語順
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語順(ごじゅん/word order)とは,言語類型論的に把握される,文中における単語の並び方である.大抵の言語は基本的な語順(the unmarked word order)を持つ.この基本性にたいし,特定の構文要素が強調されて modality を指定される際に起こる語順の変化もまた多くの言語にみられる(変化した語順は the marked word order と呼ばれる).
[編集] 類型
以下は,主語(Subject),動詞(Verb),そして目的語(Object)によって構成されうる可能なかぎりの語順の類と例である.
- SOV型 - 日本語,琉球語,アイヌ語,朝鮮語,アルタイ諸語,インド・イラン語派,ドラヴィダ語族,チベット・ビルマ語派,ニヴフ語,ウイルタ語,ブルーシャスキー語,パーリ語,アムハラ語,エスキモー語,チュクチ語,アイマラ語,ケチュア語,ナバホ語,ホピ語,バスク語,シュメール語,アッカド語,ヒッタイト語,エラム語など.
- SVO型 - 英語,フランス語,中国語(広東語などの諸方言や漢文を含む),スペイン語,イタリア語,ポルトガル語,カタルーニャ語,ルーマニア語,ブルガリア語,現代ギリシア語,デンマーク語,スウェーデン語,ノルウェー語,タイ語,ラーオ語(ラオス語),ベトナム語,ジャワ語,インドネシア語,マレー語(マレーシア語),クメール語(カンボジア語),スワヒリ語,現代アラビア語諸方言,ハウサ語,ヨルバ語,グアラニー語,ナワトル語など.
- VSO型 - 古典アラビア語,ヘブライ語,アラム語,フェニキア語,古代エジプト語,ゲエズ語,ゲール語,古典マヤ語,タガログ語,セブアノ語,イロカノ語,マオリ語など.
- VOS型 - フィジー語など.
- OSV型 - シャバンテ語など.
- OVS型 - ヒシカリヤナ語など.
言語類型論による調査では,世界の言語の約45%がSOV型,約35%がSVO型,約18%がVSO型である.その他の型が稀に存在することも判明している.
ラテン語やフィンランド語は定型的な語順を持たない.しかし傾向としては,前者がSOV型,後者がSVO型として認識されやすくある.このように柔軟な語順で使用される言語はまた,文中における名詞を主格あるいは目的格として指定するための文法格の仕組を備えているのが普通である.同様に語順が比較的自由な日本語では格助詞がこの役割を担っているとされるが,「それが欲しい」(目的格+他動詞)と「彼が怒る」(主格+自動詞)における「が」にみられるように,日本語の格助詞の多くは役割が重複し合っており,かならずしも明確な指示機能を果たしているものではない.また他言語の文にみられるような空白による言葉の仕分が無い日本語の文ではそもそも何が単語すなわち語順を構成する基本単位として個別に捉えられるべきなのかという点で客観的な認識が難しくあり(例として日本語の文書にたいするワープロなどの機能を介したコンピュータによる客観的な単語数の解析の結果がラテン語やフィンランド語を含む他言語の文書にたいするそれと違って不確定的であるというものがある),語順の自由度にからんだ議論は日本語とそれ以外の言語とで一味違ったものとなる.
[編集] 句の語順
- 修飾語 + 被修飾語: 形容詞 + 名詞,副詞 + 動詞など.SOV型に多い.
- 被修飾語 + 修飾語: 名詞 + 形容詞,動詞 + 副詞など.VSO型に多く,SVO型にも比較的多い.