アダルトビデオ
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アダルトビデオ(adult video(和製英語だと思われがちだが、米国にはAVN (Adult Video Newsの略)という雑誌がある))は、性的好奇心を満足させるために製作された映像作品、またはその映像が収録されたメディア等の事。AV(エーブイ)と略称される。男性同性愛者・両性愛者向けのものはゲイビデオと呼ばれている。
性行為の場面が出てくる為、現在の日本では18歳未満の者への閲覧・視聴、レンタル、購入などが通例禁止されており、一部通販を除き年齢確認がなされる。
ちなみに、2007年2月28日にDMMの「DVD通販」の項目を調べたところ、アダルトDVDの2007年1月の発売数は1310本(一日あたり約42本)、2007年2月の発売数は1265本(一日あたり約45本)であり、毎年膨大な数のアダルトビデオが生産され、そして消費されていることになる。
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[編集] メディア
メディア(媒体)は以前VHSビデオテープが中心であったが、最近ではDVDが用いられる事が多く、日本の合法セルビデオ(販売用ビデオ)はほとんどがDVDである。DVD登場前の一時期にビデオCDにより発売された作品がある。
又、映画館やビデオ鑑賞店舗、ケーブルテレビ(CATV)やCS放送番組、ホテルのテレビ(主にCS放送、CATVを配信)、インターネット配信などで見る事も出来る。
[編集] 歴史
1960年代後半、電機メーカー各社から最初期のビデオテープレコーダの市販(主に学校・教育施設や企業、ホテルやモーテルおよび遠洋漁業の船舶向け)が開始されたと同時に、ビデオテープレコーダで視聴するための録画済ビデオソフトの製作が映像各社で始まった。その頃より、少数ながら海外や国内のポルノ映画・ピンク映画を収録したビデオソフトが製作され、主にホテルやモーテル向けに販売・貸し出しが開始された。一般的にこれらのソフトは「アダルトビデオ」の範疇には含まれないが、その頃よりビデオテープレコーダを持っていれば、非常に高価ながら個人的にも販売・貸し出しを受ける事が出来た事から、ルーツと言えるものである。
日本において家庭用ビデオテープレコーダーのデッキが普及し始めた1980年代には、本格的な「アダルトビデオ」が誕生。それまでの映画館等で上映されるポルノ映画・ピンク映画に代わって急速に発展した。普及の要因は、家庭用ビデオデッキが廉価になった事と、ビデオソフトを一般顧客に貸し出すビデオ・レンタル店が増加し、安価に自宅で鑑賞出来る様になった事が大きい。逆に、AVの登場がビデオデッキの普及率に貢献したという指摘もある。
AV普及期の初期作品として有名なのは、宇宙企画の『ミス本番』シリーズである。1984年に素人学生風の女性が出演する『ミス本番・裕美子19歳』(田所裕美子)、『ミス本番有希子20歳めぐり逢い』(吉沢有希子―現早見瞳)などが発売され、ブームとなった。その後、淫乱ブーム、巨乳ブームなどがあり、多くのAV女優がデビューしている。
[編集] 日本における流通の状況
レンタルビデオは一般に普及しているが、販売を主目的としたビデオ(セルビデオ)も登場し、市場規模を見ると現在では通信販売でも買えるセルビデオの方が大きくなっている。又、ビジネスホテルやラブホテルの有料番組や、CS放送番組、ケーブルテレビ等でも作品が放送されるなど様々な場所で利用されている。
レンタルビデオ店の多くには、必ずと言っていいほどアダルトビデオの独立コーナーが設けられており、一般コーナーとは暖簾などで仕切られている場合が多い。数は少ないもののアダルトビデオ専門のレンタル店も存在する。1990年ごろはまだアダルトビデオ作品数が少なく、一般作品に並べられて展示されていたが、現在コーナー独立しているのは、未成年者の目に触れさせない為とアダルトビデオに嫌悪感を抱く人々に配慮、およびにAV利用者のプライバシーに配慮をしたものである。アダルトビデオのレンタル売上は一般のビデオを上回る事が多く、レンタル店にとって欠かせない一大分野に成長した。又、セルビデオも急速に広まり、店舗数で言えばレンタル店をはるかに凌いでいる。
昨今ではインターネットの普及と共に、AVコンテンツをストリーミング放送やデータダウンロードの形で提供するものも現れている(有料・無料がある)。
又、通信販売やネット上で申し込めるアダルトビデオの宅配サービスなども盛んである。これらは、店員や他の客に接する事もなく24時間自宅にいながらにして視聴する事が出来る事から、性風俗商品の特性上、今後も利用が増えてゆく事が予測される。
2006年6月現在、大規模な業者は3社あるが、郵便やメール便を利用して、貸出・回収を行う。業者の配送センターの近くに住む等特別な人以外は、月に10回転程度が実際の上限となるので、利用の損得判断は注意を要する。また、同一タイトルの在庫数も限りがあるので、借りたいタイトルが借りられるとは限らないことも注意を要する。借りようと借りまいと月々のチャージは発生する。
メーカーによっては独自に流通配送システムを構築し、通販サービスの向上と低価格化を実現しているところもある。
違法流通としてファイル共有ソフト(Winny/Share/BitTorrent)を利用したAV動画が上げられる。P2Pソフトで流通しているのは表・無修正が混在した状態である。なお殆どが著作権法を無視した、個人がAV動画をパソコンにキャプチャーしたアダルトビデオや、アダルトDVDをISOイメージにしたファイル、海外から送信される無修正アダルト映像でDRM解除された映像が不法流通されている。
現在、インターネットで取得できるAV動画の画質は、DVDのbit rateに比べるとまだ低いが、現在の所光ファイバーの導入や映像コーデックの進歩、地方へのインフラの整備が進む事で、この問題は解決されている。これらの事からアダルトビデオのみならず、逆輸入という形で海外から送信される無修正アダルト映像と、法律違反回避の為の倫理審査団体の自主規制としたAV映像コンテンツ業界に大幅な変革が要求されつつある。
[編集] 制作側の状況
1作の撮影日数は1~3日程度がもっともポピュラーで、製作費用は作品の規模によって数十万~数百万と一般のロードショーの映画と比べると格段に安く、その大半が女優にかかるギャラである事も多い。
[編集] 作品の内容
“視聴して自慰をするためのソフト”という傾向が強い商品の特質上、映画・テレビドラマなどに見られるような芸術性はほとんど求められず、性的興味をそそる事に力が注がれている作品が全てであると言っても過言ではない。こういった商品の特質上、毎月次々と新しい作品がリリースされ、1年あたりの作品量は膨大な数になる。
日本の合法アダルトビデオ作品の多くは、シチュエーションやストーリー設定、出演者の衣装などの演出全般に、一般ドラマほどではないものの、こだわるものが見受けられる。これは大手のレンタルものにその傾向が強い。
しかし、全般的に、例えばバスガイドなら、どちらかと言えばバスガイドの制服を着たコスプレという“見た目”に重点を置き、主に男性視聴者の自らの妄想を手助けする要素が強い。
演出や設定、テーマ、企画の“切り口”は様々であるが、ほとんどの場合において特定のパターンの性行為(フェラチオシーンなど)を行うなど、アダルトビデオの共通点のようなものがある。
[編集] 本物志向
“視聴して自慰をするためのソフト”であり、如何に心地よい自慰に役立つかが重要であって、本番行為(男性器の女性器への挿入)が行われているか否かはあまり重要視されないという考え方もある(この点、性交行為そのものを観賞する事を目的とした裏ビデオとは、やや趣が異なる)。一部作品では挿入せずに疑似本番をし、偽物の精液を使用している事もある。疑似本番はモザイクをかけるかと分かりにくいが、女優の演技によってすぐに分かってしまうと感じる視聴者もいるため、より本物らしく見せるためには女優の演技力が求められる。いわゆる単体女優の場合、顔などの容貌で売れ行き(レンタルの回転率)を稼げると判断出来るため、疑似本番が多かった時期もある。
一方で本番でなければ満足できない本物志向の視聴者が増えていると見る向きもある。特にインディーズ系ビデオ(セルビデオ)や企画系ビデオでは、本番行為でなければ視聴者のニーズに応えられない状況にあり、ほとんどの作品で本番行為が行われているとされる。
[編集] 避妊具の使用
過去に性感染症に感染した女優が仕事を続けていた事が大きな騒ぎになり、それ以降('90年代半ば以降)撮影ではコンドームを使用する事が通例となった(それ以前は男優・女優の合意があれば着用しない事が多かった)らしい。この辺りの事情は時代によって異なり('80年代から'90年代半ばは、本番はコンドームを使わない例が多かった)、レンタルかセルか、ビデ倫系かインディーズ系かによっても異なる。
モザイクをかける日本の合法アダルトビデオでは、'90年代半ば以降コンドームを着用する事が多くなっていると言われ、顔射など膣外射精の類は、発射寸前に男優自身の手により、急いでコンドームが外され、手の中に隠されている。この事実はアダルトビデオの普及度と比べ案外知られていない。
モザイクがあっても、ペニスが不自然に光っている、ペニスの根元のほうにコンドーム末端のゴム輪がある、などの点に注意すればコンドームを着用している事は比較的簡単に見破る事が出来る。一部には、外したコンドームが「見切れて」いる(=不意に見えてしまっている)作品もあるし、はっきりコンドームを着用している事を説明している作品もある。あえて射精後のコンドームから精液を垂らして飲む、という構成の作品もまれに見受けられるが、「コンドームの使用が視聴者に伝わると興奮度が薄れるのではないか」との観点から、その着用をあからさまにする映像は極めて少ない。
[編集] 中出し
最近では、視聴者はもはや本番行為だけでは満足できず、膣内に実際に射精する「中出し」ものが増加傾向にある。インディーズ系ビデオ(セルビデオ)や企画系ビデオでは本当に「中出し」を行っていると見られるが、一般作品ではヨーグルトなどを使用した偽精液を使用した演出の場合がほとんどとではないかと見る向きが多い。 精液は妊娠させるための液体であるためその粘りにより膣内に留まろうとする性質があるが、偽精液では粘度が低くすぐに膣外に流れ出したり、不自然な色合いだったりで偽物であると判断が付く。又、中出し中の男優の下腹部や太股などの筋肉の動きを観察すれば、本当に膣内で射精しているのか判断出来るとする見方もある。
真性中出しの場合は、事前に女優が低用量ピル(経口避妊薬)による避妊をしている事もある。例えば『ナマでHしよ 中出し大好きなの』(沖那つばさ・マルクス兄弟レーベル)では、女優自身が医師の処方を受けた経口避妊薬を示し用法を説明してから、男優に中出しされたり汁男優から採取した精液を注射器に集め膣内に注入したりしている。中出しものの増加の背景には、日本での「低用量ピル解禁」に伴い、実社会でも中出しが盛んに行われるようになった事が大きく影響していると考えられる。何よりもアダルトビデオ愛好者の中で、真性中出しでなければ満足出来ないというタイプが増えたのが原因と見る向きもある。
特別な例では、川奈まり子の引退作品において、妊娠を狙って婚約者のAV男優による真性中出しが行われたが、その作品での受精・妊娠には失敗した(後日、プライベートで目出度く懐妊・出産した)。
真性中出しでは、本物の精液は膣内に粘り付くので膣外への精液溢れ出しが絵的に(モザイク越しでは)うまく撮影表現できないことがあり、また女優の妊娠や性病罹患の危険性も懸念されるので、前述の通りほとんどは疑似中出しだと言われている。
[編集] 性器の露出と規制
日本ではアメリカ合衆国にオランダ王国やフランス共和国など欧米・欧州各国と違い、成人向けであっても性器を直接表現する映像を公開する事は、刑法第175条わいせつ物頒布罪違反として性器を直接表現する映像の存在自体を禁止している。その理由として「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」である。理由として考えられるのは仏教の教えで「四つの聖なる真実(苦、集、滅、道)」は、性器の露出物への渇望を断ち切れば苦しみも消滅し、正しい修行の道があるので性器の露出物を法律で禁止している。その為に倫理審査団体による自主規制という“男性器”“女性器”に“モザイク”等様々な手法で“ぼかし”がかけられる。これは、性器を露出しない事ももちろんではあるが、(建前上では)実際には性行為を行っていない事を文字通り“ぼかす"という「偽装行為・捏造行為」にもなっている。なお、精液や、肛門(審査団体によっては自主規制)を映し出す事は、わいせつには当たらないと解釈されている。富士谷御杖の「言霊倒語論」から脈々と続いている本質を隠匿して語る論理である。
最近では日本のアダルトサイト業者、アダルトビデオメーカーが、性器の露出について日本とは法規制が違う他国のサーバーとプロバイダー経由で有料サイトを開いており、日本国内からこれらのサイトにアクセスし“無修正映像”を簡単に視聴したりダウンロードする事が出来るようになった。これを通称海外配信というが、これを法規制する手段は規定されて無く、画質の良し悪しを問題にしないのであれば、事実上明治時代からの日本での性器映像の法律での禁止は意味が薄れてきているとも言える。ただし、国内よりアダルトサイト更新をした場合は、国内の法規が適用されるようである。
又、「修正映像」も時代と共に変化し、かつては女性のヘアや肛門が露出しているものは非合法とされていたのが、現在では「合法」との見方に替わったり、児童の性器の露出はかつては、「合法」とされていたのが、最高裁の判例では「非合法」となったりとわいせつの認識は変遷している。
下記の項目においても触れられているが、2006年4月より経済産業省の指導でCESA、ソフ倫、日本アミューズメントマシン工業協会、映倫管理委員会、日本ビデオ倫理協会と映像コンテンツ倫理連絡会議(仮称)において審査基準・表示の一本化を協議する事が決定している。
[編集] 倫理審査団体と「インディーズ」
倫理審査団体にはビデ倫(日本ビデオ倫理協会)、ソフ倫(コンピュータソフトウェア倫理機構)、メディ倫(コンテンツ・ソフト協同組合メディア倫理委員会)等があり、それぞれ所属する会員である製作会社のビデオが倫理を逸脱していないか監視している。ただし、法的な根拠はなく、審査をパスしていれば、警察に摘発されないという保証はない。
又、倫理審査と同時に海賊版製作者に対する警告・告発も行っている(ビデ倫加盟メーカーはビデオ倫理監視委員会を通じて監視を行っている)。
- ビデオ倫理監視委員会が把握している審査団体
- 日本ビデオ倫理協会(ビデ倫)
- コンピュータソフトウェア倫理機構(ソフ倫)
- ビジュアルソフト・コンテンツ産業共同組合(VSIC)
- 日本映像ソフト制作・販売倫理機構(JVPS、制販倫)
- コンテンツ・ソフト協同組合メディア倫理委員会(CSA、メディ倫)
- 全日本ビデオ倫理審査会(AJVS、全審)
- 日本倫理審査協会(JEJA、日倫)
倫理審査団体に所属していないアダルトビデオメーカーの作品は、“自主規制作品”(インディーズ)と呼ばれるが、ビデ倫・ソフ倫(両団体は相互に審査結果を尊重する旨の覚書を交わしている)以外の審査団体で審査を行った作品はモザイク処理などの点で自主規制作品と大差はなく、一般的にはインディーズとしての扱いを受ける。
倫理については明確な基準がなく、モザイク処理部分の大小・強弱などでメーカーごとにばらつきがあったり、同一メーカーが製作した作品でも、発売年度などによって「ぼかし」に強弱があったりする。又、生き残りの為、性器のぼかしが少なく性行為も過激なものも増えてきている。
ビデ倫でも、ヘア(陰毛)・アナル(肛門)の露出を解禁(2004年末よりヘア露出の一部解禁、2006年8月審査タイトルより全面解禁)するなど、基準の見直しが行われている。
この見直しに対応して、従来、ビデ倫・ソフ倫、およびそれに準ずる審査団体(制販倫・VSIC)による審査済み作品のみ掲載していた業界誌「アダルトインサイダー」・「月刊DVDナビゲーター アダルト」(ギャガ・クロスメディア・マーケティング)でも、2006年9月号以降、それ以外の審査団体で審査を受けた作品も掲載するようになった。
しかし、露出度が高ければ高いほど売上が高くなるという単純な物ではない。嗜好が多様化した現在、実際には作品内容が最も重要なポイントであるが、高水準の作品を作り続ける事は極めて難しい。
[編集] 社会への影響
アダルトビデオの普及は性に対する価値観へも影響を与えた。影響の一つとして、性行為を生殖行為から解放してオープンにしたという点が挙げられる。初体験前にアダルトビデオの顔面発射を見慣れていた男性が、射精は女性の顔に対して行うものだと思い込んでいたという例は極端だが、アナルセックス等のアブ・ノーマル性交や駅弁体位 などのアダルトビデオを発祥とする風変わりな行為が一般に浸透してきていると言われるのもその証左であろう。
又、フェラチオやクンニリングス、シックスナイン、(特に女性の)オナニーなどの行為は明治以前の価値観で軽蔑視されていた行為であるが、現在では、比較的許容されつつある。これらの行為は、アダルトビデオで一般的なものであり、1960年代以降の性解放運動とともに、アダルトビデオの影響力を示している例と言えよう。いまや女性が彼氏(もしくは夫)にアダルトビデオを借りてこい、という時代である。
ただし、上記で顔射の例にもあるとおりアダルトビデオは観賞を目的とした映像作品なのであって、かなり演出や誇大化、また妄想的に装飾されたものに過ぎず、まだ一度も性行為を体験しない者(とくに情報が不足しがちな若年層)へ性行為=アダルトビデオの行為、だと認識させるなら著しい害悪を生じる。
さらには、性交時に相手のいやがる事を強要し、そのことでなぜか相手も快感を覚えて喜ぶ場面もほとんど定番化している。レイプものや痴漢もののように女性蔑視の傾向を持つ作品や、男性を嘲笑しながら手コキするものや男性にオナニーさせ罵声を浴びせるものなどのように男性蔑視の傾向を持つ作品もあるが、現実の性交では、およそ皆無である。現実には皆無であるが故に、無いものを映像作品に求めることは理解に難くはないが、女優の中には当然ながら、きっぱりAVはセックスでないと明言する者もいるくらいなので、誤解を招きやすい点や表現は、要注意とするべきである。
[編集] アダルトビデオのジャンル
制作者側の都合での区分と消費者側の区分とが存在する。
制作者側からの区分ジャンルも様々だが、容姿やスタイルが美しい女優を全面に打ち出した「単体女優物」と女優の容姿やスタイルにこだわらず企画内容を売りにした「企画物」に大きく分けられる。この分類は極めて明確で女優のギャランティーやパブリシティー、メーカーの制作体制など全てに差異を認められる。 「ゲイビデオ」では企画物が多いが、ここでは一つのジャンルとして詳述する。類型と言われるものは、裏ビデオを参照のこと。
[編集] 単体女優物
単体女優物は、一般に容姿やスタイルが美しい女優を全面に打ち出している作品。女優名を大きく出し、作品内容よりも女優そのものを大きくアピールしている。AV女優一人が出演しているため単体女優物と呼ばれる。単体女優は、AV業界の中で企画物の女優(企画女優)と比較して、容姿やスタイルが美しいとされる。基本的には一人のAV女優が登場する1時間~2時間物が多いが、一人の女優の出演本数が増えると2名以上の女優で共演したり、オムニバス形式に出演する事もある。単体女優物は、セル・レンタル業界を問わず、各メーカーとも資金を投入し力を入れている。単体女優としてAV業界で有名になった後にタレント活動する人(墨田ユキ・飯島愛・高樹マリア・及川奈央・蒼井そら)や、AV女優になる前にタレント、グラビアアイドル、スポーツ選手、レースクイーン、アナウンサーであった人(桜樹ルイ・すぎはら美里・夏目ナナ・萩原舞・小森美樹(小森未来)・渡瀬晶・麻生香等)、果てはミスコン出身者(瀬名涼子)もいる。
[編集] 企画物
企画物は女優の容姿やスタイルにこだわらず、特定の企画内容を売りにした作品。そのため女優の名前も出ない事もある。テレビや映画のパロディ、大人数もの、人妻もの、素人もの、職業もの(制服女性)、学生もの、ナンパもの等、あるジャンルに特化し、それらを好む視聴者をターゲットにしている。このジャンルの境界にははっきりとした線はなく、例えば「人妻ナンパ」「素人接吻」といったように複数のジャンルをまたいだ商品も多い。又、単体女優が企画色の強い作品に出演する事もある。
'90年代の末から、元々は企画物の女優なのに単体女優並みの人気が出てしまうという例が見られるようになった。こういった女優をキカタン(企画単体の略)などと呼ぶ事がある。企画物に出る女優の中には、親バレなどを避けるためパブリシティーを制限している例が多く、容貌がきれいであっても単体女優にはなれない(あえてならない)。そのためにギャラが安く抑えられている。結果としてレンタル向けビデ倫系ビデオではなく、インディーズ系への出演が多い。こういったギャラが安いのに人気が高く、企画に凝らずともビデオが売れるキカタン女優が増え、'00年代初頭はキカタン女優が大ブームとなった。キカタン女優の代表例は長瀬愛、堤さやか、笠木忍、桃井望などで、前記4人はインディーズ四天王などと呼ばれた事もあった。この点、本来の意味での「企画物」と、少々意味合いが異なってきた部分もある。
※企画のジャンルについては、あらゆるシチュエーションがあり、その組み合わせの多さから、数限りなく存在し得るためここでの列記は避ける。裏ビデオの項も参照。
[編集] ゲイビデオ
ゲイビデオは、主にゲイ=同性愛者やバイセクシュアル=両性愛者向けに出されている作品で、複数の男性間の性行為、男性一人の自慰行為を撮ったものが中心だが、最近では男女間の性行為を主に男性にカメラを向けて撮ったものも増えている。また、数のうえでは少ないものの、複数の女性間の性行為を扱ったものもある。
値段は、有名レーベルや人気のシリーズなどでは一般のアダルトビデオに比べてやや高めであるが、その他のものは一般のものとさほど変わらない。主にジャニーズ系といった美少年系や体育会系、ノンケものに人気がある。近年では、DVDで発売されることが増えており、もともとVHSで出ていたものをDVDにしたものや、DVDのみの作品もある。なお、男性を撮ったゲイビデオは、ヘテロセクシュアルの女性にとって、一般のアダルトビデオ(主に女性にカメラを向けている)よりも性的興奮を得やすいことから、女性が観ることもある。 近年では大学の有名スポーツ選手達が、ゲイビデオにアルバイトで出演していたことが次々と発覚し、社会問題になった。 これはスポーツ選手の体が筋肉質でゲイビデオとしては最適であることに対し(需要)、練習時間の関係でアルバイトのできない選手達の小遣い稼ぎの手段(供給)が一致したためと言われている。
かつてはいわゆる発展場に出入りしているタイプのゲイが出演することもあったが、80、90年代に男性同性愛者の間でHIVが流行ったこと、HIVウイルスが同性愛行為から生じるのではないかという誤解もあったことなどから、いわゆる素人俳優の起用が増えたと考えられる。
ゲイビデオは、あまり売れ行きが良くないため、大きな企画モノは不可能といって良い。
射精シーン(ザーメンを出すシーンや、ぶっかけシーン)は何度も繰り返されたりしているため、 ビデオを見ている側に、射精するタイミングを配慮して編集してある。
[編集] ノーマルもの
「えっ、こんなカワイイ娘が裸になってHするの?!」というもの。 どうでもよいストーリーがあるが、可愛さをアピールするシーンがあり、裸になってHするシーンがある事はどのタイトルも変わらない。
[編集] フェチもの
フェチビデオは、アダルトビデオ業界かそれに近い業者による、フェティシズムを追求した映像作品のことで、アダルトビデオから派生したジャンルと見られるが、性癖の展覧会ともいえる。 相手が居ない等様々な理由で手軽に出来ない性行為の代理体験が基本である。 画面中に男女の性行為場面は最小限で、もっぱら女性の身体を映す。 制作者が、安い費用でタレントを確保する為に、性行為が全く行われていない作品でも成立するのがこのジャンルである。デジタルビデオの普及で、誰でも供給側になれるようになり、一時は活況であったが、DVDの時代となり、ハイビジョン時代が見えてきて淘汰の時代となっている。
作品中に性行為があろうがなかろうが、消費者は見ながら抜く。
具体的なターゲット例としては
- コスプレ
- 排泄物や分泌物を口に入れたり顔や身体に掛けたり塗りつけたりする行為
- 泥んこやペンキ
- 食べ物を顔や身体に掛けたり塗りつけたりそこへ放り込んだりする行為
- 縛ったり、吊り下げたりする行為
- それらの組み合わせ。
制作の際には興味本位に走らず、事前に入念な準備をしなければ、タレントの生命が危うかったり、取り返しのつかないダメージを与える可能性がある。
[編集] SM
厳密にSM行為に区分けされるものから、女優単体ものなどアダルトビデオのメインストリームの作品に緊縛などSM要素を含むものまで存在する。
[編集] AV男優
AV男優(えーぶいだんゆう)は、アダルトビデオへの出演を主たる活動にしている男優、およびその職業を指す。 本番行為をおこなう男優と、主として精液を女優にかけるだけの汁男優、通称汁男(しるだん)に大別される。汁男を集める元締めを「汁頭(しるがしら)」という。人気のある男優の場合、そのギャラは数十万から時には数百万になる場合もある。汁男の場合、一日拘束で1から2万円くらいである。最初はアルバイト感覚で汁男から始めて、人気が出てきた場合、男優となるケースがある。男優からAV監督になるケースもある。
[編集] 刑法第175条とマスク(モザイク)
刑法第175条(わいせつ物頒布等)によると、日本ではわいせつ物を頒布できない事になっており、名目上はポルノ作品は流通してない事になっている。モザイクをかけた作品も法的にはわいせつ物ではないとされる。モザイクは日本ビデオ倫理協会などによる自主規制である。
[編集] 関連項目
- ハードコア (ポルノ)
- セックス産業
- セックスワーカー
- AV監督
- AV女優
- AV男優
- AVメーカー
- アダルトビデオメーカー一覧
- 裏ビデオ
- ビニ本
- 裏本
- オリジナルビデオ
- R指定
- 性風俗用語一覧 (カテゴリ別)
- 書籍情報: AV産業 ISBN 4-7948-0573-X