エアバスA300
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エアバスA300(Airbus A300)は国際共同会社のエアバス・インダストリー社が設立後、最初に開発した旅客機である。300の数字は、座席数300席を意味している。1972年10月28日に初飛行している。
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[編集] 紹介
A300型機は世界初の双発エンジンのワイドボディ旅客機である。真円形の胴体に747用のLD3コンテナを並列に搭載可能な設計のため、他の機体と比較して、床下の貨物室が広いが、旅客スペースは窓側と天井付近がやや狭い。だがLD3コンテナの並列搭載が可能なことから、旅客型から貨物型へと改造された機体もある。エアバス社では、A300型およびA310型の新規受注はすでに受け付けておらず、2007年7月に生産を終了する予定である。
[編集] 技術
エアバス社の共同事業はコンコルドから派生した、いくつかの最新の技術を使用している。技術的な注目点は、
- デハビランド (後のBAEシステムズ) によって進歩した翼
- 卓越した経済的な性能の翼部分(リア・ローディング翼型)(スーパークリチカル・ウィング)
- 進歩した航空力学的に実効力のある飛行制御
- 構造は重量軽減のため、「金属鋼片」(メタル・ビレット)でできている
- ウィンド・シア(急激な風速・風向の変動で風と風がぶつかる所に発生)を「ウィンド・シア警報装置」により制御した最初の航空機
- すべて電子的に制御されたフライ・バイ・ワイヤー システム
[編集] 歴史
1970年12月のエアバス・インダストリー社設立後、最初に開発すべき旅客機のコンセプトは、ヨーロッパ域内を結ぶ座席数300、航続距離3,000kmというものになった。この座席数にちなみ、機名はA300と決定された。
1972年10月28日に原型機のA300B1が初飛行を行った。初の量産型のA300B2は、A300B1の胴体を2.65m延長したものであり、1973年6月28日に初飛行を行った。
[編集] A300派生型
- A300B1型機:原型機。生産機数2機。最大離陸重量 132,000 kg及び220 kN の推力を得られるゼネラル・エレクトリック製CF6-50A型エンジンに加え旅客数259座席の設備である。
- A300B2型機:初期量産型。227及び236knの両方の推力を得られるゼネラル・エレクトリック製CF6型かプラット・アンド・ホイットニー製JT9D型エンジンを使用。1974年5月にエールフランスに引き渡された。
- 航続距離1,850km(1,000nm)
- 日本では旧東亜国内航空が1981年3月に初めて就航させたA300もこの形式だが、2006年3月を最後に定期運航を外れ、同年5月に全機登録抹消。なお、TDA~JAS時代のA300シリーズの塗装・レインボーカラーはエアバス社のデモフライト機の塗装を譲り受けた物で、JALとの合併後もB2型については同塗装のままだったが、B2型の日本からの消滅に伴い同塗装も消滅、エアバス社へ自動的に権利が戻る形となった。同社が就航させた機体はすべて離着陸性能を向上させるため、主翼前縁下面のパネルが前方展開するクルーガーフラップを装備したA300B2K型で最大9機を保有した。
- A300B4型機:最大離陸重量を157トン(のちに165トン)ヘ増加した航続距離延長型。初期生産では主流はB2からB4へと移った。B2及びB4の生産は総数248機である。
- 航続距離4,070km(2,200nm)
- 旧東亜国内航空~日本エアシステムはこの型も就航させ、最大8機を保有し、保有機の中には同型の旅客型としては珍しいサイドカーゴドアを装備した機体もあった。なお、このとき生産はすでに-600型に移行していたが、コックピットが大きく異なることから、機種統一の観点から中古機を全世界からかき集めて運行していた。
- A300FFCC型機:最初の2名パイロット航空機。初めにガルーダ・インドネシア航空及びヴァリグ・ブラジル航空へ引き渡される。
- A300F4型機:貨物型(旅客型からの改造のみで新造はなし)
- A300C4型機:貨客混載/転換型
- A300 ZERO-G:各種改造によりパラポリック・トラジェクトリ(放物線飛行)を行い、マイクロ・グラビティー(微重力)状態を客室で再現できるようにした機体。(エアバス社の社有機であるA300の3号機を使用)
[編集] A300-600
在来型A300は1960年代の技術を投入した第3世代のジェット旅客機であった。A310型の開発が1978年7月に決定し、在来型のA300とは10年の技術差が生じたため、A310型の技術を取り入れたA300-600型の開発が決定した。 胴体を延長し、席数をさらに増加させるため胴体後部の絞りは在来型A300のそれでなくA310の絞りのきついものに変更されている。
[編集] A300-600派生型
- A300-600型機:正式にはA300B4-600だが、A300-600と呼ばれることが多い。この機体は、胴体部分をわずかに延長し、後部胴体と尾翼部分はA310と共通の短いタイプとしたため、B2及びB4とほぼ同じ全長であるが、わずかに容量が増している。高い動力であるゼネラル・エレクトリック製CF6-80型かプラット・アンド・ホイットニー製PW4000エンジンを採用し1988年に引き渡しが始まる。複合材の使用量増加・アビオニクス更新により、重量軽減、座席増、航続距離延長が行われ、巡航時の抵抗を軽減させるウィング・チップ・フェンスを新設した。
- 航続距離4,070km(2,200nm)
- A300-600R型機:-600型に燃料タンクの増設と機体構造重量の減少を行い、離陸重量を増加させることで更なる航続距離延長を行ったもの。1994年4月26日に名古屋空港で着陸に失敗して墜落した中華航空機はこのタイプ。中華航空140便墜落事故も参照のこと。
- 航続距離5,000km(2,700nm)
- A300-600F型機:-600R型の貨物型。
- A300-600ST型機:エアバス・インダストリー社がグループ・メーカー間で機体構造を輸送するため使用されていた経年化したスーパーグッピーの後継機として開発された機体。機体の基本は-600型,主翼は-600R型のものを使用。搭載口を上方へ開く形にした結果、前方から貨物を搭載するため貨物室の床面とコクピットの天井を同一平面にしたため、コクピットは下方に下げられその後方に電子機器を収納し、前方貨物室は廃止したため、その外観は特徴的なもとなっている。ベルーガ輸送機
[編集] 参考:A300-600/600R
日本では日本エアシステム(現・日本航空インターナショナル)が1991年7月にA300-600Rを導入。現在では、東京と地方都市を結ぶ便の主力機として活躍している。
- 従来型との相違点
- グラスコックピット機であること
- 誘導抵抗を減少させるため「ウイングチップフェンス」(翼端の小さな板)が追加された
- 水平尾翼内にも燃料タンクを増設し、航続距離を伸ばしていること(600R型のみ)
- 2メンクルー機である(A300B2/B4は航空機関士が乗務する3メンクルー機)
- FMSが搭載され、自動航法が可能になった
- 従来型に見られた機体の構造上の問題による貨物等の搭載制限が無くなった
[編集] 仕様
A300B2/B4
- 全幅:44.84m
- 全長:53.62m
- 全高:16.53m
- 乗客:最大345名
- 航続距離(最大ペイロード)1,850km(1,000nm)(B2-200)/4,070km(2,200nm)(B4-200)
A300-600/600R
- 全幅:44.84m
- 全長:54.08m
- 全高:16.52m
- 乗客:最大361名
- 航続距離(最大ペイロード)4,070km(2,200nm)(B4-600)/5,000km(2,700nm)(B4-600R)
[編集] 外部リンク
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