近鉄21020系電車
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21020系電車(21020けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道の特急形車両。現在の近鉄の看板車種である。
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[編集] 車両諸元
21000系が登場して15年近くが経過し、設備の老朽化が進んだことから、更新工事が必要になったが、そのための予備車確保、そして12200系の一部車両の置き換えなどの目的として、2002年に製造された。21000系の後継となるため、系列も21020系、名称はアーバンライナーnextとなった。
デザインは21000系と同様の流線型であるが、前面は1枚窓になり、窓の上下は黒く塗っている。窓内にはHID前照灯が4灯埋め込まれている。LED式の尾灯・標識灯は黒く塗られた部分の下部に埋め込まれている。塗装は、前面の黒の他は白をベースに、裾部がベージュ、その上にオレンジのラインが通っている。車体は鋼製であるが、側面の厚さを減らして室内空間の拡大に充てた。側窓は大型化したほか、乗降扉はプラグ式となっており、扉が開いた際にはステップが出るようになっている。
編成は難波方からク21120形(Tc)-モ21220形(M)-モ21320形(M)-サ21420形(T)-モ21520形(M)-ク21620形(Tsc)の6両編成。ク21620形はデラックスカーであるが、21000系と異なりデラックスカーは1両のみの設定となった。これは編成定員の確保やデラックスカーの利用率が下がったことなどの他、全車禁煙としたので喫煙・禁煙で1両ずつ確保する必要が無くなったのが理由。工場では3両ずつに切り離すことが可能である。
性能面は、130km/h運転を可能にしているが、21000系と異なり、編成中の電動車を半数としている。制御装置は三菱電機製IGBT素子によるVVVFインバータ制御で、1台の装置で2台の主電動機を操作する(1C2M)方式として、異常時にも対応した。主電動機は三菱製の230kW、駆動方式はWN式である。起動加速度2.5km/h/s、減速度4.0km/h/s、33‰上り勾配において架線電圧10%減・定員乗車条件でも均衡速度118km/hを確保している。制動装置は回生・発電併用電気指令式(KEBS-21A)。抵抗器を備え、回生制動が動作しない場合には切り替わるようになっている。また、緊急時には在来車と連結可能にするためブレーキ読替装置を搭載する。台車は近畿車輛製ボルスタレス式で、ヨーダンパを装備。基礎ブレーキは全車に片押しブレーキ、付随車はディスクブレーキを併設する。
車内は間接照明を採用し、天井と荷物棚下部に埋め込まれている。また仕切付近の天井にはダウンライトを組み込んでおり、仕切に光が当たるようになっている。また、デッキの照明は21000系同様にダウンライトを採用している。客室のカラーは明るめのものとし、レギュラーカーは窓下をオレンジ、デラックスカーは同じくピンク調にした。荷物棚は物を置く部分の高さを下げて背の低い人でも使いやすくした。モ21220形には、車椅子利用者用の座席が設けられている。
座席は、新開発のゆりかご型リクライニングシートで、背もたれを倒すと角度に応じて腰部が沈んで座席が傾くような状態となる。シートピッチはいずれも1,050mmである。デラックスカーはそれぞれが独立性の高い1人掛けシート(通路を挟んで1席と2席)となった。ただし、2席側の座席は回転時は2席が一緒に動く。モケットの色は赤系のものである。リクライニングは電動となっており、ひじ掛けのスイッチで操作する。また、読書灯が設けられ、背もたれ左側からLEDの光が出る。レギュラーカーは2人掛けで、同じくゆりかご型であるが、リクライニング操作は手動で、ひじ掛けにあるボタンを押しながら倒す。2席の中央のひじ掛けは2つ設置されている。モケットの色はグレー系である。テーブルはいずれもひじ掛け内蔵で、この他窓際には小物を置ける小さな棚が設けられた(窓框には直接物を置くことはできない)。座席の番号は荷棚下に大きめにプリントして、目立たせている。
インフォメーション設備として、仕切戸上部に22型の液晶モニターを設置し、号車番号、駅名、ニュース、天気予報や、走行中の前面展望(夜間を除く)の放映などを行っている。
また、全席が禁煙となったため、喫煙コーナーを2両に1ヵ所、客室外に設けている。この部分はパーティションが用意され、横に細長い2枚の窓が設置されている。
空調装置は、冷房装置が客室用に集約分散式を2台、運転室用と喫煙コーナー用も別個に用意した。喫煙コーナーには空気清浄機や脱臭装置も設け、非喫煙者に配慮している。暖房はシーズワイヤー式で、デッキにはファンヒータを用意している。
トイレは、モ21220、モ21320、モ21520形に設置される。このうち、モ21220形のトイレは車椅子対応の大型(洋式)と男子小用の組み合わせである。モ21320、モ21520形は女性専用と共用の洋式をそれぞれ1ヵ所、これに男子小用の個室を設けた。女性用にはベビーチェアも設けられている。車椅子対応の大型トイレは、曲面を描いた壁面にして、ドアをボタン開閉式としている。ベビーベッド・ベビーチェアも設置している。トイレの床は天然石、便器はいずれも陶器製で、男子小用は自動洗浄付き、洋式便器は壁掛式として清掃性を高めた。処理方式は真空式である。トイレの手洗器はセルフストップ式水栓、トイレと同じ車両に併設の洗面所は自動水栓を採用している。
車内販売が廃止されているため、車内販売準備基地は設置されていない。サ21420形には自動販売機(ダイドードリンコ)と公衆電話が設置された。紙おしぼりはデッキに取出口が設けられた。
2002年暮れに登場、2003年に第46回鉄道友の会ブルーリボン賞と日本産業デザイン振興会選定グッドデザイン賞を受賞した。
[編集] 運用形態
21020系は、2002年暮れの年末年始輸送から運用を開始した。名阪特急には2003年3月6日のダイヤ変更から本格的な使用を開始している。基本的に運用は限定しており(名阪ノンストップ)、普段は2本をフルに使用していることから、検査などで運休する場合は21000系が代走する事がある。その場合、代走する日は近鉄ホームページにも記載されている。逆に21000系の検査の時には伊勢方面の乙特急に21020系が代走する事もある。尚、2006年現在、21020系は阪奈特急にはダイヤの乱れによる代走を除き充当されていない。また2003年4月7日にはイベントの団体臨時列車で京都線・橿原線にも入線した。
21020系12両がすべて名古屋線・富吉車庫に所属している。
[編集] 乗務員
基本的に鶴橋駅、上本町駅以外は無停車なので乗務員交替は行われないが、車内で行われる。通常、電車は運転士と車掌のペアだが、ノンストップ特急は運転士と運転士でペアが組まれ、アーバンライナーの場合は伊勢中川駅の短絡線徐行通過時に、車内改札で先頭車両に移っている運転士とこれから車掌業務に移る運転士(要するに電車を運転中の運転士)とが入れ替わる。運転区間としては近鉄難波~短絡線間は高安列車区運転士、短絡線~近鉄名古屋間は富吉列車区運転士となる。
[編集] 関連商品
21020系は「プラレール」で製品化されている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
近鉄特急の車両 |
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現有車両 |
12200系, 12400・12410・12600系, 30000系 21000系, 22000系, 23000系, 21020系 16000・16010系, 26000系, 16400系 |
過去の車両 |
2200・2227系, 6301形, 6471形, 6401形 2250系, 6421系, 6431系 10000系, 10100系, 10400・11400系, 12000系 680・683系, 18000系, 18200・18400系 5820形 |
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