同和地区
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
同和地区(どうわちく)とは、同和対策事業の対象となった地区である。総称であり包括的定義のない被差別部落とは異なり、正式な行政用語である。同和対策事業は2002年で終了しているため、日本共産党を中心に旧同和地区という呼び方もされる。これに対し、同和対策事業の対象とならなかった被差別部落は、未指定地区、もしくは未解放部落と呼ばれる。
目次 |
[編集] 同和地区という呼称
この呼称は、同和対策事業の最初の根拠法たる「同和対策事業特別措置法」にも、またその後の地域改善対策特別措置法(地対財特法)にも出てこない。これらの法令で規定されているのは「歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域(以下「対象地域」という)について・・・」との表現である。
逆にこれら同和対策事業の必要性を指摘した「同和対策審議会答申」はその前文の冒頭で「昭和三十六年十二月七日内閣総理大臣は本審議会に対して『同和地区に関する社会的及び経済的諸問題を解決するための基本方策』について諮問された。」として、この時点で「同和地区」という言葉を使用し、また、同答申はその「第一部の一同和問題の本質」の項で、「・・・現在でも『未解放部落』または『部落』などとよばれ、明らかな差別の対象となっているのである。この「未解放部落」または「同和関係地区」(以下単に『同和地区』という)の起源や沿革については、・・・」とされているところからも明らかである。したがって「同和地区」の意味するところは、『未解放部落』または『部落』と一般的によばれていた地区の中で、同和対策事業の対象となった地区を一般的に指していた「行政用語」であるといえる。国が、部落問題が一応解決したとして、2002年度末で特別法を終了させた段階では「同和地区」という行政用語は法制上なくなったと考えられる。また、同様に『未解放部落』または『部落』という用語もまた法制上なくなったと考えられる。では、どうように呼称するかということであるが、一般的には「旧対象地区」「旧同和地区」と呼称せざるを得ないのが実情である。
[編集] 同和地区の概況
総務庁長官官房地域改善対策室の調査によれば、1993年の時点における同和地区の数は全国で4533地区。北海道、東京都、沖縄県のように同和地区が存在しないとする都道県もある一方で、同和地区の存在を認めている各府県の中では最も多いのが606地区を抱える福岡県、続いて472地区を抱える広島県、457地区を抱える愛媛県となり、最も少ないのは3地区を抱える長崎県となっている。
また同和対策事業地区人口では福岡県が30万5051人(うち同和関係者人口は11万1784人、混住率は36.6%)、長野県が21万3819人(うち同和関係者人口は1万5849人、混住率は7.4%)、兵庫県が20万6156人(うち同和関係者人口は11万7297人、混住率は56.9%)となっており、最も少ないのは長崎県で2293人(うち同和関係者人口は292人、混住率は12.7%)とされている[1]
[編集] 同和地区人口比率
部落解放研究所による1997年度の実態調査を参考として、各自治体の同和地区人口比率、すなわち総人口に占める同和地区住民の数について、これが高率の自治体について番付化したものが以下である。括弧内には市町村合併後の現在の自治体名を付記した。
|
|
---|
(A:総人口/B:同和地区人口/P:同和地区人口比率)
[編集] 脚注
- ^ たとえば小規模・散在型部落であるなどの理由で、同和地区と非同和地区のあいだに明確な境界線を引くのが困難である場合、近接する非同和地区も含めて包括的に同和地区指定することで、国庫補助事業を導入して地域の一体的な改善を行った例が多々あり、同対法において認められた手法であった。上記の同和対策事業地区人口と同和関係者人口の差はここから生じている。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 「同和行政史」総務省大臣官房地域改善対策室
- 「『同和利権の真相』」の深層」 解放出版社