ビジネスクラス
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ビジネスクラス(Business Class)は、旅客機の座席の等級における中間クラスのことである。ファーストクラスとエコノミークラスの間に位置付けられる。
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[編集] 概要
1970年代中頃までの国際線旅客機には、上級クラスであるファーストクラスと、下級クラスであるエコノミークラスの2種類のクラスしかなかったが、1970年代前半のボーイング747型機などの大型機の導入に伴う海外旅行の大衆化によって、エコノミークラスに『団体割引運賃』などの各種割引運賃が導入されたことにより、当時アメリカを代表する航空会社であったパンアメリカン航空が、通常料金でエコノミークラスに搭乗する顧客(主に出張で利用する社用客)への専用サービスとして、専用コンパートメントの設置や座席サイズの拡大、機内食の充実を行った『クリッパークラス』(Clipper Class)と呼ばれる中間クラスを導入したのが始まりといわれている。
その後、1970年代後半から1980年代にかけて、ブリティッシュ・エアウェイズや日本航空、エールフランス航空などの競合他社も続々導入し、基本的に大幅な料金割引を殆どしないため高収益が見込めることなどから、現在では、各社ともサービスの充実に一番力を入れる存在になった。
また、ビジネスクラスのサービスの充実に伴い、最近ではヴァージン・アトランティック航空やコンチネンタル航空のように、ファーストクラスを廃止する航空会社も多く、シンガポール航空のように特定の機材(シンガポール航空の場合、Boeing777-300ERとAirbus340-500がこれに該当する。)で運行している路線(シンガポール~ジャカルタ間を除く。)に関しては、運賃とは別にサーチャージ(追加料金)を請求しているケースもある。
[編集] 国内線・近距離国際線の場合
なお、国内線や域内の近距離国際線の場合、ビジネスクラスとエコノミークラス、もしくはファーストクラスとエコノミークラスの2クラス制を取る航空会社が多いが、ビジネスクラス並みのサービスにもかかわらず、2クラス時代の名残からか、『ファーストクラス』と称している場合も多い。
日本の国内線においては、日本航空が『クラスJ』、全日本空輸が『スーパーシートプレミアム』、スカイマークが『シグナスクラス』と呼ばれる上級クラスを導入しているが、サービス内容から中級クラスの一つに分類できる。
ちなみに、かつての日本エアシステムは、ボーイング777にて上級クラスのスーパーシート・下級クラスエコノミーシートと中級クラスにあたるレインボーシートの3クラス制を取っていた。プラス1,000円で利用出来とても人気が高かったが、日本航空との合併により消滅し、現在はスーパー・レインボーどちらのシートもクラスJとして運用されている(サービス面では差がない)。
[編集] サービス内容
近年のサービス競争の激化により、一部の航空会社では機内でのマッサージやハイヤーでの送迎サービスを導入するなど、多くの航空会社がより一層のサービスの強化を図っている。
[編集] 地上
- マイレージサービスの加算マイル数の割増
- 市内から空港への専用送迎ハイヤーの提供
- 専用チェックインカウンターの使用
- 手荷物の重量制限緩和
- 到着時に優先で手荷物を受け取れる荷札
- 自宅⇔空港間の手荷物無料配送サービス
- 出発地・経由地空港の専用ラウンジの使用可能
- 機内への優先搭乗案内
[編集] 機内
- 背もたれが160-180度(フルフラット)傾く専用大型シート。座席の前後間隔が150から200センチくらいある。
- スリッパ、アイマスク、化粧道具などの専用アメニティセットの配布。
- ウェルカムドリンクの配布。
- 機内食がコース料理で、なおかつ選択数が多い。路線によってはカップ麺(日本航空における「うどんですかい」)などの無料サービスもある。特殊な事情のある利用者向けには、事前に申し込めばイスラムやベジタリアン、低カロリーなどの特別料理も可能。中東のイスラム諸国の会社では標準がイスラム料理の場合が多い。
- ラバトリーの差別化。エコノミークラスとは分離して装備が異なる。
[編集] 利用客層
- 社用による海外出張客が多い。パッケージツアーによっては、ビジネスクラスを利用するものや、追加料金を払ってビジネスクラスに変更(アップグレード)できるものもある。エコノミークラスほどではないが、時期や便によっては割引券も販売されている。また、マイレージサービスで蓄積したマイル数によりエコノミーからアップグレードすることもできる。
- 特殊なケースであるが、エコノミークラスのオーバーブッキング(予約の受け過ぎによる席不足)の結果、ビジネスクラスに回される事がある。これをインボラアップグレード(Involuntary Upgrade)と呼ぶ。この場合座席はビジネスクラスになるが、サービスはエコノミークラスと同等となることもある。
[編集] 呼称
下記のように、航空会社によって中間クラスの呼び名は違っているが、一般的には、中間クラスをビジネスクラスとの呼称で呼ぶことが多い。
- 『エグゼクティブクラスSeasons』(日本航空)
- 『Club ANA』(全日空)
- 『ダイナスティークラス』(中華航空)
- 『プレステージクラス』(大韓航空)
- 『ロイヤルシルククラス』(タイ航空)
- 『ゴールデンクラブクラス』(マレーシア航空)
- 『ラッフルズクラス』(シンガポール航空)
- 『エスパス・アフェール』(エールフランス航空)
- 『クラブワールド』(ブリティッシュ・エアウェイズ)
- 『アッパークラス・スイート』(ヴァージン・アトランティック航空)
- 『ユナイテッド・ビジネスクラス』(ユナイテッド航空)
- 『ビジネスファースト』(コンチネンタル航空)
- 『ワールド・ビジネスクラス』(ノースウエスト航空、KLMオランダ航空)
[編集] Cクラス
なお、航空券上の記載でビジネスクラスが『C』と表記されるのは、パンアメリカン航空の『クリッパークラス』(Clipper Class)の頭文字がそのまま使われたという説や、『クラブクラス』(Club Class)の頭文字であるという説などがある。
[編集] 第4のクラス
近年では、ビジネスクラスとエコノミークラスのサービス内容に差がつきすぎてしまったため、ブリティッシュ・エアウェイズやエバー航空、全日空などのように、その間を埋める『第4のクラス』(『プレミアムエコノミークラス』、や『エコノミーエクストラ』などの呼称で呼ばれる)を設ける航空会社も出てきている。また日本航空インターナショナルも新設を発表した。おもに欧米線に就航するB777機などに40席程度設置する予定である。
プレミアムエコノミー設置便運航会社
- 『ワールドトラベラープラス』(ブリティッシュ・エアウェイズ)
- 『プレミアムエコノミー』(ヴァージン・アトランティック航空)
- 『プレミアムエコノミー』(全日空/一部長距離便)
- 『エコノミーエクストラ』(スカンジナビア航空/一部長距離便)
- 『プレミアムエコノミー』(タイ国際航空/一部路線)
- 『エコノミープラス』(ユナイテッド航空)
- 『エグゼクティブエコノミー』(シンガポール航空/シンガポール~ロサンゼルスノンストップ便、シンガポール~ニューアーク間)
新設予定の航空会社
- 『プレミアムエコノミークラス』(日本航空インターナショナル/欧米線)