普通科 (学校)
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普通科(ふつうか、公式英称: ordinary courses)とは、普通教育を主とする日本の高等学校に設置される学科のことである。一般的には、高等学校、中等教育学校の後期課程、盲学校・聾学校・養護学校の高等部におけるものを指すことが多い。
高等学校、中等教育学校の後期課程における普通科については、高等学校設置基準(平成16年文部科学省令第20号)の第6条第1項・第5条第1号などに定められている。普通科における教育の大半を占める普通教育は、専門分野に特化した専門教育に対して、幅広い分野のうち、特に基礎的なもの扱うという普遍的教育を目指している。ただし、実態は、大学などの高等教育で学ぶための準備教育としての意味合いが大きい(=進学校を参照)。
高等学校の普通科の生徒数は、270万225人(平成16年度・学校基本調査による)であり、高等学校の生徒総数(371万1062人。同調査)に占める割合は、72.8%(同調査)である。
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[編集] 普通科における普通教育
高等学校、中等教育学校の後期課程における教育課程の基準は、高等学校学習指導要領(文部科学省告示)に定められる。
普通科では、国語・地理歴史・公民・数学・理科・保健体育・芸術・外国語・家庭・情報という主に「普通教育に関する各教科」による教育活動が行われている。(ただし、「専門教育に関する各教科」を開設することを妨げるものではなく、普通科であっても、法令上は、専門教育を主体とした教育課程を編制することが可能であり、そのような学校も少数ある。)
これらの教科のほかに、総合的な学習の時間や特別活動もあり、卒業までに取得が必要な単位数は、「各教科に属する科目」の単位数と「総合的な学習の時間」の単位数を含めて74単位以上とされている。なお、「単位」については、1単位時間を50分として、35単位時間の授業を1単位として計算することが標準とされている。(例えば、週に1回・50分の授業を1年間受けたら、1単位となる。)
「普通教育に関する各教科」には、それぞれ教科に属する科目が設けられ、各科目ごとの標準単位数は次の通りである。また、次の各科目においては、一部が「必履修科目」とされており、必履修科目については、表内の規則に基づいて履修しなければ高等学校を卒業することはできない。「専門教育を主とする学科」(専門学科)においては、一部の「必履修科目」を「専門教育に関する各教科」に属する科目によって代替することも認められている(例えば、工業に関する学科においては、情報A・情報B・情報Cのいずれかを専門教科「工業」の科目「情報技術基礎」で代替できる)が、普通科においては、このような措置は一切ない。
普通教育に関する各教科 | 各教科に属する科目 | 標準単位数 | 必履修科目 |
---|---|---|---|
国語 | 国語表現I | 2単位 | 「国語表現I」及び「国語総合」のうちから1科目 |
国語表現II | 2単位 | ||
国語総合 | 4単位 | ||
現代文 | 4単位 | ||
古典 | 4単位 | ||
古典講読 | 2単位 | ||
地理歴史 | 世界史A | 2単位 | 「世界史A」及び「世界史B」のうちから1科目 |
世界史B | 4単位 | ||
日本史A | 2単位 | 「日本史A」、「日本史B」、「地理A」及び「地理B」のうちから1科目 | |
日本史B | 4単位 | ||
地理A | 2単位 | ||
地理B | 4単位 | ||
公民 | 現代社会 | 2単位 | 「現代社会」又は「倫理」・「政治・経済」 (「倫理」と「政治・経済」は一対。) |
倫理 | 2単位 | ||
政治・経済 | 2単位 | ||
数学 | 数学基礎 | 2単位 | 「数学基礎」及び「数学I」のうちから1科目 |
数学I | 3単位 | ||
数学II | 4単位 | ||
数学III | 3単位 | ||
数学A | 2単位 | ||
数学B | 2単位 | ||
数学C | 2単位 | ||
理科 | 理科基礎 | 2単位 | 「理科基礎」、「理科総合A」、「理科総合B」、 「物理I」、「化学I」、「生物I」及び「地学I」 のうちから2科目 (「理科基礎」、「理科総合A」及び「理科総合B」のうちから 1科目以上を含むものとする。) |
理科総合A | 2単位 | ||
理科総合B | 2単位 | ||
物理I | 3単位 | ||
物理II | 3単位 | ||
化学I | 3単位 | ||
化学II | 3単位 | ||
生物I | 3単位 | ||
生物II | 3単位 | ||
地学I | 3単位 | ||
地学II | 3単位 | ||
保健体育 | 体育 | 7単位~9単位 | 「体育」及び「保健」 (双方とも) |
保健 | 2単位 | ||
芸術 | 音楽I | 2単位 | 「音楽I」、「美術I」、「工芸I」及び「書道I」のうちから1科目 |
音楽II | 2単位 | ||
音楽III | 2単位 | ||
美術I | 2単位 | ||
美術II | 2単位 | ||
美術III | 2単位 | ||
工芸I | 2単位 | ||
工芸II | 2単位 | ||
工芸III | 2単位 | ||
書道I | 2単位 | ||
書道II | 2単位 | ||
書道III | 2単位 | ||
外国語 | オーラル・コミュニケーションI | 2単位 | 「オーラル・コミュニケーションI」及び「英語I」のうちから1科目 (英語以外の外国語を履修する場合は、 学校設定科目として設ける1科目とし、 その単位数は2単位を下らないものとする。) |
オーラル・コミュニケーションII | 4単位 | ||
英語I | 3単位 | ||
英語II | 4単位 | ||
リーディング | 4単位 | ||
ライティング | 4単位 | ||
家庭 | 家庭基礎 | 2単位 | 「家庭基礎」、「家庭総合」及び「生活技術」のうちから1科目 |
家庭総合 | 4単位 | ||
生活技術 | 4単位 | ||
情報 | 情報A | 2単位 | 「情報A」、「情報B」及び「情報C」のうちから1科目 |
情報B | 2単位 | ||
情報C | 2単位 |
[編集] 普通科における就職
前述した通り、普通科は工業科や商業科などといった専門教育主体の高校と異なり、履修科目が進学を前提とした普通教育主体に編成されていることから職業に関する専門科目は原則として履修が行われないうえ、履歴書作成や面接、マナー教育など就職指導の機会も極端に少ないことから、就職においても専門学科との格差は大きい。また、性別などでも専門学科との格差が大きいとされている。例えば、新卒者の就職傾向を見てみると、以前から女子が男子より圧倒的に多い。この理由として、男子生徒の進学志向が以前から根強いのは当然だが、加えて普通科の求人職種で圧倒的に多い事務、販売、サービス関連で女子を主体に採用している企業が多いことなども挙げられる。そのうえ、男子の場合は卒業後に受験浪人の継続を断念したなどの理由で、止む無く就職を選ぶケース(学校などの斡旋に乗らない縁故就職も目立つ)も目立つ。
進学指向の弱い普通科の高校の中には、専門学科の高校との格差を少しでも補うため、職業に関する専門科目も部分的に選択科目として取り入れたり、場合によっては、その選択科目を多種設定して総合学科に改編する動きも一部で見られる。
これとは別に、普通科の卒業者には、公務員や国鉄、電々公社などの公共企業体(現在特殊会社に移行されている企業体も含む)、あるいは、電力・ガス・公共交通などのインフラ産業に就職している人も多い。理由としては、これらの入社試験が一般常識や記述問題主体に出題されており、履修科目が進学を前提とした幅広い分野にまたがり、かつ模擬試験などで判断力や論理的な思考能力を日々鍛えられている普通科の生徒でも対応しやすいためではないかといわれている。
[編集] 関連項目
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