グフ
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グフ(GOUF)はアニメ『機動戦士ガンダム』シリーズに登場する架空の兵器。ジオン公国軍の陸戦用モビルスーツ。機体色は青で、著名な搭乗者はランバ・ラル。(型式番号:MS-07)。
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[編集] グフ
[編集] 機体解説
グフ | |
型式番号 | MS-07B (YMS-07B) |
所属 | ジオン公国軍 |
建造 | ジオニック社 |
生産形態 | 量産機 |
頭頂高 | 18.2m |
本体重量 | 58.5t |
全備重量 | 75.4t |
ジェネレーター出力 | 1,034kW |
スラスター総推力 | 40,700kg |
センサー有効半径 | - |
装甲材質 | 超硬スチール合金 |
武装 | 75mm5連装フィンガー・バルカン砲 ヒート・サーベル ヒート・ロッド シールド 120mmマシンガン ジャイアント・バズーカ |
主な搭乗者 | ランバ・ラル |
ジオン公国軍が地球侵攻の折、使用したザクII(陸戦型ザクII)はあくまで地上に対応させるための改修型であり、新たに陸戦専用のモビルスーツの開発が求められた。そこで開発されたのが「グフ」である。陸戦型ザクIIで問題となっていた装甲の強化や運動性の向上とあわせ、機体本体に固定武装を追加され、対モビルスーツ戦をより意識した、ザクとは違う機体となった。
[編集] 開発経緯
ジオン公国軍は地球侵攻に向けてザクII (MS-06F) を地上用に改修した陸戦用ザクII (MS-06J) を投入することで対処した。しかし、所詮改修型では限界があり、すぐに後継機の開発に着手する。当初はグフ (MS-07) とMS-08の二つのプランが平行して進められたが、MS-08プランはYMS-08A(高機動型試験機)の5機をもってグフ (MS-07) のプランへ統合された。(ただし、後にMS-08の型式番号を継承したイフリート (MS-08TX) が製作されている)
グフのプラン (MS-07) は地球侵攻作戦によって制圧した北米キャリフォルニア基地で設計・開発が進められ、ジオニック社によって陸戦用ザクII (MS-06J) をベースにプロトタイプグフ (YMS-07) が完成した。開発にあたってはモビルスーツ同士の格闘戦を想定し、胸部装甲の強化、右肩に固定されていたシールドを取り回しの良い左腕部に設置し、両肩には大型化したスパイクアーマーを備えた。また、陸上における運用のためラジエターの大型化とともに機体の軽量化が図られ、バックパックはYMS-08A(高機動型試験機)のデータを基に製作された。開発当初から、重爆撃機ドダイYSとの連携攻撃を考慮されていたため、従来指揮官用だった頭部通信アンテナを標準装備とした。試作1、2号機は通常のマニピュレーターであったが試作3号機から固定武装が装備された。
量産化にあたり試作型からの主な変更点はモノアイスリットを前方のみとしたこと、脚部の動力パイプを内装式としたこと、脛部にスラスターを追加したことなどである。本体は予定されていた固定武装の生産よりも先行して量産されたため、急遽、通常のマニピュレーターを装備して生産された。この機体は初期生産型 (MS-07A) と呼ばれ32機が生産された。両腕の固定武装は先行試作型 (YMS-07B) で標準化され、その後に標準装備型 (MS-07B) として本格的に量産化されている。先行試作型 (YMS-07B) は標準装備型 (MS-07B) と基本的に同一の仕様であるが、ファインチューニングを施されていたため好成績を挙げている。
陸戦用ザクIIの生産ラインに替わって量産化されたグフは、オデッサやジャブローでの戦闘に大量に投入された。 白兵戦を重視した本機は高性能で、熟練パイロットに特に好まれたが、一般パイロットには扱いづらく、操縦性に難点があった。また、接近戦用に特化しすぎた内蔵式の武装は汎用性に欠け不評であり、改良型のMS-07B3ではMS-07Aと同様の通常型マニピュレーターに戻されている。
本機を母体にモビルスーツを飛行させる計画が進められていたが、計画は芳しい結果を出さずに終わった。 しかし、副産物としてモビルスーツのホバー走行に目処が立ち、モビルスーツの行動半径拡大という目的は達成されることになる。これがツィマッド社のドムである。 以後陸戦用MSの生産の主体はそちらに移ったが、一部の熟練パイロットはドムの実戦運用後も、垂直方向への機動力の高いグフを好んで使っていたようである。
[編集] 武装
固定武装を持たない先行量産型 (MS-07A) は実戦で120mmマシンガンを装備していた機体が確認されている。
先行試作型 (YMS-07B) と標準装備型 (MS-07B) では両腕に固定武装が装備されている。白兵戦用武装として右腕部には伸縮式の電磁鞭であるヒートロッドが内蔵されている。特殊デンドリマーを積層することにより幾層からなる圧電アクチュエーターを構成し、各層に独立して電荷を与えることにより自在に動かすことができる。それにより敵モビルスーツに絡みつき大電流を流すことで、電子回路を損傷させるとともにパイロットを感電させることが可能である。また、電流とともに熱を発生し、敵装甲を溶断することも可能である。この兵装は後年のハンブラビの海ヘビ、ゾロアットのビームストリングスなどの基礎となった。
左手には5連装75mmマシンガン(別名グフマシンガン)を内蔵しているが、マニピュレーターとしての機能が低くなってしまい、汎用性が低いため前線での運用に問題があった。シールド裏には格闘兵器としてヒートサーベル(※)が装備され、高分子化合物による刀身を形成し相手を溶断することが可能である。
※これは本来ビームサーベルのはずであった。劇中の描写も明らかにヒート兵器ではないし、1979年〜80年代初頭の書籍では「ビームサーベル」と明記されている。しかし、その後多くの解説本がその設定を忘れてゲルググ、ギャンを「ジオン初のビームサーベル装備機」と長年にわたって記述し続けたため引っ込みがつかなくなり、“ランバ・ラルのグフの剣はビームサーベルのようだがビームサーベルではない”という認識が定着した。また、ビームなのか実体剣なのかをはぐらかして「グフサーベル」と呼んでいる書籍も存在した。なお、後年発売されたプラモデル・MG(マスターグレード)グフの解説書によると、ヒートサーベルについては「形状記憶セラミック粒子でできており、起動時にグリップに収められていた粒子が刀剣状に展開し発熱する」としている。またB3型の装備の場合、設定書では「ヒートサーベル」とされていたが、映像では刃が灼熱化することがなく、その重量で叩き割る鉈のような使われ方であった。
[編集] 劇中での活躍
アニメ『機動戦士ガンダム』第12話にて、これまで主力として登場していたザクとは塗装だけではなく外形も違う、新たな敵モビルスーツとして登場する。機体の武装や能力、さらにランバ・ラルの操縦技能をもってアムロ・レイの乗るガンダムを苦しめた(後にランバ・ラルの乗った機体は「YMS-07B 量産先行型グフ」と設定されている)。しかも、ランバ・ラルの乗るグフが撃破されてのち多少間をおいて第22話に、再び同様の機体が現れる。ザクと同様にこの機体も量産されている兵器である事を知らしめている。(この時登場したグフは、ザクマシンガンとグフシールドを持つだけでなく、ヒートロッドも使っている。正確な形式名は不明)
第23話では、マ・クベがレビルによるホワイトベース隊への補給を阻止するために、3機のグフを重爆撃機ドダイYSの上部に搭載し、ドップと共にマチルダ・アジャン率いるミデア隊を襲撃。同時にアムロ・レイの搭乗するガンダムを追い詰めるものの、最終的にはGファイターの出現が原因で、全滅している。
オデッサ近郊で登場したグフ(これが後にMS-07Aと設定された)の一部は両手共マニピュレーターでザク用の120mmマシンガンを携帯していた(※)が、その後左手に5連装マシンガンを装備した機体(後にMS-07Bと設定された)が登場した。ジャブロー戦では、ドム用兵装と思われていた360mmジャイアント・バズを装備した機体も確認されているが、A型と考えて良いのだろう。また、両手共に5連装マシンガンを装備した機体も登場している。
※ただし、1980年代の書籍では、グフの使用するこの120ミリマシンガンやヒートホークについて、「グフは両手が武器になっているため上手く使えなかった」と記述している。
ゲーム『ギレンの野望』に登場するA型は120mmマシンガンとヒートホークを携帯し、アンテナブレードとヒートロッドを持たない。また、前述のアンテナがドダイとの連携用という非公式設定に合わせたのか、ゲーム中ではドダイへの搭載ができない。
グフのカラーリングが青い理由は、YMS-07Bにランバ・ラルが搭乗したときのカラーが青だったため、後の量産型にも同色が継承されたというのが一般的な認識であった。後年、モデルグラフィックス誌の記事や学研のムック『一年戦争全史・上』では新たに、無塗装の金属が表面処理により青く見えるという新説が提唱されている。もちろん実際はアニメの制作上の都合(セル画のバンクによる再使用)で青いのを、記事を書いたライターが後付で考えたもので、どちらも非公式設定である。
- TVアニメ『機動戦士Zガンダム』
バンダイのプラモデル企画「MSV」でデザインされた「MS-07H グフ飛行試験型」が機体色を変更されて登場した。一年戦争後に連邦軍に接収され、ジャブロー防衛に回された旧式機という設定で4機が登場し、カミーユのガンダムMk-IIと交戦、全機が撃破された。映像からは脚部のホバーにより川の水面でも滑走可能である事が確認できる。武装はジャイアントバズーカを使用していた。 余談だが、「Zガンダム」に登場したMSVシリーズの機体の中では一番活躍しており、視聴者の印象に残る機体であった(他の機体は登場時間があまりに短いものが多い)。
- OVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』
「MS-07B3 グフカスタム」と「MS-07H8 グフフライトタイプ」の2種のグフが登場する。2種ともこの作品用にデザインされたものである。 ノリス・パッカードの搭乗するグフカスタムは1機で主人公の部隊を翻弄する強さを見せ付けている。
[編集] バリエーション
- YMS-07 プロトタイプグフ
- MS-07A グフ初期生産型
- MS-07A グフ(テストタイプ)
- YMS-07B 先行試作型グフ
- MS-07B グフ(グフ標準装備型)
- MS-07B グフ(マ・クベ専用機)
- MS-07B3 グフカスタム
- MS-07C グフ重装型
- MS-07C-5 グフ試作実験機
- MS-07H グフ飛行試験型
- MS-07H-4 グフ飛行型
- MS-07H8 グフフライトタイプ
[編集] プロトタイプグフ
YMS-07
- その名の通り、グフの試作型。
- 初出はTVアニメ『機動戦士ガンダム』用のデザイン準備稿。大河原邦男によるデザイン。
[編集] グフ初期生産型
MS-07A グフ初期生産型
- 先行量産型。32機の量産が確認されている。当初は5連装マシンガンやヒートロッドの装備が予定されていたが、それらの開発が間に合わず、武装はザクの物を流用している。
- 初出は(本編ではその設定は無いが、後付の解釈により)TVアニメ『機動戦士ガンダム』。大河原邦男によるデザイン。
[編集] グフ(テストタイプ)
YMS-07A グフ(テストタイプ)
- 先行生産型のA型をベースにMSテスト部隊が現地改造した機体。
[編集] 量産先行型グフ
YMS-07B 量産先行型グフ
- MS-07Aに本来の固定武装を追加装備した、本格量産型の元となる機体。ランバ・ラルが搭乗したのはこのタイプである。
- 初出はTVアニメ『機動戦士ガンダム』。大河原邦男によるデザイン。
[編集] グフ(グフ標準装備型)
MS-07B グフ(グフ標準装備型)
- YMS-07Bを本格的に量産したもの。ジャブロー攻略戦等に参加。
- 初出はTVアニメ『機動戦士ガンダム』。大河原邦男によるデザイン。
[編集] グフ(マ・クベ専用機)
MS-07B グフ(マ・クベ専用機)
- 機体各所に装飾が施されたカスタム機。なお、マ・クベ自身はこの機体に乗らなかったらしい。
- 初出はプラモデルシリーズ『MSV』。大河原邦男によるデザイン。
[編集] グフカスタム
MS-07B3 グフカスタム
- ノリス・パッカード大佐が搭乗する後期型。グフの格闘能力を損なうことなく、射撃能力の強化に成功している。
- 初出はOVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』。カトキハジメによるデザイン。
[編集] グフ重装型
MS-07C グフ重装型
- 武装のヒートロッドを撤去し、両指に5連装マシンガンを装備した火力と装甲の増強型。
- 初出はプラモデルシリーズ『MSV』。大河原邦男によるデザイン。
[編集] グフ試作実験機
MS-07C-5 グフ試作実験機
- 十字型モノアイスリット付きの頭部を持つ、ドムとグフの中間的な外見の試作機。実験データはドムに生かされている。
- 初出は『講談社アニメグラフブックMOBLE SUIT GUNDAM』。大河原邦男によるデザイン。デザインされた当時はジオニック社やツィマッド社といったモビルスーツを開発した企業の(当時は非公式)設定は存在しなかったため、このような外見となった。
[編集] グフ飛行試験型
MS-07H グフ飛行試験型
- 脚部に強力なエンジンを搭載した飛行試験型。航続距離が短いなど問題点が多い。後に飛行を諦めホバーによる滑走を行うことで実用化され、戦後地球連邦軍に捕獲され運用されている。
- 初出はプラモデルシリーズ『MSV』。大河原邦男によるデザイン。
[編集] グフ飛行型
MS-07H-4 グフ飛行型
- フランク・ベルナール少尉がパイロットを務め飛行試験にて優秀な成績を収めたが、最終テスト中に空中爆発を起こす。
- 初出はプラモデルシリーズ『MSV』。大河原邦男によるデザイン。
[編集] グフフライトタイプ
MS-07H8 グフフライトタイプ
- B3型ベースの機体で、H型シリーズの完成型として少数が量産された。2機がアプサラスIIIの護衛として登場している。
- 初出はOVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』。カトキハジメによるデザイン。
[編集] 関連項目
- グフをモチーフとした『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』登場のMS。
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