阿含宗
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阿含宗(あごんしゅう)は、桐山靖雄(きりやませいゆう)により1978年(昭和53年)4月8日に創設された仏教系の新興宗教。 毎年2月11日、「炎の祭典・阿含の星まつり」という後期大乗仏教の密教に由来する山岳修験道の儀式である護摩儀式の一種大柴燈護摩供を京都花山にて開催することでも知られる。
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[編集] 概要
- 名称 宗教法人 阿含宗(あごんしゅう)
- 所在地 本山:京都市山科区北花山大峰町17-5
- 立宗 1978年(昭和53年)4月8日
- 開祖 桐山靖雄 管長
- 本尊 真正仏舎利
- 教典 阿含経(あごんぎょう)ただし、画期的、歴史的にも意義ある事という意見と、見解内に矛盾が有り、依経してるとは言いがたい側面があるという意見もある。→#阿含経と阿含宗との教学上の齟齬。また、護摩儀式や実際には大乗経典を多く参照していることから上座部仏教系新興宗教ではなく密教系新興宗教としてみられることが多い
- 拠点 国内74カ所、海外8カ所
毎月開催される例祭護摩修法と法話は全国の拠点に衛星中継やテレビ会議システム(アゴンネットワーク)を利用して同時中継されている。
[編集] 略史
桐山靖雄管長により1954年に設立された観音慈恵会が前身。阿含宗の名称である阿含はゴータマ・ブッダ=釈迦が直接説いた内容をまとめた唯一の教典である、阿含経(アーガマ)を依経とすることを自称したことから名付けられた。スリランカより贈与された「真正仏舎利」(釈迦のご遺骨)を本尊する。
桐山管長は、法華経から密教にすすみ、因縁解脱の法(成仏法)を体得し、阿含経の七科三十七道品により成仏力を得る。密教の伝法は、元仁和寺管長小田慈舟師より密教最高の法とされる「如意宝珠法」及び「金剛・胎蔵界法の奥伝」を伝授される。又、チベット仏教より金剛・胎蔵界両部の伝法灌頂を受ける。
初期には桐山管長の念力で護摩木に火を点けるという「念力護摩」が話題になった。桐山管長は、阿含経の「七科三十七道品」の修行の過程で、釈迦の瞑想法であるクンダリニーヨーガによりチャクラの開発に成功結果であるとしている。
一般に「桐山密教」として知られるように、かつては密教の修行による能力開発を強く打ち出していたが、教団名の変更に伴い、阿含経が釈迦が直接説いた内容をまとめた唯一の教典であるという主張を強め、自らそれを奉じていると自称していることによる正統性の主張や、釈迦の生地やローマ法王庁を訪問するなど国際的に活動する印象を与える。 近年は、1996年モンゴル大柴燈護摩供、2000年の9・11後に行われたニューヨーク護摩法要、2003年パリ大柴燈護摩供、2006年アウシュビッツ大柴燈護摩供など海外での法要も活発に行う。
1980年代にはニューアカデミズムの流行に乗り、カジュアルなメディテーションをアピールし、また1983年のSIGGRAPHには阿含宗により製作されたCG「MANDARA'83」が出展されたり、広告代理店に依頼したメディア戦略なども、若い世代に受け入れられる側面があった。またこの頃、東京神保町にメディテーションセンター「シャンバラ」というスポットを開設するなどしていた。
桐山管長の初期の著書にあった学歴や信仰歴等が事実と異なるとして、週刊誌のネタなったことがあった。オウム真理教(現アーレフ)が引き起こしたとされる一連の事件が問題になった際、同教団の古参信者の中にかつては阿含宗の信者だった人がいたことが話題になった。1991年(平成3年)、炎の祭典・阿含の星まつり修法地の隣接地境内(敷地約15万坪)に総本殿・釈迦山大菩提寺を建立、チベット仏教ニンマ派ミンドリン寺コチェン・トルク宗務総長一行を招き盛大に落慶法要を営む。
1994年(平成6年)より、それまで「金剛界」「胎蔵界」の大柴燈護摩供であったものを「神仏両界の秘法」による大柴燈護摩供とした。仏界の本尊に真正仏舎利、神界に素佐速男命を奉祭し神仏両界の護摩壇として毎年星まつりを修している。
1999年のノストラダムスの予言について、桐山管長がこの予言の中のアンゴロモアの大王(恐怖の大王)であったと述べたことがある。恐怖の大王#信奉者による恐怖の大王の解釈例
1999年からは毎年、桐山靖雄自身が日本棋院名誉八段であることから日本棋院主催の「阿含桐山杯・全日本早碁オープン戦」に協賛している。
[編集] 阿含宗の略年表
1954年(昭和29年)「観音慈恵会」設立
1959年(昭和34年)「凖胝尊・因縁解脱千座行」を開始
1969年(昭和44年)「大日山金剛華寺観音慈恵会」となる
1970年(昭和45年)初護摩にて「念力の護摩」を焚く
4月・大柴燈護摩供が始まる
1978年(昭和53年)4月8日「阿含宗」立宗
1986年(昭和61年)スリランカジャヤワルデネ大統領より真正仏舎利拝受
1991年(平成3年)阿含宗本山落慶法要
[編集] 主な護摩法要
平成5年 伊勢神宮第61回式年遷宮奉祝・神仏両界大柴燈護摩供
平成13年 ニューヨーク護摩法要(リバーサイドチャーチ[RiversideChurch])
平成15年 パリ大柴燈護摩供(フランスのパリ・エッフェル塔前のシャンドマルス公園)
平成16年 東京大柴燈護摩供(東京お台場)
平成17年 広島大柴燈護摩供(広島平和記念公園・原爆供養塔前)
平成18年 アウシュヴィッツ大柴燈護摩供(ポーランド国オシフィエンチム市)
[編集] 主な活動
[編集] 主な行事
毎年
- 1月5日 生誕祭
- 2月11日 炎の祭典・阿含の星まつり大柴燈護摩供(京都市山科区北花山大峰)
「炎の祭典・阿含の星まつり」という大柴燈護摩供を、毎年2月11日、京都花山にて開催することでも知られ、炎の中に龍神や仏が出現するとされる。当日はテレビ中継もされ、焚きあげられる護摩木は毎年3,000万本以上と発表されている。
- 4月8日 花まつり(阿含宗立宗記念日)
- 5月5日 京都大仏祭
- 8月13日~15日 万燈先祖供養会
[編集] 海外活動
- 中国
北京大学・桐山教育基金[1]
中山大学 歴史系 桐山基金
小学校:记浙江省温岭市桐山小学校
日中友好活動に貢献してきたことを中華人民共和国政府から称えられている。[2]
- スリランカ
スリランカ゠阿含宗友好財団(スリランカの小・中・高校生を対象とした奨学金設立)
- 米国
「キリヤマ環太平洋財団」(米政府・カリフォルニア州政府認定財団、「環太平洋研究センター」、「キリヤマ環太平洋研究大学講座」が設置
海外では台湾での信者が最も多く、台北の淡水鎮に道場がある。台湾ではそのほか高雄、台中にも支部がある。 その他、ブラジル、カナダ、イギリスなどと続く。
[編集] 関連項目
[編集] 関連会社
病院
- 愛寿会 同仁病院(京都市)
特別養護老人施設
- 社会福祉法人愛寿会 紫磨園 [3](東京都)
霊園
- 御堂総本山(大阪柏原聖地霊園)
保養所
- 阿含宗箱根保養所(箱根)
[編集] 機関誌
- 『アゴンマガジン』月刊
- 『阿含宗報』
[編集] 宗教番組
日本全国のラジオ局で毎週日曜日の朝に放送されている阿含宗の宗教番組として「さあ、やるぞ 必ず勝つ(さあ やるぞ かならずかつ)」を放送している。
阿含宗管長・桐山靖雄の著書である同名の本に掲載されている法話集をパーソナリティが毎週朗読している(最近は桐山靖雄本人が過去に行った講話が放送されている(2006年10月現在))。
ネット局
STVラジオ 5時10分~5時25分
東北放送 5時30分~5時45分
新潟放送 5時50分~5時45分
RFラジオ日本 5時30分~5時45分
ラジオ大阪 6時30分~6時45分
中国放送 5時15分~5時30分
九州朝日放送 5時20分~5時35分
[編集] 参考文献
- ブリタニカ国際大百科事典
- 阿含宗出版社 『阿含宗報』
- 桐山靖雄 『オウム真理教と阿含宗』 ISBN 4892032611
- 矢島輝男 『阿含宗と桐山靖雄』 ISBN 4750600016
- 早川和廣 『阿含宗・桐山靖雄の知られざる正体』 ISBN 4871770214
[編集] 外部リンク
特別養護老人施設
- 愛寿会 紫磨園(東京都)
[編集] 阿含経と阿含宗との教学上の齟齬
阿含宗では、阿含経を依処にする理由について「シャカ以外の、どこのだれが書いたのか全く不明の偽りの経典(大乗仏教経典)を、シャカの説いた経典であるとして宗派をつくり教団を立てて、布教するのは正しくないことである、」「大乗仏教の経典には、内容的にも致命的な欠陥があることを桐山管長は発見しました。」「ところが、大乗仏教の経典には、どの経典にも、その修行の方法が一つも説かれていません。」 (阿含宗を知る )と記し、そのことを元に自宗の正当性を主張しているが、実際には、桐山自身の著書の中で大日経や般若心経など大乗仏教経典を自論の根拠として掲げ、後期大乗仏教の密教形式の儀式(護摩)を行っており、また、日本の神界という、根本仏教ですらないことが明らかなものを奉っている。
そして、阿含経の時点では護摩については「バラモンよ。木片を焼いたから清らかさが得られると考えるな。それは単に外側に関することであるからである。」(サンユッタニカーヤ)、占いについては「瑞兆の占い、天変地異の占い、夢占い、相の占いを完全にやめ、吉凶の判断をともにすてた修行者は、正しく世の中を遍歴するであろう。」(スッタニパータ)と、それぞれ否定的に解釈できる表現があるにもかかわらず、あえてそれらを行っている点からも、阿含経に依経しているとは言いがたいとする見方もある。
ただし、大乗仏教経典を釈迦直説とすることを誤りとすることと、大乗仏教の体系を教理教学に採りいれることとの間に、矛盾は無い。大乗仏教経典群は二大根本分裂後、大衆部系に分裂した仏教教団により、創作、制定されたもので、釈迦の言行録というべき阿含経とは一線を引かれるべきものである。そもそも、大乗仏教経典のもとになる中観派の唱える「空」は上座部(長老部)がアビダルマ仏教の煩瑣哲学に陥って、現実離れした議論を繰り返していた時代に、ジンテーゼとして登場した。故に、その教学には仏陀の「四諦の法門」「縁起の法」が盛り込まれ、実に「上手くできている」のである。特に「般若心経」などにおいては二百数十文字の中に、これらが巧みに表現されている。それらを教理、教学に採りいれることは、現代の仏教として至極当然という見方もある。
仏教体系自体を否定することに必然性があるわけではない。しかし、創作されたことが明らかな経典群を釈迦直説とすることは過ちである。キリスト教で言えば、信仰の拠りどころは「旧約聖書」及び「新約聖書」なのであり、例えダンテの「神曲」やルターその他の思想家の著作がいかにすぐれていても、創作物の範囲を出ないことに例えられる。釈迦仏陀自身は、当時の文化、宗教状況を踏まえ、バラモン教を「踏み台」にして教えと法を説いた。それをかんがみれば、現代の宗教家、特に仏教系の宗教者が膨大な体系である仏教体系を「踏み台」にするのは当然であるとする見方もある。
[編集] 因縁に付いての阿含宗の教学
仏教の根本思想である「因縁果報」(全てのものは因から始まる縁により生じた結果が、輪廻していくという教え)から、「縁」を変えれば「因」も変わるという因縁解脱を修行の目標とするとしている
阿含宗では、因縁を人生に当てはめ大まかに分類すると、32の運命的傾向になるとしている。また「生」「老」「病」「死」という別の表現法もある。 また、因縁の「因」の例として「癌や交通事故などで亡くなった親類縁者や水子が不成仏霊として現世に悪影響を及ぼす。」と主張している。
阿含宗に限らず、現世と死者との関連についての解釈は、宗教観により異なる。また唯物論的立場をとるか、死後の世界を認めるかによっても上記の教学についての見解は分かれるところであろう。
なお、阿含経自体には「死後の世界はあるか、ないか、霊魂はあるか、ないか、世界は常住か、無常か」という形而上学の問題についてはお釈迦様は答えず(無記)に、自分が法を解くのは苦しみから解き放たれるためだと、形而上の問題に惑わされ、またそのために苦しむことを戒める毒矢の喩えという教えがある。