フードファディズム
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フードファディズム(英語、food faddism)とは、特定の食品を食べるだけですっかり健康になる、などという宣伝をそのまま信じ、バランスを欠いた偏執的な食生活をすること。あるいは、特定の食品を口に入れて病気になったなどの情報に接し、その具体的な量に関するデータも確認しないまま、それを感情的に漠然と記憶し、その食品を全く口にせず、バランスを欠いた偏執的な食生活をすること。
日本に「フードファディズム」という概念を紹介したのは、群馬大学(教授)の高橋久仁子で1998年頃のことだといわれている。
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[編集] フードファディズムの背景
今よりさらに「健康」になりたいという人々の思い、健康ブームが根底にある、とも言われる。ただし、その思いが、適切なレベルを越え半ば強迫観念化している場合があり、その強迫観念は、健康関連商品・サービスによって利益を得ている企業(マスメディア含む)の流す恣意的な情報によって生じている場合がある。
ひとつひとつの企業は、全ての食品を満遍なく製造しているわけではなく、特定の種類の食品を製造販売しているものなので、自社製品の販売量を増やすために宣伝をする時に、おのずとバランスを欠いた情報を流す傾向がある。各社は利益を追求しているため、自社の製品さえ摂れば健康になれる、といった印象を(直接的にではなく間接的にであるにせよ)生む文言をちりばめたコマーシャルや資料を作成する傾向があり、それがマスコミや他の媒体を経由して人々のもとに届けられている。このような宣伝に接した側にも、宣伝というものには常にバイアスがかかっているものだ、ということを踏まえて冷静に距離を置くことができる人々も多いのだが、宣伝の文言をそのまま一字一句信じてしまう人々もおり、そのような人々の中にフードファディズムが生まれる傾向がある。
フードファディズムの執着の対象となりやすいものは、ダイエット食品、健康食品、ミネラルウォータなど様々である。天然由来品や植物由来品の使用が強調されているものが多い。また正確な成分比率が公表されておらず、他社が同等品を製造するのが困難な場合が多い。このような場合、その製品を製造している企業は、自社製品を他社製品から差別化ができるため、自社の製品だけを印象付ける極端にバイアスのかかった宣伝文句を作成することが可能である。そもそも最初から、その利点や利益を狙って商品開発をし、恣意的な宣伝の文章を作成している企業が相対的に多いので、結果としてこのような食品については恣意的な情報が増え、フードファディズムの対象となっている率は高い、と言える。
ビタミンやアミノ酸など、どの企業が製造しても、成分がほぼ同じにならざるを得ないサプリメントなどは、企業にとっても自社製品だけが有効、といった類の、人々を極端に煽る宣伝文句の作成は困難なので、結果として上記のダイエット食品類に比べると、フードファディズムの対象となることは相対的には少ない。
[編集] フードファディズムに陥らない方法
現代医学および栄養学の知見は、「これだけを摂れば健康になれる」といった、単一の「魔法の食品」の存在には否定的である。現代医学や栄養学の見地からは、良質の食品(当然のこととして必須栄養素が含まれる)を多品目に渡り、バランス良く摂取することが薦められている。
[編集] 主な事例
[編集] 良いとされるもの
- 天然酵母
- 有精卵
- オリーブオイル
- 有機食品
- 無農薬食品
- 天然塩
- クロレラ
- 核酸による若返り
- キチン・キトサン
- レシチン
- プロテイン
- ビタミン剤
- カルシウム剤
- 酵素
- 雑穀
- アロエ
- イチョウエキス
- プロポリス
- 飲むコラーゲン
- お茶で痩せる
- ダイエット食品
- 牛乳で安眠
- ゆで卵ダイエット
- 納豆
- 洗腸(コーヒー浣腸など)
[編集] 悪いとされるもの
以下のリストでは、健康志向の人が拒否反応を示すことのある食品類を列挙する。これらは(適量摂取の範囲内では)日常生活に支障をきたさない(一部は一定量の摂取が期待される)。
- マーガリン・ファットスプレッド・ショートニング
- タール色素など食品添加物
- 炭酸飲料
- ハンバーガーを始めとするファーストフード
- 高カロリーである点が問題視されることがある。
- これとは別に、有害物質の含有が問題にされることもある。例えばマクドナルドは2002年頃、牛の飼育時に抗生物質や食欲増進剤等の人体への悪影響が懸念される物質を食べさせているのでそれらを順次減らしてゆきたいと表明している。
- 動物性タンパク質、動物性脂肪
- 化学調味料は脳に悪い説
- 超高温殺菌牛乳
- インスタントラーメン
- HFCS(異性化糖)
- 残留農薬(農薬の種類や量によって評価は分かれているので、個別的に正確な情報を得ることが必要)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 「食べもの情報」ウソ・ホント:ファディズムへの反攻 安井至
- 納豆騒動にみるフードファディズムとは(東京新聞、2007年1月30日)
[編集] 関連書
- 高橋久仁子 『食べもの神話」の落とし穴 』巷にはびこるフードファディズム ブルーバックス 講談社 ISBN 4062574187
- 高橋久仁子 『「食べもの情報」ウソ・ホント』氾濫する情報を正しく読み取る ブルーバックス 講談社 ISBN 4062572311
- 高橋久仁子 『食と健康Q&A』チョットおかしな情報の見分け方・接し方 フットワーク出版 ISBN 4-87689-447-7