根岸線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
根岸線（ねぎしせん）は、神奈川県横浜市西区の横浜駅から神奈川県横浜市磯子区の根岸駅を経て神奈川県鎌倉市の大船駅を結ぶ東日本旅客鉄道（JR東日本）の鉄道路線である。
目次 |
[編集] 路線データ
[編集] 概要
京浜東北線・横浜線と一体的な運行形態となっており、ほぼすべての列車が直通運転していることから、一般的に広範囲では区別されないことが多い。桜木町、磯子、大船駅で折り返しが行われる。根岸線内各駅におけるプラットホームの案内表示は、大船方面行きは「根岸線」となっているが、大宮方面行きは単に「京浜東北線・横浜線」と表示されており、「根岸線」の表記が無い。根岸線～京浜東北線・横浜線で使用されている電車（現在は205系・209系）の表示も「京浜東北線」または「横浜線」である。このため、地元沿線住民以外では、首都圏で認知度の高い京浜東北線の一部として認識されていることが多く、場所案内などで「京浜東北線磯子駅から徒歩6分」といった表記がたびたび見られる。
その一方、根岸線～京浜東北線・横浜線で使用されている電車の車内に掲示されている路線図には「京浜東北線・根岸線（Keihin-Touhoku-Line・Negishi-Line）」または「横浜線・根岸線（Yokohama-Line・Negishi-Line）」として大宮～大船間または八王子～大船間が表示されていて、こちらのほうでは「根岸線」の記述が見られる。
保安方式は横浜 - 桜木町間がATC方式、桜木町～大船間は桜木町より乗り入れる東海道貨物支線（通称:高島線）のATCを備えていない列車（貨物列車等）との混用を考慮し自動閉塞式。なお、保安装置にATCを搭載している車両については、桜木町～大船間においては地上信号機を見ながらも保安装置はATCをそのまま使用する「ATCバックアップ方式」となっている。埼京線・山手貨物線（板橋～新宿間）、総武快速線（両国～錦糸町間）がATCまたはATS-Pに統一された現在、ATCバックアップ方式をとるのはこの区間のみである。
但し、自動閉塞式上でのATCバックアップ方式は弊害が大きく、例えば信号が赤を示している場合で、手前50mまでの進入が出来るところでも、それより手前でATCが作動して列車が停止してしまったり、そもそも自動閉塞式では閉塞間隔が大きく設定されてしまうため、ATCを導入しているにもかかわらず最大限の高密度運転が出来ないのが現状である。
また、前述のように東神奈川駅より横浜線からの直通列車が運転されている。但し、磯子や大船までの運行は以前に比較して大幅に減少し、現在は桜木町折り返しが大半であるが、桜木町折り返しでさえ現在では日中のみの運転である。なお、土曜・休日には、横浜線から根岸線を経由して横須賀線の逗子まで直通する列車がある（京浜東北線方面から横須賀線へ直通する列車がないのは、同線の209系には保安機器としてATC・D-ATCしか搭載されておらず、横須賀線のATS-Pに対応できないためである）。
また、同区間に併走する形で内陸部を走る東海道本線・横須賀線とは異なり、横浜市内の湾岸沿いから港南地区を経由する路線で、東海道本線の電車線である京浜東北線の延長上に位置するという性格から、また本郷台駅では東海道貨物線へ通ずる短絡線に、さらに桜木町駅では東海道貨物支線のひとつである高島線へ接続しているなど、（もちろん正式ではないが）根岸線自体も東海道本線の横浜～大船間の電車線としての役割が強く、さらに東海道線の大船～横浜～東京間の混雑緩和などにも一役買っている。
起点の横浜駅から終点の大船駅まで30分程で走る。京浜東北線、横浜線ともに快速列車の設定があるが、根岸線内は各駅停車である。
このほか、横浜線経由で横浜駅と甲府・松本方面を結ぶ臨時特急「はまかいじ」に、横浜駅発着列車に加え、1999年から根岸線磯子駅までや、2001年から根岸線・横須賀線を経由して鎌倉駅まで結ぶ2号と3号（車両は189系）が設定されていたが、横浜駅以降の乗車率が極めて悪かったため、2002年を最後に同列車は廃止された。なお、「はまかいじ」以前にも根岸線～中央本線直通の臨時列車が運行された実績がある。
- 急行「白馬山麓スキー号」（1988,89年冬 逗子～南小谷・信濃森上）
- 快速「ホリデー快速やまなし号」（1992年秋 大船～甲府）
- 快速「ホリデー快速やまなしピクニック号」（1993年ゴールデンウイーク 大船～甲府）
いずれも165系が使用され、ATCの関係から根岸線内と横浜線の東神奈川～橋本間ではクモヤ143を連結して走行した。
根岸駅で取り扱う新日本石油精製根岸製油所にて精製された石油類をタンク車に積載して運ぶ貨物列車や、横浜港本牧ふ頭地区を通過する神奈川臨海鉄道本牧線発着の12ftコンテナや海上コンテナを積載する高速貨物列車が多く走っている（日中では1時間に2本程度）。日中は普段（横浜）桜木町～磯子間を旅客列車が磯子発着・大船発着交互で5分間隔で走っているところを、磯子発着がなく一部約10分も空いているところが存在するのはこれらの貨物列車が運転されるためである。当然ながら、旅客列車が本来5分間隔で走っているところを貨物列車通過のために約10分の間隔が空くため、後続の列車は混雑している。
貨物列車・旅客列車どちらかのダイヤが大幅に乱れた場合、列車と列車とのわずかな運転間隔の間を割いて運転されるが、ただでさえ運転密度が高い線区のため、このとき大抵貨物後続の列車は桜木町駅手前などで貨物の通過を待たされてしまい、遅延する（貨物が遅延している場合で、余分に設定されている10分間隔のところに走らせる場合はこの限りではない）。また、高島線の東高島～桜木町は単線であるが、根岸線内で停車した上での交換だと旅客列車に大きな影響を及ぼすため、関内付近で停車せずに貨物列車同士が交換することが多い。しかし、高島線より入線してくる貨物列車が遅れると、これから高島線に入線する貨物列車も当然ながら交換待ちのため停車してしまい、しばし後続の旅客列車に影響を及ぼすことがある。
開業年度が浅いため、ほぼ全線が高架またはトンネルで敷設され、カーブも比較的ゆるやかに作られており、線内には踏切が一つもない高規格路線である（かつて山手駅の横浜寄り第2竹之丸トンネルの手前に小さな踏切があった）。なお桜木町～石川町の線路は、かつての派大岡川に沿っており、関内駅の一部や高架橋脚は川の上に建てられていた部分もあった。現在は完全に埋め立てられ首都高速道路横羽線となっているが、今も橋脚に往年の姿を伺うことができる。
[編集] 歴史
横浜 - 桜木町間は、1872年に開業した日本の鉄道の発祥区間である新橋～横浜（桜木町駅は当時の横浜駅）間の一部で、東海道本線に属していたが、1964年の（仮称）桜大線として建設されていた桜木町 - 磯子 - 大船間のうち、桜木町 - 磯子が開業した時に横浜駅を境に根岸線とされた。その後、1970年に洋光台、1973年に大船まで全通した。
- 1872年6月12日（明治5年5月7日） - 品川駅～横浜駅（現在の桜木町）間が開業。横浜駅（初代）開業。
- 1887年（明治20年）7月11日 - 横浜駅～程ヶ谷駅（現在の保土ヶ谷駅）～国府津駅間が開業（横浜駅でスイッチバック）。
- 1909年（明治42年）10月12日 - 国有鉄道線路名称設定 東海道本線（支線）神奈川駅～横浜駅～程ヶ谷駅間。
- 1914年（大正3年）12月20日 - 神奈川駅～横浜駅間に高島町駅が開業。神奈川～高島町間が電化、京浜線電車運転開始。
- 1915年（大正4年）8月15日 - 横浜駅（2代目）が開業し、高島町駅は同駅京浜線ホームとなる。横浜駅（初代）を桜木町駅に改称。桜木町駅～程ヶ谷駅間が廃止。横浜駅（旧・高島町駅）～桜木町駅間が電化され京浜線の運転区間延長。
- 1915年（大正4年）12月30日 - 神奈川駅～横浜駅（旧・高島町駅）～桜木町駅間の貨物営業廃止。
- 1928年（昭和3年）10月15日 - 横浜駅が移設され、起点を神奈川駅から横浜駅に変更。神奈川駅廃止。
- 1951年（昭和26年）4月24日 - 桜木町駅構内で桜木町事故発生。
- 1964年（昭和39年）5月19日 - 桜木町駅～磯子駅間(7.5km)が開業。横浜駅～桜木町駅～磯子駅間が根岸線となる。
- 1964年（昭和39年）6月1日 - 高島線全通により桜木町駅～磯子駅間で貨物営業を開始。
- 1965年（昭和40年）10月 - 103系電車運用開始。
- 1970年（昭和45年）3月17日 - 磯子駅～洋光台駅間(4.6km)延伸開業。
- 1970年（昭和45年）5月20日 - 新杉田駅～洋光台駅間で103系電車が土砂に乗り上げて脱線。重軽傷者2名。
- 1973年（昭和48年）4月9日 洋光台駅～大船駅間(8.0km)延伸開業し全通。磯子駅～大船駅間で貨物営業を開始。
- 1984年（昭和59年）1月29日 - ATC導入。
- 1987年（昭和62年）4月1日 - 国鉄分割民営化により東日本旅客鉄道が承継。日本貨物鉄道が全線の第二種鉄道事業者となる。
- 1988年（昭和63年）9月22日 - 205系電車運用開始（横浜線）。
- 1992年（平成4年）3月 - 209系試作車（901系）電車運用開始。
- 1993年（平成5年）3月 - 209系量産車運用開始。
- 1998年（平成10年）7月4日 - ATOS使用開始。
[編集] 駅一覧
| 駅名 | 駅間キロ | 累計キロ | 大宮からの累計キロ | 八王子 からの 累計 キロ |
接続路線 | 所在地 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 京浜東北線大宮駅・横浜線八王子駅まで直通運転 | ||||||||
| 横浜駅 | - | 0.0 | 59.1 | 44.4 | 東日本旅客鉄道：京浜東北線（直通運転）、東海道線、横須賀線、湘南新宿ライン 相模鉄道：本線 京浜急行電鉄：本線 横浜市営地下鉄：ブルーライン（3号線） 東京急行電鉄：東横線 横浜高速鉄道：みなとみらい線 |
神奈川県 | 横浜市 | 西区 |
| 桜木町駅 | 2.0 | 2.0 | 61.1 | 46.4 | 横浜市営地下鉄：ブルーライン（3号線） 東日本旅客鉄道：東海道本線貨物支線（高島線） |
中区 | ||
| 関内駅 | 1.0 | 3.0 | 62.1 | 47.4 | 市営地下鉄：ブルーライン（1号線・3号線） | |||
| 石川町駅 | 0.8 | 3.8 | 62.9 | 48.2 | ||||
| 山手駅 | 1.2 | 5.0 | 64.1 | 49.4 | ||||
| 根岸駅 | 2.1 | 7.1 | 66.2 | 51.5 | 神奈川臨海鉄道：本牧線（貨物） | 磯子区 | ||
| 磯子駅 | 2.4 | 9.5 | 68.6 | 53.9 | ||||
| 新杉田駅 | 1.6 | 11.1 | 70.2 | 55.5 | 横浜新都市交通：金沢シーサイド線 京浜急行電鉄：本線（杉田駅） |
|||
| 洋光台駅 | 3.0 | 14.1 | 73.2 | 58.5 | ||||
| 港南台駅 | 1.9 | 16.0 | 75.1 | 60.4 | 港南区 | |||
| 本郷台駅 | 2.5 | 18.5 | 77.6 | 62.9 | 栄区 | |||
| 大船駅 | 3.6 | 22.1 | 81.2 | 66.5 | 東日本旅客鉄道：東海道線、横須賀線、湘南新宿ライン 湘南モノレール：江の島線 |
鎌倉市 | ||
[編集] 車両
[編集] 現行の旅客車両
- 京浜東北線用電車（10両編成）
- 横浜線用電車（8両編成）
[編集] 投入予定の旅客車両
- 京浜東北線用電車
- E233系（2007年秋頃に運用開始予定）
[編集] 過去の旅客車両
- 京浜東北線用電車
- 205系 （1989年10月26日 - 1996年2月1日）
- 103系 （1965年10月 - 1998年3月）
- 101系 （1969年4月1日 - 1976年3月）
- 72系 （ - 1971年4月19日）
- 横浜線用電車
- 103系 （1971年10月2日 - 1989年2月26日）
- 72系 （ - 1979年9月30日）
[編集] 現行の貨物用車両
- 定期貨物列車は桜木町～根岸間で乗り入れており、甲種輸送列車は桜木町～大船間。
- 定期貨物列車のうち、コンテナ列車は最大20両編成、車扱列車（石油列車）は最大28両編成に組成される。
- 電気機関車
- EF65形（高崎機関区・新鶴見機関区所属機）
- EF64形1000番台（高崎機関区所属機）
- EF66形（吹田機関区所属機）
- EF200形（吹田機関区所属機）
- EH200形 （高崎機関区所属機）
- EF210形（岡山機関区・新鶴見機関区所属機）
- 貨車
- コキ100系 ※海上コンテナ輸送に対応。
- コキ50000形 ※神奈川臨海鉄道本牧線の横浜本牧駅～本牧埠頭駅のシャトル輸送で使用されている同形式貨車を川崎車両所へ交番検査のために入場する際に根岸線を走るのみで、根岸線内では貨物の積載を行わない。
- タキ1000形 ※95km/h運転の高速石油列車に対応。
- タキ43000・44000形
EF66形は2007年3月18日ダイヤ改正より入線。EF66形およびEF200形がタキを牽く姿は、根岸線と根岸線の接続路線である高島線内でしか見られない。 EH200形は機関車の加速性・パワーを活かし、主に高速石油列車に充当される。
