エドワード・エルガー
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サー・エドワード・ウィリアム・エルガー(Sir Edward William Elgar、1857年6月2日 - 1934年2月23日)はイギリスの作曲家・指揮者。近代イギリスを代表する作曲家の1人であり、2007年で生誕150周年となった。
目次 |
[編集] 略歴
エルガーは1857年6月2日ウスター近郊のブロードヒースで生まれた。父親は楽器商を営むとともに、聖ジョージ・カトリック教会のオルガニストも務めていた。経済的な問題から専門的な音楽教育を受けることができず、独学によって作曲法を修得した。ヴァイオリン教師として収入を得る傍ら、度々ロンドンへ出かけてはさまざまな音楽を聴き、特にシューマン、ワーグナーに強い影響を受けたといわれる。
1889年にピアノの教え子だったキャロライン・アリス・ロバーツと結婚。婚約に際しアリスのために作曲した「愛の挨拶」はのちに広く知られるようになる。その頃は作曲家としては地元の合唱音楽祭のために作品を委嘱される程度だったが、夫人の多大な協力もあり徐々に作曲家として認められるようになる。エルガーの作曲家としての確たる地位をもたらせた作品は1899年の独創主題による変奏曲「謎」(「エニグマ(謎)」変奏曲)だった。ハンス・リヒターの揮者による初演の成功を以て英国中にその名を知らしめ、さらに翌1900年のオラトリオ「ゲロンティアスの夢」はドイツ初演で大成功を遂げ、作曲家リヒャルト・シュトラウスから賞賛されるなど、エルガーの名声はヨーロッパ中に広まった。なお「ゲロンティアスの夢」は英国初演では失敗に終わったもののドイツにおける成功からまもなく認められ、現在ではヘンデルの「メサイア」、メンデルスゾーンの「エリヤ」とともに英国三大オラトリオのひとつとされている。
行進曲「威風堂々」第1番(1901年)のトリオ(中間部)の旋律は英国王エドワード7世に気に入られ、国王のために書かれた「戴冠式頌歌」(1901年)では歌詞をつけて用いられている。この旋律は今日「希望と栄光の国」として愛唱され、英国の第2の国歌とされている。以降、オラトリオ「使徒たち」(1903年)、オラトリオ「神の国」(1906年)、交響曲第1番(1908年)、ヴァイオリン協奏曲(1910年)、交響曲第2番(1911年)、交響的習作「フォールスタッフ」(1913年)、チェロ協奏曲(1919年)といった傑作を次々と作曲し、名実共に英国楽壇の重鎮となる。
1920年、夫人アリスの死去とともに創作意欲を極端に落とすが、1923年以降は徐々に作曲活動を再開。劇音楽「アーサー王」(1923年)、劇音楽「伊達男ブランメル」(散逸-メヌエットのみ知られる)(1928年)、ブラス・バンドのための「セヴァーン川」組曲(1930年)、組曲「子ども部屋」(1931年)といった作品を手がける。最晩年には交響曲第3番、歌劇「スペインの貴婦人」、ピアノ協奏曲といった大作に次々と着手するが、いずれも未完成のまま1934年2月23日、癌のため死去した。最後の完成作品は愛犬をモチーフにした管弦楽小品「ミーナ(Mina)」(1933年)だった。
1914年(旧吹込み)以来エルガーはレコーディング活動にも積極的であり、新しく開発されたマイクロフォンによる電気吹込みによって自身の作品の主だったものを録音しており、演奏家としての活動も注目される。なお1シーズンのみであるが1911年にロンドン交響楽団の主席指揮者に就いている。
エルガーは1904年(47歳)のときにナイトに叙され、また1931年(74歳)准男爵にも叙されている。また1924年(67歳)には「国王の音楽師範」(Master of the King's Musick)の称号も得ていた。
[編集] 代表作品
[編集] 交響曲
- 交響曲第1番 変イ長調 作品55
- 交響曲第2番 変ホ長調 作品63
- 交響曲第3番 ハ短調 作品88(未完成)
[編集] 管弦楽曲
- 組曲「子供の魔法の杖」("The Wand of Youth")第1、2番 作品1A,1B
- 演奏会用序曲「フロワッサール」(Concert Overture "Froissart") 作品19
- 3つのバイエルン舞曲("Three Bavarian Dances") 作品27 (「バイエルンの高地より」の抜粋編曲)
- 独創主題による変奏曲(「エニグマ(謎)」変奏曲)(Variations on an Original Theme("Enigma")) 作品36
- 行進曲「威風堂々」第1~5番("Pomp And Circumstance") 作品39の1~5
- 序曲「コケイン(首都ロンドンにて)」("Cockaigne"("In London Town")) 作品40
- 劇付随音楽「グラーニアとディアーミッド」("Grania and Diarmid") 作品42
- 序曲「南国にて(アラッショ)」("In The South"("Alassio")) 作品50
- 戴冠式行進曲("Coronation March") 作品65
- 組曲「インドの王冠」(Suite "The Crown of India") 作品66 (劇音楽からの編曲)
- 交響的習作「フォールスタッフ」(Symphonic Study "Falstaff") 作品68
- 交響的前奏曲「ポローニア」(Symphonic Prelude "Polonia") 作品76
- セヴァーン組曲 ("Severn Suite")作品87 (ブラス・バンド曲/管弦楽に編曲)
- 「ミーナ」("Mina")(小管弦楽)
[編集] 弦楽合奏曲
- 弦楽セレナード ホ短調 作品20
- 序奏とアレグロ("Introduction and Allegro") 作品47
- エレジー("Elegy") 作品58
- ソスピーリ(ため息 "Sospiri") 作品70
[編集] 協奏曲
[編集] 室内楽曲/器楽曲
- 「愛の挨拶」("Salut d'Amour" ("Liebesgruss")) 作品12 (ピアノ、ヴァイオリンとピアノ、小管弦楽などさまざまな版がある)
- 2つの小品(「夜の歌("Chanson de nuit")」、「朝の歌("Chanson de matin")」) 作品15 (原曲:ヴァイオリンとピアノ/小管弦楽版もある)
- 気まぐれ女("La Capricieuse") 作品17 (ヴァイオリンとピアノ)
- オルガン・ソナタ第1番 ト長調 作品28
- ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 作品82
- 弦楽四重奏曲 ホ短調 作品83
- ピアノ五重奏曲 イ短調 作品84
[編集] 声楽曲
- 合唱曲「バイエルンの高地より」("From the Bavarian Highlands") 作品27
- オラトリオ「生命の光」("The Light Of Life") 作品29
- オラフ王のサガからの情景("Scenes from the Saga of KIng olaf") 作品30
- バラッド「聖ジョージの旗」("he Banner of St George") 作品33
- カンタータ「カラクタクス」("Caractacus") 作品35
- 連作歌曲集「海の絵」("Sea Pictures") 作品37
- オラトリオ「ゲロンティアスの夢」("The Dream Of Gerontius") 作品38
- 戴冠式頌歌("Coronation Ode") 作品44
- オラトリオ「使徒たち」("The Apostles") 作品49
- オラトリオ「神の王国」("The Kingdom") 作品51
- 「ミュージック・メイカーズ」("The Music Makers") 作品69(アルト・合唱・管弦楽のための作品)
- 「イングランド精神」("The Spirit of England") 作品80(ソプラノ・テノール・合唱・管弦楽のための作品)
[編集] 関連文献
- 磯田健一郎著『ポスト・マーラーのシンフォニストたち エルガー、シベリウスから現代まで』音楽之友社、1996年10月、ISBN 4276351316
- マイケル・トレンド著『イギリス音楽の復興 音の詩人たち、エルガーからブリテンへ』旺史社、2003年7月、ISBN 4871190781
- 原著: Michael Trend, The Music Makers : The English Musical Renaissance from Elgar to Britten, Schirmer Books Published, October 1985, ISBN 0028730909
- 水越健一著『エドワード・エルガー希望と栄光の国』武田書店、2001年6月、ISBN 4886890164
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- Edward Elgar(The Elgar Societyのページ)
- エドワード・エルガー/希望と栄光の国(日本語)
- IMSLP - International Music Score Library Project のエルガー・ページ。
[編集] ウェブ上の音源
- The Classical Music Archive: ELGAR, Sir Edward(1857-1934) (英語)