ならずもの国家
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ならずもの国家(rogue state, rogue regime)とは、「世界平和に対する脅威を画策する国家(あるいは体制)」という意味合いでしばしば用いられる表現である。ある種の基準、すなわち人権抑圧を常とする独裁的政治体制の維持、テロリズムに対する支援、あるいは大量破壊兵器の拡散などを行うとされる国家がこの「ならずもの国家」との形容を受ける。
アメリカ合衆国はこの「ならずもの国家」の表現を公式声明中においても最も積極的に用いており、米国の外交政策に反対の立場をとる者はこの表現に対しても批判を行っている。よくなされる批判は、この「ならずもの国家」という表現は米国に対して友好的でない国家すべてを指し、しばしば現実の脅威を伴わない場合にも用いられる傾向があることに対するものである。更に進んで、アメリカの著名な外交問題評論家ウィリアム・ブルムのように、「ならずもの国家」なるレッテルはアメリカ合衆国自身に対してこそふさわしい、とする論者もいる。
クリントン政権の任期終盤半年ほどの期間において、この「ならずもの国家」という表現は「懸念される国家」(state of concern)なる表現に置き換えられる傾向がみられたが、続くジョージ・ウォーカー・ブッシュ政権では再び「ならずもの国家」を積極的に用いている。同政権はこうした国家群からもたらされる脅威を、自らの外交政策、軍事的積極策(例えばその対ミサイル防衛戦略)を正当化するものとみなしており、それはこれら国家の行動が相互確証破壊の概念によって影響されない、とする仮定に基づいている。
1990年代末において、米国政策担当者は朝鮮民主主義人民共和国、イラク、イラン、アフガニスタンおよびリビアを「ならずもの国家」と認識していた。2001年10月からのアメリカのアフガニスタン侵攻に伴い同国は「ならずもの国家リスト」から除外され、2003年3月からのアメリカを中心とした多国籍軍のイラク侵攻作戦によって、イラクも同リストから外れた。一方、リビアは外交交渉によって、現在では米国の「ならずもの」認定からは除外されたと考えられている。
[編集] 参考書籍
- William Blum, "Rogue State: A Guide to the World's Only Superpower", Common Courage Press, (ISBN 1567511945)
- Noam Chomsky, "Rogue States: The Rule of Force in World Affairs", South End Press, (ISBN 0896086119)
[編集] 関連項目
- アフガニスタン関連: ターリバーン - アメリカのアフガニスタン侵攻
- イラク関連: イラク武装解除問題 - 対イラク国連決議(687 - 1284 - 1441) - イラク戦争(年表)
- イラン関連:
- リビア関連: パンナム機爆破事件
- 朝鮮民主主義人民共和国関連: 核問題-朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)、北朝鮮核問題 ミサイル問題-ノドン・テポドン
[編集] 外部リンク
- ジョージ・ウォーカー・ブッシュ大統領によるステートメントの一例(2002年6月1日、於ニューヨーク州ウエストポイント)。「ならずもの国家」(rogue states/regimes)という語句が具体的定義なしで複数回用いられている。