車掌
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[編集] 概要
主たる業務には、走行中の車内の犯罪や迷惑行為の防止、車内の案内放送(車内放送・車内チャイム)、車内改札、ドアの開け閉め、出発・到着時の安全確認・出発合図などがある。
事故など緊急の際には、後方の列車に自列車の存在を知らせて停止手配をとり併発事故を防止(列車防護)したり、車掌弁(車掌室の非常用ブレーキレバー)を扱って列車を停止させるなど、乗客の安全を確保する役割も持つ。
急ぎの乗客で切符を購入できなかったときや、(ワンマン列車からの乗り換え、無人駅からの乗車などにより)切符を持っていない乗客の為に、携帯型の発券端末機を使用した切符類の販売(一部の往復割引切符も含む)も業務の一環として行われている。 特急列車などでは随時、オレンジカードの販売も行われる。また、無人駅(有人駅でも、深夜早朝等で、駅係員不在になる場合も含む)での到着の際は使用済みの切符の回収も行う。
乗客へのサービスを専門に行う「乗客専務車掌」(私鉄など一部は旅客専務車掌)というものがある。これは純粋に運転業務を行う車掌が、乗客の増加によって清算業務などに手が回らなくなり、その名の通り乗客への直接的なサービスを第一とした乗務員の役職として、設けられたものである。 主な業務は車内での乗り越し精算、他会社への連絡乗車券、プリペイド式乗車カード(パスネットなど)の発売など。(尚、現在では、パスネットやスルッとKANSAI、SuicaやICOCAなどの普及によって車内精算の必要性がほとんど無くなり、多くの会社で廃止されている。)
[編集] 乗務位置
鉄道の場合、車掌が乗務をする車掌室は通常、列車の最後部にあるが、特急列車などでは中間部に設けられている場合もある。
なお、ケーブルカーについてはこの例に習わない。車両先頭の乗務員は、運転士ではなく車掌である。 また、運転士は頂上駅にいる。これは機関部が山頂駅にある為である。
[編集] 乗務人数
たいていの場合は1列車に対して1人だが、特急や新幹線などの編成が長い列車や乗客の多い列車などでは2人ないし3人といった複数人が乗務し、仕事を分担している。
[編集] 電報略号
車掌のことを「レチ」という。これは「列車長」の略である。 ちなみに専務車掌は「カレチ」。(リョカクセンムレチの略)
[編集] 歴史
日本の鉄道の初期には実際に列車長と呼んでいたが、「社長」と混同する恐れがあったので「車掌」と呼ぶことになったと言われている。
1980年代中ごろまでは、貨物列車にも車掌が乗務し、列車分離などの事故時に列車防護措置を行っていた。しかし、車両の信頼性向上・列車防護無線装置や鉄道無線装置やデッドマン装置の整備により運転士だけの乗務となった。
1960年代より前は、バスや路面電車にも車掌が乗務して乗車券の販売や検札・安全確認などを行った。
[編集] ワンマン運転について
現在ではワンマン運転が主流となっており、バスや路面電車に車掌が乗務することはほとんどない。 しかしながら一部の鉄道路線では、運転上は「ワンマン運転」扱いだが、車内精算業務のために車掌を乗務させていることもある。 この場合、案内放送やドア扱いは運転士が行う。
[編集] 出発合図について
車掌は列車を出発させるとき、運転士に出発合図を送ることになっている。
日本の客車列車では、車掌が運転士を無線で呼び出したうえ、通告により出発合図を送る。
例:車掌:「こちら○×列車車掌。運転士さんどうぞ。」
運転士:「こちら○×列車運転士です。どうぞ。」
車掌:「○×列車発車!」
JRグループでは、車掌の乗務が省略されていない列車のうち、気動車列車および、北海道、四国、九州(九州新幹線も含む)の電車列車では、車掌が運転士に、長音一声のブザーを鳴らして出発合図を送っている(車内ブザー式) 。かつては北海道内の一部の普通客車列車(主に札幌圏)でもこの方式で行われていたことがある。
東日本、東海(飯田線は車内ブザー式)、西日本では、旅客列車においては、全ての乗降扉が閉じている事を知らせる知らせ灯の点灯を運転士が確認することにより、車掌の出発合図とみなしている(知らせ灯式)。JRグループ各路線のワンマン列車(ワンマン運転)の場合も同様である。
団体・回送列車の運転や旅客扱いを行わない運転停車の際に行う出発合図は車内ブザー式による。また、JRグループ各社共通であるが、発車直後に急に乗る人が現れた場合は数回ブザーが鳴らされ、停止の合図を送る。
私鉄各社では、車掌を省略していない列車では、車内ブザー式(主に関東)や、ベルを短音二打を鳴らす車内電鈴式(主に関西)などで出発合図を送っている。
なお、東海道・山陽新幹線においての出発合図は代用保安方式または伝令法により列車を出発させるときに使用されるもので、駅係員が運転士に対して行う合図となっている。(普段は駅係員からの客扱終了合図によって車掌がドアを閉めてから列車は進行を開始する。)