チェロソナタ第3番 (ベートーヴェン)
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チェロソナタ 第3番 イ長調 作品69は、1808年に完成したベートーヴェン作曲のチェロとピアノのためのチェロソナタである。
[編集] 概要
ベートーヴェンが最も情熱を注いだピアノなどとは異なり、チェロは彼にとって特別な楽器ではなかったようである。したがって、彼がチェロ作品を作るためにはチェロの名手の存在などの具体的な動機付けが必要であった。しかしながら、ベートーヴェンのチェロ作品は、チェロ曲史上最も重要なものの一つとされ、多くのチェロ奏者にとって大切なレパートリーとなっている。
ベートーヴェンはOp.5の2曲、Op.69のこの曲、Op.102の2曲のチェロソナタ5曲を作曲している。初期に作品が集中したヴァイオリンソナタとは異なり、ベートーヴェンはチェロソナタに初期、中期、後期の各形式を代表するような傑作を遺している。ベートーヴェン作の室内楽曲の中で、この5曲のチェロソナタは弦楽四重奏曲に次ぐ成功を修めたと評価されていて、彼の室内楽を理解するうえでこの5曲は大変重要とされている。
この5曲のチェロソナタのうち、最も広く知られているのがこのOp.69の第3番である。第5交響曲、第6交響曲、第5ピアノ協奏曲などと同時期に作曲されたこの曲は、ベートーヴェン中期の「傑作の森」を代表する室内楽曲であり、大変充実した内容をもつ。
ベートーヴェンが遺したスケッチにより、この第3番は元々はト長調の「ピアノとヴァイオリンのための大ソナタ」として構想された事が知られている。
この曲以前のチェロとピアノのためのソナタは、実質的には「チェロ伴奏付きのピアノソナタ」であった。この曲において、歴史的に初めてチェロはピアノと対等な役割を与えられたといえる。
チェロの取り扱いは以前のOp.5に比べ飛躍的に大胆になり、チェロ本来の低音とカンタービレの能力を生かしながら、高音なども積極的に用いていて、従来のチェロ作品よりもチェロの持つ可能性を大きく拡張したものになっている。一方でピアノもオクターブ重複などかなり豪快かつ自由な句を歌いながらも、チェロの進行を乱すことはない。作曲技法においても、チェロとピアノの両手による精緻な対位法的処理が随所に用いられるなど、この時期のベートーヴェンの作曲技法の高さを示している。
[編集] 曲の構成
- 第1楽章 Allegro ma non tanto イ長調 2分の2拍子 ソナタ形式。
- チェロが雄大なイ長調の第1主題を奏し、ピアノもそれを受けて曲は始まる。ホ短調の第2主題はチェロ、ピアノの両手による調性を変えながらの3声の対位法によって展開される。この辺りのチェロの扱いはOp.5におけるそれよりも大きく進歩していて、チェロはもはやピアノの伴奏ではなく独立した地位を与えられている。
- 展開部においても、チェロとピアノの有機的な関係が示される。再現部を経て、第1主題の動機を用いたコーダが始まる。ここではベートーヴェンが得意とした動機圧縮の手法が用いられ、曲は盛り上がりを強め、チェロとピアノが第1主題を奏した後にチェロの旋律で曲を閉じる。
- 第2楽章 Scherzo.Allegro molto イ短調 4分の3拍子 A-B-A-B-A形式。
- 第3楽章 Adagio cantabile ホ長調 - Allegro vivace イ長調 2分の2拍子 ソナタ形式。
- 優美で大らかなAdagioの序奏部から始まり、ここではチェロのソステヌートの能力が存分に発揮されている。イ長調の属七の和音から雰囲気が変わり、チェロが軽やかな第1主題を奏でる。ここからがAllegro vivaceのソナタ形式の提示部であり、ピアノも加わって主題は大きな盛り上がりを見せる。
- 短い展開部と公式通りに進行する再現部を経てコーダに至る。コーダではピアノの華々しい旋律が大きくクレッシェンドしてフォルティシモになり、爆発的なクライマックスを合奏で演奏した後、チェロとピアノの前進を経て終止和音で堂々と全曲を終わる。
カテゴリ: ベートーヴェンの楽曲 | チェロソナタ