広島弁
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広島弁(ひろしまべん)は広島県で使用される方言。広島県は安芸地方と岡山県と接する福山市を中心とした備後地方に分かれ、方言もかなり異なっている。一般に広島弁といえば、広島市を中心に分布する安芸弁のみを指すことが多いため、本項でも広島県西部で使用される安芸弁を中心に紹介する。
安芸弁の主な例として、一人称「わし」・二人称「われ」、また語尾に付ける『じゃけぇ(だから)/じゃけん』・『のう/のぉ』が有名。いわゆる「ら抜き言葉」を日常的に使用する。「キツイ」「汚い」「怖い」などのイメージが少なからずある安芸弁であるが、映画やテレビで耳にする広島弁は誇張されている感は否めない。実際は決して早口ではなく、のんびりした瀬戸内の風土を反映した長閑な方言であると言ってよい。
目次 |
[編集] 地域の特色
- 西部においては山口弁と共通な部分が認められる。また、『のう/のぉ』が『のぉや』となる場合が多い。
- 呉地方には、山口東部の言葉で江田島などの広島湾にある諸島部を経由して来たものがある。例えば「~だから」にあたる語は「~じゃけぇ」ではなく「~じゃけん」で、語尾に「ちょる」や「ちゃる」などが用いられ、一般的な広島弁とは少し異なる方言を持つ。江田島や能美島、倉橋島でも同じ傾向が見られる。
- 備後地方の備後弁は基本的に岡山弁に近く、福山市(旧城下及びその周辺を除く)や尾道市といった備後地方東部は語彙・イントネーションともに岡山弁(特に備中弁)と大差ない。安芸弁よりも口調が早いとの印象を持たれることがある。「福山のなぁなぁ語」といわれることも有り、上記『のう』のかわりに『なぁ』に変化する。「じゃけぇなぁ;ほやけんなぁ(だからね)」「ほいでもなぁ;せぇでもなぁ(けれども)」
- 備北地方(三次・庄原地方)では広島弁の影を残しつつより素朴な表現が多く、特定の語彙によっては南部広島地域での意思疎通に齟齬をきたすときもある。口調もゆっくりしているがゆえに、いわゆる広島弁(安芸弁)と印象が異なる。「さばる(触る)」「うべる(薄める)」
- 庄原市東城町では岡山県新見市との接点が深く、なぁなぁ等の岡山弁に近い点も認められる。
- 芸北地方(北広島町など)は島根県に接しており、出雲弁との共通性が若干認められる。
- 広島市内限定と思われるが、高齢者の一部でJR線を「汽車」、路面電車(広電)を「電車」と呼ぶ傾向が見られる。
- かつては、「ハワイの標準語」又は「カリフォルニアの標準語」と言われたくらい海外で幅を利かせた言葉で、現代のアメリカでは、日系人は四世、五世の世代となって使わなくなったが(但し80歳代以上の二世が、たまに使用する場合がある)、19世紀から20世紀半ばのアメリカで日本語といえば山陽・北部九州ミックスの日本語が主流であり、とりわけ「広島弁」の影響が最も強かった。福山市出身の小林克也が率いる「小林克也&ザ・ナンバーワン・バンド」の怪曲・『うわさのカム・トゥ・ハワイ』はハワイの日系人移民の悲しみを歌った名曲で、全編広島弁がフィーチャーされる。また日本語ラップのはしりとしても一部で評価が高い。
[編集] 語彙
[編集] あ行
- あずる・・・てこずる、苦労する。「車がぬかるみにはまって、あずってあずってのう(車がぬかるみにはまって、苦労しました)」(県北)
- あっこ、あすこ・・・あそこ。「あっこにゃぁいけんよぉ(あそこには行けないよ)」
- あほうね→は行 ほー(ほう)
- ありゃぁー・・・あれという意味だが広島で使う場合は、あの人、という意味で使うことが多い。「ありゃぁーワルで(あの人は悪人だよ)」
- あんたぁー・・・あなたは、の意。特に親しい間柄だけの呼びかけに使用。「あんた」と止めず語尾の伸ばし「ぁー」が重要。「あんたぁー何よーるん」 県外者に連発すると「あんた呼ばわりされた」と憤慨される恐れあり。
- あんな・・・あの人。三人称、彼、彼女。「あんながよおったでえ。(あの人が言ってたよ。)」
- あんに・・・「あんな」の少し丁寧語。「あんには、ええ人じゃねえ。(あの人は良い人だねえ。)」
- あんねぇー・・・あのね。呼びかけに使うが、アンネ(タンポン)のように聞こえるのであまり使わない方がよい。
- いいえの・・・いいえ違います。
- いがる・・・叫ぶ。「そがいにいがってもつまらんで(そんなに大声を出してもだめだよ)」(県北・西部)
- いかん、いけん・・・ダメと言う意味でなく、行かないの意。「わしゃいかん(私は行かない)」ただし「いけん」はダメ,という意味を持つので,「行くことが出来ない」は「行かれん」と言うことになる。「わしゃ行かれんけぇ(私は行くことが出来ないから)」
- いたしい・・・難しい。「いたしいこと言いんさるのぉ(難しい事をおっしゃいますね)」(県北・西部)
- いつぃき・・・いつも。「あんなぁいつぃきおるけぇのう(あの人はいつもいますよ)」(西部)
- いっこも・・・一つも、全然。「あんたぁいっこも分かっとらんじゃない(あなたは全然分かってないじゃない)」
- いなげな・・・変な、おかしな。「いなげな人がおる(変な人がいる)」(県北)
- いぬ(いぬる)・・・帰る。「ほんじゃあ、わしいぬるわ(それでは、私は帰ります)」(県北・西部)。この言葉は活用形など、実用例が豊富。いぬの?(疑問形)、いねん(否定)、いぬん?(質問)、いねや!(命令)、いんどるん?(過去質問形)、いにんちゃい(丁寧のような命令形)、、いんじゃうん?(希望を含む疑問形)、いんじゃったん?(過去疑問形)、いんだん?(同様だが多少悪意を含む)、いんだか?(同)、いのう(同意)など。いずれも他県の方にはさっぱり分からない。「1月はいぬる、2月は逃げる、3月は去ると申しますとおり....」というのが、校長先生の卒業式の時の話の定番になっている。
- いびせえ・・・恐ろしい、怖いという意。「あん男はいびせえのぅ(あの男は怖いですね)」(西部)
- いよいよ・・・語尾に付けて使う。
- いらう・かもう・・・触るの意。「えーけぇ、いらうな(いいから、触るな)」(県北・西部)
- いんや・・・いいえの意。「あんたがやったんじゃろ」「いんや」
- うげる・・・とれる、剥げる。「屋根のペンキがうげてしもうた(屋根のペンキが剥げてしまった)」(県北)
- うべる・・・薄める。「湯が熱いけえ、うべてえや(お湯が熱いので、薄めてください)」(県北・西部)
- ええ・・・いい、良い、うまくの意。 広島県人が東京に行って、標準語を喋ったつもりでも、つい出て怪訝な顔をされる言葉の一つ。特に否定形「ええがにいかん」(うまくいかない)と言ってしまうとひどく変な顔をされる。週刊誌『女性自身』にも掲載された広島弁の笑い話の一つに 東京から広島に越して来た女性が、男女共有の洗面所でコンタクトレンズを片方落とし、鏡の前で装着に苦労してると、広島のオヤジが覗き込み「ええがにいかんか、ええがにいかんか」としつこく言うので、女性が「そんなに映画に行きたいなら、一人で行けばいいでしょう!!」と怒鳴ったと言う話がある。(西部)
- ええとこずき・・・八方美人の意。「ありゃぁええとこずきする奴じゃ(あの人は、自分に都合のいい方へいい顔をする人だ)」
- えーたい・・・いつも。「えーてぇ」とも「えーたい雨じゃの(いつも雨だね)」
- えずい・・・賢い。「試験で100点取ったんか。えずいのう。(試験で100点取ったのか。賢いね。)」(西部)
- えらい(えらぁ)・・・苦しい、しんどいの意。決して偉い・賢いという意味ではない。また、非常にという意味もある。「ありゃあえらかったで(あれは苦しかったね)」(全域)
- えっと・・・多いの意味。「そがいにえっとかわぁでもええじゃろうにのぉ(そんなに沢山買わなくても良いでしょうに)」
- おいい・・・標準語では、多い(おおい)であるが、広島在住者、及び出身者は、この言葉を標準語と思い込んでいる場合が多いため、東京などに居住が長くても喋りにこの言葉が残る場合が多い。広岡達朗、達川光男の野球解説や矢沢永吉伝説の一つの因ともなっている独特の言いまわしに、この言葉が使用される事がある。(全域)
- おどりゃーすどりゃー(おんどりゃーすんどりゃー、おどれすどれ)・・・お前の意味と思われるが意味は無きに等しく、ケンカのときのみ使用し、相手を威嚇する言葉である。そのため滅多に聞くこともないし、日常会話では絶対に使わない。恐い・汚い広島弁を代表する言葉として知られるが、あまりの汚さにか、テレビで披露されることもない。なお実際に使うのは、「おどりゃー」「おどれ」だけである。「すどりゃー」「すどれ」は実際には使わない意味の無い言葉である。「おどりゃーすどりゃー」「おどれすどれ」は、おそらく他県から広島に来た人が、広島県人のケンカがこう聞こえる、という揶揄的な意味を含んで呼んだものと思われる。
- おさめる・・・しまう、かたづける。方言であるという意識がないため、「はよおさめんさいや(早くしまいなさいよ)」を標準語で言おうとして「早くおさめなさい」と言う例などが多く見られる。
- おしこみ・・・押し入れの意味。
- 押しピン・・・画鋲。
- おせ・・・大人(おとな)
- おおもん・・・大きなこと。「おおもん、いんさんなや。(大きなことを言うなよ。)」
- おる・・・をる、いる。逆はおらん。「あんなはおるかい?(あの方はいますか?)」(県北・西部)
[編集] か行
- ~よりか・・・~よりは。比較で使う ~よりは、が、~よりか、となる。「思ってたよりか、こまかった(思っていたよりは小さかった)」
- かぐる・・・引っ掻くの意。「ネコにかぐられた(引っかかれた)。」(全域)
- かった・・・借りたの意。ちなみに買ったは「こうた」という。「今日図書館で借ったんじゃ(今日図書館でかりたんだ)」(西部)
- かばち・・・文句(屁理屈・生意気なニュアンス)の意。「じゃけん」と並び著名な広島弁の一つ。「かばち(ょ)ぉたれな!(文句を言うな!)かばちの「ち」と「を」が繋がって「ちょぉ」という風に発音する」「あんなぁ、かばちばっかりいうとるげな(あの人は、もんくばっかり言っているらしい)」 テレビドラマにもなった漫画「カバチタレ!」や矢沢永吉、1980年のアルバムタイトル「KAVACH」はこの言葉からの命名。 (全域)
- かもう・・・いらう(触る)に近いが、相手にするの意味でも使い、否定形「かもうな」は、ほっとけ、意味となる。「あいつどうするん?」「かもうな」(県北・西部)
- かやれる・・・ひっくり返るの意(こぼれるに近い)。「味噌汁がかやった。(-がこぼれた。)」(西部・県北)
- ~がんす・・・~です、の意。最近はほとんど耳にする事のない言葉。かつては、備後・安芸方言の特徴を「備後ばぁばぁ安芸がんす」などと揶揄する表現もあった。(西部)
- がんぼう(がんぼ、がんぼたれ)・・・腕白小僧、暴れ者、暴れん坊、喧嘩、よく喧嘩をする子供のこと。著名な広島弁の一つ。
- ギョールさん・・・少女・若い女性。ハワイ、カリフォルニアに居住経験のある高齢者がよく使う。
- きんにょう・・・昨日。高齢者のみ使用、絶滅寸前の広島弁の一つ。
- くちゅぐる・・・くすぐる。「くちゅぐんなや(くすぐるなよ)」
- くちゅばいい・・・くすぐったい。「何かくちゅばいいのぉ(何かくすぐったいなぁ)」(西日本語の「こそばゆい」が訛ったもの)
- けえ・・・理由や約束を表す「から」。今でも広島の話し言葉に根強く残っている。「今度,こうたげるけえ(今度,買ってあげるから)」「今から行くけえのう(今から行くからね)」 方向を表す「から」は,広島弁でも「から」である。「どっからきんさったんの(どこから来られましたか)」
- けがれ・・・汚いのが嫌いな人。「わしゃあ、けがれじゃけえ。」(私は、汚いのが嫌いだ。)
- げな・・・のような、らしいの意。「あっこに、ビルが建ったげなで(あそこに、ビルが建ったらしいよ)」→げなげな話(うわさ話、人づての話)(西部)
- げに(がに)・・・(相手の話の腰を折って)ところで本当のとこは、の意味で使う。奥田民生の『マシマロ』という楽曲に「げにこの世はせちがらい(ところで本当にこの世はせちがらい)」と、広島弁のこの言葉を使う歌詞があるが、他県の人には気付かれないこともある言葉でもある。(県北・西部)
- こうた・・・買ったの意。「今日本屋でこうたんじゃ(今日本屋で買ったんだ)」(西部)
- ~こうに・・・~ように。「じゃませんこうに(じゃましないように)」
- こげる・・・折れるの意。「かどがこげた(隅っこが欠けた)」(県北)
- ここら・・・このあたりで、このへんでの意。「仁義なき戦い 頂上作戦」の三上真一郎の名セリフ 「こんなもここらで男にならにゃぁ もう舞台は回って来んど~ お~」
- こぶい・・・狡い。
- こまい・・・小さい。「肝っ玉こまいのぉ(肝が小さいねぇ)」
- ころ・・・自転車の補助輪。(全域)
- こんな(こんに)・・・あなたの意。『仁義なき戦い 完結篇』での菅原文太、終盤の名セリフ「こんなと飲んだら死んだもんにすまんけえのぉ」(西部)
[編集] さ行
- ~さい・・・しなさいの意。標準語の「~しなさい」よりも強制度は低い。「はよ寝んさい(早く寝なさい)」「これ食べてみんさい(これ食べてみたら)」。子どもや家族など親しい人に対しては「~ちゃい」とも言う(主に女性)。「持って帰りんちゃい(持って帰りなさい)」
- さし・・・定規、物差しの意。方言であると言う意識が無いため、標準語で喋るときにも使われる。「さしでしばかれた(物差しで叩かれた)」等の用法がある。
- さす・・・させる、やらせるの意。指す、刺すの意味ではない。「す」の方を強く発音する。張本勲が『サンデーモーニング』(TBS系)のコーナーで多用している。
- さる(~さる)・・・しなさるの意。動詞につなげて尊敬を表す。「町長さん、きんさったで(町長さんがいらっしゃいましたよ)」(西部)
- さげる・・・標準語の「提げる」より広い意味で使われ,物を下から支え持つ時にも使われる。「おい,そっちのはしをさげてくれえやぁ(そちらの側を支え持ってくれ)」
- しご・・・始末の意。かなり恐ろしい意味で使われる。「魚のしごをしとけ(魚をさばいておきなさい)」「しごぉされるど(大変な目に遭わされるよ→つまりしばかれる。なぐられる。痛い目にあう。)」。一方、世話や手入れの意味もあり、「畑のしごをせにゃあ(畑の手入れをしなくては)」の様にも用いる。県西部の島部や海沿いではさほど恐ろしいニュアンスでは用いられず、むしろ日用語である。(西部)
- しったげ(知ったげ)・・・知ったかぶりの意。
- してい(あるいは、「してー」)・・・(長さとしての)1日。1日2日は「していふつか」。古代に「1日」を「ひとひ」と呼んだことに由来するか。
- したげる・・・してあげる、が、したげるとなる。広島出身のバンド・LOVERIN TAMBURINのシングルタイトル『愛したげる』は広島弁で愛してあげるの言い方。
- してる・・・捨てるの意。落とすという意味もある。「どこでしてたんかのぉ(どこで落としたのかなぁ)」(西部)
- ~しな・・・途中の意。いにしな(帰る途中)いきしな(行く途中)「いにしなに、よっとくわ(帰る途中で、寄っておくよ」(西部)
- じなくそ・・・ウソの意。「あんなぁ大じなくそたれやがってからに(彼は大ウソをつきました)」(県北)
- 死ぬる・・・死ぬの意。
- しまつ・・・節約の意(いい意味で)。人を殺す・消すの意味ではない。「あっこの家はようしまつしんさる。(あそこの家はよく節約される)」(西部)
- しみる(凍みる)・・・凍る。「はぁ、道がしみとろうのぉ(もう、道が凍っているだろうなぁ)」(西部)
- しもうた・・・しまったの意。(収納する意もある)「失敗してしもうた(失敗してしまった)」(全域)
- じゃけん(じゃけえ)・・・だから。今や他県の人がイメージする広島弁の代名詞のような言葉。現在でもよく使うが「じゃけえ」あるいは「じゃけ」と使うほうが多い。「ワシャわるじゃけん(私はわるだから)」。また詳しく言うと、「じゃ」と「けん」が、それぞれ変化した言葉を足したものである。だからの「だ」の部分が「じゃ」、だからの「から」の部分が「けん」に変化している。つまり別々でも使い「私はわるだ」の変化では「私はわるじゃ」となり「私がわるいから」の変化では「私がわるいけん」となる。
- じゃっかぁしゃい!・・・やかましい!、うるさい!。
- しょーる(しちょる)・・・している。「おま何しょーるん?(あなた何をしているのですか?)」
- しゅわい…疲れる、しんどい
- じるい・・・ぬかるんでいるの意。「田がじるいのぉ(田圃がぬかるんでいますね)」(西部)
- しんきな・・・退屈な
- すいばり・・・とげ(木の極小さい)の事。「すいばりがたった(とげが刺さった)」(西部)
- ずんごむ・・・突っ込む。「川へずんごんだ(川に突っ込んだ。→要するに落ちた意)」(西部)
- せんない・・・面倒くさい。「せんないのぉ(面倒くさいなぁ)」(西部)
- せやぁーない・・・大丈夫。「せやぁーないよ、やってみんさいや(大丈夫よ、実行してみなさいよ)。」
- そばり・・・とげの事。(県北)
- そべら・・・木材表面のささくれ立った部分のこと。特に皮膚に刺さったときに使われる。
- そがいに(そがーな、そげな)・・そのような。「そがーなこと言いんさんなや(そんな事いわないでください)」(全域)
[編集] た行
- たあ、たー・・・~より、~以上の意味で比較の時のみ使う。「10万(円)たーなる(10万円以上になる)」、「パンたあ好き(パンよりは好き)」
- だーれも・・・誰も。広島弁は言葉を伸ばし強調するという特徴があるが、これは後に続く言葉・動詞が必ず否定で「だーれもおらん(誰もいない)」「だーれも見ん(誰も見ない)」となり、より誰も〇〇ない、ことを強調する言い方となる。
- たいぎい・・・面倒くさいなどネガティブな意味。一部ではせんない(山口県の方言)と言われる。広島の若者が非常に良く使う言葉。広島弁の中でも有名な言葉のひとつ。「たいぎいけぇ行かんかった。(面倒くさいから行かなかった)」また、たいぎいを人に対して使うことによって、うざったいという意味を表すこともある。「○○君はたいぎい。(○○君はうざったい)」(全域)
- たいがい・・・大概の意味で方言でないかもしれないがよく使う。「いい加減」という意味でつかう「たいがいにせぇよ(いいかげんにしなさい)」
- たう・・・届く。「天井に手がたう(天井に手が届く)」「プールに足がたう(プールに足が届く)」
- たける・・・大きい声を出す「おい、たけって呼んでみい(おい、大きい声をだいて呼んでみなさい)」(西部)
- たちまち・・・取り敢えずの意。標準語の「忽ち」のように短時間にという意味ではないのに注意。「たちまちそれでええわ(取り敢えずそれで良いですよ)」(東部)
- たわん・・・届かないの意。逆は「たう」。「梯子がたわん(梯子が届かない)」(全域)
- ~だん・・・~段階、~途中の意。~しな、とほぼ同義だが、タイミングの悪い時に使う事が多い。いぬだんになって来やがった(帰ろうと思った時に来たよ)」
- ちいと・・・少しの意。「ちぃたぁゆぅことをきけ(少しは言うことを聞きなさい)」(全域)
- ちびる・・・磨り減るの意。若者には標準語の「漏らす」の意味で取られ通じない場合がある。「タイヤがちびとるど(タイヤが磨り減っていますよ)」
- ちゃい(~ちゃい)・・・~(な)さいの意。年配の女性が子供など、目下の人に使う命令形だが、優しく言う時使う。「早くしんちゃい(早くしなさい)」「帰りんちゃい(帰りなさい)」
- ちゃった(~ちゃった、~しちゃった)・・・~なさったの意。動詞につけて尊敬を表す。やや女性的な印象の言葉。「先生が来ちゃったよ(先生がいらっしゃいました)」→これを標準語として解すると、尊敬ではなく「出来ちゃった結婚」の「ちゃった」のような歓迎しない意味に取られるので、広島弁を知らない者の前で使うと誤解を招くことがある。
- つばえる・・・ふざける。騒ぐ。「あんたら、電車でつばえんさんなよ。」
- つまらん・・・駄目な、面白くない、機能しない、くだらないの意。結構多用する言葉。「電話がつまらんようになった(電話が壊れた)」(西部)
- てごうする・・・手伝うこと。「やれんけぇ、てごうしてぇや(難しいので手伝ってください)」(県北・西部)
- でべそ・・・出たがり。外出好き。「あんたあ、でべそじゃねえ。(あなたは、外に出たがりだねえ。)」
- とーしょんなら!・・・何してるんですかの意。とう(何)してるんだ、が変化したものでケンカが始まるきっかけとなるセリフ。同様な言い回しに、何しょーんなら!、何よーるんなら!(何言ってるんだ)など。実際の使用例としては「わりゃ、とーしょんなら!」と言う言い方が多い。
- とうたら こうたら・・・どうした こうしたの意。広島人はこれを標準語と思っているが、これはれっきとした方言である。「とうたらこうたら言いんさんなよ(どうしたこうした言わないでね)」
- とぎ・・・友達の意。おそらく「伽」の事だと思われる。「とぎゃぁおらんのんか?(友達はいないの?)」(西部)
- ど・で・・・疑問・否定を含んだ動詞の語尾に付く ~よ、を強くした言い方。思うよ、知らないよ、違うよ が「思うど(で)」、「知らんど(で)」、「違うど(で)」となる。また完全に否定する場合は語尾を強く止め(「思うど」)、疑問を含む場合は語尾を伸ばしながら上げる(「思うど~」)、という微妙な使い分けがある。標準語の言い方では「~で」の後は「~で、~」と必ず話が続くが、広島弁で「~で」は「~で。」と話が終わるケースがあり、変わった言い回しの一つと思われる。「仁義なき戦い 頂上作戦」の小林旭最大の見せ場での名セリフ 「広島ヤクザはイモかも知れんが、旅の風下に立った事はいっぺんも無いんで。」
- とがい(どがぁ)・・・どうにも、の意。「とがいもならん(どうにもならない)」
- どしたん?(どうしちゃったん?)・・・どうしたの?の意。親しい間柄だけで使う。関西弁で、どないしたん、にあたる。
- どっしゃげる・・・ぶつかるの意。「あっこでどっしゃげとらぁ(あそこでぶつかってるよ)」
- とらげる・・・片付けるの意。(東部)
[編集] な行
- ないようなった・・・無くしてしまったの意。「財布ないようなった(無くしてしまった)」
- なおす・・・片付ける。「使ったおもちゃはちゃんとなおしとくんよ」
- なげる・・・放っておくの意。「そがなもん、投げとけ(そのような物は、放っておけ)」(西部)
- なして・・・なぜ、どうして。「なしてそがぁなことをしたん?(なんでそんなことをしたの?)」(県北・西部)
- なにしょん・・・疑問形。なにしてるの?「あんたあ、なにしょん?(あなた、何やってるの?)」中学のとき、「あんたあ、なにしょん?」と同級生に問うと、「息しょん。(息してるの)」と問い返すギャグをやっていたのを思い出す。
- なば・・・まつたけの意。その他の食べることができないキノコは「クソなば」と一括で表現。(西部)
- ~なら!・・・(動詞の語尾につける)~ですか!、にあたりケンカの時によく使い、広島弁が乱暴なイメージを与える言葉の一つ。「何いょーるんなら!(何を言ってるのですか)」 よく使う例として「なんなんなら!(何なのですか!)」がある。
- にがる・・・苦しい、痛い「つべたいもん食うたら腹がにがってのう(冷たい物を食べたら腹が痛くなったよ)」(県北・西部)
- にぎり・・・ケチ、守銭奴の意(悪い意味で)。「あれはにぎりじゃけえのぉ(あいつはケチだからね)」(西部)
- ぬるい・・・(お湯の温度が)低い。冷たくもなく熱くもない様子を表す。
- ねき・・・そばの意。(人間関係的な近さも表すか?)「火のねきに行くなよ(火の側にいくなよ)」(西部)
- ねと・・・すぐそばの意「そのねとへ置いてぇてください(その近くに置いてください)」(県北・西部)
- ねぶる(舐る)・・・なめる。「犬にねぶられたぁや(犬になめられたよ)」(西部)
- ねぶる・・・寝る。「ぶちねぶたぁ(凄く眠たい)」(西部)
- ねんだぁほる・・・あれこれうるさく聞く。「ねんだほり」は人の噂話などをあれこれと探る人を指す。
- ~の・・・~人、~な奴、の意味だが、語尾のみに付ける。標準語では例えば「嬉しいの」と形容詞の後に付いたり「嬉しいの?」動詞の後に付いて質問形となるが、広島弁で「~の」を使う時は「嬉しいげなの(はしゃいでる人、奴)」、「生意気なの(生意気な奴)」となる。
- のく、のける・・・人間がどく(動く、動かす)場合と物を動かす時と両方使う。
[編集] は行
- はぁ・・・もう、すでにの意。「はぁ、いんだん?(もう、帰ったの?)」(県北・西部)
- ばぁ・・・~ばっかりの意。「ばばぁばぁじゃ(婆さんばっかりです)」(東部)
- はぐる・・・めくるの意。布団や衣服のようなある程度大きく厚みのあるものに使われ、カードのような薄く小さいものには使わない。
- はしる・・・痛いの意。おそらく痛みが走るの事だと思われる。「足と頭がはしる(足と頭がいたい)」(県北・西部)
- はぶてる・・・頬を膨らませて、不平・不満を顔に表すこと。すねるに近い。「そがぁに、はぶてんなや(そんなに、すねるなよ」(西部)
- はめ・・・まむしの意「はめぇ捕まえたけぇ、焼酎につけちゃろ(まむしを捕まえたから、焼酎につけよう)」県北では「はみ」(西部)
- ばっち・・・他所(よそ),知らない遠方の場所。「某地」からの転と思われる。
- はぶ・・・歯茎のこと。「歯槽膿漏で、はぶが痛とうてのう。」(歯槽膿漏で、歯茎が痛くてねえ。)
- ばり・・・とってもの意。「ぶち」の同義語。
- ばんげ・・・夜の意。「きにょうのばんげに(昨日の夜に)」(県北・西部)
- ひ・・・明かりの意。火、陽、灯などから。「ひ、つけてや(明かり、つけてよ)」(西部)
- ひぃー・・・必死の意。「そがいに、ひぃーなりんさんなや(そんなに必死にならないでください)」
- ぴしゃげる・・・叩くの意。「逆らうやつはぴしゃげるどー!」
- びっしゃこ・・・びしょ濡れの意。「急に雨降ってきて、びっしゃこじゃ(急な雨でびしょ濡れです)」(県北・西部)
- ひてい・・・1日の意。もう聞く事も少なくなった死語となりつつある広島弁の一つ。「ひてい、ふつか(1日、2日)」
- ひなか・・・日中の意。「日のひなかから、そとに出らりゃあせんわいや(日中(昼過ぎ)から、(暑くて)そとに出ることなんて出来ないよ)」(西部)
- ひよる・・・風で物が飛んでいく。「洗濯物がひよる」
- ひらめ・・・やまめの意。(西部)
- ひんじょう・・・文句、不平不満の意。「ひんじょう言うな(文句を言うな)」(西部)
- ぶち・・・とってもの意。「ぶちえらぁ(とってもしんどい)」(全域)
- ふとい・・・大きいの意。「ぶちふといはめ(はみ)がおったで(とても大きいマムシがいたよ)」(西部)
- ぶに・・・分(ぶん)、物(もの)の意。「わしのぶに」「このぶに」。岡山弁であるが福山市でも使われる。
- へり・・・そば、ふちのこと。縁。「ねと」との違いは微妙。「本はテレビのへりに置いたる(ほんはてれびのそばにおいてある)」(西部)
- ほいで・・・それで。矢沢永吉も興奮するとこの言葉が出る。「ほいでのぅ、いんだげなで(それで、帰ったらしいよ)」 上京して標準語に直したい方には、「えいがにいかん」「よおけぇ」などと共にポロッと出るので御注意。(西部)
- ほいとぐい・・・自分の欲しい物を最後まで取っておく食べ方。「あんたあ、ほしとぐいしんさんなや。」
- ほー(ほう)・・・そう、という相鎚で使う言葉。そうそう、と言う時、ほーほーと言う。また会話中、「あぁ ほうね(ああそうか)」と使う事が多く「アホウね」ととられ誤解を招く事がある。
- ほうくる・・・強調しかし、放くるか? ほうくりだす(叩き出すのような)。ほうくりなげる(いまいましく投げ捨てるの意)
- ほうとくない・・・情けない、だらしない、つまらないの意。「ほうとくない奴じゃのぉ(情けない奴だなぁ)」(西部)
- ほしい・・・惜しい。
- ほっとぬるい・・・のろい,もたもたしている。
- ぼれぇ・・・とっても、たくさん「ぼれぇおったけぇなぁ(たくさんいましたからね)」(福山旧城下)
[編集] ま行
- まねし・・・真似をする人の意。相手を揶揄する時使うが、死語になりつつある。「まねしじゃーや(真似する奴だ)」。なお「し」の部分は「師」の意と思われ、そのため「~し」で使う場合がある、例えば「ヤリ師(スケこまし)の意」などがあるが、まねし以外の用法ではあまり使わない。
- みてる・・・無くなるの意。忌み言葉と同音の為、反義語「満てる」が転じて使われるようになった。「みなみてたわ(全部無くなったよ)」(全域)
- みな・・・みんな。「みなおらんわ(みんないないな)」(全域)
- みやすい・・・簡単なの意。「そりゃ、みやすいの(それは、簡単だね)」県北・東部は「みやしぃ」(西部)
- ~むき・・・向き、方向とは違い、人達、の意味。「たこう評価するむきもあるぅゆうじゃぁないですか(高く評価する人達もいると言うではありませんか)」
- ~むん・・・もの、の意味だが、確保してるもの、の意味。「お菓子ウチのむん、あんたのむん(お菓子私の(これが確保してる)もの、これがあなたのもの)」
- めげる・・・壊れるの意。人(精神)にも使う。「PS3がめげてしもうた(PS3が壊れてしまった)」(全域)
- メンタイ・・・明太子ではなく、広島でしか食べれない白身の魚。ロシア語のミンタイに通じる。広島では、白身の魚のフライというと、メンタイのフライだ。
- もげる・・・はずす、摘む(採る)の意。「あっ、首がもげた!(あっ、首がとれた!)」(西部)
- もとぉらん・・・つまらない、駄目な、役に立たないの意。「もとぉらんことぉゆうな(つまらないことを言うな)」(西部)
- ~もん・・・もの(者)、人の意。 『仁義なき戦い 完結篇』での菅原文太、終盤の名セリフ。「こんなと飲んだら死んだもんにすまんけえのぉ(お前と飲んだら死んでいった人にすまないと思うよ)」(西部)
[編集] や・ら・わ行・ん
- や・・・命令型。「はよぅせえや(早くしろ)」(安芸)
- やし・・・うそを言う人。だます人。山師からきている。「あんたあ、やしじゃねえ」
- やねこい・・・だるい・しんどい。「この山を登るんはやねこいでぇ(この山を登るのはだるいよ)。」
- や-や-・・・うるさく。「や-や-言う(うるさく言う)」
- やれん・・・やっかいの意。「あれはやれんことばぁいうけえのぉ(彼はやっかいなことばかりいうからなぁ)」(西部)
- よいよ・・・感嘆句。ため息とともに吐く言葉。「よいよ、あんたあ、何回いやあわかるんねえ。」(しかしながら、あなた何度言ったら解るのか。)
- よぅ~せん(れん、ん)・・・~出来ないの意。似たものに「~れん」と言うのもある。「そりゃぁよぅ食べん」と言った時には自分の都合、例えばアレルギーなど、で食べられないことを指し、「そりゃぁ食べれん」と言ったら上記の場合も、またそのものが食べることが不可能な場合も指しうる。
- よおけぇ(よおけ、よけぇ)・・・沢山・多いの意味。余計という言葉の変化と思われる。えっととの違いは微妙だが、数が多い場合によおけぇを使い、量が多い場合にえっとを使う傾向が見られる場合もある。どちらかしか使わない(知らない)人も多い。「えらいよおけぇもっとりんさるのぉ(すごく沢山持ってらっしゃるなぁ)」 よく使う言葉で県外で使うと怪訝な顔をされる言葉の一つ。上京して標準語に直したい方には、「えいがにいかん」「ほいで」などと共にポロッと出るので御注意。
- よかる・・・寄りかかるの意。
- よごれ・・・見た目の汚れた人ではなく、生き方のなっていない人の意。「あんたあ、よごれじゃのに、けがれじゃねえ。」(君は、見た目汚いのに、汚いのが嫌いなんじゃねえ。)転じて、自分には甘いのに人には厳しいという指摘に使う。中学の先生が、「わりゃあ、○○中学の450番じゃのう。」と注意されていました。450は、よ・ご・れです。
- よしてえや~・・・私(私たち)も仲間に入れてくださいの意。子供が遊びの輪に入りたいときの呼びかけ。
- よん・・・動詞の現在進行形、例えば食べてる、見ている、笑っているが、食べよん、見よん、笑いよんとなる。やや変化の難しい用法。「お前何笑いよんなら(あなた何を笑っているのですか)」
- ○○らぁ~・・・出来る事が可能、の意味で動詞の後に付ける。「できらぁ(出来るよ)、いけらぁ(行けるよ)、知っとらぁ~(知ってるよ)」
- わら~、わりゃ~・・・お前の意味。広島市内など都市部では相手への威嚇に使われる。海沿い、田舎部では特に高齢者が親しい者を呼ぶときに日常的に使う。「わりゃ~、はぁいぬるんかい(お前もう帰るのか)」
- わや・・・めちゃくちゃの意。「わやすんなや(めちゃくちゃするなよ)」。北海道や関西でも使われる。(全域)
- わち…わたしの意。「わちがするけぇ(私がします)」年配の女性がよくつかう。
- わち・・・魚の一種。岡山のママカリに似ている。わちを食べると、春が来たなあと思う。焼いて、酢醤油につけて食べる。
- ん(1)・・・~ないの意。動詞の否定形 行かない、見ない、食べない などの、「~ない」 の部分が「ん」となり、行かん、見ん、食べん、と言う。「しない」の時だけは、しんと言わず、せん、と言う。
- ん(2)・・・~の?の意。行くん?=行くの?。行ってん?=行かれるの?
[編集] 関連
[編集] メディア
- 広島弁は漫画・テレビドラマ『カバチタレ!』や、漫画『極悪がんぼ』、映画『仁義なき戦い』、『ヒナゴン』、漫画『はだしのゲン』、『赤い文化住宅の初子』などの作品にみることができる。
- 音楽では吉田拓郎、「唇をかみしめて」(刑事物語の主題歌、近年奥田民生がカバーしている。)小林克也&ザ・ナンバーワン・バンド、「うわさのカム・トゥ・ハワイ」など。
[編集] 広島弁を話す著名人
- 達川光男(野球解説者)
- 竹原慎二(元プロボクサー)
- アンガールズ(お笑い芸人)
- 西田篤史(タレント)
- ポルノグラフィティ(ロックバンド)
- 魚住りえ(元日本テレビアナウンサー)
- 石崎信弘(Jリーグ・柏レイソル監督)
- Metis(シンガーソングライター)
など。またはっきり広島弁を話している訳では無いが、矢沢永吉の独自の言い回しは広島弁のイントネーションである。また、張本勲や広岡達朗の言い回しも、広島弁のイントネーションがある。ポルノグラフィティの広島弁は本人曰く、備後弁に近いという。
[編集] 関連商品
- 現在撤退した府中町のキリンビール広島工場(現ダイヤモンドシティ・ソレイユ)において、ご当地ビール「KIRIN広島じゃけん」が販売されていた。
- がんす 魚のすり身に玉ねぎと一味唐辛子を少々加え、パン粉をまぶして油で揚げた食べ物。
[編集] 外部リンク
- バーチャル達川くん - 標準語から広島弁への変換ができる。
- 広島弁コンバーター・女の子版 - バーチャル達川くんの兄弟サイト