ファーストクラス
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ファーストクラス(First Class)は、旅客機の最上級クラス(客席)のことである。
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[編集] 概要
[編集] 由来
多くの航空用語の例と同じく、元は客船で使われていた用語で、同じく最上級客室の事を指していた。各国の鉄道においても、ファーストクラス(一等車)、セカンドクラス(二等車)、サードクラス(三等車)と分けられている。
また、船舶では沈没の際、ファーストクラスの乗客が優先して救助される権利を有していた。
1920年代以降に旅客機による旅行が本格化し、旅客機の収容人数が増えて機内客室がクラス分けされた際に、この名がつけられた。基本的により広い面積を持つシートの提供と、より充実したサービスの提供が行われる。なお、ファーストクラスに代表される航空機における複数の座席クラスの提供は、搭乗客数が30人以上となる1950年前後から本格化している。また、1940年代までのように単一クラスの提供であった時代は、短距離ならば現在におけるビジネスクラスのサービス、食事を提供する遠距離ならば、当時航空運賃が非常に高いことも相まって現在のファーストクラスとほぼ同じサービスが提供されていた。
[編集] 運賃
主に国際線の旅客機に設定されており、基本的にエコノミークラスの数倍から十倍程度、ビジネスクラスの倍から3倍程度の運賃を徴収する(正規運賃や割引運賃など、運賃形態により異なる)。なお、区域内の短距離線や国内線の上級クラスをファーストクラスと称しているケースもままあるが、シートの大きさやサービス内容が実際はビジネスクラス程度という場合が多い。
おおよその目安として、成田-ヨーロッパあるいはアメリカ往復で一人百数十万円程度かかる。したがって、利用客層は大手企業の経営トップや閣僚、国会議員、芸能関係者といった、欧米諸国であれば自家用ビジネスジェット機も多く利用する層が主である(現在の日本の空港事情では、欧米のように自由に自家用ビジネス機が利用できない)。
[編集] 変遷
近年では、ビジネスクラスの競争激化によるハード・ソフト両面のサービスの向上と、顧客企業の出張コスト削減によるファーストクラスの利用客の減少などにより、ビジネスクラスのサービスの向上と同時にファーストクラスを廃止したり、設定路線を縮小する航空会社も増えている。また、ヴァージン・アトランティック航空のように、ファーストクラス並みのサービス内容を持つビジネスクラスを提供することで、はじめからファーストクラスを設定しない航空会社もある。
一方、ビジネスクラスや普通運賃を頻繁に利用する収益性が高い乗客に対しては、謝礼としてファーストクラスを提供する航空会社もある。現在では搭乗履歴の分析が容易になり、乗客の収益率が把握しやすくなった。これを受け、ファーストクラスを存続させている航空会社の多くは、ファーストクラスを「ステータスの高い乗客のための特権」として位置づけ直している。
[編集] 基本サービス
(航空会社、路線により異なる)
[編集] 地上
- マイレージポイントの割増
- 空港からホテルなどへの無料送迎
- 専用チェックインカウンターの使用
- 受託手荷物の重量制限緩和
- 到着時に優先で受託手荷物を受け取れる荷札
- 優先通関レーンの使用
- 出発地・到着地空港の専用ラウンジの使用
- 機内への優先搭乗案内
[編集] 機内
- 専用コンパートメント
- フルフラットになる専用リクライニングシート
- 羽毛布団やナイトガウンの貸与
- 特別に選ばれたアメニティセット
- 専門の訓練を受けた客室乗務員によるサービス
- ア・ラ・カルトで選べる機内食
- 専用の機内トイレ
[編集] ファーストクラスを設定している主な航空会社
(日本へ就航している航空会社・路線によっては設定していない)
- 日本航空(今後、国内線にも導入予定)
- 全日空
- 大韓航空
- チャイナエアライン
- フィリピン航空(ホノルル線、北米線のみ)
- キャセイパシフィック航空
- シンガポール航空
- タイ国際航空
- エミレーツ航空
- エールフランス航空
- ルフトハンザドイツ航空
- ブリティッシュエアウェイズ
- スイスエアラインズ
- アメリカン航空
- ユナイテッド航空
- ヴァリグ・ブラジル航空
- カンタスオーストラリア航空(欧米線、南アフリカ線、香港線に設定。)
[編集] 「最高級」という意味の「ファーストクラス」
航空機において最高級の座席という意味から転じて、最高級のサービス、品物などを指して「ファーストクラスのような」、「ファーストクラス級の」などと言うことがある。例えば日産・エルグランドは、インテリアを「ファーストクラスの室内空間」と銘打っている。
また商品名・サービス名に「ファーストクラス・○○」などとつけるケースも見られる。