三重交通神都線
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神都線(しんとせん)とは、かつて三重県伊勢市(旧・宇治山田市、通称「神都」)に存在した三重交通の軌道線(路面電車)である。市内間相互輸送の他、国鉄・近鉄の伊勢市駅・宇治山田駅といった伊勢市のターミナル駅から、伊勢神宮・二見浦へ向かう観光・参拝客輸送の役割も果たしていた。
目次 |
[編集] 路線概要
(廃線直前の1961年1月当時)
- 全路線長:14.0km
- 内宮線:6.8km(伊勢市駅前~内宮前)
- 二見線:6.6km(古市口~二見)
- 中山線:0.6km(中山~二軒茶屋)
- 軌間:1067mm
- 電圧:直流600V
- 併用軌道区間:伊勢市駅前~古市口、猿田彦神社前~内宮前(全体の約2割で、他は専用軌道)
- 複線区間:本町~古市口(上下線間隔大)
- 集電装置:ポール(廃止時まで)
- 系統
- 伊勢市駅前~古市口~中山~内宮前
- 伊勢市駅前~古市口~二軒茶屋~二見
- 内宮前~中山~二軒茶屋
- 運行間隔:30分(初詣時は7~15分間隔)
- 所要時間
- 外宮前~内宮前:21分
- 二見~外宮前:29分
- 二見~内宮前:27分
[編集] 沿革
- 1903年(明治36年)8月5日 当時この地域の電力事業を行っていた宮川電気により、余剰電気の有効活用を目的として本町~二見間7.6kmで電車の運行を開始。東京電気鉄道(後の東京都電)より17日、大阪市電より1ヶ月早い開業で、日本で7番目となるものであった。
- 1904年(明治37年)2月 社名を伊勢電気鉄道(現在の近鉄名古屋線にあたる路線の一部を建設した伊勢電気鉄道とは別)に改める。
- 1905年(明治38年)8月4日 山田駅前(後、伊勢市駅前)~本町間0.3km延伸。
- 1906年(明治39年)10月16日 古市口~宇治(後、猿田彦神社前)間4.5km、中山~二軒茶屋間0.6km開業。
- 1909年(明治42年)10月1日 本町~外宮前~古市口間1.3km開業。
- 1914年(大正3年)11月14日 宇治~内宮前間0.9km開業。
- 1922年(大正11年)5月1日 電力会社の整理統合により、伊勢電気鉄道は松阪水力電気・津電灯と合併して三重合同電気となる。
- 1925年(大正14年)8月26日 朝熊登山鉄道鉄道線(楠部~平岩間)と鋼索線(ケーブルカー、平岩~朝熊山間)が開業。
- 1928年(昭和3年)11月1日 朝熊登山鉄道を合併、朝熊線として同社路線となる。
- 1930年(昭和5年)2月6日 合同電気に社名変更。5月10日に京阪電気鉄道の経営であった和歌山軌道線を譲り受ける(1940年に阪和電気鉄道傘下の和歌山電気軌道へ譲渡、最後は南海電気鉄道の路線となって1971年廃止)。
- 1937年(昭和12年)3月31日 東邦電力に合併、同社の津支局の管轄となる。
- 1939年(昭和14年)8月1日 国策によって電力事業と運輸事業を分離することになり、宇治山田市内の軌道線は新たに設立された神都交通の経営となる。
- 1944年(昭和19年)1月11日 戦時下の不要不急路線として朝熊線を休止。
- 1944年(昭和19年)2月11日 三重県下の鉄道・バス事業を統合して三重交通が発足、同社の神都線となる。
- 1959年(昭和34年)9月27日~10月4日 伊勢湾台風によって一時不通に。
- 1961年(昭和36年)1月20日 神都線をバスに転換して全廃。
- 1962年(昭和37年)7月15日 休止中の朝熊線を廃止。
[編集] 停留所一覧
(廃止直前の1961年1月当時)
- 内宮線
- 伊勢市駅前 - 本町(外宮前) - 外宮前 - 近鉄宇治山田駅前 - 古市口 - 倉田山 - 中山 - 松尾 - 楠部 - 猿田彦神社前 - 内宮前
- (伊勢市駅前~近鉄宇治山田駅前間は上下線が離れており、本町(外宮前)は上り線のみ、外宮前は下り線のみに存在)
- 二見線
- 古市口 - 河崎 - 二軒茶屋 - 学校前 - 通 - 汐合 - 三津 - 二見
- 中山線
- 中山 - 二軒茶屋
また、1944年に休止された朝熊線の駅・停留所は以下の通り。
- 鉄道線:楠部 - 五十鈴川 - 一宇田 - 朝熊村 - 平岩
- 鋼索線:平岩 - 朝熊岳
[編集] 特徴
- 右側通行の採用
- 伊勢神宮へ参拝する際、外宮を見てから内宮へ向かうのが普通であるが、その際既述のように伊勢市駅前~近鉄宇治山田駅前間の上下線が分かれていた区間では、より外宮に近いほうを通る路線を下りとし、外宮前を経由せずその北を直進してより宇治山田駅に近い位置を通る路線を上り線としたほうが好都合なため、日本での一般の鉄道や道路が左側通行を原則としているのに逆らって、右側通行となった。そのほかの区間でも、運転上の勘違いを防ぐために行き違い場所はすべて右側通行にしていた。
[編集] 関連項目
- 朝熊山(朝熊岳)
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