気球
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気球(ききゅう)とは飛行するための乗り物(航空機)の一種。空気より軽い気体を風船に詰め込む事で浮力を得るもので、軽航空機 (LTA; Lighter-Than-Air) に分類される。バーナー等で熱した空気を利用する物を熱気球、水素やヘリウムなどを使用する物をガス気球と呼ぶ。人間が乗る為には気球の下にバスケットをつける。
移動するための動力は持たないため、旅客や貨物の運搬といった手段には適さない。積極的に移動するためのエンジンやプロペラなどの推進装置をもつものは飛行船と呼ばれる。ロープなどで固定され一定範囲から動かないようにされているものは繋留気球と呼ばれる。
熱気球が発明された1783年以降19世紀までフランスを中心にヨーロッパで気球ブームが起き、遊覧飛行や冒険飛行が頻繁におこなわれた。19世紀半ばに動力を備えた飛行船が、20世紀に飛行機が発明されるとそれらに取って代わられ下火となるが、第二次世界大戦後、熱気球はスカイスポーツ (競技)として復活する。ガス気球は気象観測用のラジオゾンデや、宣伝・広告用のアドバルーンなどとして現代でも利用されている。
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[編集] 軍事利用
記録に残る最初の軍事利用例は1794年のフランス軍によるもので、上空からの敵軍の偵察や大砲の着弾の観測にあてられた。その後ナポレオンが正式に気球部隊を編成する。ナポレオン戦争で、気球による英国上陸作戦の構想もあったが実行には移されなかった。
南北戦争においては、水素ガスを利用した気球部隊が編制され、観測・偵察に使用された。
20世紀に入り飛行船や飛行機による爆撃が行われるようになると、都市や重要施設を守るため敵機の進路を妨害する阻塞気球がつくられた。第二次世界大戦時の日本では、和紙を張り合わせ水素ガスを詰めた気球に爆弾を搭載し、アメリカ本土を攻撃するという風船爆弾が作られた。
[編集] 年表
- 1709年: ブラジル人宣教師バーソロミュー・ローレンツォ・グスマンがスペインで熱気球の実験を行うが、異端として告発される。
- 1783年6月5日: モンゴルフィエ兄弟が無人の熱気球の実験成功。
- 1783年8月27日: ジャック・シャルルが水素を使った無人のガス気球の飛行実験に成功。
- 1783年11月: モンゴルフィエ兄弟が熱気球の有人飛行に成功。
- 1783年12月: シャルルがガス気球による有人飛行に成功する。
- 1785年: フランス人ブランシャーとアメリカ人ジファールがガス気球でドーバー海峡横断に成功。
- 1794年: フランス軍がモビウージェにおける戦闘で敵情視察と着弾地点観測のためにガス気球を使用。(気球を戦争に利用した世界初の例)
- 1852年: アンリ・ジェファールが蒸気機関を搭載した飛行船を製作する。
- 1872年: フランス海軍のド・ロームが人力飛行船を製作。約10km/hで飛行。
- (1903年: ライト兄弟が飛行機による飛行に成功。)
- 1897年: スウェーデン人のサロモン・アウグスト・アンドレーが気球で北極海横断を目指すが、消息を絶つ。1930年に遭難が明らかにされた。
- 1944年: 日本が風船爆弾でアメリカ合衆国本土を攻撃。
- 1992年: 風船おじさんこと鈴木嘉和がアメリカを目差し出発し消息を絶つ。
- 1999年: 英国人のブライアン・ジョーンズらが気球による無着陸世界一周飛行に成功。
- 2002年5月23日:宇宙科学研究所(現JAXA宇宙科学研究本部)が無人気球で到達高度53kmを達成。無人気球での世界最高高度記録となる。
[編集] 関連項目
- 軍用機
- 気球製作所(気球メーカー)
- アクロン (オハイオ州)(気球メーカー)
- 航空に関する年表