名鉄空港線
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空港線(くうこうせん)は、愛知県常滑市の常滑駅と中部国際空港駅とを結ぶ名古屋鉄道の鉄道路線。中部国際空港へのアクセス路線で、名鉄常滑線を延伸する形になっている。
この路線は中部国際空港連絡鉄道が第三種鉄道事業者として施設の建設・保有を行い、名古屋鉄道が第二種鉄道事業者として施設を借り受けて運営を行う。
空港管理会社の職員の足を確保するため、空港関係者に旅客を限定して2004年10月16日に暫定開業し、中部国際空港開港(2005年2月17日)前の2005年1月29日に一般旅客向けの営業を開始した。
運賃計算区分はB(運賃計算に用いる距離は営業キロの1.15倍)で、さらに加算運賃を適用する。全ての駅でトランパスが使用できる。
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[編集] 路線データ
- 管轄(事業種別):名古屋鉄道(第二種鉄道事業者)・中部国際空港連絡鉄道(第三種鉄道事業者)
- 路線距離(営業キロ):4.2km
- 軌間:1067mm
- 駅数:3駅(起終点駅含む)
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線(直流1500V)
- 最高速度:
[編集] 運行形態
2004年10月の空港関係者限定開業時は、常滑~中部国際空港間の線内折り返し列車のみが運行され、中間駅のりんくう常滑駅は通過していた。
2005年1月の一般旅客向け営業開始後は、新鵜沼方面から全車特別車の快速特急が毎時1本と急行が毎時2本、名鉄岐阜駅(新岐阜駅から改称)から全車特別車の快速特急と一部特別車の特急が毎時各1本、豊橋駅からの一部特別車の特急が毎時1本の計1時間あたり6本運行されている。
- 特急
- 昼間時間帯は、一部特別車の特急を豊橋駅・名鉄岐阜駅からそれぞれ毎時1本運行している。
- 豊橋発着の特急は金山駅で折り返す。このため神宮前駅に2回停車する。また神宮前駅で名鉄岐阜ゆき一部特別車特急に連絡している。
- 夕方・夜間は名鉄名古屋発着の一部特別車特急を毎時2本運行し、神宮前で名鉄岐阜ゆき一部特別車特急に連絡している。
- 朝の一部列車は金山発着となる。また朝のみ名鉄名古屋方面に全車特別車特急が、さらに空港発の最終列車として金山ゆき全車一般車の特急が1本設定されている。
特急・快速特急については名鉄特急も参照のこと。
- 普通
- 開業当初はほとんどが常滑折り返しで、空港線の普通列車は朝の数本だけであった。しかし、空港線の利用が好調なことから、2006年4月29日のダイヤ改正で、一部の普通列車が中部国際空港発着になった。常滑折り返しの普通には、急行列車が常滑駅で連絡している。常滑線内では毎時2本運行される。
[編集] 利用状況
空港線は、開業時に輸送力の限界が問題視されていた。
名鉄が開業時ダイヤを編成した当時は、中部国際空港への就航便の数が確定していなかったため、開業前の需要予測に基づいてダイヤを編成したと思われる。しかしその後、就航便の数が当初の目標便数よりも多くなったため、アクセスのピークとなる午前8時台の輸送力が不足する恐れが指摘されはじめた。
中部国際空港の開港に先立ち2005年1月29日に空港線が開通したが、この日は空港開港前でターミナルビルには入れないことが相当頻繁に案内されていたにもかかわらず、それでもこの日1日だけで14,000人もの乗客が中部国際空港駅を利用し、輸送力への不安を更にかき立てた。名鉄では朝の通勤時間帯に重なり、地上設備などの関係上本数の増発が困難であることから、中部国際空港開港日である2月17日より当該時間帯の列車5本の編成を長くすることで輸送力を約50%増強し、混雑の緩和を図る方針であることを発表した。
開港日当日の同年2月17日には約96,000人の利用者が空港を訪れ、そのうち約52,000人が名鉄空港線を利用した。名鉄では前述の輸送力増強の他、この日の早朝に臨時の特急(全車一般車)2本を設定していたが、空港線は始発便をはじめ軒並み乗車率が200%に達し、始発便を始め一部の駅で積み残しを出すなど、輸送力の不足を如実に示す結果となった。これを含め、1月29日の空港線開業以来20日間で約23万人の乗客があった。この数字は空港開業日が予測の170%に達するなど名鉄の事前の需要予測を約5万人も上回る数字であった。但し名鉄ではこの状態は一時的なものとして、年間の利用予測の修正は考えていないとのことである。
国土交通省中部運輸局によると、開港後3日間の公共アクセスの集計では、名鉄が全体の約84%にあたる1日平均約43,000人の利用があった。空港利用者の数から推計すると全利用者の約4割が公共交通機関を利用しており、クルマ社会の東海地方の中で健闘していると言える。
また、中部国際空港は海上に作られた人工島の上にあるため交通手段が制限されており、その為空港内の売店などの商業施設の営業終了時刻が早いという空港利用者からの意見が出た際、従業員の帰宅が数少ない公共交通機関である空港線の最終列車の時刻の制約を受けるという声があった。そのため、名鉄は3月10日に早朝および深夜帯の列車の増発、最終列車の繰り下げ、編成増結を柱としたダイヤ改正を発表、3月22日より実施した。これにより早朝時間帯の混雑率がやや緩和された。
名鉄では空港線の混雑のピーク需要をみるため、開業後初の繁忙期となるゴールデンウィークに、役員が空港線を利用するなど実態調査を行った。その後輸送力増強のため、快速特急「ミュースカイ」の増結および新造、さらに中部国際空港駅のホーム増設が行われた。
2005年6月3日には、「ミュースカイ」の利用者が100万人を達成したと発表された。
ちなみに、中部国際空港アクセスとして有力なライバルと見られていたJR東海バスが運営する名古屋駅~中部国際空港を結ぶシャトルバスは業績不振により2006年9月30日を持って廃止された(なお、名古屋駅接続バスは平和コーポレーションが継続している)。
多くの路線の廃止など守りの経営が続いてきた名鉄にとっては名鉄空港線の開業は新車両の投入の機会でもあり、久々に積極的に投資をする事業となった。
[編集] 歴史
- 2004年(平成16年)7月10日 試運転開始。
- 2004年(平成16年)10月16日 常滑~中部国際空港間が空港関係者限定で開業。りんくう常滑駅は全列車通過。
- 2005年(平成17年)1月29日 一般旅客向け営業開始。りんくう常滑駅開業。トランパス利用可能に。
- 2006年(平成18年)4月29日 ダイヤ改正に伴い中部国際空港駅新1番線ホーム(ミュースカイ専用ホーム)の利用を開始。
[編集] 加算額
空港線は新線であり、また名古屋鉄道が第二種鉄道事業者(線路は中部国際空港連絡鉄道の所有)で路線の維持費及び使用料がかかるため、運賃の他に加算運賃を要する。大人への普通運賃に対する加算額は、下記の空港線内の利用区間を照らし合わせて適用する。
利用区間 | 加算額 |
---|---|
常滑駅~中部国際空港駅間 | 80円 |
常滑駅~りんくう常滑駅間 | 30円 |
りんくう常滑駅~中部国際空港駅間 | 50円 |
[編集] 駅一覧
駅名 | 営業キロ | 普通 | 急行 | 快速急行 | 特急 | 快速特急 | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
常滑駅 | 0.0 | ● | ● | ● | ● | | | 名古屋鉄道:常滑線 | 愛知県常滑市 | |
りんくう常滑駅 | 1.6 | ● | ● | ● | | | | | |||
中部国際空港駅 | 4.2 | ● | ● | ● | ● | ● |
●:停車 |:通過
※快速特急は常滑線・名古屋本線神宮前駅までノンストップで運転される。
[編集] その他
- 2005年6月15日に発売された、SUPER BELL"Zのアルバム「The Very Best of MOTOR MAN」に名鉄空港線ミュースカイを題材にした曲が収録されている。