赤ちゃんポスト
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赤ちゃんポスト(あかちゃんポスト)とは、諸事情のために育てることのできない新生児を親が匿名で養子に出すための容器、およびそのシステムの通称である。目的は、望まれない赤ちゃんを殺害と中絶から守ることにある。この仕組みは法的裏付けが十分でないにも拘らず、ドイツにおいて NPO 、キリスト教団体、病院により設置され、2005年現在80ヵ所を超えている。ハンブルクでは2000年の開設以来5ヵ年間に22人の赤ちゃんの命が救われた。日本ではこれまで実例はなかったが、熊本県熊本市の慈恵病院が設置を計画している。
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[編集] 名称
慈恵病院での名称は「こうのとりのゆりかご」。同病院が参考にしたドイツではBabyklappe と呼ばれている。英語の Baby とドイツ語の Klappe を合わせた単語である。Klappe とは“パッチと音がして閉まる扉蓋”を意味している。もう一つの呼び名として Babywiege がある。Wiege とはゆりかごを指す。共にドイツ語本来の赤ちゃんを意味する Säugling を用いないで、英語であるところに微妙な心理が伺える。
[編集] 慈恵病院の計画した「こうのとりのゆりかご」
人目につきにくい病院東側に45cm×65cm大の扉をつくり、内部には摂氏36度に設定された保育器を設置する。新生児が入れられるとアラームが鳴り、医療従事者が駆けつけるという仕組みになっている。監視カメラはつけず、「もう一度、赤ちゃんを引き取りたいときには、信頼して、いつでも連絡してください」といった手紙を置いておく。
なお、ポストに入れるのは生まれてから2週間以内の子どもという条件があり、新生児への命名は市長が行なうとしている。ポストに匿名で新生児を置く人が母親とは限らない。第三者が親権者の意に反して新生児を置くこともできる。また、一度ポストを閉めたら、自分からもう一度開けることはできない(つまり開けるには病院関係者をその都度呼ぶ必要がある)。ポストに入れる側にも慎重さが求められることになる。
母親が名乗り出て、自ら育てるか、親権放棄して里親に引き取ってもらうかを決めてもらう。これが大原則。名乗り出てくれない場合は、警察や市役所、児童相談所などと連絡を取った上で施設に引き渡す。
蓮田太二理事長は、 「誤解されやすいが、ポストはあくまで赤ちゃんの生命を守るための緊急避難。ポストに置いた後でも母親が名乗り出て了解すれば、里親の元に行くのも早い。赤ちゃんさえ無事なら母親にも冷静に考える時間ができる」としている。
なお、余談であるが慈恵病院はカトリック系のキリスト系の病院である。
慈恵病院は2006年12月15日に設置申請を熊本市に提出し、2007年4月5日に熊本市はこの申請を許可し、設置された
だが、安倍晋三首相は同日午後の会見で、「匿名で赤ちゃんを置き去りにすることは許さない」「(熊本市の認可を)政府として認めることはできない」とし、塩崎恭久官房長官もまたまったく同様の慎重論を述べ、政府としては、厚生労働省を通して熊本市に認可の再検討を求める考えを示唆している。
[編集] 歴史
赤ちゃんポストは1198年にイタリアの養育施設で作られたのが始まりとされる。[要出典]ドイツでは2000年にハンブルクのNPO法人によって始められ、公私立病院など約70か所に設置されている。
[編集] 赤ちゃんポストにまつわる賛否両論
システム上、「子どもを捨てることや育児放棄を助長する」という声があり、また、保護責任者遺棄罪や児童福祉法、児童虐待防止法違反などになるのではないかという意見がある(法的問題は後述)。
だが、「命が救われる可能性が確かにある」と人道面を重視し、「赤ちゃんの命を救い、母親が犯罪者になることも防げる」「預かるのが目的でなく、ポストに手紙を置き相談や養子縁組につなげるのが狙い」だという意見もあり、一方では「設置に伴い捨て子が増えないよう法整備をする必要は当然ある」という見解もある。
厚生労働省は「ポストに子どもを置く行為は認めがたいが、違法性があるとは言い切れない」とし、法務省は「確実に安全な場所なら遺棄ではない」と解釈している。
そして、厚生労働省は2007年2月22日、「明らかに違法とは言い切れない」として、熊本市に対して設置を認可した。だが、今後同様の申請があっても一律に認可するわけではなく、子どもがすぐに適切な看護を受けられ、生命や身体が危険にさらされることのない環境かどうかを個別に検証する必要があったり、児童虐待防止法に抵触しないように個別に判断するともしている。
閣内では、おおむね慎重論が多い。
柳沢伯夫厚労相は「設置自体には違法性はないが、病院側の運用には慎重さが求められる」としている。
安倍晋三首相は2月23日、首相官邸での記者団の質問に対して、まず「ポストという名前に大変抵抗感がある」と述べ、「子どもを産むからには親として責任を持ってもらうことが大切で、そういうお子さんに対応する施設もあるし、匿名で子どもを置いていけるものを作るのには大変抵抗を感じる」と慎重論を唱えている。
塩崎恭久官房長官は「法解釈以前に、子どもを捨てない策を考えなければいけないのではないか」、高市早苗少子化担当相も「もう少し議論を深める必要がある」と、慎重な意見を述べている。
[編集] 法的問題
違法性については、関係各所は13個の法律の25項目と照らし合わせている。たとえば、
- 「子捨て」は、刑法の保護責任者遺棄罪にあたるのではないか。
- 新生児を「放置」することは、児童虐待防止法違反なのではないか。
- 行政機関に相談しないままポストに新生児を託すのは、児童福祉法違反なのではないか。
といったところを検討する必要がある。 また、「公序良俗に反しないか」といった人道的見地も視野に入れ、様々な角度から検討している。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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