弦楽四重奏曲

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弦楽四重奏曲（げんがくしじゅうそうきょく）とは、弦楽四重奏による楽曲を言う。一般には、複数の楽章から成り、多くは交響曲やソナタと同様、急−緩−舞−急の4楽章から構成されており、第1楽章がソナタ形式となっている。

[編集] 歴史

このジャンルはベートーヴェンが壮年期に「ラズモフスキー弦楽四重奏曲」でプロの演奏家が演奏会のために演奏する曲として確立し、さらに晩年にはプロの演奏家が何年もかけて研鑽するべき崇高な作品を残したこともあって、交響曲やピアノソナタと同程度に重要なジャンルとみなされるようになった。

しかし、ベートーヴェン以降のロマン派の時代には、シューベルトとドヴォルザークを除いてあまり数多くは作曲されていない。ベートーヴェンの後継者と評されるブラームスでさえ、ベートーヴェンの傑作群の重圧を感じたのか、数多くある室内楽の分野の一分野という程度に、わずかに3曲作曲されたのみに留まっている。

このようなベートーヴェンの重圧による寡作の時代があったが、その間に決して弦楽四重奏曲が重要なジャンルとみなされていなかったわけではない。たとえば、交響曲やピアノソナタのような「古典的な」音楽には否定的な意見を持っていたドビュッシーですら、弦楽四重奏という「古典的な」ジャンルで、1曲だけだが作品を発表している。もっとも、のちにラヴェルが恩師フォーレに捧げた弦楽四重奏曲同様、ドイツ・クラシックの権化のような調性音楽上のこのジャンルは形式上はその体裁を保っていたとはいえ、印象派の時代には既に古典的な形式の好例とみなされていたことがうかがわれる。

近代では、弦楽四重奏曲で2人目の巨匠と言われる作曲家バルトークが現れ、ベートーヴェンの後期作品以来の快挙とも評される6曲の弦楽四重奏曲を作曲した。これらの作品群は現代音楽の古典ともいわれる。

その後も、ミヨー、ショスタコーヴィチ、安部幸明らはこのジャンルのために生涯をかけて多くの作品を残している。前衛的な作風で知られる新ウィーン楽派ですらこのジャンルに全精力を費やした痕跡が残り、第二次大戦後の前衛の時代に於いてもベリオ、ブーレーズ、ノーノなどによって無視できないジャンルとみなされた。シュトックハウゼンは「このような古典的なジャンルとは一切かかわりたくない」という創作態度であったものの、結局はアルディッティ弦楽四重奏団の委嘱に「ヘリコプター付き」との条件付で作曲した（ヘリコプター弦楽四重奏曲）。21世紀を迎えた現在も、このジャンルへ挑戦する作曲家は後を絶たない。

[編集] 主な作曲家と作品

（生年順）

ハイドン　68曲の弦楽四重奏曲。（「ロシア四重奏曲」第37-38番、74「騎士」、「エルデーディ四重奏曲」75-80番；うちニックネーム付きは76「五度」・77「皇帝」・78「日の出」・79「ラルゴ」）全曲の一覧は『フランツ・ヨーゼフ・ハイドン#弦楽四重奏曲』を参照
ゴセック - 12曲
ヴァンハル - 7曲以上
ボッケリーニ　102曲(英語版には91曲とありますが…)
ホフマイスター - 5曲
ヴィオッティ - 17曲
モーツァルト　23曲の弦楽四重奏曲。（「ハイドン・セット」第14-19番が有名）
ケルビーニ　6曲の弦楽四重奏曲。
ベートーヴェン　16曲の弦楽四重奏曲。（1、2、3、4、5、6、7「ラズモフスキー1番」、8「ラズモフスキー2番」、9「ラズモフスキー3番」、10「ハープ」、11「セリオーソ」、12、13、14、15、16）+ 大フーガ。高く評価されている。
レイハ 1曲以上の弦楽四重奏曲。
フンメル　3曲の弦楽四重奏曲。
シューベルト　15曲の弦楽四重奏曲（13「ロザムンデ」、14「死と乙女」、15が有名）。
メンデルスゾーン　6曲の弦楽四重奏曲。
シューマン　3曲の弦楽四重奏曲。（1、2、3）
ヴェルディ　1曲の弦楽四重奏曲。
フランク　1曲の弦楽四重奏曲。
ブルックナー　1曲の弦楽四重奏曲。
スメタナ　2曲の弦楽四重奏曲。（1「わが生涯より」、2）
ボロディン　2曲の弦楽四重奏曲。第2番の第3楽章「ノクターン」が有名。
ブラームス　3曲の弦楽四重奏曲。（1、2、3）
サン＝サーンス　3曲の弦楽四重奏曲。
チャイコフスキー　3曲の弦楽四重奏曲。第1番の第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」が有名。
ドヴォルザーク　14曲の弦楽四重奏曲。（12番「アメリカ」が有名。）
グリーグ　1曲の弦楽四重奏曲+未完1曲。
フォーレ　1曲の弦楽四重奏曲。
フィビフ　2曲の弦楽四重奏曲。
ダンディ　3曲の弦楽四重奏曲。
ヤナーチェク　2曲の弦楽四重奏曲。（1「クロイツェル・ソナタ」、2「ないしょの手紙」）
ショーソン　未完1曲。　
エルガー　1曲の弦楽四重奏曲。
ヴォルフ　1曲の弦楽四重奏曲+イタリアセレナーデ
ドビュッシー　1曲の弦楽四重奏曲。
リヒャルト・シュトラウス　1曲の弦楽四重奏曲。
グラズノフ　7曲の弦楽四重奏曲ほか。
ニールセン　4曲の弦楽四重奏曲。
シベリウス　4曲の弦楽四重奏曲（うち番号付きは2曲。op.56『親愛の声』が有名）
ヴォーン・ウィリアムズ　2曲の弦楽四重奏曲。
レーガー　6曲の作品番号付き弦楽四重奏曲。他に1曲（ニ短調…終楽章にコントラバスのオプションが付く）。
スーク　2曲の弦楽四重奏曲。
シュミット　2曲の弦楽四重奏曲。
アイヴズ　2曲の弦楽四重奏曲。
シェーンベルク　4曲の作品番号付き弦楽四重奏曲。（1、2、3、4）うち2番は3,4楽章にソプラノ独唱を伴う。他にニ長調（作品番号のない1897年の作品）が1曲。
フリッツ・クライスラー　1曲の弦楽四重奏曲。
ラヴェル　1曲の弦楽四重奏曲。
ブロッホ　5曲の弦楽四重奏曲。
バルトーク 6曲の弦楽四重奏曲（1、2、3、4、5、6）高く評価されている。
ミャスコフスキー　13曲の弦楽四重奏曲。
コダーイ　2曲の弦楽四重奏曲。
ストラヴィンスキー　弦楽四重奏のための3つの小品、弦楽四重奏のための二重カノン
バックス　3曲の弦楽四重奏曲。
ウェーベルン　弦楽四重奏のための5楽章op.5　12音技法による。他に「弦楽四重奏のための6つのパガテルop.9」、弦楽四重奏曲op.28。作品番号のない1905年の作品が1曲。
ベルク　 Op.3、他に「弦楽四重奏のための叙情組曲」
ヴィラ＝ロボス　17曲の弦楽四重奏曲。
アッテルベリ　3曲の弦楽四重奏曲。
セルゲイ・プロコフィエフ 2曲の弦楽四重奏曲。
オネゲル　3曲の弦楽四重奏曲。
ミヨー　18曲の弦楽四重奏曲。3番はソプラノ独唱を伴う。第14番と第15番は同時に演奏すると弦楽八重奏になる。
ピストン　5曲の弦楽四重奏曲。
ヒンデミット　7曲の弦楽四重奏曲。（1、2、3、4、5、6、7）
セッションズ　2曲の弦楽四重奏曲+ストラヴィンスキーの思い出にささげるカノン。
ウォルトン　2曲の弦楽四重奏曲。
ローソーン　4曲の弦楽四重奏曲。
シェルシ　5曲の弦楽四重奏曲。
ティペット　5曲の番号つき弦楽四重奏曲+2曲の習作。
ショスタコーヴィチ　15曲の弦楽四重奏曲。（1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15）高く評価されている。
カーター　5曲の弦楽四重奏曲。
バーバー　1曲。第2楽章前半のアダージョ部を弦楽合奏に編曲したのが｢弦楽のためのアダージョ｣。
W.シューマン　5曲の弦楽四重奏曲。
安部幸明　15曲の弦楽四重奏曲。
ケージ　1曲の弦楽四重奏曲ほか。
ナンカロウ　3曲の弦楽四重奏曲。第2番は未完。
ブリテン　3曲の番号つき弦楽四重奏曲+2曲の習作+ディヴェルティメントほか
ルトスワフスキ　1曲。
ダイアモンド　10曲。
クセナキス　4曲。（「st/4 - 1,080262」、「Tetras」、「Tetora」、「Ergma」）
リゲティ　2曲。（1「メタモフォーゼン・ノクターン」、2）
ベリオ　3曲ほか。
ヘンツェ　現時点で5曲。
シュトックハウゼン　4つのヘリコプターと弦楽四重奏のための「ヘリコプター弦楽四重奏曲」（オペラ「光」より）。
ボグスワフ・シェッフェル - 現時点で17曲。「弦楽四重奏曲」と銘打っていないが、この編成のために書かれた作品が三曲存在する。
武満徹 - 「ア・ウェイ・ア・ローン」
グレツキ　現時点で3曲。
ペンデレツキ　現時点で2曲。
シュニトケ　4曲ほか。
ヘルムート・ラッヘンマン現時点で３曲
ライヒ　弦楽四重奏とテープのための「Different Trains」、「Triple Quartet」
グラス　現時点で5曲。
嶋津武仁現時点で１曲
ヴォルフガング・リーム現時点で１１曲
西村朗現時点で３曲
菅野茂現時点で９曲
福井とも子現時点で４曲