ぶりっ子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ぶりっ子(ぶりっこ)とは、性格類型のひとつ。主に男性の前で、無知を装い甘える女性を指して使われる。または人前で非力をアピールしたり、わざとらしい女らしさのアピールを批判・皮肉る際にも使われる。
ぶりっ子の中でも、本当は知っているのに知らないふりをするふるまいをカマトトとも言う[1]。
目次 |
[編集] 歴史
語源には諸説あるが、1980年の時点で江口寿史の代表作『すすめ!!パイレーツ』に「かわい子ぶりっこ」という言葉が登場している。「かわいい子ぶる(かわいいふりをする)子」を、江口が独自に変化させた言葉だと考えられる。これがマスコミで「ぶりっ子」という言葉が最初に使用された例とされている。
これがアイドル歌手の松田聖子(1980年デビュー)の人気と共に世間に広がったと見られる。詳細は後述。
当初は若者の間の流行語だったと言えるが、1981年に人気を獲得した女性コメディアン山田邦子のギャグから一般的な流行語になったと見る向きもある。従来の「カマトト」を置き換える形でこの言葉が広まり、若年層だけではなく中高年層にも新語として定着し、現在に至るまで使われるようになった。1981年12月には、『邦子のかわい子ぶりっ子(バスガイド篇)』というレコードがヒットした。
1982年には、銀蝿一家の弟分紅麗威甦(グリース、ヴォーカルは現在俳優の杉本哲太)が『ぶりっ子ロックンロール』をリリースして小ヒットした。
[編集] 松田聖子
「ぶりっ子」の典型例と言われたのが松田聖子である。松田は1980年に歌手デビューし、一躍人気アイドルとなったが、やっかみや反感もあってか、何かと、からかわれることも多かった。
発端は、1982年のFNS歌謡祭で『野ばらのエチュード』が大賞に選ばれた時、松田がマスカラが取れるほどに嬉し泣きしているにも関わらず、司会の露木茂アナが、松田の顔を至近距離から見ているのに、半ば冗談に「涙は出てますか?」と言ったことが拡大解釈され「可愛い子ぶって嘘泣きした」と指摘された事にある。露木の「涙は出てますか?」は軽い気持ちの発言(ジョーク)と見られ、露木は後のFNS歌謡祭で彼女に謝罪している。また、それより先を辿れば、デビュー年である1980年に、往年の人気番組「ザ・ベストテン」において、松田が「お母さーん」と泣き顔を見せた、その頬に一滴の涙も存在しなかったことが、茶の間の話題となり、この「お母さーん」を真似する当時の若者も多数いて、露木は、そのことを熟知していたものと容易に推察できる。(※)ノート参照。
彼女を否定的に見る者にとっては、上記の「嘘泣き疑惑」なるものが「ぶりっ子」の証左とされ、女性漫才コンビの春やすこ・けいこの十八番の持ちネタともなった。
ただし当時のアイドル歌手の大半は程度の差こそあれ「ぶりっ子」的な傾向を持っていたとされ、その中で松田が殊更「ぶりっ子」だと揶揄されたのは、「親しみを込めた、からかい」との見解もある。
[編集] フィクションにおけるぶりっ子
この性格類型のキャラクターは、古くからの少女漫画・トレンディドラマ等のラブストーリーにおけるヒロインのライバルにも多く見られる。男性向けの作品では、好きな男性の前でだけ精一杯可愛らしく媚びた振る舞いをする女性キャラクターが、その一途さや他の女性に嫌われるのを厭わない態度が可愛いと捉えられ、「萌え属性」のように扱われる事もある。
好きな男性の前では必要以上に可愛さをアピール、もしくは人前で善人振るが、その一方で自分の好きな男性を振り向かせ、自分のものにする為、または自分のプライドと面子を保つ為ならヒロインを陥れるための悪知恵を働かせることも厭わないしたたかな面がある。その本性は腹黒く、大抵ヒロインやヒロインと親しい友人や身内などの人物はすでに知っており、その事を相手の男性に忠告したり、ライバルの女性本人に直談判することもある。しかし女性側は過度に下手が出て、あくまでも自分が被害者であり、非があるのは相手側だということを強調することで、男性のほうは情により捨てることができずにライバルである女性と付き合い続けるか、気にも留めず逆にヒロインたちのほうを「悪」と決め付け、ライバルである女性への想いを募らせることによりヒロインを傷つけたり、自分の親を泣かせたりもする。 そして自らヒロインへの嫌がらせやいじめを平気で行う。このキャラクターの辿る結末は「本性がバレて皆から嫌われ、全てを失う(極端な場合はヒロインに対する嫌がらせやいじめが理由で社会的な信用までもが失墜する)」もしくは「男性はライバルに惑わされずヒロインの方を選ぶ」といったものがほとんどである。しかし、極わずかに「ある出来事を機に(理由は何であれ)改心し、ヒロインの理解者となる」といったパターンもある。
最近では作品ジャンルに関係なく、「いじられキャラ」として扱われるパターンが増えている。大抵は健気で純粋な部分を持ち合わせており、努力を惜しまない生真面目な性格であるが、夢見がちで子供っぽい[2]為、馬鹿・阿呆にされたり失笑を買ってしまうタイプが多い。傲慢な本性を秘めた自己中心的な思考を貫き、周囲をも利用する可愛さを駆使し、自身が持つ目的を果たす為なら手段を選ばない残忍さを持つタイプも存在する。
[編集] ゲーム
- 渡部ななこ(ごきんじょ冒険隊)
- プリン(スペースチャンネル5)
- ブリジット(GUILTY GEAR XX)
- ミニョン・ベアール(KOF MAXIMUM IMPACT)
- ジャニス(鋼の錬金術師3 神を継ぐ少女)
- アニス・タトリン、アリエッタ(テイルズオブジアビス)
[編集] アニメ
- カスミの三人の姉(ポケットモンスター)
[編集] 漫画
- 音無可憐(おそるべしっ!!音無可憐さん)
- 浜野あさり、浜野タタミ(あさりちゃん)
- 榊原ヨーコ(あずきちゃん)
- 胡喜媚(封神演義)
- マリン(赤ずきんチャチャ)
- 柏木さえ(ピーチガール)
- 藤堂公(フルーツバスケット)
- ドロシー(ストレンジ・プラス)
- 若松円(満月をさがして)
- 安西愛海(ライフ)
- アニー・リンド(Gemeinschaft)
- 脇薫(銀魂)
- 虎金井天々(すもももももも 地上最強のヨメ)
- ソルヴァ(NEEDLESS)
[編集] 小説
- 川島亜美(とらドラ!)
[編集] ドラマ
- ホ・ヨンミ(イヴのすべて)
[編集] その他
- 東北地方などでは、食用にするハタハタの卵を「ぶりこ」または「ぶりっこ」と呼ぶ。秋田音頭が作られた江戸時代より前から用いられている古い言葉であるが、上記の言葉は「振りをする」が「ぶる」と変化したものの派生語であり、関連は無い。
- 「ぶりっ子」の派生語として「はまちっ子」というものもあった。「ハマチ」は「ブリ」の成長途上のものを指す言葉であることから「ぶりっ子より多少程度の軽い状態」の意味。しかし、いかにも造語っぽく語呂が悪いこともあり、定着しなかった。
- 本来は男性受けを計算して、男性の前と女性の前で振る舞い方を変えている裏表のある女性を批判して使う言葉だが、最近では性別・年齢を問わず「ぶりっ子嫌い」の者が増えたためか、単なる子供っぽい(幼稚な)性格や(身体的な物などによる元来からの)舌っ足らずな口調等に関しても短絡的に「ぶりっ子」だと決め付けられたり、天然ボケや場の空気を読まない無神経なふるまい、あるいは教師に過度に従順な態度を見せると周りの者からの嫌悪感を誘い、「無自覚ぶりっ子」と非難される事がある。また、最近では語尾に「なんですけどぉ~」「はぁ~ぃ」「ですぅ」等と甘えた声で口をきくのも特徴に捉えられる。