専用鉄道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
専用鉄道(せんようてつどう)とは、工場生産品の出荷や木材、鉱石の搬出など、専ら自己の用に供する鉄道のこと。専用線(せんようせん)とも呼ばれる。
目次 |
[編集] 狭義の専用鉄道
鉄道事業法においては、専用鉄道を「専ら自己の用に供するため設置する鉄道であつて、その鉄道線路が鉄道事業の用に供される鉄道線路に接続するものをいう(第二条第六項)」と定義しており、単に自己の用に供するためだけではなく、JRや私鉄などの鉄道事業線に直接つながっていることが条件となる。このため引込線と呼ばれることもある。規模の大きな工場や炭鉱・鉱山、港湾地区の倉庫などと最寄駅を結ぶものが多かった。鉄道貨物輸送の全盛期であった昭和40年代(1970年代)までは、京浜や阪神などの工場地帯や港湾地区を中心に多数存在していたが、1984年以降、貨物列車のコンテナ化によるシステムチェンジにより、ほとんどの引込線が撤去された。
専用鉄道の設置者は国土交通省令で定める技術上の基準に従い、施設や車両の維持、管理をしなければならない(鉄道事業法第三十九条)。規格や仕様は接続する鉄道事業線に準拠することになる。かつては設置にあたって国から専用鉄道免許を受ける必要があったが、現在は免許や許可を受けたり届出を行ったりする必要は無い。実際の運行や管理は、設置者から日本通運などの運輸企業に委託されていた。
[編集] 広義の専用鉄道
鉄道事業線に直接つながっていない場合でも、専ら自己の用に供する鉄道であれば広義の意味合いで専用鉄道や専用線と呼ばれることが多い。鉱山鉄道や森林鉄道の多くがこれに該当する。ただし鉄道事業法の定義からは外れるため法的には専用鉄道ではなく、鉄道法規は適用されない。
[編集] 現役の専用鉄道・専用線
※2007年3月現在
- 室蘭本線陣屋町駅から分岐する室蘭開発専用線
- 室蘭本線本輪西駅から分岐する新日本石油精製室蘭製油所への専用線
- 室蘭本線萩野駅から分岐する日本製紙白老工場への専用線
- 室蘭本線苫小牧駅から分岐する王子製紙苫小牧工場への専用線
- 根室本線JR貨物帯広駅から分岐する日本甜菜製糖芽室製糖所への専用線・日本オイルターミナル帯広営業所への専用線
- 宗谷本線北旭川駅から分岐する日本オイルターミナル旭川営業所への専用線
- 東北本線小山駅から分岐する高岳製作所小山事業所への専用線
- 羽越本線中条駅から分岐するクラレ中条事業所への専用線
- 中央本線春日井駅から分岐する王子製紙春日井工場への専用線・愛知電機の専用線
- 山陰本線伯耆大山駅から分岐する王子製紙米子工場への専用線
- 山陰本線岡見駅から分岐する中国電力三隅火力発電所への専用線
- 鹿児島本線黒崎駅から分岐する新日本製鐵八幡製鐵所への専用線(八幡製鐵鉱滓鉄道 くろがね線)と、三菱化学黒崎事業所への専用線
なお、日本オイルターミナルやセメントターミナルなどJR貨物グループ企業へ続く路線は構内側線扱いとなっているものが多い。
[編集] 廃止された専用鉄道・専用線
- 根岸線磯子駅から伸びた日清オイリオ横浜磯子工場への専用線。
- 御殿場線岩波駅から伸びた関東自動車工業 東富士工場(現 富士総合センター)への専用線。(1982年に廃止)
- 山陰本線江津駅から分岐した日本製紙ケミカル江津事業所への専用線。(1997年ごろに廃止)
- 山陰本線益田駅から分岐したダイワボウレーヨン益田工場への専用線。(1997年ごろに廃止)
- 東海道本線近江長岡駅から分岐した住友大阪セメント伊吹工場への専用線。(1999年に廃止)
- 山陽本線大竹駅から分岐した三井化学岩国大竹工場への専用線(2000年ごろに廃止)・興亜石油(現新日本石油)麻里布製油所への専用線(1980年代に廃止)
[編集] 関連項目
カテゴリ: 書きかけの節のある項目 | 鉄道