コールセンター
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コールセンターは、顧客への電話対応業務を専門に行う事業所・部門である。大手企業の問い合わせ窓口のような、電話回線数や対応するオペレータ人数が多い大規模な施設を「コールセンター」と呼ぶことが多い。日本では104番号案内や116総合受付などの電話業務センターに端を発する。
一般消費者向けの通信販売・サービス業・製造業を行う企業(会社)が、苦情・各種問い合わせ・注文を受け付けるものが多い。2000年代に入り札幌市のように地方公共団体が住民からの各種照会に対応するため設置する事例も見られるようになってきた。
また従来は受付対応が主業務であったが、近年は新規顧客の開拓業務やマーケティングにも利用されている。
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[編集] 業務とそれを支えるシステム
業務としては、大きく消費者からの電話を受けるインバウンド (In bound) と、企業からセールスなどの電話をかけるアウトバウンド (Out bound) の二つに分かれる。両方を扱うセンターもあれば、いずれかのみを扱うセンターもある。
1990年代より、オペレータの負担を軽くする機械化などシステム全体の構築に技術・経験が必要となり、オペレータの採用教育やインバウンド受付時間の延長など運用面でも高度化したため、コールセンター業務を専門に請け負う業者へのアウトソーシングが多くなった。
[編集] インバウンド業務の流れ
消費者からの各種問い合わせ・注文などの受け付け(インバウンド)の場合、相手の電話番号が出るナンバーディスプレイや、これと連動したデータベースシステムにより、営業・商品開発などとのより深い連携(CTI)がはかられるようになった。
次のような手順で行われる。
- 自動音声応答で1次受付が行われ、利用者がDTMFなどで用件を選択する。
- 自動応答で用件が済む場合は、自動音声応答装置のみで対応し、完結する。
- オペレータ対応が必要な場合は、選択された用件専門のオペレータへ振り分けられる。その場合でも、会社名・オペレータ名などの定型的な応答部分はあらかじめ録音されたものであることがほとんどである。
- オペレータが対応できない場合は、自動応答で混み合っていることを利用者に伝える。
[編集] アウトバウンド業務の流れ
次のような手順で行われる。
- データベースに記録された電話番号にオペレーターの通話終了・顧客の状況を予測して自動予測発信(プレディクティブダイヤリング)する。
- 顧客が応答した通話のみオペレータへ配分する。
- オペレータが顧客情報データベースを参照しながら応対する。
多くの事業所では、顧客の在宅確率が高く迷惑にならない時間を選び、インバウンド業務が比較的少なくオペレータに空がある場合に行われている。
[編集] コールセンターの業務システム
若干の差異はあるが、多くのコールセンターでは以下のような構成となっている。
[編集] サーバルーム内
以下の機器は、個人情報保護管理の観点からオペレータから隔離した部屋に置かれ、その部屋をサーバルーム、マシンルームなどと呼ぶ。コールセンター内の共用設備である。これらの機器は、コールセンターの規模に応じて複数台設置される。
- データベースサーバ
- 顧客情報や商品情報、受注情報などが記録されている。
- かかってきた電話を各オペレータに振り分ける。オペレータの能力や勤務形態に応じて振り分ける電話の本数を変えたり、データベースサーバと連携して、対応に注意を要する顧客からの電話をベテランのオペレータに振り分けるなどの機能をもつ。アウトバウンド業務では顧客に自動的に電話をかける。
- ボイスレコーダー
- 通話内容をすべて録音する機器。トラブル時のための証拠としたり、オペレータの教育のために使われる。
[編集] オペレータ卓上機器
以下の機器はオペレータ席毎に設置される。業務効率の観点から、隣接するオペレータ間で共用とするコールセンターは稀である。
- 構内交換機の卓上ターミナル
- 電話を受ける、電話を切る、保留にするなど、電話の基本操作用のボタンがついた箱型の機器で、ヘッドセットが接続されている。ほかに、責任者(SV、Supervisor)を呼ぶためのSVコールボタンなどがついている。近年ではこれらのボタン類は画面上に表示されていることも多い。
- ヘッドセット
- メインディスプレイ
- 顧客からの問い合わせ内容や注文内容などを入力するためのディスプレイ。対応中の顧客との通話時間や、その日一日の総通話時間も表示される。卓上ターミナルの機能をもつ操作パネルが表示される場合もある。
- サブディスプレイ
- 対応中の顧客の個人情報や、過去の受注内容、対応内容が表示される。
- キーボード、マウス
- 注文内容などを入力するため、一般的なキーボードが接続されている。キーボードのみで全ての操作ができることが多いが、近年では機器操作の教育コストを低減させるため、より視覚的に操作できるようにマウスも接続されている。
[編集] 立地条件
従来、本社(東京や大阪などの大都市)や工場などで直営で運営していたが、フリーダイヤルやナビダイヤルなどの高度電話サービスが拡充し始めた1995年頃から、賃金コストが低い地方(北海道や沖縄県など)のコールセンター運営企業へのアウトソーシングが多くなった。このために、コールセンターのオペレータと話をする場合、地理的な感覚がずれる(問い合わせた人が東京へかけたつもりで話をしたところ、受け側のコールセンターは沖縄にあったために、オペレータは都内の地理が分からず、結果的に場所の説明に手間取る)こともある。例外的にNTT104は、全国のデータがコンピュータで引き出せる為に、住所さえ分かれば電話番号に限り問題なく対応が可能であり、青森や沖縄にセンターが置かれている。
地方にコールセンターを開設した場合、東京や大阪などの大都市から遠く離れるため、専用線・IP電話(IPセントレックス)などを併用して、コールセンター開設企業のコストを下げる(沖縄で見た場合、隣接MA地区とされている鹿児島市以外は、すべて最遠距離の通話料になり電話料金が非常に高くなる)。また、地方公共団体が電話料金や初期投資に対して一定の補助金を支出しているため、総合的なコストは少なくて済んでいると考えられる。
全国各地にコールセンターが設置されているが、とりわけ札幌市、釧路市や仙台市は、言語が標準語に近いことや自治体が誘致に熱心である等の理由から、コールセンターの進出が多い地区のひとつとなっている。
さらには、国際電話が安価なIP電話で、時差を利用し24時間対応を行うため、人件費の安い複数の国にコールセンターを持ち、業務を請け負う事業者もあり、委託する企業が増加している。英語・スペイン語での対応が多いが、日本語での対応が可能なサービスもある。
特に代表的なのは中国・大連市で、DELL、hp、GE、ライブドア、マスターピース・グループなどの大手企業のBPOコールセンター、コンタクトセンターが設置されている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- コールセンター/CRM デモ&コンファレンス
- 札幌市コールセンター - 自治体が設置するコールセンター