2号と共に高知県で戦うV3の危機を感じる。
『SPIRITS』第1部第1話で久方振りに滝和也と再会した際、それまでの自分の経緯を「何処に行っても相変わらず」と答えている。
専用マシンは『ZX』『10号誕生』では改造サイクロンだったが、『SPIRITS』では新サイクロンになっている。
[編集] 『仮面ライダーBLACK』以降
『仮面ライダーBLACK』では、最終話放送後の特別編『仮面ライダー1号~RX大集合』における過去の名場面でのみ登場。
『仮面ライダーBLACK RX』では、終盤で歴代ライダーと共に帰国、RX = 南光太郎と共にクライシス帝国と戦った。しかし、諸事情により歴代ライダーは全員素顔での登場が皆無(声も代役)だった。そのためストーリーに絡めるのが難しかったらしく、帰国直後にRXの危機を救った以外は目立った活躍をすることができなかった。
『ウルトラマンVS仮面ライダー』では、ショッカー中近東支部から派遣された毒サソリ男を追って登場。ウルトラマンと怪獣ガドラスが戦っている間近で毒サソリ男と対決した。そしてガドラスと毒サソリ男が融合してサソリガドラスになると、「奇跡」によって巨大化。ウルトラマンと共に戦い、サソリガドラスを倒した。『全員集合!7人の仮面ライダー!!』以来、17年ぶりに新サイクロンを使用。なお、変身シーンは過去の映像の流用。
[編集] テレビシリーズ外伝
PS2ゲーム『仮面ライダー 正義の系譜』では、本来の設定では世界観が異なる『仮面ライダーアギト』が同一の世界観に統合されている。そのため、本来ならあり得ないはずの仮面ライダーアギト = 津上翔一との共演が実現した。また、時間軸的には仮面ライダーBLACKとしての南光太郎との共闘も本来は有り得ないものである。
余談ではあるが、各種のイベントやアトラクションショーなどでは世界観の設定よりもキャラクター性が重視される傾向にあり、こうした世界観を超えての共演は頻繁に行われている。
[編集] 原作漫画 / 『仮面ライダーEVE』
[編集] 原作漫画
城北大学生物学研究室の学生。優秀な人間であるためにショッカーに拉致され、バッタの能力を持つ改造人間にされてしまう。しかし脳改造の前に脱出、人間を守るために戦うことを誓い、仮面ライダーを名乗る。感情が高ぶると、改造手術の傷跡が顔に浮かび上がる。
原作における変身方法は「強化服を身に付け、仮面を被る」というのが一般的な解釈だが、第2話ではこうもり男を追って走りながら変身する描写もあり、実際は明確にはなっていない。なお、変身しても、ベルト「タイフーン」の風車に風を受けてエネルギーを得なければ、体内のメカニズムを完全に起動させることはできない。
第4話でショッカーと戦うための研究所を設立するが、ショッカーが送り込んだ12人のにせ仮面ライダーの攻撃を受け、絶命してしまう。しかし、その際に本郷の攻撃を受けたショックで脳改造から開放されたにせライダーの一人 = 一文字隼人によって遺体は研究所に運び込まれ、脳髄のみが研究所の中で生き続けることになった。
一文字とは脳波通信によって感覚を共有することができる。第5話では新たな仮面ライダーとなった一文字をサポートしたが、血気盛んな一文字をたしなめることも多かった。
第6話の終盤で、脳髄を機械のボディに移植して復活、ショッカーのアジトを破壊した。しかし、ショッカーとの戦いの結末は描かれていない。
[編集] 『仮面ライダーSD』
この作品では「仮面ライダー1号」としてのみの登場で、素顔を見せたことはない。なお、「マイティライダーズ」と「疾風伝説」では世界観がまったく異なる。
「マイティライダーズ」では、11人の仮面ライダーのリーダー。ギャグ漫画という性質上、他のライダーは性格などがテレビシリーズと異なる場合が多いが、彼はリーダーという立場のためか、あまり大きな改変は行われていない。初期は旧サイクロンを使用していたが、後に強化改造が施されたネオサイクロンを使用するようになった。
「疾風伝説」では、過去の大戦で活躍した伝説の英雄。その際に重傷を負ったため治療中だったが、新たな戦いの終盤にて復活。こちらの世界では、最初からネオサイクロンを使用していたことになっている。
[編集] 『仮面ライダー 誕生1971』 / 『仮面ライダーVol.2 希望1972』
城南大学で生化学を学んでいた学生。自動車を運転中に蜘蛛男の襲撃を受けてショッカーに拉致され、ショッカーが新たに開発した改造人間「S.M.R. (System Masked Riders)」の素体にされてしまう。しかしS.M.R.の開発者であり恩師でもあった緑川教授の手引きによって脱出。その後「ハヤト」と名乗る男(本作における一文字隼人だが、TV版とは違い日系のペルー人で、本郷よりも以前に「S.M.R.」にされた)からショッカーのことや自分の身体の秘密を聞かされ、さらに自分の拉致を手引きしたのが、幼い頃に死別した姉を重ねて見ていた楠木美代子だということを知ることになる。しかし、紆余曲折の後、一人でも多くの人間を守るためにショッカーと戦うことを決意、ハヤトがショッカーと戦う名前として「仮面ライダー」を名付け、本郷はハヤトと自分の2人の名として名乗ることにした。美代子にも宣戦布告したが、その後美代子が敵とは言いかねる行動を取ることもあり、困惑させられていた。『希望1972』の時点ではショッカーとの戦いの結末は描かれていない。
S.M.R.は素体・強化服・二輪兵器「サイクロン」のセットで構成され、通常は強化服を着てからベルト「タイフーン」のスイッチを入れると強化服のメカニズムが起動、合わせて素体が戦闘体へと変化し、強化服の機能を完全に使いこなせるようになる。特殊能力の大部分を強化服に頼っているため、素体自体の能力は従来の改造人間よりも劣る。しかし何らかの理由で強化細胞が異常に活性化すると「飛蝗(ばった)男」とでも呼ぶべき完全体へと変身し、強化服無しでも従来の改造人間を上回る力を発揮する。但し、その際は意識を失って暴走する危険がある。
改造される前、生身のままでも蜘蛛男を1体倒すほどの戦闘力の持ち主で、改造されたことによってその力は大幅に強化された。オートバイの運転はほとんど経験が無かったが、ハヤトの特訓で乗りこなせるようになった。当初はマフラーを巻いていなかったが、S.M.R.としては不完全であったために寿命が残り少なくなっていたハヤトの死を見届けた後は彼の形見となったマフラーを巻くようになった。
この作品では終戦の年(1945年)の生まれと設定されている。
[編集] 『仮面ライダー THE FIRST』 / 『仮面ライダーカブト』
この欄で紹介する本郷は、テレビシリーズと区別するため、便宜上「THE FIRST版」と呼ばれる。上記の本郷とは「パラレルワールドにおける同一人物」であるため、映像作品に正式に登場していながら、イベント等で歴代ライダーが集結する際には登場できないという微妙な立場にある。
[編集] 『仮面ライダー THE FIRST』
城南大学の研究生。水の結晶を研究する科学者だったが、ショッカーに拉致され、バッタの能力を持つ改造人間「ホッパー」にされてしまう。そしてショッカーのために暗躍し、ショッカーを追っていた雑誌記者の緑川あすかとその婚約者の矢野克彦の命を狙ったが、降り出した雪によって水の結晶のイメージを思い出し、頭脳オペレーションから開放される。あすかに克彦を殺した犯人と誤解され、また人間でなくなったことを自覚して苦悩するが、立花藤兵衛に「失ったものもあれば得たものもある」と諭され、同時にスーパーマシン「サイクロン1号」を託されたことから、その力であすかを守ることを決意する。刺客として差し向けられた仮面ライダー2号 = 一文字隼人とは、戦いを通じてお互いを理解し合うようになる。そして、拉致されたあすかを追って一文字と共にショッカーのアジトを襲撃、あすかを救出した。劇中ではショッカーとの戦いの結末は描かれていない。
本作における改造人間には「リジェクション」と呼ばれる拒否反応が起こり、それを抑えるために定期的に血液を交換しなければならない。しかし本郷は奇跡的にリジェクションが起こらない「完全な改造人間」となっている。その理由はショッカーにも解明できておらず、謎とされている。
変身方法は「変身ベルト・タイフーンの風車を回転させると一瞬で強化服が装着され、その後仮面を被る」というもの。仮面を被るという描写は原作漫画に準ずるものだが、強化服の装着方法はテレビシリーズにおける変身方法の発展系と見られる。また、明らかに仮面を携行していないにもかかわらず変身の際に仮面を手にしているのは、ライダーマン=結城丈二の変身方法を連想させる。
劇中での戦いはすべてあすかを守るためのものであるが、これは尺の都合でそれ以外の戦いを描く時間が無かったことに起因する。劇中で「大切なものとは何か」との問いに「命」と答えていることから、あすかが絡まなくとも人間の命を踏みにじるショッカーと戦うつもりであったことは推察される。
[編集] 『仮面ライダーカブト』
第14話にワンシーンのみ登場。蕎麦屋の前で仮面ライダーカブト = 天道総司とすれ違った。
映像では役名がクレジットされず「特別出演」としか表記されていない。が、事前に公式サイトで発表された情報や「サイクロン1号」と全く同じ外観のバイクを使用していることから、この人物を本郷と解釈するのが一般的。
[編集] 本郷猛を演じた人物
[編集] 俳優
- 藤岡弘、(『仮面ライダー』~『全員集合!7人の仮面ライダー!!』、PS2『仮面ライダー 正義の系譜』)※『正義の系譜』は声のみ
- 黄川田将也(『仮面ライダー THE FIRST』、『仮面ライダーカブト』)
[編集] スーツアクター
- 殺陣
- 岡田勝、中屋敷哲也(『仮面ライダー』)
- なお、藤岡も負傷までは頻繁に殺陣を担当していた。
- 前田浩、マーク武蔵(『仮面ライダー THE FIRST』)
- メインは前田だが、カットによってはマークが演じている。
- 岡田勝、中屋敷哲也(『仮面ライダー』)
- トランポリンスタント
- 三隅修(『仮面ライダー』)
- オートバイスタント
- 大橋春雄(『仮面ライダー』)
[編集] 声優
- 納谷六朗(『仮面ライダー』第9 - 13話、吹き替え)
- 市川治(『仮面ライダー』第66 - 68話、吹き替え)
- 池水通洋(『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』)
- 鳥居賞也(『仮面ライダーBLACK RX』)
- 田中秀幸(『仮面ライダーSD』)